見出し画像

【怖噺】解き放ってしまったもの。

どうも、ハヂメだす。
ひょんなことから。先日。
怖い話をするイベントに参戦してきました。

ひゅ~どろろ。
というわけで参加して優勝してきたんですが、「何を話したの?」を聞かれてその都度この話をするのが面倒くさいので文章にまとめました。



注:実体験系&自己責任系の内容になっています。文章化にあたり、だいぶ脚色してありますしオチなんかも変えてあります。
(そもそもフィクションですのでその観点でお楽しみください)

というわけで以下からどうぞ。


正直いってあまり思い出したくないし、
忘れようとしてるから曖昧な記憶のまま話す。もちろん、嘘も少し混じってる。

だから、あまり怖くないかもしれないし
人によっては今日、お風呂やトイレに行くのが嫌になるかもしれない。
いわゆる自己責任でお願いします、だ。

じゃ、話すね。

今から10年前くらい。
僕がまだ大学生だった頃、サークルの先輩から聞いた話だ。
僕らの通ってた大学は山間の辺鄙なところにあった。
街中からバスで一時間半、毎日通っていた。
元々は私立系の女子大学だったのを改築・増築を繰り返して、なかなか広大な敷地で、一寸先は闇ならぬ山だった。
冬の時期になれば、イノシシが出てきたり。
そんな片田舎の大学で、先輩は学園祭の実行委員をしていた。

そこで、学祭の企画としてお化け屋敷があった。そのイベントのときには決まって使う建物があった。そこにまつわる話だ。

うちの大学のキャンパスの隅っこには、使われていない旧女子寮っていうのがあって、そりゃあもうオンボロで。

屋上の方は床が抜けてるって話だったし、一応は通っている電源も接触不良で点かなかったり、全体的にカビ臭いし。ゴキブリの死骸もどこそこ転がってるような廃墟。噂じゃ心霊現象も起きるらしいって、曰く付きの建物だった。

そんな雰囲気のとこでやるお化け屋敷だから
怖いわけで、学内でもガチで「ヤバい」って評判だった。

当時、大学1年生だった先輩は簡単な引き継を受けて、現場担当になった。
本来、そのイベント担当は二年生からっていうのがルールであり、セオリーだったのだけど、運悪く本来担当する先輩(女)がメンタルを崩したとかで、活きのいい先輩が任されることになったらしい。

一度目の現場視察は大層に盛り上がったらしい。怖いもの見たさというか、他の一年生や女の子を驚かす!みたいなそういう悪ふざけな一面もあったそうだ。

学務課から鍵を借りて。
1Fから2F、3Fの各部屋。守衛室、風呂、倉庫。そして屋上へと繋がる扉の鍵、そして分電盤の鍵。鍵を開けて部屋をチェックして回ったそうだ。

結論から言えば、その日は特に何もなかったんだそうだ。強いていえば、ネズミの死骸を踏みつけて靴が汚れたのが最悪だったみたいで、他には何もなかったらしい。

その女子寮には「開かずの間」があるっていう噂があった。201号室、2Fにあがってすぐの、トイレの脇にある部屋だ。もらった鍵束の中に、その部屋の鍵はなかったらしい。

・・・たぶん、引き渡しの時に学生が返しそびれたんだろう。

預かった鍵束をもとに、お化け屋敷を作る日々が始まったそうだ。

各部屋を軽く清掃して、備品をチェックして間取りを元に配置図を決めていく。ロッカーで道を塞ぎ、ダンボールで窓を塞いで、暗闇の空間を作る。100均で買った安っぽいお面に塗料をつけて、それっぽくしてみたり、他の部屋からもってきた鏡を変なところに置いて不気味な感じにしたそうだ。

それと、驚かす担当が隠れられるようにベッドの底あげをしたり、部屋そのものから一時的に出れなくなるようなトラップも仕掛けた。

おおよそ、ルートとしては入り口近くの守衛室を受付にして、階段から上がらせ、2階の各部屋を抜けたのち、非常階段から下りてもらうという設定だった。ちなみに2階の角部屋、そして位置的にはトイレの真ん前にある201号室は開かずの間のままだ。

ある程度、お化け屋敷の体裁も整ってきたあたりから、受付に設定した守衛室の快適な環境作りを目指したんだそうだ。
ロビーのところにあったソファを持ってきたり、各部屋に放置されてたレディコミなんかも調達した。
守衛室から館内無線が流せるようだったので、軽く機材を拭いて音声環境も整えた。

作業も捗るようになったし、設営スタッフの休憩場所としても十分な環境だ。

さて、完成までおよそあと一ヶ月という頃。
季節は夏も終わり、秋に入っていたらしい。

その守衛室の引き出しを漁っていると、
黒地に革製のセカンドバッグが出てきた。
中を漁る。金目のものはなかったが。

この女子寮の部屋の全ての鍵が入っていた。
おそらく管理人が持つ用のものだろう。

201号室の鍵もあった。

開かずの間・・・なるほど。
ただ、鍵が出てこなかったから
そういう風に言われてただけか。

タカをくくっていた。
本当にタカをくくっていたよ、とこの話をするとき、先輩は、少しだけ自嘲気味に笑っていた気がする。

話を戻そう。

鍵を手に入れた先輩は、喜び勇んで二階へ、足を運んだらしい。最初の方は不気味に感じていた女子寮のあのカビ臭い空気も、もう慣れたもんだ。

鍵穴に、青いプラスチックに雑にマジックで書かれた201の鍵を差し込む。

鍵穴に綺麗に嵌った、鍵を回す。

ガチャっという音を立てて鍵が開いた。
この瞬間、開かずの間の鍵が空いたのだ。

立て付けの悪いドアノブを壊さないよう、ゆっくり、おそるおそる引く。

正直なところ、後悔した。
というより今でも後悔しているらしい。

まず滞留していたであろう、匂いが漏れてきた。鼻を突くような刺激臭。
なんだ、この匂いは?
少し獣臭い、これまで他の部屋で感じたことのない匂いで咽そうになる。
そして、いやに生温い風が、ドアの隙間から溢れてくる。

ムリだ、これは。

ドアを完全に開け、部屋にはいる。

窓を開けようと、カーテンを開けた。

窓の張に貼られていたのは御札。

マジか。

これはヤバい、本当にヤバいと思ったが、
背に腹は代えられない。
窓を開ける。

暗がりの部屋に光が差し込む。

よくよく見れば、柱から、
ドアから同じような御札がいたる所に貼られていた。

暗がりの部屋の隅に、ぼんやりと変な輪郭が見える。

認識してはダメなものだ、って
今まで色んな怖い話をネットで見てきた知識なのか、それとも野性的な本能なのか分からないけど。

とにかくそれを見ること無く、部屋を締めた。
鍵も締めて退散したらしい。

一目散に、外に出て一息つく。
気休めのタバコを吸う。

なんだったんだ、本当にそんなオカルトが
ここの女子寮には存在したのか?

・・・いや、まさかね。

なんか少し、ビビってしまう自分が情けなくて
女子寮の外壁に向かって先輩は立ちションをかましてやったらしい。些細な反抗だ。

そんな折、その日手伝いにきていた
別な先輩が声をかけてきたらしい。
ちょっと、いつにない慌てぶりだった。

「Aさんが倒れた!」

急いで駆けつけると、閉めたはずの201号室が
なぜか空いていた。

そして、その前でA先輩は倒れていた。

気絶というより、パニックを起こしていた。

そこからは大変だった。
車を回し、先輩をからって運ぶ。
保健室に運び込んで・・・。

事態が落ち着いたのは夕方だったが、
場所が場所、状況が状況ということで
先生に呼び出しをくらった。

結果だけ話せば、A先輩も無事だった。
ただ、急遽、お祓いを行うことが決まった。

立ち会わせてもらうことは出来なかったけど、
先生が言うには、全部剥がれていた御札を
わざわざ貼り直すことになったらしい。

曰く、山間にあるがゆえに
「良くないもの」が集ってくるんだそうだ。
たまたま、201号室が霊道になっているのか、
怪奇現象の巣窟になっていたらしい。


それと、何故か先輩が御札を剥がした疑いをかけられたらしい。そもそも御札なんて誰も剥がしてないはずなのに、全部剥がれていたらしい。結局、風で剥がれたという都合の良い解釈で事は収まったそうだ。

・・・ともあれ結果的にお化け屋敷は無事、開催することは出来た。

当日、意図していないトラブルや、
何でか、こっちが仕込んでいない風呂場の方から変な声が聞こえるという、よくわからないクレームを受けた。

まぁ・・・その翌年以降はその女子寮で
怪奇現象は起きなかったし、実際のところ僕も担当したけど、大丈夫だった。

ただ、2階のトイレと風呂場は足場が不安定だから、絶対に立ち入り禁止。そして201号室の鍵がどこかに無くなった、ということがその年からの変更点だったくらい。

今はキャンパスも移転したから、
あの女子寮は封鎖されている。

だから、この話はおしまい・・・って
言いたいところなんだけど。

実は去年、その先輩から連絡があった。

僕らの昔、通っていた大学のちょうど真下のあたりにある古びた温泉施設で、同じ現象というか匂いと影を見てしまったらしい。

ちょうどあのとき、感じた匂いも。
そして気配も。全く同じだったらしい。


正直言いたくないんだけど、それに充てられて、一時期、神社に通っていた時期がある・・・というカミングアウトだった。

それがどこってのは聞けてないし教えてあげられないけども。先輩は、あの良くないものを、解き放ってしまったのかもしれない。

・・・いや。
もしかしたら先輩自身に憑いいて。
同じように、少し寂れていて古めかしい、そういう水場の近いとこで姿を表すようになってるかもしれない。


そんな風に言っていた。
だから今でも先輩は、そういうところには立ち入らないようにしているんだそうだ。鏡越しに何かが見えるのが嫌で、あまり鏡を見ないようにしているんだそうだ。

・・・ところで凄く言いにくいんだけどね。

実はこれは先輩から聞いた話ではない。
いやに僕がこの話に詳しいのは、そもそもこれは半分、僕の体験談なのだ。

昨年、ある程度。僕がその変な怪奇現象が落ち着いたあたりで、この話を先輩に話したところ、先輩も出張先で行った別な旅館で同様の現象に遭遇したらしい。おそらく伝播する類のものなのだろう。

だから、今後もし。
この話を見たあと、そういう古めな旅館とかホテルとか、廃墟とかに行くことがあったら、なるべく水場は避けた方がいいかもしれない。

もしかしたら、あなたの後ろにも、それが憑いてくるかもしれないからね。


続きをみるには

残り 0字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?