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街場の音楽イベント 『Kiba Stock』

GWは閑散とした都内で過ごした。近所の木場公園にアマチュアバンドイベント『Kiba Stock』へワインとつまみを持って、初めての観覧に向かった。

広大な木場公園の一角で行われた。広場にある露店は、数も店構えも冴えなくにぎわいもなかった。いやゆる音楽フェスの賑やかさとはほど遠い。イベントへの期待値は下がりながら、階段状になった客席についた。入場無料だからか、客席は埋まり、立ち見も出ていた。

『Kiba Stock』は、1997年に有志が東京都と江東区に働きかけてはじまり、現在まで25回を重ねる。運営は江東区にあるライブハウスが中心となり、ボランティアで運営にあたり、年に1、2回の開催を継続しているそうだ。大きな公園にありがちな用途不明な造作物が、立派な舞台になっていた。黄色いTシャツを着た人たちが運営スタッフのようだった。年齢層は高めで中年以上の男性が多い。炎天下のなか、愉快そうに、細かに動いている。

5月3日、4日の2日間に渡り、朝から夕方まで行われるプログラム。今回はQueenのトリビュートバンド『QuoeenⅡ(クォイーン2 )』を目当てにいった。他に特別な期待もなかったこともあるが、映画『ボヘミアンラプソティー』2回観て、「Live Aid 1985」の動画も何度も見ていたことが理由だ。同じ目的の観客が多いのか、彼らの演目の前には人が増えてきて、にわかに注目が高まっていた。

舞台袖にフレディーらしき男性がいた。白のタンクトップに髭を生やし、立派な中年太りの出で立ちがみえた。ドラクエでいえば、トルネコにあたる。これはコメディーだろうなと期待値はさらに下がっていった。

セッティングが終わり、デブリーマーキュリー(本人曰く)が満面の笑みで登場した。会場は笑いに包まれた。他のメンバーはカツラを被り、本家に寄せている意識が伝わる。彼はキーボードは弾けないらしく、別のメンバーが担うのだと、また笑いが起こる。やがて彼は鍵盤の反対に座り、手を動かした。

耳馴染みのイントロがはじまる。演奏はしっかりとしている。
歌がはじまる。声量があり張りのある声が響く。
(*動画はQuoeenⅡ(クォイーン2 )さんに了解済み)

会場は、止まったかのように一瞬しずまった。「けっこうやるかも」と誰もが期待を裏切られたはず。フレディーを敬愛し、表情から動きまでよほど研究したことが伺える。歌はポイントは抑え、自分の持てる精一杯をやっていた。やがて、彼らパフォーマンスに会場が引き込まれていった。

「エーーオ!」の観客との掛け合いは鉄板だった。

また、若手ギタリストは、結構な腕前のようで、ギターソロで沸かせた。

確かなバンドメンバーの演奏に、デブリーマーキュリーのキャラとその努力が滲み出たパフォーマンスが重なり、一番の盛り上がりを見せたステージとなった。

結局3組の演奏を聴いて、会場をあとにした。アマチュアバンドの演奏をここまでしっかり聴いたことはない。出演者は大手新聞社の有志バンド、20年以上で続けて出演している人、空手の師範という人もいた。当然、それぞれ仕事をもちながら、合間を縫って練習し、バンド活動を続けている。機材の購入やスタジオでの練習費用はもちろん、イベントの出演料は出ないだろうし、時に持ち出しだってある。GWの大事な休日も費やしてもいる。

決して優れた演奏でも歌でもないかもしれない。ただ、純粋な「楽しみ」が溢れ、会場の穏やかでにこやかな雰囲気を作り出していた。

参照



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