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他担当Pから見た「佐久間まゆ」について~松原早耶とどんな関係を築きうるか

※ニコニコブログに2018年12月25日に投稿した記事を移行したものです

本記事は佐久間まゆ Advent Calender 2018の12/23担当分です。

はじめに

こんにちは、ききょうと言います。
他担当Pから見た佐久間まゆについての記事でも構わない、とのお言葉を受けて、まゆアドカレに参加させていただきます。

さて、私自身は前川みく、松原早耶、輿水幸子を担当しているのですが、今回は主に松原早耶担当Pの目線でこの記事を書いています。。というのも、まゆと早耶には"表面上"多くの共通点が存在するためです。両者は似ているのか/似ていないのか、その結果として、2人にどんな関係が想定・期待できるか探ろう、というのが本記事の主目的です。

また、この作業を通して、他担当Pである私が捉えた「佐久間まゆ」像についても記載しています。
※結果的に、こちらの比重がだいぶ大きくなりました。

なお、今回の記事執筆にあたって、大慌てで佐久間まゆの台詞に目を通しました。その際には、以下のサイトを参考に、台詞を読み込んでいます。

時間や手持ちカードの関係でボイスに触れられていないほか、テキストも拾えていない箇所があるかと思います。その中で、他担当Pがどういう輪郭を掴み、描いたか、というサンプルとして、どうぞご覧ください。

1.他担当の目に映る「佐久間まゆ」

まゆと早耶の比較をする前に、まずは、私が佐久間まゆをどう捉えたか、どこに着目したか、まとめたいと思います。

1-1.「運命」という点、「永遠」という線
まゆのキーワードとして「運命」があることは漠然と知っていましたが、同様に「永遠」が頻出していることが印象に残りました。この両単語がセットで印象に残ったのは、「運命」が必ずしも「永遠」を内包していないように読み取れたからです。

「運命」という言葉からイメージしていたのは、過去から未来を通して確定された双方向の関係性でした。しかし、台詞から見えてくるのは、「まゆが生まれた理由」という片方向で、かつ、物語を確定するには至らない「運命」の姿でした。

初めて貴方を見たとき、まゆ、全身に電気が走ったみたいになって……気づいたんです。
これは『運命の出会い』だって。Pさんに会って、添い遂げるために、まゆはこの世に生まれたんだと思うんです。
デレステ・R佐久間まゆ特訓エピソード

「将来どうなるか」という確定的な未来を示すものではなく、「将来(まゆが)どうあるべきか」という行動規範という形で「運命」が示されています。その意味で「運命」は、まゆが生まれた理由として常に抱えていく"点"であり、過去・未来を規定するような"線"ではない、という印象が強いです。

過去・未来を規定しないという点では、何より、「運命」が"まゆにとっての"生まれた理由として語られている点が印象的でした。この語りには、Pにとって「運命」であるかが明示されていません。相手となるPの在り様が含まれないため、とりわけ未来に不確定要素が入り込む余地が大きいように感じます。

一方で、まゆはこの点に意識的だと感じる箇所も多いです、例えば、イリュージョニスタ特訓前の「幸子ちゃん風に言うと、自称・運命の相手です♪いつかは、自称じゃなく…」という台詞は、この点が端的に表れているように思います。まゆの行き過ぎとも言える"Pのための"行動は、こうした不安とも関連するのかもしれません。

そして、「運命」を確たるものにする、すなわち、"点"としての現在を、過去・未来を通じた"線"として結びつけるものとして、「永遠」というワードが頻出するようにも感じます。それは、時に「ずっと」という台詞でも表れ、また、「赤い糸」というモチーフで表れるものでもあるでしょう。

しかし、この「永遠」や「赤い糸」についても、決して妄信していない、と言えるでしょう。既にかなり前のテキストになってしまいますが、七夕キャンペーン時の台詞は印象的です。

『運命の赤いリボンが、結びついていますように…』
2015年七夕キャンペーン

 繋がりを確たるものと妄信することは決してなく(繋がりを信頼はしているとは思いますが)、キズナを永遠とするため不断の努力を続ける様は非常に魅力的だな、と感じました。

そして、"点"を"線"にするという意味では、例えば、イリュージョニスタの「ワンナイトイリュージョン」という主題、オンリーユアキューピッド思い出エピソード後編などが印象的です。ここに限らず、刹那や瞬間を切り取るようなワードが多いように感じますが、その点への1つの回答が見えたと思います。

だからみなさん、今宵は遊びましょう?ワンナイト・イリュージョンが、ずっと続くように祈って♪
[イリュージョニスタ!]佐久間まゆ・特訓エピソード
何より嬉しいのは……プロデューサーさんがまゆを想って、まゆの願いを、できる限りでも叶えようとしてくれること……。だからこのひとときは、日が沈むまでにしましょう。プロデューサーさんの想いは、今だけの幻じゃないって、信じられますから。夜になって、鮮やかな色が消えてしまっても……心には、永遠に残ります。ふたりで過ごした、ひとときの幸せ……ふふっ♪
[オンリーユアキューピッド]佐久間まゆ・思い出エピソード後編

"点"を繰り返し描くことで、また、思い出として残すことで"線"へと変えていく、という営みが見えるように思います。そしてこれは、"日記に記録する"というまゆの習慣とも密接に結びつく営みと言えるでしょう。

「運命」を信じ、「永遠」を願い、それでいて"妄信"せず……。しかし、これまで何度も紡ぎ、結んできた「赤い糸」を"信じて"、不断の努力をしているように映りました。

1-2.関係する欲求としての「まなざし」
まゆの台詞を読んでいて非常に印象的だったのが、見てもらうことへの言及が非常に多いことでした。他の子を見ないでほしい、という台詞ももちろん少なからずありますが、それを差し引いても、視線の要求が非常に多い印象です。

この"見ること"への言及は、"まゆの台詞を読む私"を強く意識させるものでした。個人的な感覚ですが、(極めて無粋なことを言えば)ゲーム内の存在である彼女たちは、我々が見つめるとき、あるいは、想いを傾けるとき、語るとき、確かに"存在している"と思います。翻って、"見ない"ならばその存在は危うくなるでしょう。まゆの台詞は、こうした構造に意識的なように感じられました。

この点では、以下の台詞が特に印象的でした。

まゆの物語は◯◯さんと出会って始まったの…だから運命の赤いリボンは貴方に繋がってるって信じてるんです。このリリボンが絡みついて…貴方と私を強く結びつけてくれるって…
[深紅の絆]佐久間まゆ+

出会ったことで"私"とまゆの間に関係・物語が生まれ、「佐久間まゆ」が存在し始めた…という視点を支えうる台詞だと感じました。まゆを視界に捉えない限り、(少なくともプレイしている本人の世界では)佐久間まゆの物語は動かないのです。

一方で、まゆもまた、こちらを"見て"います。それは台詞にも表れているほか、何より日記にPの行動が記録されていることに、よく表れています。そして、双方向の見る/見られる関係によって、"私"≒Pとまゆの間に関係が結ばれます。この点でとりわけ示唆的なのが、デレステのメモリアルコミュ5でしょう。

まゆが知らないはずのことが書かれている……
(中略)
まゆ「いっぱい読まれて、うふふ、照れちゃいます。でも、わかってもらえましたか?まゆは、毎日貴方のことを考えてるんですよ?」
佐久間まゆ・メモリアルコミュ5(「続きを読む」を最後まで選択した場合)

ここで提示されるのは、一緒に過ごしていない時間のPについてもまゆが把握しているという事実です。この事実からは、こちらがまゆを見ていなくとも、まゆは"常にこちらを見ている"ことが示唆されます。すなわち、まゆからは"常に見る"という行為を通して、関係が常に投げかけられていると言えるでしょう。

このコミュの上手いな、と感じる点は、Pがどこまで日記を読みうるか、まゆがコントロールしていると思われる点です。まゆの登場の仕方を見るに、"ここまでは読んでいい"という範囲で開示していたように思います。モバマスでは、Pにも中身は秘密としている台詞がいくつか存在するので、整合性を取るなら、ここが落としどころになるでしょうか。

そうであれば、このコミュにおける日記の部分開示は、まゆが常にPを見ていることを示す意図を強く感じます(もちろん、まゆの秘密を前にどう振る舞うかを見ていた、という側面もあるでしょう)。また、部分的な開示に留めることで、まゆが"Pを常に見ている"という物語が、きれいに成立する余地が残ります。私たちのもとには、「知らないはずのことすらも把握している佐久間まゆ」という情報が残り、本当にすべて把握しているのか、という真相は触れられない奥に隠されます。

となると、まゆとPが関係性を結ぶのに必要なのは、常に"Pからの視線"だけとなります。まゆは常に見ているからです。そして、相互に視線が交わる"点"、すなわち、まゆとPが物語を紡ぎ、思い出を増やした時間が日記に記録され、"線"になります。まゆを見つめる度に、「永遠」へと繋がる"線"が伸びていくと言えるでしょう。

1-3.不定形の「佐久間まゆ」
佐久間まゆがどういう子なのか、台詞を読むほどに、あるいは、語るほどに見えづらくなる印象が強いです。というのも、まゆ自身がこちらの望む在り方を体現しようとするからです。

まゆの人生はもう○○さんのものなんですから、これからも…ずーっと貴方好みのまゆにプロデュースして下さいね♪
[バレンタインパーティー]佐久間まゆ+

この点からいくと、「佐久間まゆ」について語ったところに「佐久間まゆ」が成立する、といったトートロジーが成立し、佐久間まゆがどうしても掴みづらいです。Pの望み、夢、まなざし、解釈が「佐久間まゆ」を練り上げるという点では、日菜子が「むふふ。まゆさんの魅力は、想像力をかき立てるんですよ~♪」(ドリームアウェイ)と語っていたことが非常に印象的です。

また、アイドルLIVEロワイヤル・雨の日SPのボスとして登場したまゆの台詞もこの点で印象的です。

まゆもあなたの側でそっと咲くアジサイになれたらなって…♪
アジサイの色が変わる理由…うふふ、土にあるんですよぉ。ほら…
アイドルLIVEロワイヤル・雨の日SP・佐久間まゆ

アジサイとまゆが重ねられるのは、土壌の状態によって色が変わるという性質からでしょう。誰のもとで咲くか、これによって「佐久間まゆ」が変わってくることを示唆しているように思います。

一方で、まゆの側からも、こちらの在り方を規定しています。それが、他でもない、"プロデューサーとアイドル"という関係でしょう。

貴方はプロデューサーで…佐久間まゆはアイドルだから…私と貴方は決して結ばれないって…知ってるから…
ううん…悲しくなんてないんです。だって…私がアイドルならこれからもプロデュースし続けてもらえるでしょ…?
結ばれないからこそ…ずっと寄り添えるって…まゆはそう思うの…。だから…ねぇ?プロデューサーさん…
これからも、ずっと…ずっと…ずーっと…永遠に、佐久間まゆのプロデューサーでいてくれるって…誓ってくれますか…
[永遠のキズナ]佐久間まゆ・思い出エピソード後編

 前節で語ったメタ的な視点を導入するならば、"プロデューサーとアイドル"であることによって、「アイドルマスターシンデレラガールズ」を通して会える、という視点も意識できるように思います。そして、この関係のなかで「永遠」を求めるのです。

 この視点を導入するうえでは、5周年アイプロの「運命が二人を巡り合わせ、そして隔てている…そんな絆でも、まゆは受け入れますから…」という台詞も印象的です。プレイヤーとキャラクターという関係性が、ある程度意識されているように読むこともできるでしょう。

 では、この「壁」の前に立ち止まっているかというとそうでもない、というのがまゆの強い部分かな、と思います。例えば、CD発売時のログインキャンペーン時の「ほらぁ、Pさん♪このCDは、私たち二人のアイがカタチになったものなんです…そう思いませんか」という台詞は印象的です。「カタチ」、それも、我々が手に取れるものを強く指示している言葉に、"こちら側への"意識を感じました。

同様に、まゆが「Pの隣」という位置を気に入っている点に強さを感じます。画面越しに向かい合うのではなく、同じ物語上で、横に立つことを求められているような印象を受けました。この印象は、体温を伝え合う・求めあう台詞、手に触れようという台詞からも感じました。

また、Pとの関係という点では、"排他的な相互所有"が特徴的かと感じました。まゆから、自身の心と身体はすべてPだけのもの、と語られる機会が多いだけでなく、Pの心と身体はまゆだけのもの、との言及も見られました。そして、その関係を突き詰めた先に、同一化があると言えるでしょう。

いつも思うんです。一日中、○○さんと一緒にいられたらいいのにって
身も心も○○さんとひとつになったら、この願いも叶うのかな…
アイドルプロデュース5thアニバーサリー・佐久間まゆコミュ

この欲求は、「永遠」を求めるまゆの、究極的な回答ではないかと感じます。

2.佐久間まゆと松原早耶

前章で記述した「佐久間まゆ」観も踏まえつつ、まゆと早耶の共通点をリストアップしていきます。2人がいかに相似しているか、あるいは、異なっているかまとめます。このアプローチによって、双方個々人の輪郭をより鮮明にするとともに、2人がどういう関係を築くことができるか想像するための材料とします。

2-1.まゆと早耶の共通点
まず、なぜこの両者を比較するのか簡単に説明します。端的に言えば、早耶が私の担当だからですが、もう少し詳細に言えば、少なからず共通点のある2人ながら絡みがないので、関係性にどんな可能性を見出せるか気になった、ということが挙げられます。

まゆと早耶が似ている、という感覚は早耶の担当を自称する以前よりありました。というのも、以前、まとめサイトで「まゆに隠れがちだけど早耶もかなりPへの愛が重い」といった旨のコメントを見た記憶が未だに強く残っているからです。既にコメントを見た当時から数年経ているはずですが、その間にまゆ・早耶が紡いできた物語も踏まえつつ、両者の共通点をリストアップしていきます。

①ハートを多用している
まゆであれば、恋愛シンドローム特訓後が特に印象的ですが、双方ともにハートという単語、あるいはモチーフがよく用いられているように思います。早耶の場合は、台詞に頻出するほか、手でハートポーズを作っているカード(R特訓前、スウィートドリーマー特訓後)もあります。何より、両者ともにサインにハートが描かれています。

②日記/ブログを書いている
厳密には別物ですが、日々の記録を書き留めている点は2人の共通点です。まゆであれば日記が、早耶であれば、趣味としても記載されているブログが、それぞれ該当します。

いずれも熱心に取り組んでいることも共通点です。デレステの1コマを見るに、まゆは1年足らずで日記帳が10冊を突破したとのことで、月1冊近くは書いていることがうかがえます。紙媒体なので手書きと考えると凄まじいな、と感嘆するばかりです。

一方の早耶は、ブログを読者モデル時代から継続しています。流行が変わりやすい早耶が、変わらずに継続していることでもあります。評価が高いのか、チャーミーギフトの特訓後にて、ブログが書籍化されたことも描かれました。タイトルは『さやの全部見せてあげる♪』で、表紙には早耶の顔と共にハートが散りばめられていました。

③元読者モデル
ぷちデレラ、メモリアルコミュ1などで明らかな通り、両者ともPと出会うまでは読者モデルをやっていました。まゆはロリータ雑誌の読者モデルであったことが、デレステのR特訓エピソードで語られていますが、早耶については現状そこまで情報が多くありません(服装を見るに近そうな気はする…?)。

両者とも同じく読者モデル出身ということで、撮影には慣れている描写が見受けられます。また、ファッションへの知識があることは、他のアイドルとの関係で共に描かれています。まゆであればデレステのストーリーコミュ21話にて、フレデリカが番組で着る衣装選びにアドバイスするシーンがありました。早耶であれば、アイドルバラエティ・手作りLIVEプロジェクトにて、衣装班として紗南のアイデアを衣装へと落とし込む役割を担いました。

デレステのストーリーコミュ8話にて、美嘉とまゆが「モデル出身組」として知り合いになっていたことを踏まえると、まゆと早耶にも接点があるのではないかと考えていますが、果たして…。

④ダンスが苦手
読者モデル出身として両社が早々に直面したのが、アイドルはやることが多い(特に歌、ダンス)ということでした。そのなかでも、2人ともダンスが不得意という共通項があります。いずれも体力不足が描写されたほか、単純にステップが上手く踏めないといった描写もありました。

⑤スカウトされたのではなく押し掛けた
アイドルになるまでの経緯が非常に似通っています。読者モデル時代、偶然出会ったPのもとに押し掛ける形でアイドルになりました。私の担当だと、前川みくも同様の経緯でアイドルになっています。

ただ、みく以上に両者の物語に近しさがあるのは、"Pと出会う"という機会を一度踏まえたうえで決断してきたことに他なりません。その"出会い"があったからこそ、両者は読者モデルを辞めてまで、Pのもとに押し掛けたわけです。

⑥Pへの愛が重い(と見られている)
前章を踏まえ、まゆへの認識は依然としてこの通り変わりません。

早耶についても、この認識はある程度はあるのかな、と思っています。甘えんぼうを自称していることもあり、Pに甘える姿、「可愛い」という言葉をねだる場面が多いです。その点だけを切り取れば、いわゆる「Pラブ勢」と言えますが、先述のアイドルになるまでの経緯を踏まえると、「Pへの愛が重い」という見方に説得力が増してきます。

また、2014年のクリスマスキャンペーンにて、早耶からのプレゼントは「早耶の少し重たいプレゼント」であり、テキストが「プロデューサーへの思いが丹念にしたためられた分厚い手紙。すこし重い。」だったことも、この見方を裏付ける力があります。

2-2.まゆと早耶の相違点
まゆと早耶は、出会いとバックグラウンド、Pとの関係という物語の大きな部分が類似していることを前節で指摘しました。この2人の関係に大きな可能性を感じるのは、他でもないこの類似が理由です。物語の始点、伴奏者との距離感が似ている(と考えうる)2人が、7年分進んできた先でどう交わるか見たいのです。

一方で、既に指摘した類似点は、"表面上"似ているだけ、という側面もあります。類似点を両者がどう意味づけているか、今度はこの相違点を指摘していきます。この"似ているようで違う"箇所が2人にとっての個性でもあり、築きうる関係性に大きくインパクトを持つ箇所だと思います。

①ハートを多用している
両者ともに、ハートという言葉を「好意的な気持ち」として用いているように思います。また、双方ともにやり取りするものとしてハートを描いていますが、そのやり取りする相手という点で相違が見られます。

まゆの場合は、ハートを届ける/受け取る相手として、基本的にPしか描かれません。一方の早耶は、Pのハートをもらうことに意欲を見せる台詞はあるものの、ハートをやり取りする相手はPに限定されません。早耶のハートはファン相手にも惜しげもなく配るものです。

はぁい、早耶のファンにハートをプレゼントでぇす♪これをもらったら、夢の中に早耶が出てきちゃうかもぉ。んふっ、目がさめるまで甘ぁい世界をたっぷり味わってくださいねぇ☆
[スウィートドリーマー]松原早耶+

この点は、例えばロワイヤルハートの特訓後に象徴的です。モバマスのカードに限定されますが、サインの位置が差し出した手の上に配置されており、早耶のハートをあげているように見える工夫がされています(偶然の産物かもしれませんが…)。

②日記/ブログを書いている
大きな相違点は、書いたものが外に開かれているかどうかでしょう。既述の通り、早耶のブログは書籍化されるなど広く開かれていることは言うまでもありません。一方、まゆの日記帳は、何が書かれているかすらも秘匿されています。

両者とも、"好きなもの"について記載していますが、まゆが思い出の記録や情報整理を目的としている(と考えられる)ことに対して、早耶は発信が主目的です。

早耶がブログを書くのは、自分へのおまじないでもあるんですぅ。読んでくれるファンがいて、いつも繋がっているんだって思うと、心がすぅーっと落ち着くんですよぉ。
早耶ね。アイドルになる前は、自分がひとりぼっちだなって思ってたときもあったの。でも、いまの早耶には、応援してくれる人がたくさんいる。
ブログでも、みんなが早耶のことを見てくれて……。でも、それだけじゃなくて、早耶もみんなのことを見てるんだよって伝えたい……。その手段のひとつがブログなんですぅ。
[キューティーチアー]松原早耶特訓エピソード

③元読者モデル
読者モデルとしてどれだけ活動していたか、という点から相違点を見出したいところですが、早耶の情報があまり多くないのが現状です。この点が明らかになってくると、まゆと早耶を"読者モデル時代からの関係"に落とし込んで絡ませる余地が出てくるかな、と楽しみな部分です。

④ダンスが苦手
双方ともにダンスが苦手でしたが、乗り越える際のマインドがかなり異なっていました。Pのためにもちゃんとしたアイドルになろうと努力したまゆの台詞には鬼気迫るものを感じました。

…リズムが合わなくて足がついていかない…息も…でも……やらなくちゃ…やれなくちゃ…
ぷちデレラ・佐久間まゆ
ねぇ、褒めてくれますか?まゆ、プロデューサーさんに褒めてもらいたくて、振り付け覚えるためにすべてを犠牲にしたんです。あっ、ごめんなさい、心配させちゃって。ちょっと徹夜したり、いろんな人に協力してもらったりしたくらいですよぉ。うふ♪
佐久間まゆ・ぷちエピソード7

一方の早耶は、ぷちエピソード3では基礎体力作りが続くことに嫌気がさして、Pに文句を言いにきます。それでも、Pの言葉を聞き入れて努力を続けました。ここに見えるまゆと早耶の違いは、決して努力を出来る/出来ない、という点ではありません。大きな違いは、努力の理由をどこに求めるかです。

早耶が基礎体力作りに不満を漏らしたのは、(きついから、という理由もあるでしょうが)そのレッスンに意味があると分からなかったからだと思います。より正確に言うならば、早耶が目指す「可愛い」に寄与すると見えなかったからだと思います。「ムキムキになったら全然可愛くないでじゃないですかぁ。」と基礎体力作りに不平を漏らす早耶を、Pは説得したわけですが、このぷちエピソードは次の台詞で締められます。

ん~……プロデューサーさんがそこまで言うなら、もうちょっとやってみますけどぉ。でもぉ……ほんとに、こんなんでいいのぉ?
松原早耶・ぷちエピソード3

その後、基礎体力作りがダンスの出来に反映されていること、アイドルとして必要であることを理解し、積極的に取り組んでいきます。そのうえで、徐々に出来ていくことに楽しさを見出していきました。

まゆの場合、同じくぷちデレラ台詞の「プロデューサーさんのアイドルなら、ダンス、もっと上手にならないと…もっと…もっと…もっと…」に見えるように、努力の理由が外側に置かれています(まゆから見たPを「外側」と評するべきかはともかくとして)。対する早耶は、努力の理由が内側に置かれています。

⑤スカウトされたのではなく押し掛けた
共に、読者モデルを辞めてPの元へ押し掛けた2人ですが、押し掛けるに至った理由は異なります。まゆの場合は、度々語られる「運命」を感じたからでした。デレステのメモリアルコミュ1を見ると、最初に出会った時には押し掛けるに足るやり取りがあったわけではなく、Pに至ってはまゆのことを覚えていませんでした。

一方の早耶は、押し掛けるに足る理由が、最初にあったときのやり取りに含まれていました。自分なりに可愛くなろうと努力しているにもかかわらず、周囲から「出しゃばっている」などと悪く言われている早耶に対して、「頑張っている。君は可愛いよ」と、努力も含めて承認したのがPでした(デレステ・メモリアルコミュ1)。このやり取りがあったからこそ、早耶は押し掛けたと言えるのです。

異なる理由から押し掛けた2人ですが、Pの対応もまた異なりました。手を取って、とまゆに迫られたPは、その言葉のままに手を取り、まゆを受け入れることになりました(デレステ・メモリアルコミュ1)。一方、早耶の場合は、「プロデュースお願いねぇ♪」の言葉に対して、Pは「はい?」と返すばかりで、明確に手を取る描写はありません。そして、これが「勝手についていく」という、早耶の当初の姿勢に繋がります。

⑥Pへの愛が重い(と見られている)
前章、および、ここまで書いてきた相違点からも見える通り、Pに向ける感情の質はまゆ、早耶でまるで違うでしょう。まゆの場合は、その存在の根深くにPが存在し、行動原理や価値観に深く影響しています。一方の早耶は、早耶が思う「可愛い」に向かって、Pの言葉を大切に聞き入れながら進んできました。思わず押し掛ける程にはPとの出会い、そしてPそのものが大切ではありますが、まゆのそれとは決定的に質が違います。

この点では、智恵理がLove∞Destinyのイベントコミュ3話で語った内容が強く早耶にあてはまるでしょう。

智恵理「私、プロデューサーさんのためにお仕事してるって言ってもおかしくないと思うんです。も、もちろん、応援してくれるファンの人のためもありますけどっ。」
(中略)
智恵理「だって……だって、アイドルにしてくれたんですよ。無口で、人見知りで、泣き虫で、ダメなところばっかりの私を、アイドルにしてくれた人なんですっ。」
智恵理「だから、そのお礼の気持ちは、ずっと持ってるんですっ。直接は言えないけど、こうしてお仕事に選んでもらったら、頑張ろうって、いつも思うんです。」
智恵理「頑張って、精一杯歌って踊って、ファンの人にはいっぱい喜んでほしいです。けど、それだけじゃなくて、プロデューサーさんにも喜んでもらいたいって思ってて。」
Love∞Destinyコミュ3話

このコミュは「プロデューサーのため」と臆面なく言ってのけるまゆを理解しようという話から出た内容ではありましたが、そのうえでなお、まゆの在り方は上記のみではとらえきることができないように感じるのです。そして、それこそがまゆと早耶の違いだと思うのです。

3.まとめ

1章で他担当Pである私が見た「佐久間まゆ」について、2章で佐久間まゆと松原早耶の類似・相違を書いてきました。本記事の目的は、まゆと早耶がどう関係を築きうるか、という点なので、この点に絞ってまとめます。

まず、早耶の担当Pとして言うならば、早耶は誰とでも良好な関係を築けると思っています。カラフルリフレッシュの「みんなの『好き』、早耶も好き!」の台詞に代表されるように、周囲の「好き」を受け止め、寄り添える子です。

では、なぜまゆとの関係を推すのかと言えば、「好き」に留まらない点で共通項を持っているからです。アイドル以前、アイドルになった経緯という、重要なバックグラウンド、物語の始点を共有できることは、2人の関係を考える際の大きな強みだと思っています。

どんな気持ちで読者モデルを辞めたのか、どれだけの決意でPについてきたのか、ここまで歩んできてどうなのか……。まゆと早耶が、懐かしむように、でも、大切な宝物に触れるように語り合う姿を見たい欲求は高いです。もちろん、まゆが押し掛けるまでに至った「運命」は、早耶には十分には理解できないでしょう。でも、「何か」のために現在をなげうって押し掛ける決意には共感できるはずなのです。

悪口を言われても自身が思う「可愛い」を貫いた早耶、Pにふさわしいアイドルになるため無茶な努力もしたまゆ、など、深いところで分かり合える土壌があるように思います。深いところを預け合う2人が見てみたいのです。それが、この2人なら"共通項として"語り合えると思うのです。

もちろん、ファッションや「好き」について、うふふ、と笑いながら穏やかに過ごす2人も凄く見たいです。ハートやリボンを持ち寄ってみたり、まゆに編み物を教わる早耶もありでしょうか(早耶も幼少時に母親から手芸を教わっていました)。

お互いに一途で、Pとの距離が近い、という点での絡みも面白そうです。早耶は甘え上手ながら、Pにあしらわれがちで、まゆがPと築いている関係とは異なります。互いが、それぞれの関係を見てどう動くか、なんてところも想像すると楽しいでしょう。

いずれにせよ、佐久間まゆと松原早耶が出会う日を待っています。

おわりに

モバマスはゲーム開始から7年、デレステもゲーム開始から3年が経過し、(アイドルによって差はあるものの)個々人に紐づくテキストの量は膨大になりました。今回はそれを一気に追いかけながら、考えを深めていきました。

休憩したり、作業したり、集中力が散漫だったり……ということはあったものの、1週目は12時間にわたって佐久間まゆの台詞に触れ続けることとなりました。今から、過去を振り返りつつアイドルを追いかける難しさを改めて痛感しました。

一方で、過去からテキストを眺める中で変わっていくこと/変わらないこと、特別な文脈を見つけていく作業は相変わらず面白く、刺激に満ちていました。この積み重ねがまゆをはじめ、シンデレラガールズの女の子達をなおのこと魅力的にしていると感じます。

とはいえ、振り返ろうと思えば散逸したテキストが多いほか、何が散逸しているかも見えづらいものです。そのなかで、今回参考にしたサイトには本当にお世話になりました。ありがとうございます。

いつかは、と思っていたまゆと早耶の比較を出来たこと、最初期、CuPを選ぶ選択を後押しした理由の1人でもあるまゆにじっくり触れられたことも嬉しかったです。まゆの台詞は、通して整理、理解するのがなかなかに難しかったのですが(今も全然近づけていない)、様々な魅力を再発見出来ました。

一方で、どうしても"外から眺めた"佐久間まゆに終始してしまった感は否めません。"ゲーム内で言葉を交わす佐久間まゆの担当P"としての視点がどうしても弱く、その点で、良くも悪くも、"担当Pである私が見た"佐久間まゆらしい話になったかと思います。

本文中にも書きましたが、「佐久間まゆ」について語ったところに「佐久間まゆ」の像が結ばれるような、佐久間まゆのトートロジーに陥り、書いていて混乱を極めました。佐久間まゆ、全然わからん…。またの機会に、可愛らしいところ(愛らしい台詞がそれはもうたくさんありました)にもじっくり触れたいと思います。素敵な機会をありがとうございました。

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