5月29日

天才

よく自分のことを「天才だ」と言う。

 ツイッターでのツイートだったり、友達相手にだったり、最近ではお仕事のお相手にも言うようになった。

「急ぎになってしまうのですが、〇〇日までにイラスト仕上げられますか?」
「大丈夫です、天才ですから」

痛ってえわなんだコイツ。いざ文章に起こしたら辛い。いま見ると桜木花道かよ感もあるけどスラダンは微妙に世代じゃないのでピンときていなかった。
もちろん本気で自分を天才とは思っていない。冗談です。わかってやっているんです。
 
 単純に、自分を鼓舞しているだけなのだ。いつから言い始めたのはもう覚えていないが、たしか最初はまだ自分の心の中で言っていただけなのでまだマシだったはず。ネガティブ気質で自分に自信がない…という、わりとそのへんによくいるタイプの奴なので、とりあえず自分で自分を「いやきっと天才だからできるはずだ」と言って励ましていた。自信がない故にいっそスケールがでかめのバカバカしい励ましのほうが素直に受け止められた。自分から自分宛でも。
いまでもそれは変わらず、イラストのネタが思い浮かばないときに「いやいや天才なんだから…なにか浮かぶはずだ…」と自分を鼓舞する。

いつ頃からかそれを口にだして、他人に言うようになった。
なんでそんな奇行を…とよくよく考えてみたら、ここ数年、いろいろあってありがたいことに人から褒めてもらえる機会が増えたからかもしれない。ツイッターのフォロワーさんも増えて、自分の描いたイラストに、

「すごくいいイラストですね!さすがです!」

こんな感じの賛辞のコメントをくれる人がとても増えた。ものすごく嬉しいし、励みになる。ニヤニヤしながら返信をする。

「ありがとうございます! まあ天才ですからね!」

 いまここに書いてて思った。うるせえよ。
 フォロワーさんへの返信ならまだこのケツの一言がつく頻度は少ないのだが、友人たちと話しているときに褒められると、高確率で(ついでにいうとこちらは面と向かって話しているという状況)

「最近すごいねー、やるやんけー」
「せやろ? まあ天才だから」

 この返し方である。うるせえよ。
 要は照れ隠しでもあるのだ。自分で照れ隠しなんですと言っているこの文章も相当情けない。
 最初は自分で自分を励ましていたというのに、いざ他人から褒められると「いやいや天才だから当たり前ですわでもありがとうございまウッヘヘヘヘwwwww(照」みたいな感じになる。スマートな褒め言葉の受け取り方がいまだにわかっていなくて、この調子こき野郎みたいな余計な言葉をつい言ってしまう。

 これだけでもだいぶ自分の面倒くささがわかって辛いのだが、実はまたひとつねじくれた問題がある。特にリアルで知り合った人にイラスト描いてるんです、と言ったときにいただくお言葉。

「生まれながらの才能があっていいね!」
 
 これ。つまり「天才ですね」と言われているものだと思うのだが(?)これを言われると、もう心の中の床で手足をジタバタさせながら「違うよぉぉぉぉおお努力なの!!努力したのぉおお!!生まれつきじゃないのおおお!!!」って騒いでしまうのである。
もちろんリアルでは「いやーそんなことないっすよー」と謙遜の言葉を返すのだが、心の中の自分はスーパーの菓子売り場で泣きながら大回転している子供のようになっているのである。じゃあずっとそこでそうしてなさい。待ってよママーッ!!

 才能があるなんて言ってもらえるだけで贅沢なことだということはわかっているし、たぶん高確率で社交辞令なのだが、ともかくストレートに「生まれつきの才能がある=天才」的な褒め言葉は受け入れられないのである。普段は自分で自分を天才と称している奴がですよ奥さん。やばい。すごく面倒くさい。
こういうところが、まだ天才を自称するにあたり甘いと思う。才能があっていいね、にも「そう、実は天才なんですよ」とドヤ顔で返せるようになってこその自称天才ではなかろうか。
でもそこまでいったらいよいよアカン気もする、どうも、そんなグレーさんです。

…絵ばっかり描いていたから、ツイッターなどの思い付きの短文はともかく、自分の話を文章に書き起こすという行為がここまで内面をえぐってくるとは思わなかった。なにか絵以外にも趣味を…と思ってnoteをはじめてみましたが、一発目ですでに力尽きそうです。 こんなに精神力を使うとは思っていませんでした。以前からブログはじめようかなーと言ってる友人たちがまわりに何人かいるのですが、なかなか公開しはじめないもんでして、「ブログはじめるはじめる言ってて、全然やらねーじゃねーか!」となじったことを少し後悔しております。なかなか大変ねこれ。悪かったよ。
特にテーマも決めてないし、ツイッターの延長みたいな感じでいいだろ…と思ったら全然まとまらなくてもう1927文字目ですよ。目標1500文字以内だったんですけどね。トータル2時間くらいかかってるし。

絵描いてる奴が講釈垂れたところでまともじゃないと思いますが、文章力を鍛えるためにも細々とでもなんとか続けたい。そんなにネタがあるのか、果たして続けられるのかも謎ですが。

天才だからたぶん大丈夫です。