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On the border〜知らない世界に会いに行く〜藤田雄気篇

作中に登場する職業の方に実際に会いに行き、お仕事の実態をお伺いする「On the border~知らない世界に会いに行く〜」、今回は作中で紫門商事社長、紫門源一郎を演じる藤田雄気が、商社 にお勤めの営業マンさんにお話を伺ってまいりました。

「商事」。目にも耳にもするけれど、その言葉の指す範囲は本当に幅広いものがあります。作中の紫門さん、飲み歩いているばっかりみたいな描かれ方ですが、お話を伺ってみると意外な一面が見えてきました。この人が社長で、萩島は救われているのかもしれません!!



お話を伺った方

苅野さん(仮名)

現在は製造業の商社に営業職としてお勤め。
知人の知人からご紹介いただきました。ありがとうございます!




「商事」とはそもそもなんですか?

ハマカワ 遅いお時間にお付き合いくださいましてありがとうございます。早速なんですが、苅野さんは前職で「商事」という看板の企業さん、今は製造業系の商社でお仕事されていらっしゃるということですが、具体的にどんなお仕事をしているかを、差し支えない範囲で構いませんので、お教えいただけますでしょうか。
苅野さん 僕、この企画のスナックのママさんの記事を読ませていただいたんですけど、これ多分、商事、商社ってそもそもざっくりどういうものか、みたいなところからお話しした方がいいのかな?と思ったんですが、どうでしょう?
 あ、読んでいただけたんですか!ご配慮ありがとうございます・・・!そうですね、そのあたりのこと、ご教示いただけるとすごく嬉しいです。
苅野さん えっと、基本的には、モノを右から左にパスする仕事は全部「商社」ってことになるかと考えています、いろんな解釈があるかとは思いますが。今勤めている会社も製造業系の商社ですし、前の会社も不動産の取扱いや、他の事業もありましたが、広く商売ごとをする会社につきがちな名前、ってことになるかと思います、商材が何になるかの違いで。皆さんの近くで言えば、農作物をまとめて買い上げて消費者のところに届けている農協なんかも一種の商社の仕事ということになりますね。
藤田 例えばなんですが、その、受け渡す商材が、モノではなく人材、人材の斡旋ですね、そういったマンパワーみたいなものを扱っている場合でも、パイプを作るという意味では商社の仕事ということで間違いないでしょうか。
苅野さん あ、全然ありますね。人材派遣業とか、そういう商社もありますよ。いろんな意味で商材、ですね。
 苅野さんはそう言った、人材、人を扱う方面でのお仕事はされてらしたんでしょうか。
苅野さん えー、なくはなかったんですが、なんというか商社ってこれは業態問わずそうかなと思うんですが、人を扱う云々以前のところでまず、人間力を使って仕事をしていくものである、というか。モノを動かしていく仕事ではあるんですが、ひとの魅力、人間力が問われる場面ってすごくあって。例えば今の会社の業務内容で言うと、お客さんから仕事をもらって、協力企業さん、サプライヤーさんと言いますけど、そういうところに持ってって作ってもらうということになるんですね。全国何百社ってある中で、これはここの会社さんが得意な技術だからここにお願いしようとか、向け先が北関東だからここに頼もうとか、そういうのを各社さんにネゴしてお願いしてってなるんですが、金額、納期、品質、すり合わせる必要が出てくるわけですよね、「うちの商品なんで頑張っていただけますと」ってお願いすると言いますか。そういった時にはやっぱり単純に、人として気に入ってもらえてた方がいいわけです。人間力がモノを言うなぁ、と感じる場面というのはかなりありますね。
 営業職の方とかだとそれこそ、気に入ってもらうためのご接待の席があったりとか、色々なところに面通しをして、というのが大事になってくる印象はありますよね。
苅野さん はい、めちゃくちゃその通りですね笑。ゴルフ行く、釣り行く、お酒飲む、東京出てこられるときには接待する。結構ウェットな、というか密な人間臭いお付き合いをする場面は多いです。
 作中で彼が演じる役というのが、商社の、地元で三代100年続いてるみたいな会社の社長なんです。
苅野さん ああ、それはもう、手を替え品を替えいろんな商材の変遷があったと思いますよ。
 そうですよね、そうですよね。
 で、現状基幹事業としてやっているのが、外国人労働者の斡旋とそこにまつわるサポートのもろもろ、という感じなんですね。そういう会社さんは耳にされたことありますでしょうか。
苅野さん ありますあります。ブローカーさん的に、フィリピンとかベトナムとかに行って、入ってくるときは研修生って形になると思うんですが、現地の日本語学校や職業訓練校みたいなところに提携して、卒業生、みたいな子をスカウトしてくるとかですかね。
 なるほど、提携!
苅野さん ラオスとか、タイとか。マージンもらって上がり出してる感じじゃないでしょうか。
 そこ、すごく気になります。人材の斡旋で、どういった流れで利益を得ていくのか、という仕組み。ちょっと調べても微妙に分かりづらくてですね。
苅野さん 基本的にはマージンだと思いますよ。その斡旋した人の年収の何%、ってのを設定しておいて、っていう。
 働いた外国人の方の収入を基準にしたマージンとしてもらう、という解釈で間違い無いですか?
苅野さん そうですね。
 ・・・搾取してるかな?紫門さん?
 いやいやいや!笑
苅野さん 笑。まぁ、基本的にはフェアと思いますよ。会社さんにはよるかとは思いますが。
 グレーな会社さんもなくはない、んでしょうか。
苅野さん んー、捉え方次第だと思います。基本的に人材派遣業って、そういうものですし。例えば転職サイトとかでもですけど、年収の何パーセント、っていう取り方にはなってくるんですよね。そう考えると別に、イリーガルな、法外な仕事ってわけじゃ無いと思います。そもそも日本に来たい、っていう人を連れてきてるわけですしポジティブな話ではあるかと。問題があるとしたら、そもそもの賃金、金額が安い、ってことじゃないでしょうか。
 そもそもの、額面が。
苅野さん 成長著しい東南アジア諸国もありますし、日本もだんだん選ばれなくなってきてはいますよね。そういう中で、露骨に悪いことしてたら淘汰されて人も何も集められなくなってはいくと思いますよ。
 例えば月給、時給、みたいな、いくらで募集してますっていう本当の額面の部分が実際の労働者には見えづらいみたいなことがあるんでしょうか。
苅野さん というよりは、シンプルにめちゃくちゃ安いです、外国人研修生。技能実習生の場合、2021年の平均給与が16万円なんです。
 え!?安い・・・それは・・・
 人材を斡旋して連れてくる、っていうの、その向こうの国を愛している人からしたら、連れてきてそんな安い給料で働かせて、っていう点で怒られても仕方ないというか、そういう見え方にもなっちゃいますよね、きっと。
苅野さん ああ・・・難しいですね・・・うーん、その見方はもちろんなくはないですけれども、そんなに矮小化して考えられないところもありまして・・・技能実習生って、等級があって、勤続していくと等級が上がるんですね。そうなると給与も増えるんです。基本的に何十年続いてる会社さんなら、システム的にはその辺りの対応もしっかりしてるはずなので、そんなにいい加減なことはしてないはず、とは思いますよ。
 作中での彼のパーソナリティとしての描かれ方がですね、かなりこう、おちゃらけたおじさまみたいな面が多く描かれていまして。彼の仕事がしっかりしているところを読み取ることがちょっと難しい、と言いますか。地元で長く続いてる大きめの会社の社長さんなのでしっかりやってないわけはないんですが。
苅野さん えっと、三代続いてるんですよね?三代目ってことですか?
 そうです、三代目です。
苅野さん 外国人技能実習って93年から始まってるんです。その時すぐ、じゃなくて例えば2000年あたりからその事業、って考えると、先代が始めた事業なのかな、と思ったんですが。
 僕、最初は、自分の役の人が始めた事業かな、と思ったんですが、色々脚本を紐解いて考えてみると、先代が始めたものに、僕が発案して「こんなことできるんじゃないの」と引き継いで拡張というか、展開していったんじゃないかって考えるようになってきたんです。時代時代の展開でちょっと変えたり、色々対応してるのかな、って方が強くなってきて。
苅野さん 田舎の商社、っていうことで考えると、品目は色々だと思うんですが商材を広げていくことは必須ではあると思うんですね。その中で三代目まで持ってるというのは割と名家だとは思うんです。ロータリークラブとか入ってるでしょうし、商工会とか、J C(青年会議所)とか組織的にちゃんとしたところに入ったりして、しっかりやってるんじゃないでしょうか。
 ガッツリ確約されたパイプとか、実績とか、認められた何かがないと、そういうものがないと、続けていくこと自体難しそうですよね。
苅野さん 全くその通りだと思います。完全に外国人斡旋だけに全振りして食えてるかとかはわからないですけど、まあそういうところもあるか、とは思います。その前はなんでしょう、何やってたんでしょうね。
 ふじくん、なんかその辺イメージありました?
 うーん・・・なんだろうなぁ?家具とか、何か物として大きい商品を扱ってたんじゃないか、とか考えたことはあったんですが。うーん。
苅野さん 聞いてて思ったのはですね、時代時代のアンテナがそれなりに立ってるようであれば、今なら、介護とか。
 あぁー!
苅野さん バブルの時なら観光に手を出してるとか。マージンで食ってると考えるとそういうのはありそうだなと思います。その時々の、お金になるもの、あの、往年で言うなら、ナタデココとか?
藤・ハ あぁーー!!!
苅野さん プランテーションと契約して輸入して、みたいな。
 缶詰とかの表示見ると「輸入元・なんとか商事」みたいなのありますよね。
苅野さん はい、そういうやつですね。だからそういう付き合いがあった流れで、現地の人とコネクションを持って、あっ日本に働きに来たいとかあるんだ、ってなって、仕組み作ってピックアップするようになった、とかっていうストーリーはあり得ると思いますよ。
 先見の明というか、流行りに乗って仕事を、っていうか。目の付け所が人と違う、みたいなところがありそうな感じは確かにあります・・・あってほしい。笑
 性格的にお酒飲むのが好きで陽気な社長さんなので、流行り物や次に来る波を見つけてくるのはめちゃくちゃ早くて上手、ってのはあるかもしれませんね。そういったところで街の経済を支えている、というか。
 ありますねー、ありそうです。
苅野さん お酒飲む人、っていう設定なんですね?
 はい!
苅野さん お酒、めちゃくちゃ飲みますよ。お酒大事です。僕、今年の7割は出張なんですけど、
 え、え!?全、日付の、7割ですか?
苅野さん あ、そうです、7割ホテルに住んでるんですけど、そのうちの五回に三回は飲んでるんで。とんでもない日数飲んでると思います。
 わぁぁ・・・体に悪そうです・・・
苅野さん あ、めちゃくちゃ悪いですよ。健康診断怖いです。
 出張先のお願いされてるところとの、基本、接待、ということなんですよね?
苅野さん そうですね。
 どういったところに行かれるんですか?
苅野さん いや、普通ですよ、一次会ご飯で、二次会キャバクラ、三次会キャバクラ。平日はゴルフ行ったり。
 前の商事さんの時にもそんな感じでしたか?
苅野さん いや、前はそんな感じじゃなかったんです。今の業界の雰囲気ですね。お酒の席で、人となりわかってもらって、仕事受けるよとか、こんなお土産持ってきました、とか。こちらから「金額お勉強お願いいただけると」っていうこともありますし。ウェットなお付き合いですね。
 お酒が飲めると営業マンとして強い、みたいなのって昭和のトラディショナルな雰囲気ではよくある話だったかとは思うんですが、今でも有効なんですか?
苅野さん 分野によっては、ですね。J T C、ってよく揶揄されるジャパニーズトラディショナルカンパニー、みたいな風潮のアレだと正直ありますね。
 J T C。どういったものを指していう言葉なんでしょうか。
苅野さん いわゆる旧態依然とした日本の社風の会社、ってことですね。総称です。そういうウェットなところで作っている人間関係が仕事や経済を回している、っていうのはありますから。
 一概に否定できるようなものでもないんでしょうしね。
 ゴルフとかでもね、コンペに顔出して人脈作って、全然知らない会社の人と繋がって仕事に結びつけるためだけに行く、っていうの聞きますよね。
苅野さん ゴルフって何がすごいって、基本的にパーティとかって、一人と話せる時間ってそんな長くないじゃないですか。でもゴルフだといっぺんに3人に営業できて、かつ最低4時間くらいは絶対話すんですよ。情報交換とネットワークづくり。そこが強いですよね。
 あの、お身体は本当にお気をつけてお過ごしくださいね・・・
 本当に。
 あの、その状態で行くキャバとかって、楽しめるものなんでしょうか・・・?
苅野さん まぁ、商談をいい方に持っていくために行ってるので、なんというか、嬢は、戦友というか。察しがいいと接待相手の社長さんをちゃんと持ち上げてくれたりとか。戦場です。
 嬢は戦友。書きます。
苅野さん なんか、何が楽しくてやってるんだろう、って我に返ることはあります。笑

激務!商社の営業マンの一日

 前職の商社さんを退職されたきっかけとかは、おありだったんでしょうか。
苅野さん 前職は本当に、専門商社みたいな感じだったんですね。汎用性が全くないというか。なので、もう少し自分のキャリアに広がりがあったら、と思うようになりまして。違う分野でも仕事はできるんじゃないだろうか、と。そんなことを考えて転職しました。
 転職した結果、今の方がいい人生だなっていうふうに感じられますか?
苅野さん それはそうですね。
ハ あぁ、よかった!それは何よりです。
苅野さん うち、ベンチャーの割に人数結構居て。自分なんか勝負にならないんじゃないかって思いながらの入社だったんですが、だましだましなんとかやってます(苦笑)
 ちなみに、出張がすごく多いとのことなので、平均を取るのが難しいかもしれませんが、1日のタイムスケジュール的なことを少し伺ってもよろしいでしょうか。
苅野さん 主に、出社してる時は、9時始業、の前に普通にデスクについて、午前中に1、2、・・・6件会議が入り。
 午前中だけで、ですか!?
苅野さん はい、9時から30分刻みで6件。で、ランチミーティングを挟んで、午後はその週やその次の週のアポがあるんで、面会とか打ち合わせとかそういうのですね、入ってきます。6件とか入りますね。で夕方以降はチーミングっていって、社内メンバーと飲みながら喋る、みたいなやつをやってますね。
 激務・・・!!
苅野さん 出張が多いので、逆に社にいる日は「こいつ捕まえて確認とか話とかしなきゃ」ってなるんですよね。
 なるほどなるほど・・・!そうですかー・・・
苅野さん 出張がある日は朝イチの新幹線で移動して、打ち合わせ一件入れて、移動して、別の会社さんと打ち合わせ、面通し、ってやって、夜はそのまま飲みに突入、って感じです。
 辛い・・・え、辛くないですか?
苅野さん あ、辛いですよ?めちゃくちゃ辛いですよ?
 うわぁぁ、なんか今日こんな深いお時間に設定してしまって申し訳ありません・・・
苅野さん いえ、23時始まりのzoomなんてザラですから。
 ちなみに、平均の睡眠時間って、どのくらい取れてますか・・・?
苅野さん 大体4時間くらいだと思います。
 ええ・・・!あの、ありがとうございます・・・
 今伺ったスケジュール感だと、その4時間以外はずっと動いていらっしゃる感じですよね?
苅野さん そうですね。結局なんかやってるってなります。今僕の担当してるところですと、10プロジェクト同時に動いてるんです。人数的には30人くらいのメンバーをサポートしてる感じになりますので、どうしてもそういう仕事の仕方になってきますね。
 商社、商事、みたいな会社って、地方で安定しているところを除けば、人の出入りというか、流動的だったりするんじゃないかと思うんですが。
苅野さん そうですね、会社にはよるとは思いますが、うちは結構出入り激しいです。
 ふじくん、紫門商事はどうでしょう、そこそこ人は安定してるイメージですか?
 そうですね、どちらかというとそこまで入れ替わり早くないんじゃないかと思ってます。転職ってなっても「地元で」って考えたらそこまで選択肢はないだろうし、全く別の仕事に転職するようになるんじゃないかと。
苅野さん うちの場合は、ベンチャーだから入れ替わり早いっていうのは正直あると思います。商材がなんだったとしても、扱ってる時間が長くなればなるほど専門性って身につくじゃないですか。なので長く在籍するほど専門性の高い人間になっていきますし、逆にいうと潰しが効かなくなっていきますよね。そういう意味で言うと、業界全体の中で考えたらうちはまだ定着率は高い方だと思います。影響してるのはベンチャーだから、ってとこな気がしています。
 それこそ以前のお勤め先では、事業所内での出入りというか、人材の出入りが頻繁ではなかった、ということなんでしょうか。
苅野さん あ、もう全然その通りです。全くでした。だから逆に、不動産なら不動産だけを扱っていると自分がそれしかできない人になっちゃうな、というのがすごくあったんですね。であれば商材を変えて、全く別のドメインでワークすることができれば、と思ったんです。そこでうまいこと仕事できれば、その事実が証明できれば、そういう課題解決を図れる人間であるという履歴書を自分で作ることができるかな、と。
 あとは上昇志向、と言いますか、もっともっと、と高みを目指していこうというキャリア形成を考える人たちは、そういう転職も視野に入れた動きをすることが多くなりそうな気はします。
苅野さん どっちかだと思うんです。そういうキャリアの積み上げを個々に目指す人もいるだろうし、商材ってどれも奥深いので、逆に掘っていく、潜っていく方に行く人もいるというか。今同僚にステンレスを10年くらいやってる人がいるんですが、その人とかはですね、ステンレスのスプーンを舐めたら、ニッケルの配合量がわかるって言ってるんです笑
 あの、えっと、お言葉ですが、変態ですね!
苅野さん 変態です、いっちゃってるパターンです笑。でもそのくらい詳しく、一つのことに深くなることもできる、っていうこともあるよっていうお話ですね。

お花畑じゃいられない

 作中の話からの質問になるんですが、受け入れた外国人が日本国内で不祥事と言いますか、そういうトラブルを起こした時は、仲介、斡旋に入った商事さんがケツ持ち、みたいになりますか?
苅野さん なるんじゃないでしょうか。クレームの持っていく先が、そこしかないですよね。派遣会社と構造は同じだと思いますんで。
 ただお相手が海外で、ビザだのなんだの絡んでくる、ってことですよね。
苅野さん ビザ、超めんどくさいですよ。前の会社で一回あったんですけど、こっちで出来ることってほとんどなくて、でも書かなきゃいけないものはたくさんあって。それをE M Sで送って向こうの日本大使館に本人に個人で持ってってもらって、ってしないといけなくって、政情が安定してる国ならいいんですけど、紛争気味の地域とかだと出国の期限にどうしても間に合わないとかそもそも届いてないとか。郵便みたいなインフラが機能しない状態の国だと正直かなり手を焼くという側面はあります。
 紫門さんもそういうことやってるのかもね、ちゃらんぽらんに遊んでるだけじゃなくて。
 でしょうねぇ。一言も書かれてないから、どう出していけるかは謎ですけど。
 彼の役はちょっといじられ役、みたいなところがあるんですが、いじられてもいちいち怒らないんですよ。目くじらを立てないと言いますか。いじってくれていいよ、ってしてるけど、水面下ではびっくりするような仕事、してるのかもね。
藤 そうですねぇ、そういう人の方がおおらかで懐が深い、みたいなところありますよね。騒いでる時は、今はこういう時間だから、可愛がってねー、っていう。
 「搾取ってのは人聞きが悪いなぁ」っていうセリフ、深みが増しそう。
 そうですね。ありがたい。
苅野さん 基本、先方も来たいって言ってる人たちなので。ミスマッチがある可能性も否定はしませんが、一義的に日本人側の受け入れ担当している人たちだけのせいってわけはないとは思いますけどね。
 首に縄つけて引っ張ってきてるわけじゃないですものね。
苅野さん 経済、ですよね。ちょっとシビアな話ですけど、向こうもそろばん弾いた上で日本に来ているのは間違いないんで。エモーショナルな部分で「搾取」みたいな言葉が出てくるのはわかるんですが、仕事として成り立っているものではありますし、望んでも来られない人もいるわけですから。経済の話だと思います。
 そうか、その大義を背負っておけばいいんだな。
苅野さん 何か、迷いが・・・?
 いや、最初にハマカワさんがおっしゃいましたけど、やっぱり僕には「商社」というもののイメージがつきづらいというか、イメージは漠然とあっても、実態の話を聞いたことがほぼないっていう。でもそこで、誰かの要望を叶えている、っていうことや、経済を回しているんだ、っていう「背負っている」ってところを持っておけばいいんだな、って思ったんです。・・・背負えるのかな、僕の小さな背中に。笑
 紫門さんも同じ面積の背中を持ってるよ。大丈夫だよ笑
苅野さん 聞いてて思いましたけど、会社が存続する、成り立たせる、って考えた時、三代目だったら「自分の代で潰すわけにはいかない」みたいなプレッシャーすごくあると思うんですね。そうなった時、経済の原則みたいなものが先に立つというのは、全く違和感のないことだと思いますよ。お花畑ではやって行かれないと思います。
 最後の質問をさせていただきます。今回商社、商事、の社長というのを彼が演じるわけですが、ステレオタイプな、固定観念でこう演じるのは違うと思うよ、というようなことがあれば教えていただきたいです。
藤 「ガッハッハ」的なイメージは正直、あるはあるんですよ。
苅野さん そうですねぇ・・・地方の社長さんって結構豪快、というのは確かにあります。でも豪快な反面、腹が座っている。例えば交渉ごとの場面で「よしじゃあ今回は200万円お値引きしましょ」とか。いろんな山を越えてる分バンとそういうこと言えちゃうんです。でもその分どこで回収するとかも考えてるんですよ。そういうの、僕たちも聞いてたらわかるんで、今回の分どこかでお返ししなきゃな、ってなるじゃないですか。そこまで多分計算されてますよね。豪快さの裏にしっかり現実的な面がある、と思います。
 最後は人間力、なんですね。
苅野さん 本当にそうです。人間力。この人の周りにひとが集まるんだな、と納得させられるものがあります。
 マッチョで、エモで、エコノミック。
苅野さん そうです。フル稼働ですよ!





このインタビュー企画中、最も「経済」、そして「日本」を感じるお話だったな、と感じました。
エモーショナルな面を疎かには出来ず、かといって現実を見なければ経済は成り立たない。搾取と誰かが言うその現象は、別の面から光を当てれば誰かの願いが叶った姿でもある。清濁合わせ飲み、豪快に笑う社長さんの姿を想像する時、もしかしたら紫門さんが社長であることで萩島は救われている面があったりするのかもしれないな、そんなふうに思いました。

苅野さん、激務の中、お時間を作っていただき本当にありがとうございました!


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