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「シカゴのピアノ調律師の人数は何人か?」に代表されるフェルミ推定力の鍛え方

俺「さっき通った瀬戸大橋、何kmくらいの長さがあると思う?」
父「そうだな〜、10km弱じゃないかな」
俺「え〜!15-20kmはあるでしょ?」
父「ばか、そんなに長いわけないだろう。ざっと10kmだわ」

お盆休みに両親と三人で出掛けた愛媛旅行の帰り道にこんな話になりました。調べてみると瀬戸大橋の全長は9,368m。父の勝ちでした。


山育ちの父が持つ瞬間的な把握能力

父・力男(りきお・57歳、本名ですw)は、瞬間的に大きさや距離、時間を把握する能力がとても優れています。

パッと見たモノの大きさや手に持ったモノの重さを言い当てたり、移動時間の計算がドンピシャだったり。そういった類の把握精度が高いんです。父ちゃんの尊敬してるところの一つであります。


父は愛知・奥三河の山奥の集落の出身。生粋のド田舎育ちの山の子です。幼い頃、一緒に山に入ってはこんな会話をしたことを覚えています。

「このクヌギの木にはクワガタがおる」
「あの岩の下には鮎が隠れとる」
「(深い山の中で)こっちが北だからあっちに家があるぞ」
「ここから家まで○kmくらいだから歩けば△分くらいで家に帰れる」

おそらく過去の経験に裏付けられた直感的な判断や瞬間的な計算があると思うのですが、こういった能力はどのようにして身につくものなんでしょうか。最近の関心事の一つです。


正解がない問いに対し、どう推定し仮説を立てるか

最近読んだ永野裕之さんの著書「東大→JAXA→人気数学塾塾長が書いた数に強くなる本 -人生が変わる授業-」で興味深い一節がありました。

ビジネスや実生活で重要なのは、今行われている議論の中ではどれくらいの桁数が必要なのか、どれくらいの精度が求められているのかを判断できるようになることです。
その場に応じて言わば「最適桁数」を瞬時に導き出し、その数字を使って概算ができることの意味は小さくありません。

正解がない問いに対し、少ない知識と推定量を用いて論理的におおよその値を概算することの重要性が説かれています。いわゆるフェルミ推定的な考え方ですね。


フェルミ推定と言えば「シカゴのピアノ調律師の人数は何人か?」という問が有名です。ただ、この問いの目的は正確な値(人数)を出すことではありません。「正確な人数なんて分かるわけがない」と匙を投げるのではなく、だいたいの値を論理的に推定する能力が問われています。


本では推定力の鍛え方についてこう書かれています。繰り返しの訓練で高い推定精度と仮説検証を高めていくということなんですね。

フェルミ推定が上達するコツは練習しかありません。
(中略)ぜひご自分でも「東京の電柱の総数は?」とか「人が一生の間に食べる食事のカロリーの合計は?」などの問題を設定し、どんどん推定してみてください。
そして、もしその推定値が本来の値と大きく違うようなら、仮説を検証してみてください。きっと新しい発見があるはずです。


とある定食屋の一日の売上はどれくらいか?

この本を読んで思い出したのはかつての上司。一緒にランチを食べている時、こんなクイズをよく出してくれました。

「この定食屋の一日の売上はどれくらいだと思う?」
「どのメニューが一番人気か?お客さんの滞在時間はどれくらい?
「バイトの数は適切か?何をしたらこの店はもっと儲かると思う?」

もちろん答えは上司も分かりません。正解の分からない問いに対し、論理的に推定する力を鍛えようとしてくれました。そして、いつも一緒になってああでもないこうでもないと考えてくれたのでした。


俺「父さんはなんで推定が上手なの?」
父「俺には野生の勘が備わっとるからな、ガハハ」

ビール片手の酔っぱらいに尋ねたのがそもそもの間違いだったのでした。父ちゃん、そういう話じゃないってば!

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