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『Heroes of the Storm』の話がしたい(その1):HotSの開発規模縮小と公式大会の終わり。MOBAの始まり編

1つのeスポーツが死んだ。煽りたくはないんだけど、好きなゲームの話をさせてください。キーボードを叩かずにいられなくなった。今回は「MOBAの起源」にフォーカスします。

『オーバーウォッチ』、『ハースストーン』でおなじみのBlizzardが開発の同社のキャラがクロスオーバーするMOBA『Heroes of the Storm』(以下、HotS)は2015年から正式サービスが始まりました。

ですが、最近になってHotSの開発規模の縮小と公式の大会が2つなくなるというニュースがありました。日本でもニュースになっているので、以下の記事をチェックしてください。

コミュニティーに激震が走っています。とくにBlizzcon(毎年やってるBlizzardイベント)でファイナルをやっていた大会の中止は、本作におけるeスポーツが死んだと言ってもいい。Blizzardがeスポーツを殺したと表現する海外メディアも出てきています。

ただし、HotSそのものが死ぬわけではありません。公式フォーラムでも本作のプロダクション・プロデューサーが言っているように、これからもコンテンツは生まれていきます。本作のヒーロー(キャラクター)性能のデザイナーをしていたMatt Villers氏も、Blizzardは「サービス終了したことがない」とTwitterで発言しています。

そのニュースはひとまず置いておいて、最初に言ったように「MOBAの起源」という点について今回は書いていきます。HotSを語る前提として必要だからです。一応、言っておきますが、記憶にしか残らない部分も多いのですべてが真実だったと思わないでください。

なお、次回の記事は「なぜBlizzardがMOBAを作ったか」の予定です。

MOBAとはどういうジャンルなのか

MOBAとはMultiplayer online battle arenaの略で、『リーグ・オブ・レジェンド』や『Dota 2』、『伝説対決 -Arena of Valor-』(中国の『王者栄耀』のグローバル版)あたりが代表作です(もちろんHotSもそうです)。

5vs5で戦うマルチプレイゲームで、試合ごとにキャラのレベルが1から始まって成長する、レーンと呼ばれる3つの大きな道にザコ兵士が垂れ流されるのが主な特徴です。プレイヤーが操作するキャラクターがレーンに出向き、ザコ兵士と一緒に戦って成長させながら、敵の基地の破壊を目指します。マップやゲームによって細かい違いはありますが、だいたいこんな感じ。

MOBAはBlizzardの『Warcraft III』から生まれた

さすがにこれを読んでいる人はそれぐらい知っているだろうというところで、なぜHotSが生まれたかはMOBAについて知る必要があります。一番最初に流行ったこの手のジャンルのゲームは、HotSを開発するBlizzardのRTS『Warcraft III(WC3)』(2002)にルーツがあります。

WC3にはマップ(Mod)を作れるツールがありました。ユーザーが作ったマップをBattle.netというオンラインシステムを使って部屋を作り、マップを持っていなくても誰でも部屋に入ってその場でダウンロードして楽しめました。

↑WC3はリマスター版が発売予定。

そのなかで最も人気があったのが『Defense of the Ancients(DotA)』というタイプのマップです。5vs5で戦う、3レーンに兵士が垂れ流されるといった今でいうMOBAの要素が入ったゲームでした。かつてはMOBAというジャンルではなくDotA系と言われていました。

DotAについては、さらに同じくBlizzardの開発するRTS『Starcraft』(SC1)のMod『Aeon of Strife』(AoS)に起源があると言われます。これの影響で、マップ名にAoSと付いているゲームがWC3のModでは多かったです。ジャンル名としてもAoSは通じました。

↑SC1はリマスター版が発売済み。日本語吹き替えありだからやって!

DotAの原型になったと言われるが、よくわからないAoS

AoSの制作者はAeon64という人(多くのソースで言及される)か、ロシア語のソースだとGunner_4_everという人が作ったと言われています。レーンに垂れ流される兵士と一緒に、ヒーローで戦うといった要素がすでにあったよう。なお、英語ソースで言及されているときに載ってる画像は後からDotAにインスパイアされて作られたSC1マップの画像だったりするらしいです。

僕はSC1のModやってないし、いろいろソースみてもマジでわからんので合ってるかは不明。でも、見たところヒーローの成長やアイテムの要素はなさそう(ラストヒットで資源は得られるらしい)。成長要素はRTS×RPGなゲームだったWC3のオリジナルゲームで実装された要素だからでしょう。気になったので、AoSについて調べてみました。

↑Gunner_4_ever名義の『Aeon of Strife』プレイ動画。

Gunner_4_everのマップはここにあって、ダウンロード可能(2002年に作ったらしい? なお初代DotAは2003年リリース)。彼は自分のホームページではNickを名乗っているけど、マップのクレジットはGunner_4_everにしているみたいです。さらにGunner_4_everのマップはDynasty Warriors(真・三國無双)マップにインスパイアされているとのこと。Dynasty WarriorsマップはWC3にもあった記憶があります。

Gunner_4_everは2003年にフォーラムに書き込んでいるところがインターネットに残っている。氏の友人が書き込んで「俺の友達がStarcraftでマップを作って、DotAを生んだ」と書き込んでるフォーラムもある。中国語のフォーラムで分析している人によると、Aeon64とGunner_4_ever(Nick)は同一人物説もあるっぽい(中国語翻訳なのであやしいが、直接の証拠はないって言ってるみたい)。

そして『Warcraft III』のマップ・DotAへ

ここからは僕のわかる範囲で、実際にプレイしてきた記憶も含めてになります。WC3にも『Aeon of Strife』というマップがありました。SC1で人気だったので、パクって移植したって類のものだと思われます。DotAもパクられまくってましたし、Modというのはそういう世界です。そもそも固有名ではなく、ジャンル名になっていました。わけのわからないAoSが大量にあったわけですが、レーンに垂れ流される兵士とレーンで一緒に戦うのは同じでした。

WC3はRTSですが、SC1になかったRPG要素がありました。資源を集めてユニットを作るというRTSの基本要素に加えて、3体までヒーローユニットが作れるのが特徴でした。ヒーローはアイテムを装備でき、さらに1試合ごとにレベル1から始まって成長していきます。4つスキルがある点などは今のMOBAに通じるでしょう。ですが、WC3はユニットと兵士を同時に操作しながらヒーローも操作するという、むずかしいゲームでした。

↑WC3のオリジナルゲームの大会。

SC1でも元のゲームがむずかしいのもあり、操作の簡単なパーティーゲームとして遊べるようなマップが大量に出ていました。むしろ、それらのマップだけで一生遊べるだろというような無料ゲームプラットフォームがSC1とWC3だったのです。

そして、2003年にEulというModder(たち)によって『Defense of the Ancients』というマップが作られました。ネットではEulがAoSにインスパイアされたという説がありますが、EulはAoSをプレイしていないとするものもあったので、実際どうなのかわかりません。しかし、今日のMOBAの直接的な起源になるマップなのは確実です。僕も熱心にプレイしていました。そしてBattle.net上では、タワーディフェンスやAoS/DotA系のマップが人気になっていきます。

後追いするが、大会がなくなるという結果になったBlizzard

こうして、のちに『リーグ・オブ・レジェンド』、『Heroes of Newerth』『Dota 2』、そしてHotSが誕生していくのです。自身が生み出したゲームのマップ(Mod)からDotAが生まれ、ほかの会社で精神的続編が作られていってから、それにインスパイアされたゲーム・HotSをBlizzardが作ったのです。

次回の記事では、DotAが人気を得ていって商業化していったところについて書いていく予定です。なお、DotAの歴史ではないので、だいぶはしょる予定です。詳しくはロシア語ソースでも見てください。

↑当初のDotAはWC3のオリジナルゲームがむずかしくてプレイできないカスのためのゲームだった(過激な表現だが、間違ってないと思う)。

↑第2回の記事はこちら

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