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95%はキツくて退屈そうなマラソンの残り5%の話

「なんで君はマラソンなんてキツくて退屈そうなことしとるんだ?」

と前職の上司に言われたことがあったけれど、その時はうまく答えることができませんでした。というか、どうせ理解されないだろうと真剣に答えるのも馬鹿らしくてテキトウな返事をして流してしまいました。伝えれば良かったな、「やってみると意外とクセになるんですよ」って。


楽しいかというとレースの最中は大体がしんどくて堪らないし、面白いかというと練習もレースも淡々と走り続けているわけだから、やっぱりキツくて退屈そうなスポーツです。でも、クセになるっていうのは本当の話。


95%はやっぱり辛い、しんどい、痛い。でも、残り5%がとびきり気持ち良いのが醍醐味です。

長い長いレースの最後にゴールテープを切る瞬間
練習の甲斐あって自己ベストを更新できた瞬間
山々が見せる絶景に涙が止まらなくなる瞬間
乳酸漬けの身体で熱い温泉に足を入れた瞬間
キンキンに冷えたビールをキュッと喉に流し込む瞬間

その瞬間が残りの95%をパッとひっくり返してしまう。

だから、総じて楽しいし、面白い。そして、翌日、筋肉痛になったガチガチの身体をさすりながら、またレースに出たいなと思うわけです。


村上春樹の著書「走ることについて語るときに僕の語ること」には、負けそうになった自分を奮い立たせてくれる言葉がたくさんあって、本棚から引っ張り出しては何度も読み返しています。

Pain is inevitable, Suffering is optional. それが彼のマントラだった。
正確なニュアンスは日本語に訳しにくいのだが、あえてごく簡単に訳せば、「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」ということになる。
全力を尽くして取り組んで、それでうまくいかなかったならあきらめもつく。しかしもし中途半端なことをして失敗したら、あとあと悔いが残るだろう。
腹が立ったらそのぶん自分にあたればいい。悔しい思いをしたらそのぶん自分を磨けばいい。


ライバルは自分自身だ!なんて言うと途端にチープになってしまうし、恥ずかしくて口にはしないけれど、つまりはそういうことなのかもしれません。


「ワタシはね、本当に自分に甘くてね、いつもいつも自分自身に負けてばかりの人生なんだけど、どうにも負け続けるのだけはイヤなんですよね」
「たまには自分に勝ちたいんですよ。それが、走ることなんですよ」

たまたま同じレースに出場した、名前も知らないおっちゃん(推定50代後半)とレース後に少しだけ話す機会がありました。

そのおっちゃんの言葉が今も印象に残っています。

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