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On the border〜知らない世界に会いにいく〜鍛治本大樹篇


作中に登場する職業の方に実際に会いに行き、お仕事の実態をお伺いする「On the border~知らない世界に会いに行く〜」、今回は作中で農協勤務の大崎龍介を演じる鍛治本大樹が、J A東京あおばさんにお邪魔してまいりました!

東京は練馬で行われる農業のお仕事のこと、たくさん伺ってきましたよ。これを読むと、東京の野菜が食べたくなるかも!




お話を伺った方

岩井則幸さん(37)
J A東京あおばセンター長さん。
練馬地区アグリセンターという施設の、一番上席の方でいらっしゃいます。




「アグリセンター」、お邪魔します!


ハマカワ この、アグリセンターというところは、どういった組織なんでしょうか。
岩井さん 農協っていうのがですね、貯金の信用部門というのと、保険の共済、それからアグリセンターが経済部門と言われてるんですけども、その三つの部門で成り立ってまして、そのうちの「営農経済」、主に農家さんのお相手ですね。耕作されてる方に定期的に訪問させていただいて、肥料・農薬の指導だったり、今流行ってる病気や虫についての情報を交換したりですとか。あとは、顔つなぎですかね。農協って、農業者の方たちの組合ということになるので、原則、 農家の人でないと入れないということになるんですね。
 農協さんがお仕事で営業先、取引先としてお相手なさるのは、全員農家の方、ということになるんですね。
岩井さん 基本的にはそうですね。それが信用・共済の方になってくると准組合員さんと呼ばれる人とか、一般の方とも取引することはあるんですけども。
 一般の方をお相手にする場合は金融機関としての性格が強くなる、ということですね。
岩井さん そうですね。たまーに、家庭菜園やってる方が相談に、肥料とか虫とかのことでご相談に来られることとか、農薬を買いにこられることとかはありますけどね。
 先ほど通していただいた1階の小売フロアにもちょっと、プロ用途っぽい肥料とか置いていらっしゃいましたけど、ああいうのは一般の方も手に取れるように、ということなんですね。
岩井さん はい。うちのアグリセンターはちょっと特殊で、地場農産物を販売も・・・直売所っていうわけではないんですが、一応やってまして。一般の消費者の方も買いにこられるんですよ。
鍛治本(以下、鍛) 僕、出身が宮崎なんですけど、一番家から近いスーパーがAコープだったんですよ。
岩井さん あぁ!Aコープ!
 さっき下でぐるっと見させていただいて、Aコープの商品、ひっさしぶりに見たな!って。
岩井さん Aコープの商品はね、Aコープにしかないですもんね。
 そうですよねー。
 ごめんなさい私地元にAコープってなくって・・・Aコープってなに?
 あの、J Aさんの、スーパー。
岩井さん 国産のものを使用した商品しかない、っていう感じの、です。
 Aコープさんを運営してる会社がJ Aさん、ってことなんでしょうか。
岩井さん 生協みたいな感じですね。コープ生協ってあるじゃないですか。あれに「アグリ」のAがついただけです。
 東京でAコープ見たことなかったんで、ちょっと「あっ!」て。久しぶりに見て感動しちゃいましたね。
 地方によくある、って感じなんでしょうか。私は出身、横浜なんですが・・・
岩井さん あ、絶対無いです。笑
 絶対無いんですね笑
岩井さん 地方っていうか、その地域に組合員さんが多ければ、あるかもしれない、って感じですかね。
 組合員さんっていうのは、お相手していらっしゃる農家さんを指すんでしょうか。
岩井さん そうですね。うちの農協はそんなに条件は厳しくなくて、年間に30日以上何かを育てていれば組合員になれるんですね。ただよその農協さんとかだと畑を保有している面積とかが要件に入ってくることも多いです。
 その条件は地方によって変わるんですか?
岩井さん そうですそうです。その土地の農業の実態に合わせて調整してますね。そもそも農家って誰でもなれるものではない・・・農地って基本的に、だれでも持てるものでは無いので。新たに農地を取得するってことはほぼ出来ないです。
ハ 継いで行くしかない、ってことでしょうか。
岩井さん そうですね、最近だと会社が入ることもあります。会社になって、どこかから、貸借、っていう形が多いかもしれないですね。畑借りて、農業やる、と。そこで認められれば、それぞれの市町村に農業委員会っていうのがあるんですが、そこで審査があるんですね。農家さんが構成してる、農協とはまた全然別なんですが、行政の管轄ですね、区役所とかの中にあるんですが、畑を宅地にしたいよとかあると、そこに申請して、1年くらい待つことになるんです。
 用途を変更するのに、1年。
岩井さん 宅地から農地は簡単なんですけどね。
 誰かから農地を引き継ぐ、みたいなことも、審査が通れば可能ってことになるんですか?
岩井さん そうですね、多分そうだったと思います。
 名義変更、みたいなことでしょうか。
岩井さん ええ。あとは相続とか、遠い親戚の人から引き継ぐ、という場合なんかもありますね。
鍛 あの、岩井さんは、ずっと、J Aにいらっしゃるんですか?
岩井さん あ、えっとですね、私、最初は違ったんですよ。前職は埼玉のJ Aなんですが、その前は、フットサル場にいました。
鍛・ハ ええ!?
 フットサル場・・・え、プレイヤーとしてですか!?
岩井さん えっと、一応そうでした。あとは審判資格持ってたので、大会やる時とかに審判やったりとか。
 今はやられてないんですか?
岩井さん 今はもうやってないですね。
鍛 学校卒業されたあと、すぐそのフットサル場に行かれたんですか?
岩井さん はい。私、体育系の短大通ってて、そこで資格取って、フットサル場行ったんですけど、なんですけどなんというか・・・将来に不安を感じまして笑
鍛・ハ あはははは!!
岩井さん 「俺このままでいいのかなぁ」って。で、1年で辞めて、フリーターやって、地元の農協に入ったんですよ。前職の埼玉の農協で9年勤めて、そこから東京あおばに転職しました。
鍛 J AとJ A、地域が違うと、なんというか、交流はないものなんですか?
岩井さん ないですね、完全に独立した別企業って感じです。J AからJ Aであっても「転職」って感じです、完全に。前のところは田んぼばっかりだったんですが、こちらには田んぼもないですし。
 都内に水田はなかなかないですよね。
岩井さん そうですね、やってる農業がもう全然違います。地方はもう、面積だけは、腐るほどあるもので笑
鍛・ハ 笑!!
鍛 家より畑の方が広い、みたいな。
岩井さん そうですねー。だから効率を求めるんですよ。一面キャベツだけにする、とか、1品目に特化した農家さんが多いんですが、東京は、少量多品目。少しの量を、たくさんの種類作るんですね。売り込む必要があんまりないんですよ。庭先で売ってるだけでそこそこ売れるんですね、近隣に消費者ばっかりですから。スーパーさんも喉から手が出るほど欲しいんですよ。
 地産地消って謳えますものね。
岩井さん そうです。そういう意味で、恵まれた環境でできるのが都市農業の利点です。

東京のお野菜、ほんとうは

鍛 あおばさんって、担当していらっしゃるのが豊島区、練馬区と、あと・・・
岩井さん 練馬、板橋、北区、あと豊島区ですね。豊島区は農地は多分ゼロなんですが。実際店舗があるのは練馬と板橋だけになります。
 それで、全体で何人、何組、って言うんでしょうかね、どのくらい組合の方がいらっしゃるんですか?
岩井さん えーと練馬区で、400ぐらい。
 400、世帯、みたいな数え方で、ですか?
岩井さん そうですね。で、農業従事者の方が800から900人くらいだったかと思います。
 専業農家さんはいらっしゃらないですよね、流石に。
岩井さん 一人だけ・・・
 あ、でもいらっしゃるんですね!!すごい。
岩井さん 都市部で農業やってらっしゃる方って、不動産ありきなんですよ。農業で利益上がらなくてもいいよ、って言う。その分、畑の面積は限られてるんで、ものすごく良い野菜作ってらっしゃるんです。
 なるほど・・・。
岩井さん 地方になると、管理する面積が広いじゃないですか。こっちは産地の面積が100分の1とかになってくるんで、一人でも管理できる、十分に手をかけられるんですね。品質が高いんです。
ハ そうなんですね!ちょっと印象が違いました、東京産のメリットってことなんですね・・・あの、東京産ていうと・・・
岩井さん あんまりいい印象ないですよね?
 ごめんなさい!
一同 笑
 「排気ガス浴びて育ったんじゃないの!?」みたいなね・・・笑
岩井さん そうそうそう笑。「東京に農地なんてあんの?」とか「東京の野菜なんてどうせ美味しくないでしょ?」みたいなイメージあると思うんですけど、私はそうは思わなくて。東京だからこそできる農業、ってあるんですよ。
 目から鱗というか、考えてもみなかったです。
 うんうん。
岩井さん あとは結構、環境に優しい農業をやってまして。農薬使いづらいんですよ、住民の方々の目があるんで。文句すぐ出ちゃいますんで。あと、地方の産地だとトラックに積んで、高速とか下道とか長時間載せてくることになりますけど、排気ガスすごく出るじゃないですか。東京だとそれがないです。
鍛 ああ、なるほどー!
岩井さん うちは畑から直送なんで。出荷場とかに行かないんで、採って、自宅で軽く調整したらもう売り場に行きますんで。あと、市場に出てる野菜とか果物って、一週間後を見据えて収穫するんですね。一番美味しい時季に採っちゃうと日持ちしないんで。だから本当はもう少し栄養を吸わせたいなって状態でも、まだ青かったり白かったりしてても、収穫せざるを得ないってことになるんですよ。でも東京はそのタイムロスがほぼないんです。
ハ なるほど!もう栄養吸えるだけ吸って、良い状態で。
岩井さん そうです。本当に今が一番美味しいって状態で収穫できるんですよ。
鍛 
そうなんですねー。東京ならではですね。
岩井さん 本当に、美味しいですよ。とうもろこしなんか、ほら、地方にわざわざ朝採りとかしに行くじゃないですか。うちのは全部朝採りですから!
 うわぁー!それは、イメージが。
 覆りますね!!
岩井さん 美味しいです、本当に。
ハ ちなみにこの、練馬で上がってくるお野菜で、岩井さんの推しはなんですか?
岩井さん 私は、やっぱり朝採りの、とうもろこし、枝豆ですかね。枝豆めちゃくちゃ美味しいです。枝豆は収穫して一日で旨みが半減するって言われてるくらい、鮮度が命なんです。あと収穫する時間も、とうもろこしがどうして朝採りが良いかっていうと、養分を一番含んだ状態なんですよ。日中になると、それを自分が生きるためのエネルギーにしちゃうんです。なので一番溜まってる状態で収穫すると美味しい。あと、品種にこだわってます。
鍛 枝豆に、品種があるんですか?
ハ 枝豆は枝豆としか思ってなかった・・・
岩井さん これもまた都市農業の面白いとこで、枝豆を「枝豆」として売るんではなく、品種名で売る人が多いんです。今人気があるのだと「湯上がり娘」とか。
鍛・ハ 湯上がり娘!?
 なんてセクシーなお名前!
岩井さん 茶豆風味で、口に入れた時に風味が広がるのが特徴です。あとは、「風香」シリーズっていうのが人気ありますね。味風香、夏風香、神風香、って種類がありまして。
鍛 神風香!
 すごい、強そう。ちょっとゲームに出てきそうです。
岩井さん 神風香が一番早生、早採りの品種ですね、早い方から順に神、味、夏、ってなります。それぞれ味も多少違いまして、うちの直売所ではお気に入りの品種を探せたりもします。
 ちょうど作中で、彼は豆を作ってるっていう設定なんですよ。
岩井さん あ、そうなんですか!?
 そうなんですよ。豆、って具体的になんの豆かは出てないんですが。
 一応、大豆を想定してるのかな、っていう書き方にはなってますが。
岩井さん 大豆は枝豆の完熟したやつですね。
 豆は作付けをするにあたって、難易度としてはどうなんでしょうか。
岩井さん 豆はでも、そこまで難しくはないですよ。プランターとかで、ベランダでも育てられます。3粒くらい蒔いて、芽が出て花が咲いたらちゃんと水あげて。そしたら鞘の中にちゃんと豆、入りますんで。花咲いたときに水あげないと空さやになるんですけど。
 そうなんですか!へぇー、そうなんだ!
 ちょっとやってみる?
 んんー、間に合うかな笑
 ベランダで採れた枝豆、ビールと一緒にお家で食べられるかもよ。
 ああ、良いねぇー。
 あの、作中では、豆を営農指導として作りに行ってる、っていう設定なんです。
 劇中で、「虫を取る」っていうセリフがあるんです。虫って、具体的にどうやって対策されるものなんですか?
岩井さん 虫は正直農薬です。鞘の中に入っちゃうんですよ。そうならないようにタイミングを見極めて薬を撒くんです。
 虫は、なに虫・・・っていうんですか?
岩井さん 芋虫系のやつなんですよ。あれが小さいうちに鞘の中に入って、豆を食べて大きくなるんですね。
 なるほどー!
 ちなみに、手で取る、っていう作業が発生するとしたらアブラムシとかですか?
岩井さん アブラムシも、つくときは大量なんで、取る時は水で洗い流しますね。シャワーみたいなのでビシャーっと。農薬使わないで殺したいってなると、牛乳かけたりしますね。
 ええー、牛乳!?
 気門が塞がるとかですか。
岩井さん そうですそうです。
 あと作中では、海外から研修制度を使ってきている方と交流があるっていう設定なんですけど、あおばさんではあったりしますか?
岩井さん うちは無いですね・・・ボランティアさんを一般の区民の方からお願いしたり、福祉作業所に依頼して障がいをお持ちの方の就労支援的な、そういう形が多いです。外国人さんが入るほどの農地面積もないですし・・・
 地方のJ Aさんだったらあり得ますか?
岩井さん ありますあります。群馬の嬬恋とかはやってるんじゃないですかね、一面キャベツのところ。埼玉も奥地の方行けばあるかもしれません。


営農指導員さんの一日

鍛 1日のスケジュール・・・というか、どういう活動が多いですか?
岩井さん 私、センター長になったのが今年からなので、その前は営農指導員としての外での仕事が主だったんですね、営農指導員だった時は、朝8時45分に朝礼がありまして、そのあとは目一杯外回りでしたね。担当地区がありますので、そちらの方に。
 いろんな農家さんに行く、ってことですか?
岩井さん そうですね。担当の中で、今日はここ、というのをわーっと回って、情報収集とか。
 どういう情報を集められるんですか?
岩井さん 農作業って、時期によってやること決まってるんですね。なので、播種してる時期であれば、何をまいたんですか、と訊きます。誰が何を植えてるという情報ですね。そしたらその後のアプローチが決まってくるんですね。この時期になるとこの虫が出やすいですよ、とか、農薬の情報提供とか。あとは、虫とか病気もその時の場所によって出るものが違うんですよ。自分の足で、今何が出てるか見に行って、誰かのところで虫や病気が出てたら、「さっき伺った先はこんな虫が出てましたけどこちらは大丈夫ですか」みたいな、誰のとこでとは言わないで、聞くんですね。そうすると「いやそれは大丈夫だけどうちはこんなのが出てるね」と。自分で持ってる情報をあげて違う情報をもらう、って感じです。後は注文をもらったら、配達。肥料、農薬、資材なんかですね。そういうのを時間内にやる、って感じです。
 じゃあもうずっと、外、って感じなんですね。
岩井さん ただあの、部会、ってのがありまして。自分が持ってたのは、青壮年部って言って、組合員が農政活動をする、国に自分たちの意見を主張するための組織があるんですが、そういう活動もあります。後は果樹部会、果物に特化した部会もありまして、それの事務作業とか、偉い立場の人に色々聞きに行ったりとか。そういうのが合間合間に入ってくる感じですかね。
鍛 朝が8時45分からで、夜は定時が・・・
岩井さん 定時は一応17時なんですけど、大体2時間くらいは残業しますね。
 やっぱりそうだよなぁ・・・
岩井さん 今日もこのあと青壮年部の会議なんですけど、あ、今日は僕の担当じゃないんですけど、会議終わった後大体飲み会になるんです笑
 あぁー、なるほど、そこまでワンセットですね笑
岩井さん そうなんですよ、青壮年部、お酒大好きなんで笑 調子いいと3時くらいまで飲みますね。
 農協にお勤めの方って、どんな方が多いんですか?
岩井さん 昔はやっぱり農家の倅が多かったですね。今は色々なところに募集出しているので、そうですね、農学部・・・農業系の大学から、という方が多いですかね。後はとりあえず農協は安定してそうだから、っていう子が多いですかね。自分もそれなんですけど。
 確かに、潰れるってことは考えづらいですよね。
岩井さん そうですね、潰れるってことはないですね。潰れたとしても代わりの組織が立ち上がると思うんで。統合されたりですとか。
 お仕事されてて、色々あるとは思うんですけど、一番大変なこと、ってなんでしょうか?
岩井さん そうだなぁ・・・あおばに来てからだと・・・あの、あおばって、すごくいい農協なんですよ。作業量もそこまで過酷ではなくてですね。前に居たところでは、私、梨の担当だったんですが、選果場、農家さんが梨をブワァっと持ってきて、そこで選別して箱詰めして市場に持ってく、ってのを私担当していて。当時20代半ばですね、で、パートさん60人とかいて、その人数に指示を出して、農家さんと一緒に働く、っていうのを3ヶ月くらいやるんですよ。それ、休みないんですよ。それがきつかったです・・・
鍛・ハ うわぁー・・・
岩井さん で、梨が終わったらお米にスライドするんです。7月の中旬から11月の終わりくらいまで休みないんですね。それを考えると都市部の農協はかなり恵まれてます。
ハ 地方は、大変なんですね・・・?
岩井さん 地方はそもそも、農家さんの力がかなり強くて。昔からずっとやってらっしゃって、面積もかなりのものなので、農協職員よりはるかに詳しいんです。なので、例えば「この農薬効きますよ」っておすすめした商品が効かなかった、とかなったら怖いと言いますか。そういう時のプレッシャーがすごかったです。
ハ 地方になると継いでらして面積も大きくて、いわゆる「ドン」というか、豪農、みたいな方もいらっしゃいますよね。
岩井さん そうですね、いらっしゃいます。こっちだと豪農、って感じの方はやっぱりいなくてですね、1ヘクタール、1万平米、そのくらいで「豪農」って感じですかね。練馬って180ヘクタールくらいしか農地がないんです。なので1ヘクタール持ってれば180分の1をもう、その人が持ってることになりますんで。農業従事されてる戸数が400世帯くらいなんで、平均よりはるかに上回る感じになります。
 なんか、集約農業、って中学受験の時に勉強したの、すごく思い出します。
岩井さん そうですね、あおばの職員は都市農業、限られた面積で収益を上げるためのお手伝いを、していくのが仕事です。提案力は必要かもしれません。引き出しの多さが大事です。
 勉強を常にされてないと、難しいことですよね。
鍛 農薬とか、そういう技術的なことも更新されていくんですよね。そういう新しいものは、農協さんが開発されたりもするんですか?
岩井さん 農薬メーカーが開発してます。10年とかかかるんですが、一つの農薬の開発に億単位でお金がかかるらしいんです。登録にもお金はかかるんです。細かい試験とか検査とか繰り返さないと、審査を通れないんですね。
 野菜の種類によって農薬は変わるんですか?
岩井さん はい、登録されてる農薬しか使っちゃいけないんです。品目ごとに指定の農薬が決まっていて。だから汎用性の高い農薬をみなさん使ってますね。


農協さんのお祭あれこれ

鍛 劇中で、ずっと会議、話し合いをしてるんですね。商店街の青年部が、お祭りをやる、と。僕は商店街の人じゃないけどたまたまいる、っていう役どころで。お祭りをやるにあたっての会議の話なんですが、J Aさんってお祭りとか、出店とかブースとかそういうの、出すことありますか?
岩井さん あ、しますね。ちょうど昨日その会議でした。
 え、そうなんですか?
岩井さん 地区祭の話し合いで、農家さん交えて。農家さんの野菜の販売の手伝いをやるんですね。農協で出す時もあるんですけど、それこそAコープの商品とか。後は焼き芋やったりとか。
ハ 焼き芋!いいですねー!
岩井さん でも結構保健所がうるさいんですよね。焼き芋はいいんですけどじゃがバターはダメ、とか。調理になっちゃうとダメで。冷やしきゅうりとかも温度管理のこと言われて。条件クリアしないといけないんです。
 コロナもありましたし、市民の衛生観念も繊細になったでしょうしね・・・
岩井さん 餅つきもできなくなっちゃったんです。パフォーマンスでちょっとだけついて、餅つき機とかでもう出来上がったやつをパックに入れて持ってって、なら売っていいよっていう。
 えぇー、寂しいですねー。「出来たものがこちらになります」なんですね。
岩井さん どうしても、なんかあった時の責任の所在が。
 ちょっとしょんぼりですね。今の子どもたちは餅つき大会を知らずに大人になるのかぁ・・・
鍛 農業体験とか、そういうのはやってらっしゃるんですかね?
岩井さん あ、やってるんですよ。観光会社と連携して、農家さんのところにバスツアーを組んでます。国際興業さんっていう会社と組んでやってまして、こないだは夏休みだったんで、親子連れの企画で畑で遊べる体験、やりましたね。枝豆を収穫した後、畑で泥んこ遊び、っていう。どうなるかなぁと思ってたんですが、やったらすごい喜んでくれました。お祭り騒ぎです。
ハ え、いいですねー!都会の子だと、あんまり土で遊ぶみたいな経験自体少ないでしょうから、新鮮でしょうね。
岩井さん あ、写真ありました、これです。



鍛 あぁー!これはこどもは喜ぶわー!
ハ すごい!思ったより泥でした!!めっちゃ、土の山ですね!
岩井さん 最終的には親御さんもサンダル脱いで、足まくって。みんな結構ラフな感じで来てたので。せっかくなので都市農業ならではの、作物の味の違いを知ってほしいなと思ったのもありました。あと最近流行ってるんですが、これ・・・(写真を出して)




トマトのハウスなんです。植物工場みたいなものなんですが、これ、下の土みたいなのが、ヤシガラ。ヤシの実の殻を砕いて袋の中に入れてるんです。土の代わりに。で、この中にトマトの苗を挿しておくと、生えるんですね。肥料を管でこう、栄養を送って。
 本当に工場みたいですね!
岩井さん これ、1000平米で、年間1000何百万とか売り上げが上がるんです。かなりコスパがいいんです。「反収」っていうんですが、一反が1000平米、10アールですね、地方だったら100万円稼げれば御の字なんですが、練馬だともっと、ってなります。練馬だとあとブルーベリーですね。冊子にもありますが、摘み取り農園が30くらいあって。植えてるだけで、病気の心配も少ないんで。毛虫がちょっとつくくらいで丈夫なんです。摘み取りやってもらって100gいくらでお持ち帰りで買い取ってもらって、いらない、置いてった分は直販に回して、って。
ハ すごい、完結してますね!
岩井さん 東京都はかなり、補助金も出るんですよ。無人販売のコインロッカーみたいな箱とか、ハウスもですけど、最大4分の3まで出ます。収益が上がれば、親から子に継ぐこともしやすくなるじゃないですか。継農、ってことを考えた時の施策ですよね。東京都の潤沢な財源があってこそできる、都市農業の恵まれた点ですね。
 この、全国都市農業フェスティバルっていうのは、J Aさんで主催されてるんですか?
岩井さん これは練馬区主催なんです。行政がめちゃくちゃ力入れてるんです。頑張ってくださって、この日農協は同じ光が丘公園で、農業祭をやるんです。そっちはうちが主催です。提携してる他のJ Aさんに出店してもらったり、練馬の野菜を使った料理を出したりとか、野菜の直販もします。多分全国で一番、人が集まる農協のお祭りだと思います。去年、感染症対策しながらの開催でしたけど、3万人近く来ました。
 3万人!すごいですね!
岩井さん 自称だと10万人らしいんですけど笑
一同 笑笑
岩井さん そんなわけないですが、流石に。笑
 なんか、今日、東京のお野菜に関する見識が大幅に変わりました。
鍛 や、もう、今日からスーパー行ったら東京の野菜買おうって思いました。僕、ピーマンが好きなんですけど、いわゆる地場で作ってます、ってやつの方が明らかに大きくて美味しそうなんですよ。
岩井さん 大産地はあるんですが、多分うちの方が美味しいです!手をかけて、贅沢な農業をしてますよ。
 最後にお伺いしたいんですが、この農協職員、という役が実際に舞台に登場するわけなんですが、ステレオタイプのイメージ、なんとなくの思い込みで、思われていそうなことで、それは違う、ということがあればお聞かせ願いたいんですが。
岩井さん そうですね、農協職員って、農家から手数料取って食ってる悪者、みたいなイメージがあると思うんです。でも、農協職員て結構、頑張ってるんですよ!
一同 
岩井さん 確かに手数料は取ってますが、微々たるものなんですよ。国からは本業で食えないとダメっていじめられてるんです。
ハ 本業で食えないとダメ・・・?
岩井さん ほとんどの農協って信用、共済で稼いでて、営農経済の部門は赤字なんです。本業で食えてるJ Aって北海道くらいだと思うんです。取引額自体が桁違いなんで、手数料で入る額も違う、ってことなんですね。そうでないほとんどのところは本当に少ない手数料しか入らないんですよ。信用、共済の職員たちも頑張ってますし、我々、日本の農業のために頑張ってるんで。一番頑張ってるのは、農家さんなんですが。でもその農家さんの頑張りの影には、常日頃から手助けしてる農協の職員たちがいるんだぞ、というところをね、お分かりいただけたら嬉しいなって、そう思います。
 お忙しいところ、お話お聞かせくださってありがとうございました。
 本当にありがとうございました!





どうですか?東京のお野菜、食べたくなりません?このインタビューのあと、併設の販売エリアで、鍛治本は練馬大根ドレッシングを購入。ハマカワは東京牛乳×練馬産ブルーベリーのアイスを購入。アイス、その場で食べちゃいました。ミルクの優しい甘さと、たっぷりじんわり染み出すブルーベリーの果肉と果汁、すごく美味しかったです!一つの畑、一つの野菜にかけるたくさんの愛情と工夫に触れた、そんなインタビューの時間になりました。

岩井さん、お忙しい中、本当にありがとうございました!


取材先情報

J Aあおば 練馬地区アグリセンター




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