【散文】目線について

そういえば、この家には庭がないなと気づいたの新しいくらしをはじめてから11ヶ月目のことだった。
川上弘美の『どこから行っても遠い街』の主人公が義理の母親の家に尋ねてくる描写を読んでいたのだ。
縁側のガラス戸を開くと、松の木と椎の木の間に桜の木がある。その先につぼみがふくらんでいるのを主人公が発見した瞬間、目の前が急に明るくなったような気持ちがした。
私のあらゆる過去の目線が小説の主人公の目線に一致したのだ。
窓から漂う満開の梅の花の香りが心地よかったこと、雨の日に金木犀の匂いを嗅いで秋の到来を感じたこと、梅の実が軒を落ちる音が夜の底に響いていた日のこと、むかごを取り煎って食べた日のことなど、挙げればきりがない。
織田作之助青春賞を受賞した『コンシャス・デイズ』は、絵画の中の女性の目線と友人を見つめる自分の目線が同じだと発見する小説だった。読んでから、絵画や写真、小説の中に実生活と同じ瞬間を探しながら日々を過ごしている。

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sara_nakano

ハムサラダの読書日報

毎日会社にかよっている。 1日のおわりに業務日報を書いて提出する。 わたしは毎日、お昼やすみと帰り、夕飯を食べてから本を読んでいるから、 読書の日報も書こうとおもう。
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