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【初心者向け】知ってる?フィルムとデジタルの「現像」の違い。そして大事な「フィルムのデータ化」の話。その1【6/30 2訂版】


「現像ちがい」の話

ある日Twitterに流れてきた、とあるブログ記事。

中に掲載されている写真は非常に美しいものも多く、読んでおられる方にも共感されている方、写真に感嘆する方など、好意的な表現が多く見られたのだが……だが。ここには一つ、重大な間違いがある。

そう、フィルムの「現像」は、デジタルの「現像」と根本的に違い、お店では客側からの特殊な要請(*1)がない限りは、同じ仕上がりでなければならないのだ。(*4)


「えっ、フィルムの現像ってデジタルと同じで色味を補正したりするものではないの……?」


そう思う人は結構多いらしく、ここで一度、note上で、そもそも「現像」ってなあに?という話をすることにした。ついでに、「フィルムは現像も大事だけど、データ化のプロセスが特に大事だよ!」という話も。
フィルムを使い始めた人、フィルムを使ってはいるけどその仕組を知らない人に知ってほしいことを詰め込んだつもりだ。今回はその中でも、「そもそも現像って何?どんなのがあるの?じゃあなんで色が違うの?」といった基礎事項を取り上げる。


そもそも「現像」ってなんだよ

まずはwikipedia先生の言葉を引用。

現像(げんぞう)とは、銀塩写真において、露光することによって撮影された写真・映画の感光材料(フィルム・乾板・印画紙)を薬品(現像液)で処理して、画像・映像(潜像)を出現・可視化(顕像)させることである[1][2][3]。

そう、フィルムは撮っただけでは""潜像""なのだ。
思い出してほしい。フィルムは撮影後、とにかくまずパトローネの中にフィルム自体を巻き戻す。あれって、もしそのまま画像が画像としてすでにフィルムに現れているのなら、実に変な行為だ。だって、わざわざもとに戻す必要がないのだから。
それなのにもどさないといけないのは、フィルムにはまだ「画像がでてきていないから」で、「現像するまで光を当てちゃいけないから」である。
「現像」をすることで、フィルム写真は画像を目に見える形で得ることができる。
ちなみに、「ネガフィルム」の場合、この像は「色味がすべて反転した」画像が生じ、「ポジフィルム」の場合は、「色味がすべてそのまま」画像として出てくる。だからこそ、negativeなフィルムであり、positiveなフィルムなんだね。


ネガの現像、ポジの現像、白黒の現像

さて、そんな現像は実は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、白黒ネガフィルム、白黒ポジフィルムごとに、様々な異なる現像の方式がある。それぞれに使う薬液が異なり、薬液を用いる時間等もことなるが、基本的に同じ現像形式であれば、現像の仕上がりは一緒になる
最もよく聞く形式が、「C-41」だろうか。これはカラーネガフィルムをお店に頼んだ時に行われる基本的な現像形式であり、だいたい日本全国どこの写真屋に頼んでもカラーネガフィルムは「C-41」で現像される。(*2)
そのため、いつも現像を頼んでいた場所が傷んだ薬液を使っていて、普段から劣化した画像を得たのでない限りは、「あそこで現像したから、いい色になったよ!」とはならないのだ。そんなことがあったらカメラ屋は潰れてしまう。ちなみに、カラーポジフィルムには「E-6現像」では一般的。モノクロネガには「D-76」という現像液を用いた方式が一般的だが、これは上記の現像形式とは異なり、現像液の名前だけを指すもの。この他にも多種多様な現像液・現像方式が存在する。(*3) (当段落のみ6/30訂正済)

更に、先程述べたのとは逆に、現像液や方式を変えれば、現像の仕上がりはたしかに変わる。コメント欄にも書いた、「クロス現像」といった現像だけでなく、現像する薬液や手法によって、ハイライトを救ったり、増感したり、コントラストを強調したり弱めたり、結構いろんな事ができる。ただ、当たり前ながらこうした現像をすべて店舗でやろうとすると、店ごとの仕上がりがばらばらになるだけでなく、いちいち機械の中を薬液を総取っ替えするなどの必要性が生じてしまい現実的ではないため、その他の現像方法は基本的には個人の範疇にとどまっている。


じゃあ、なんで色が違うのさ

まず端的に言えば、「データ化する際に写真屋さんが頑張ったり、機械が頑張ったりしてるんだよ!」ということである。現像方式は変わらないのだから、フィルムごとに出てくるネガは大体は同じ。

ただ、データ化のためのスキャンを行う機種や人間は異なるから、そこで差が出てくる。まず機械の話。有名なのは、フジの「FRONTIER」、ノーリツの「プレシジョン」シリーズだ。実は詳しい人にとっては、この機械が違うことはデータ化の仕上がりがかなり異なることを表しているため、「ノーリツ使ってるらしいからあの店はちょっと……」とすらなったりするくらい。

どっちがいいというわけではないが、フジはややパリッとしたしっかりした発色であり、ノーリツはややおだやかな傾向がある……らしい。ちなみに、ノーリツの操作画面はこんな感じ。(以下URLよりお借りしました。)

こんな感じで、色の強弱をCMYでつけたり、濃度自体を変更したり、そうした設定がいろいろと画像の取り込み時にできるようになっている。もちろん、自動補正だけをするとこともあるものの、各々のお店はここでのパラメータなどに独自の良い数値などを決めており、一番最初に上げておられた写真屋さんには、そのあたりにかなりのノウハウが在るのだろう。

つまり、現像も大事だが、この、「データ化」という作業は、フィルムをデジタルでも使いたいユーザーにとっては、非常に大事な手順なのだ。ここでの色味の補正がうまくいっていないと、思っていたようなデータが上がってこなかったり、そのフィルムの本来の良さが活かされなかったりする。
ここまでを読んでわかってもらえたかと思うが、しっかりと自分好みのデータ化をしてもらえる店にデータ化をお願いできるということは、撮影者にとっては非常に大きな利点となりうる。自分で色味をコントロールするのではなく、写真屋さんに手伝ってもらいながら色味を作り上げていけば、表現方法が大きく飛躍できる人だっているはずだ。


そして、このデータ化の際の画質も、当然に大きな要素の一つだ。一般的なデータ化というのは、4BASE(約150万画素)、16BASE(約600万画素)のどちらかでの読み取りになっているのだが、実はこれが「初心者がフィルムの画質が悪いと思い込ませている重大な原因」になっている。


フィルムは想像以上に高画質

35mmの小さなフィルムから、一体何万画素のデータができるだろうか。実はこれはフィルムにもよるが、2000万画素近くはいけることが多い

16BASEはあくまで規格というだけで、じつはそんなにフィルムの性能をすべて引き出しているわけではない。16BASEの約600万画素は、A4で印刷するのがしんどく感じる画素数だ。普段、高画質のデータ化をお願いして出てくるデータがこれだから、フィルムユーザーの中には、「フィルムってA3ですら印刷できない程度に画質が悪い」と思っている人々もいるらしい。

ただ、実際には全然そんなことはなく、フィルム上の粒子を本当にひと粒ずつ拾い上げることができるなら、A3での印刷くらいはへっちゃらだ。

自家スキャンをしたデータ。約1500万画素ほど。これを拡大すると、

こんな感じ。普通にディティールが残っているのがわかるはずだ。
こんなふうに、データ化をしっかりとしたお店で高画質でやってもらったり、自分ですることにより、より、フィルムにおいても好みの表現に近づくことができる。


まとめ

フィルムの現像はデジタルの現像と違うこと、データ化は非常に重要な過程であることがわかってもらえただろうか。このあたりを意識しながらフィルムについての携わり方を考えていくことで、新たな一歩が踏み出せるようになればいいなぁと思う。そして願わくば、ずぶずぶとフィルム沼にハマりますことを。

ちなみにおまけだが、フィルムの現像やプリントは、昔から「暗室」(=dark room=ダークルーム)で行われてきたが、デジタルの現像(RAWデータからJpgデータなどに変換して書き出すこと)は、「明室」(=light room)で行われていたりします。心憎いネーミングだなぁ。



*1……増感現像、クロスプロセス現像などがこれに当たるが、このあたりには一歩進んだ癖の強い表現の沼が広がっているため、知りたい人は各自で調べること。

*2……ちなみに、エクター現像もフォロワーさん情報によれば、「厳密に管理された薬液でのC-41現像」なんだとか。要検証。

*3……特に自家現像といって、自分たちで薬液を調達し、家で現像をする人々が用いる現像方式は非常に多種多様であり、家ごとにレシピがあるとかないとか。ちなみに先ほどのD-76は非常に有名な現像液であるため、各社のモノクロネガの現像データ表にはほぼ乗っているが、処理方法はネガごとに異なる。そのため、ひっくるめて「D-76現像」と呼ぶのは、やや強引とも言える。

*4……後から聞くと、この方自身はしっかりと理解をされている方であった。早とちりすいません。ただ、読者の方が必ずしも正しい理解をしていなかったのを多数見たので、疑問の起点として、引用記事は残すことにしました。


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