桜島大根 殿

来週の木曜、桜島大根が届く。それは家族の誰にも言ってない。私からのサプライズだ。
鹿児島から取り寄せで購入したのだが、レビューを見ると「すごく大きくてびっくり!」なんて感想がほとんどだった。だからとても楽しみ。今からウキウキが止まらない。

桜島大根との出会いは去年に遡る。
去年のGW、ふと思いついて鹿児島一人旅をした。私はさまざまな植物を見るのが好きだ。本州では見られない特殊な植物が、きっと鹿児島にはあるだろう!という憶測で選んだ。そしてその旅は大成功になった。

もちろん桜島にも行った。火山灰で埋められてしまった鳥居を見たり、火山灰でお墓が埋まらないように塀で囲ってあったり、避難場所があったり、火山灰天気予報があるなんて話を聞いたり、すごく衝撃を受けた。遠くから見たら長野県の八ヶ岳に見えるが、桜島は山ではないのだ。
(豆知識:鹿児島の花の消費量は日本一。すべてのお墓のお花の量がすごかったです)

桜島にはひとつ売店があった。その時、桜島大根の種が売っていた。
「これだ!!」一つ購入した。そして祖父へプレゼントをした。

祖父は2021年の11月に妻(あたしから見て祖母)に先立たれた。しばらく雑草で荒れ果てていたまぁまぁ広めな畑が、いつの間にか整備されていて、いつの間にか畑となっていた。祖母を亡くした悲しみを、畑に尽くそうという祖父の考えだと憶測した。(憶測ばっかりw)

そんな祖父にぴったりの種をゲットできてしばらく興奮していた。きっとこの種は本州には出回ってない貴重な種、ここでしか買えない種だと憶測したからだ。
道の駅には「ハイ(灰)どうぞ!」という缶が大量に売られていた。その中身は火山灰である。それもプラスで購入し、少しでも桜島に似た環境を我が家の畑でも再現できれば、きっと桜島大根を栽培できるだろう!と憶測。

その後鹿児島では、巨大ガジュマルのある九州最南端の佐田岬、雄川の滝(キングダムのロケ地)、指宿で砂風呂、開聞岳を見ながら大隅半島へ渡ったり、飛んでいる蝶々や巨大げじげじに遭遇しつつ、しっかりとんかつを食べて満喫した。そして帰宅。

種と火山灰を祖父にあげた。祖父は喜んでいた。

時は過ぎ去り七月。やっと桜島大根の種をまく季節になった。
時は過ぎ去り八月。「芽が出てきた!」と祖父は言う。
時は過ぎ去り九月。「あれ、葉っぱだいぶ硬いわ。しかも葉っぱしか育たない。」祖父は少しキレ気味だった。それはきっと暑さのせい。
時は過ぎ去り十月。台所には小汚い大根が何本かあった。
母は言う。「これ桜島大根だよ。やっぱり普通の畑では無理やったな。」

だよなぁ~~。と思いつつ、ちょっぴり残念だった。
いつか本物の桜島大根と触れ合いたいな。心の隅でそう思いながら、一つのストーリーに幕が閉じた。


2023/2/7
運命の時が来た。その土台(story)があっての今。それがなければ出会えなかった思い。
最近の私の趣味は、語彙力を高めることである。昔から読書(主に小説)をしてきたが、意味の分からぬ言葉を調べるという作業をしたりしなかったりだった。最近はその作業をするよりも、心打たれたその一文、それをノートに書き留めてばかりいた。
理由は忘れたが、最近は両立させるようになった。手元に辞書と付箋を置き、分からぬ言葉はすぐに調べ、いい言葉には付箋を貼る。
ちなみに今読んでいる小説は、田辺聖子さんの『ダンスと空想』である。
彼女の表現力にはいつも感激させられるし、下手したらうっとりを通り越して涙が出てくるくらいだ。

そんな彼女の小説にこんな文章が出てきた。
「春の山は笑うが如く、夏の山は滴る如く、秋の山は粧うが如く、冬の山は眠るが如し」
ほほう。。。「山笑う」というのは季語である。辞書を読むのが楽しくてたまらない今の私には、季語はなんて素敵なんだろう!と心を打たれた。
どうにかして季語に触れたい私は、ツイッターで「季語BOT」みたいなのがないかを検索した。(もちろん、ことわざBOTや漢字一級BOTはすでにフォロー済み。しかし生かされているのかは謎)

2/7の天気を覚えているだろうか。春はもうそこまで来てて、鶯のホーホケキョが聞こえてきそうな、そんなのどかな天気だった。
こんな天気は「山笑う」だな。なんて心の中で思っていた。
もちろん私だけがこんな気持ちになってるはずもなく、ツイッターで「季語」と検索したら、一発目に「山笑う」とツイートしている人もいてテンションが上がった。
ああ、学ぶって楽しいなぁ、そんな気持ちになった。

そして「ひねもす」というユーザーが出てきた。
この言葉の意味も最近理解したのである。
ceroというバンドが居るのだけど、「orphan」という曲の歌詞に出てくる単語である。それは「一日中」という意味である。
ユーザーネーム「ひねもす」のページをなんとなく覗いてみたら、桜島大根の写真が載っていた。それが桜島大根との再会につながったのである。

そうか!!いまだ!!!今が旬なんだ!!!!
即「桜島大根 取り寄せ」と検索した。1月~3月までの季節限定野菜である。私はこの冬、桜島大根に触れられるんだ!!!そう思うとすごく嬉しくなった。写真を見る限りだいぶ大きいっぽい。1つで八キロある大根だ。小型犬よりも重い。生まれたての新生児よりも重い。双子よりも重いし、三つ子で釣り合うくらいだと思う。
とても楽しみ。そして恋人とクッキングをするんだ。食べきれるか分からないけど、とりあえず大根を切るところから頑張ろう。えいえいおー!

様々な出来事、思い、そういうのはずっとつながってる。ふと思い出すこともあれば、強制的に思い出すこともあるし、気づかずに死ぬ場合もある。それを運命というのだろうか。この文章を書くのもすごく楽しかった。
旅ノートを読み返しながら、鹿児島一人旅を懐かしく思ったり。
本日も脳みそ活性化。サンキューね。

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