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活動者として

最近の知見、ずっと好きだった女の子がいた。
私の好き、は愛で、それは恋愛に固定されるだけのものじゃない。
そもそも、性愛の類はよく分からないけれど

好きな表現者を挙げて!好きな被写体を教えて!と言われたら1番はじめに名前が上がるのが彼女だ。
彼女は隙がなくて、隙だらけで特別。
太陽が真っ平らに元気で幸福で、単純じゃないことを教えてくれたのは彼女の微笑みの妖しさゆえだった。
他にいないし、私の心を17歳の冬から永遠に掴んで離さないのは貴方だけで。
橙色が良く似合う、艶やかなウェーブ、孔雀のような安らぎ、彼女を思い出した時いつも大柄な一輪の花が頭をもたげる。
鮮烈で、妖艶な美しく気高い花、貴方はそれらによく通じている。

彼女が被写体を辞めた季節、辞めたと言うよりも表現を公表する事からある日突然、夢から覚めるみたいに降り立った、そういう様な感覚だった。
私は混乱して悲しくて、追い掛けたし思いを募らせたし画面を食い入るように何度夜を潰したことか。
彼女にプライベートで出会う度、もう一度、もう一度カメラの向こうの彼女にも出会いたかった。欲を張っていた。
彼女の視線、私に決して注がれることの無い写真だけに注がれた鋭さ。
柔らかくてしなやかで、どうしようも無いぐらい綺麗で。私は彼女の美意識が、誰も寄せつけない孤高が嬉しくて憧れた。
彼女は居なくなった。2021年の秋の事だった。

あれから二年が経とうとしていて。
私は彼女の当時の年齢に刻々と歩みを近付けていた。
ごく最近の事だった。 山田詠美の「僕は勉強ができない」を読んでいたら、「全てに丸をつけよ」という言葉が妙に心に引っかかった。
すべてに丸をつけよ。

表現者の友達と遊ぶきっかけがあった。
「社会人になるタイミングで辞めるよ。辞める時はわざわざ皆に言ったりしないでふと居なくなりたい」
彼女は笑っていた。すごく残酷で、可愛かった。
辞めていった数々の女の子の顔を思い出す。
どの子も美しく、輝いていた事を、思い出す。

「うちもはぐちゃんの意見に同意なんだよね」
私たちはずっとなんて若くない。
口ではいくらでも言えても、若いから成立することは数え切れないぐらい存在する。
「うちっていう存在を思い出した時、綺麗なまんまで思い出して欲しいんだ」

彼女の笑顔、瞬間はいつも瞬間に過ぎなくて、私達は生きている。生きている限り呼吸を繰り返して、老いて、枯れてゆく。
インターネットが普及しようが時の流れは抗えず、サラサラと流れていく。
高校生の頃から時間を止めようとしていた。
けれど、私たちはずっと14歳では居られず、完全に脱ぎきった制服のスカートはもう記憶の奥の底、どこかに消え去っていた。

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二人だけの秘密だよ

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