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ハゲの縄張り意識

洗濯物を取り込みながら「猫居ないかなぁ」なんて外を眺めていると

“ガラガラッ“

玄関の引き戸の音がした。

2軒隣の向かいの家から人が出て来た。面識はないがその家の40代と思われる息子さんのようだ。不規則な仕事をされているらしくあまり普段から見かけることはない。玄関から出て来て車に乗り込む前にふと立ち止まり自分の足元を見ていた。

その頭…
頭頂部に頭髪がない…

ハゲてるじゃねーか!

ご存知の通り、私はハゲている。人のハゲをとやかく言う資格はない。もちろん「あのハゲ挨拶もない」などと思うわけでもない。

彼も彼なりにハゲていることで背負うリスクやツライ思い(なんとなくのヤツな)をしていることもあるんじゃないか?


家では男性は私ひとりである。ハゲの分野ではぶっちぎりで優勝である。

ところがだ、こんな近くにハゲがいる!

誰に断ってハゲているんだ!と。

男は外に出れば7人のハゲと対峙しなければならない。近所のハゲごときに心を乱されるわけにはいかないんだ。

ハゲに対してハゲている俺がそんな風に思うのはおかしいよなぁ。どちらかと言えば「お互い大変ですよねぇ」的な歩み寄りを持ち、ハゲていない男性をカルトっぽく呪うほうが自然な流れだ。

でもそれではハゲている自分を異端と位置づけてしまうことであるし、実に差別的だ。

イカん!これではイカん!

仮に「お互い大変ですよねぇ」みたいな擦り寄りも相手から見れば意味わからんうえに、ただただ気持ち悪いだろう。

この場で俺にできるのはこれだけ…

「こんにちは〜」

ありきたりだ…

この声掛けの前にどれだけの葛藤があったのか彼も知らないだろう。でも良いのだ。俺は彼の背負っているであろう辛さを知っているのだから。同じように彼も俺の辛さを知ってくれていると思いたい。


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