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「正常」って大変なんですね、という話

「私たちは私たちでしかないので、『わたし』のこと言われても正直困るんですが」

就労移行支援事業所での一幕。
事情を知らない人間が聞けば「お前は一体何を言っているんだ」と確実にツッコミが入るのだろうけど、実際、その通りなのだから仕方がない。

自覚自体はかなり早い時期からあったものの、別段支障がなかったので放置していた解離性障害。まあ、実際は時々死にそうになったこともあるのだけれど、そこは許容範囲内ということで。

数年前、今まで放置していた"それ”が原因で仕事中に致命的なダメージを負ってしまい、やむを得ず治療を受けることを決意したのだけれど…

「それは『わたし』のことなので、私たちに言われても困るんですが。で、取りあえずどうしましょうか?」

日常生活では特に支障はなかったはずなのに、治療に際しては支障が出まくった。と言うか支障しかなかった。

面倒くさいことに当の「本人」が当事者としてではなく「第三者」の立ち位置で「本人」の治療を受けようとするので、まず会話がかみ合わない。ついでに危機感も沸かない。

本人自身、体感含めて「わたし」と「私たち」「それ以外」に乖離しているので、目指すべき「正常な状態」がそもそも想像できない。

傍目からしたら、ちょっとしたホラー映画に見えたかも知れない。

治療後、それなりに「正常な状態」に「回復」したかと思えば、「正常」に戻ったことで今まで「日常」だったフラッシュバックや幻聴他がピタリと止んでしまい、その違和感が原因で再びパニックを起こす羽目に。

何という面倒くささ満載の負のループ。

とはいえ、そのおかげで急激な環境の変化が人間にとってどれだけ大きな負担になるか、身を以て体験できた点は儲けだと思う。
転んでも、ただでは起きぬぞ、ネタ回収。

面談がきっかけであらためて思い出してみたけれど、何というか、「正常」って思っていたより大変なんだなあ、と。他人事のように思った話。

【ゆるゆる募集】
解離性障害=解離性同一性障害と勘違いして「二重人格なんですか?」と突撃してくる人間の対処法。
取りあえず顔面に専門書をぶん投げるくらいしか今のところ思いつかないので。

「知識欲と好奇心の尖兵」の職務を全うするため、いただいたサポートは色んな意味で色んな方面に投資させていただきます。ときどき紅茶と簿記・会計。そこそこ愉快な生態もたまにレベルUP