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「日本国籍」は国籍法に基づく

日本の国籍について、昨年末から何度か日本のメディアで報道されているニュースがあります。たぶん皆さんご存じだと思いますが、京都在住の50代の女性が日本国籍所持の確認を求めて、国を相手どって提訴している件です。

なんでも、そのかたは 2007年にカナダの国籍を取得し、その後、親の介護のために2018年に日本に帰国。現在は日本の大学で教授をしているとか。
ちなみに、毎日新聞の見出しは『「日本人なのに不法滞在と宣告されました」:国籍法問う教授の闘い』。

は? なにそれ。
日本国籍も就労ビザもなしに長期滞在していたら、それは当然、不法滞在とみなされます。


外国籍を取得すると日本国籍を喪失する

SNS上でさんざん叩かれているようなので、私が今さら書き足す事はないですし、私自身、すでに以前、二重国籍についてのブログ記事(下記参照)を書いているので繰り返しになるのですが、当事者が私と同じ年代なので、同じような立場にある者として一言いっておこうと思います。

はっきり言って、その方、無知すぎます。その上、非常識極まりない。

国籍法11条1項、および各国の日本国総領事館のウェブサイトでも、「日本国民が自己の志望により外国の国籍を取得した場合は、外国籍取得の時点で日本の国籍を喪失します。外国籍を取得した日から3か月以内に日本国籍喪失届を提出する必要があります」と明記されています。

ですが、毎日新聞のオンライン記事によると、彼女は日本の大学で働き始めた際、日本国籍を喪失した認識がなかったと言っているとか。

… あのー、大丈夫ですか?
この人は「教授」らしいのですが、思考能力が欠落しています。いったい何を勉強してこられたのでしょう。日本国籍の喪失を認識していなかったということは、おそらく採用時にも外国籍であるという自己申告はしなかったんでしょうね。

でも、これはチェックを怠った雇用者側の大学にも責任の一端があります。たぶん、(人種的にみて)日本人だから必要ないと思ったのでしょうが、国際化が叫ばれて久しいこのご時世に、時代遅れなのはむしろその大学のシステムのほうです。そんな大学は、海外からの人材を雇う能力はないので、大学名をさらして欲しいくらいです。

この女性教授の言い分には一貫性がない

当の本人は、「行政のちぐはぐな対応に翻弄されている」と言っていますが、彼女の言い分のほうが一貫性に欠けています。

京都新聞によると、2018年の段階で、日本の永住資格を取得しようしたとあります。ということは、日本国籍をもっていないことは理解していたはずです。なのに、雇用者の大学にはそれを言わなかったんでしょうか。また、カナダのパスポートには「日本国籍抹消」と記されているとのこと。ではなぜ、日本国籍喪失の事実に気づかなかったのか。

察するに、横着かましていたんでしょう。ようは国籍に関わる法律の認識が甘い。こういう状況において、普通の頭があれば、とるべき手段は:

  1. ただちに就労ビザの手続きを取って外国人労働者として勤務し、時期が来たら永住権を申請・取得して、永住資格のある外国籍者として日本で暮らす。

  2. 日本への帰化申請をし、カナダ国籍を放棄する。

  3. 日本国籍はあきらめてカナダに帰る。

このいずれかで解決すると思うのですが、国を相手取って裁判をおこすって、一体どういう了見なんでしょう。もはや居直り強盗と同じレベルの発想です。自己本位にもほどがあります。自分の思い込みで国籍法に融通が利くとでも思っているんでしょうか。

二重国籍が許されていない以上、それに従うべき

以前にも書いたのですが、関わる国それぞれの法律を遵守してこそ国際人です。日本は二重国籍を許していません。好む好まざるに関わらず、法律でそう決められています。決められている以上、それに従うべきです。

私はイギリス国籍ですが、日本国籍を喪失することに伴うリスクや不利な点を重々承知の上で、かなりの覚悟でイギリスに帰化しました。

さらに付け加えると、海外在住の日本人の知人・友人の中には、英国籍を取ったけれども望郷の思いが強まって日本での就職を探したけれども見つからず(それも、能力が足りないのではなくオーバー・クオリファイドで敬遠されて)日本への帰国をあきらめた人もいるし、親の介護のためにせっかく取得した米国籍を捨てた人もいます。

ところが、この女性教授は、自分の無責任かつ軽率な判断を棚に上げて、いいとこ取りをしようとしているようにしか見えません。

国際社会における「国籍」とは、それぞれの国家が国籍法によって条件を規定するものです。感情論や人情論ではなく、法律にのっとった公平な判決がされることを望みます。

過去のブログ記事はこちら。
・葉隠 UK (2016年9月21日):「二重国籍の是非

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