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自律分散型オーケストラ実験2.0

はじめに

先の2023年11月19日(日)、羽田イノベーションシティ(通称:HICITY)のグランドオープンに合わせて再び開催された"Sound&City"。
その中のプログラムの一つとして"Decentralized Autonomous Orchestra 2.0"企画・実行の機会をいただきました。
前回より大きく規模を拡大し、HICITYという施設を街と捉え、「街ごと鳴らす」を目指したこの企画。考えていたことや何を期待した音楽体験だったのか、実際に私が書いた企画書を交えながら、記録としてここに残したいと思います。

イベント概要↓

今回のコンセプトは「多元都市のための音楽」。そして施設全体を使っての音楽インスタレーションをということで、私が考えたキーワードは
・音楽で多次元都市を体感する
・多元都市の住民たちによって奏でられる多元都市のBGM
この二つのキーワードを基にHICTY全体を音で包むようなことが出来たらと考えました。

もちろん、前回のキーワードである
・参加型サウンドインスタレーション
・フィールドレコーディングのワークショップとして
・指揮者不在、すべての人が参加できるオーケストラ
という点も踏襲します。

端的に言えば、グランドオープニングのお祭りが行われている会場で発生する音をまるごと使ってBGMを作ってみよう!という企画です。

HICITY概要

HICITY(https://haneda-innovation-city.com/)は一般的にはB1Fにある天空橋駅から施設が始まり、地上階を経て2階部分がメインストリートになっていて、各施設を行き来することが出来る商業施設になっている。3階部分にも通路があったり、野外足湯施設があったりします。
多くの来場者は図の左から右へ歩いていく、という感じ。

HICITY断面図
HICITY 2F部分平面図

この施設各所にスピーカーと周辺の環境音を集音するマイク、そしてPCのセットを配置。

スピーカー、マイク、PC、ミキサーなどのセット

縦 - 階層

まずはこのB1Fから3Fまでを縦の階層で街全体が和音を奏でるようにする。
基音と呼ばれるベースとなる音が各階で流れるが、それは階によって違い、施設全体で和音が構成されます。

横 - Verse - 次元の広がり

前述のスピーカーやマイクのセットをVerse(次元)と捉えて、施設各所に設置。これをマルチバースの広がりと見立てる。
設置されたマイクは環境音を拾うのと同時に、参加者の皆さんの演奏なども集音。
ここから音を送り合う。

Bridge - マルチバースの融合点

3F、橋の上がマルチバースの融合点。各Verseから送られてきた音は多少のエフェクトをかけられ、会場に還元され、滞留していく。

Chorus - 神の視点

会場にあるHICITYカフェでは全ての基音、全ての環境音が集められる。
ここで会場で鳴らされた全ての音を聞くことが出来る。

※Verseにかけて、各パートの名称を音楽用語のVerse(Aメロ)、Bridge(Bメロ)、Chorus(サビ)と名付けました。

音源

各Verseに設置されたマイクに向かって音を出してもらいます。
参加者が各バースにて"演奏"するツールは
・設置されたマイクによって集音された環境音
・参加者が会場内で録音したフィールドレコーディング音源
・HAIOKA作成のwebツール(https://haioka.jp/SaC.html)
・各所に設置された楽器(鉄琴やコンガ、和太鼓など)
・HAIOKAのインスタグラムに投稿されているフィールドレコーディング音源

「誰でも楽団員になれるオーケストラ」を目指しているので、どれも音楽知識がなくても音を出すだけで楽器の一部になれるようなものを用意しました。

システム

ここまで企画書をみていただきましたが、今回、私のこの無謀な妄想を現実のものにするために、師匠であり大切な友人の渡部高士氏に協力を仰ぎました。そして、離れた場所と離れた場所で音を送り合うためのアプリを氏が独自開発してくださいました。
これにより、会場内にルーターを設置、wi-fiメッシュネットワークで各所のPCを繋ぎ、音を送り合うことを実現しました。
機会があればこのシステムをさらにブラッシュアップして、より面白いツールになるようにしていきたいと考えています。

おわりに

羽田イノベーションシティのグランドオープニングという大切な日、自分のサウンドインスタレーションがその彩りの一つとして参加できたことは大変光栄でした。たくさんの要望に応えてくださったHICITYスタッフの皆様に感謝申し上げます。

このように無謀にで大掛かりなインタラクティブサウンドアートへの妄想を「おもしろそうだからやってみな」と背中を押してくださった主催のパノラマティクス・齋藤精一氏と黒鳥社・若林恵氏に大きな感謝を送ります。このような機会をいただき、誠にありがとうございました。

そして、この企画を参加者の皆様が直感的に楽しめたり、共有できるよう様々な工夫をしてくださったプロデューサーの清宮陵一氏にも大きな感謝を。何よりも清宮氏が最後に掲げてくださった「街ごと鳴らす」というキーワードはこのインスタレーションを一言で表す最高の表現でした。

何より、この日参加してくださった皆様。中でもアドミニストレーターとして参加し、会場を偶然訪れていた人々に作品解説などをしてくださった皆様にも大きな感謝を申し上げます。

私自身、たくさんの「おもしろい!」や「楽しい!」、そして「よく分からない!」をいただき、大変貴重な経験になりました。
また機会をいただければ、さらなる面白い音楽体験を皆様にお届けできるよう、日々精進し、研鑽を積んでいきたいと思います。

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