鈍色の研究

最近の天気ときたら
拗ねたガキだけ集めた合唱コンクールを
聞くくらい意味がわからない。
詰まるところ早く終わって欲しいものだ。

いつか国語の先生が
パ行を含む漢字は、専らと慮るの2つがあると教えてくれた。どんな流れだったかは忘れたがこの2つと信じたい。
人を信じる自分を信じたい。

つい先日
お茶しないか?と、久しぶりに連絡がきた。
予定もないし呼ばれた喫茶店に行った。
お茶しないって連絡したのに
飲んでるのコーヒーなのでは?
って思ってるんじゃない?とカギヤさんは
おもむろに問いかけてきた。続けて
おもむろって漢字は徐って書くらしいね
と、文脈もなく教えてくれた。

ブラックコーヒーになにも入れてないのに
スプーンでカチャカチャしてるところを見ると
精神的に疲れてるのか、なにか悩みがあるのか
そんなことを考えながら、タバコに火をつけた。
デカすぎる灰皿には既に何本かのタバコが
ひしゃげており、だいぶ前から待ってたのか
そのタバコはもう冷えて動きはしない。

注文したカフェオレが運ばれてくるのと同時に
カウンターでコップの割れた音がした。
高そうなコップとソーサーが壁棚一面に置いてあるその店のコップが割れた音がした。
あぁ高そうなの割ったな、いくらするんだろ
見栄っ張りなのか、店主の趣味なのか
どちらにせよあまり好きではないな。

カフェオレは好きである。
コーヒーも好きだし、牛乳も好き。
好きなものを2つ掛け合わして成功した例は
この長い歴史の中でそうそうない。
大抵どちらかの良さを消し去って
我の強い方が勝つんだよな。
それはこの長い歴史が教えてくれている。
ひと段落したら、カギヤさんにも聞いてみよう。
多分急に話しても2.3は例えは出してくれそうだ。

脈絡のない話でも楽しそうに聞いてくれる人は好きだ。
ただもちろん話には脈絡があった方がいい。
それは優しさだし、一つの当たり前だし
普通に会話をしたらそうそうそんなことは起きない。統計ではその話題に飽きた時、よく脈絡のない話が始まるなんていう報告もあるらしい。
でも飽きてるわけではないことをここでは強く言いたい。それを悟られるのは相手に失礼だし、自分のポリシーにも反する。
頭の優先順位が変わったのか、今話さないと永遠に話す機会がなくなるかもしれないことを恐れている。限りある時間でより多くのことを話したいと思うのは、私だけではないはずだ。

きちんと二分割されていたコーヒーと牛乳を混ぜながら
ふと人種差別の話を思い出しが、今となっては飲み残りと氷が溶けたもので
曖昧に二分割されており、その話は忘れることにした。
頭の中の優先順位がちゃんと機能していることに感謝している。

ウエイターが徐に氷の溶け切ったグラスを下げにきた。
私は煙を吐くとの同時に一礼だけした。

ふと前を見ると、怪訝な顔をしたカギヤさんが
何か言いたそうにしていた。

「そういえば、カギヤさんから連絡なんて珍しいですね。普段そんなことないしからなにかと思いました。」

「実はね、奇妙なことがあってさ...」

佐藤暉

排気口新作公演『光だと気づいた順に触れる指たち』
【日時】
2024年3月
20日19:00
21日19:00
22日19:00
23日13:00 18:00
24日13:00 17:00 
【料金】
予約3500円・当日4000円
18歳以下は予約・当日共に1000円
【場所】
王子小劇場
予約 https://shibai-engine.net/prism/pc/webform.php?d=2u5sldm8
約95分 途中休憩無し
佐藤佐吉演劇祭2024参加作品
en-geki.com/sakichisai2024/
開場・受付は開演の30分前
作・演 菊地穂波
出演 
佐藤暉 中村ボリ 坂本ヤマト 桂弘 澁川智代 
森川錦 海国りん 山田航大 小川雄気 
演出助手 加茂慶太郎
音響プランナー  Mana-T
音響オペレーター 夢乃屋毒花
照明 中村仁 
照明操作 麗乃
舞台監督 菊地穂波
舞台監督補佐 伊藤セナ




最近読んだ本
「緋色の研究」コナン・ドイル

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