そして、かつて想像していた人たち。

 時間が経ってしまったが排気口新作公演『時に想像しあった人たち』が終演した。もう2週間以上も前だ。終演直後からバタバタしていて、こうしてnoteに書くのもこんな風に秋の涼しさが板についた夕暮れまで長引いてしまった。

 出演者・スタッフの皆様、三鷹市芸術文化センターの皆様、そしてご来場頂いた全ての皆様に感謝と慈愛の見えない花束を。

 もう記憶が薄れている。机に散らばった台本のメモや手書きのプロットをゴミ箱に捨てたのは5日前。それから私は新しい台本作業をしている。まだまだ形にはなっていないがゆっくりと進んでいる。『時に想像しあった人たち』という作品を考える事はもう無くなった。その作品に流れていた時間も、その作品の周りに流れていた時間も、考えたり、何か意味を見出そうとする事もしなくなった。全ては波が攫った、何もない砂浜に戻った。

 それでも時間の連続性を信じるなら、その砂浜にあって「かつてここには美しいものがあった」ともしも聞こえる声は、どうか私のではなく、貴方の声であって欲しい。

 「時に想像しあった人たち」はそうして「かつて想像していた人たち」になった。

 夏の日は、それを作った私たちでも触れることの出来ない幻になった。でも私たちはその気になれば、何度も、何回も、新しい、幻を作る事が出来る。

 だから今は今を後悔しないよう手を伸ばしてぶつかる全てのものを抱きしめよう。私たちの周りの全てが時間に押し流されて幻になる前に。

 全ての暗い夜に、誰もいないような部屋の中で、合図もおくれない貴方の手の形だけは忘れない為に。

 全ての皆様に改めて感謝します。本当にありがとうございました。

 次のnoteからはまた色々お知らせあります。バタバタは続きます。遠距離恋愛も続きます。


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