転職活動に役立つ「STP分析」と「PREP法」
僕は普段デジタルマーケターの方を中心に転職相談に乗っている。
とくに、若くして売り手市場の職種や成長企業での経験を積み、自身の市場価値を高めたいという方からの相談が多くなってきた。
しかしながら、そんな引く手あまたな方々にも関わらず、「内定がもらえない」と相談されることがしばしばある。
意外なことに、彼らのような働く意欲が高く売り手市場での職種経験もある優秀層の方でも、転職活動になると急に面接で支離滅裂なことを話してしまい、まともに自分をアピールすることができない人が多い。
経験は申し分ないのだが転職活動に落ちまくったという経験を、読者の方でも経験したという方はいるのではないだろうか。
僕は長い間、この事象が不思議で仕方なかった。ただ、転職エージェントという仕事をしていく中で、この要因が少しづつ見えてきた。
今回はその要因と簡単に行える解決策を書いていこうと思う。
優秀なビジネスパーソンも「転職活動」では思考停止する
転職エージェントの仕事をする中で、転職者に、「あなたの強みはなんですか?」「あなたはどのような価値を転職先で発揮できますか?」と質問してみると、回答できる人がほとんどいない。
「考えたことがなかった」
「自分の強みがわからない」
という方がほとんどである。
さらに、わからないという回答にとどまらず、
「転職先における自分の価値は、今の段階では特にこれといってないと思う......」
とネガティブに答えてしまう方も意外にも多い。
仕事では自社の商品の何が強みで、顧客にはどのようなメリットがあるのか、皆さん答えられているはずなのに、転職活動だと全く答えられなくなるのだ。
これは、有名大学出身の方や、有名企業に勤める方、企業の役職者など優秀といわれる人でさえ、例外ではない。
なぜ優秀な人も転職活動においては思考停止してしまうのだろうか。
転職活動は「ご縁」ではなく「商談」の場
その答えは、転職者が「新卒採用」と「中途採用」を同様に捉えてしまっていることが一因ではないかと思う。
僕が相談に乗っているほとんどの転職者が、大卒の方で新卒の就職活動を経験している。その経験が中途採用の認識を誤らせてしまっている。
まず前提として、多くの企業において新卒採用は長期的に働いてくれることを想定して採用を行っている。
そのため、採用基準は即戦略が期待できる人というよりも、社風マッチやビジョン共感などがあり、長期的に貢献してくれる人かどうかで判断するケースが多い。(もちろん最近は変わりつつあるが)
いわゆる人物重視の採用である。総合職として採用しているため、配属先も知識や経験がなくてもゼロから仕事を任せてもらえる。
長く働いてくれることを期待しているため、人材育成の投資リターンが長期目線なのだ。
一方で、中途採用は短期的な成果を期待して採用するケースが多い。事業投資のタイミングや社員の退職による人員不足のタイミングで、急を要して募集を行う。
そのため、採用基準は即戦力となる知識や経験があるか否かであり、経験・スキルを比較的重視する傾向にある。
経験やスキルを重視した採用を行うため、自分が何ができてどんな成果を上げられるのかを伝えられないと内定を勝ち取ることは難しい。
人物像のマッチで内定を勝ち取っていた新卒採用とは異なり、中途採用は自分を売り込む商談に近い。
ただ、ほとんどの転職希望者は自身の経験や知識の棚卸をせずに、とにかく興味のある企業を準備なしに受けてみるという選択を取る。
新卒採用の就職活動の経験から、「採用はご縁だ。とにかく受けてみて自分に合いそうな企業で働いてみよう。」と認識しているからだ。
これが、転職者を思考停止に陥らせてしまう要因だ。
事前準備なしに商品の良さを話すことができるだろうか?
仕事で事前準備なしに商談に臨むだろうか?
転職活動は、まずこの誤った転職活動の認識を改めることからスタートしなければならない。
転職活動は自分を商品としたマーケティング活動
営業やマーケターのようなビジネス職の方は、中途採用における正しい転職活動をしやすいと思う。なぜなら普段の仕事で誰もが経験しているからだ。
あなたが営業をする際、必ず一番受注率が高そうな営業先を考えて、計画を立ててからアプローチするのではないだろうか。
手当たり次第に飛び込み営業をしたりテレアポをするという方法を取る人はかなり減ったように思う。ほとんどの方が自分なりに受注確度の高い営業先を検証している。
そのためには、まずどのカテゴリの顧客を狙うのか分類し、それぞれにニーズをヒアリングし、自社の商品がどのカテゴリの営業先にもっとも価値提供できるのか自分なりのロジックを持ち、ターゲット選定をしてから営業活動にうつる。
この一般的な営業手法が転職活動においても活用できる。
自分が働きたいと思っていても企業側にあなたの経験やスキルのニーズがなければ意味がない。反対に、自分が興味のない企業ばかりにニーズがあるのであれば、今が転職のタイミングではなく、現職で経験すべきことがあるかもしれない。
まずは転職マーケットをカテゴライズし、それぞれのニーズをヒアリングし、自分の狙うべきマーケットを選定しなければならない。
そして、マーケットを選定したうえで、選定マーケットが求めるニーズに合わせて、自分の持つ経験や知識を言語化し、アピールする内容を決めていく。
内定率を上げるために必要な「マーケティング」と「論理」
転職活動を商談と捉えると、選考前に事前準備することはシンプルに「マーケティング」と「論理」の二つである。
企業の採用担当者の目線で考えてみてほしい。自分達が求めていることに対して、解決できるとプレゼンされ、根拠を論理的に話してくれたら、もう採用するしかない。そういう状況を自分で作りにいくのだ。
これまでの話を要約しておくと、以下の形に整理できる。
では、どのようにやるべきことを整理すればいいのか。
参考になるフレームワークがあるのでそれぞれ紹介したい。
自分を商品と捉え「STP分析」で整理する
マーケティングの手法の中に、STP分析というものがある。
個人的には、とくに2つ目の「T」におけるヒアリングが重要だと思っている。
ターゲティングしたグループに所属する人に接点を持ち、彼らが何に困っていてどのような経験の人を必要としているか事前にしっかりヒアリングする。
もし個人的な繋がりがなければ、yentaのようなビジネスマッチングアプリなどを活用して会ってみるのも良いし、その領域に強い転職エージェントに聞いてみるのも良い。(前回のnoteを参照)
ヒアリングの中で、自分の経験を話してみて、何がアピールポイントになるかなども聞いてみるとよい。
そうすると、3つ目の「P」におけるポジショニングも、かなり精度の高いものになってくる。
自分の強みを「PREP法」で証明する
マーケットの選択と自分のアピールポイントが決まれば、次に論理で整理して正しく相手に伝わるように、準備が必要だ。
どれほど戦略が良くても、相手に伝わるように説明できなければ、内定に繋がらない。
論理的に整理するために使えるフレームワークを紹介したい。プレゼンなどでよく使われる「PREP法」というフレームだ。
このフレームワークに、僕が転職活動に使えるようにアレンジしたものと例を以下にまとめてみた。
ここまで具体的に話せるようなら、面接官と正しく認識のすり合わせができるようになる。
もしここまで事前準備をして面接に落ちることがあったとしても、「STP分析」におけるどの部分が想定と違ったのか、もしくは「PREP法」のどの部分が違ったのか、計画を立てて項目できちんと分かれているため、それぞれで振り返り、どこに問題があったのか、仮説を立てて検証していくことができる。
そのため、失敗経験も次の面接に活かせるようになってくる。
転職活動も仕事と一緒で、仮説を立てて検証し、改善していけば、自分に最適なキャリアを見つけることができる。
おわりに
以上が、転職活動において比較的簡単に行える対策だ。
もし読者の中で、なかなか内定がとれない方々いたら、参考にしてみてほしい。
僕は一人でも多くの人が自分のビジョンを持ってキャリア形成できるようになってほしいと思っている。
転職活動を「ご縁」で終わらせず、これらのフレームワークを参考により良いキャリアを描いてほしい。
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