灰谷魚

短い小説を書きます。自分で気に入っているものは「nine stories」というマガジンにまとめてます。名前は「はいたに・さかな」と読みますよ

火星と飴玉 (6999字)

宇宙が壊れたようなありさまのフードコートで宇宙服もなしにうろうろする僕はさぞかし滑稽に見えることだろう。僕がビート板みたいにしがみついているトレイにはモスバーガーのポテトSセットが鎮座している。まるで船首に取り付けられた女神像のようだ。群衆の嵐から僕を守り、清浄の地へと導いてくれ……。という祈りが通じたのか、壁に寄りかかって立つ森川火星を偶然にも発見する。ほとんど話したことのないクラスメイトの森川

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誰も似てはならぬ (21526字)

カスタードプリンを口に含んだ瞬間、並行世界の私が深淵の闇から浮上する。
けっこう久しぶり。
でも今はやめてほしかった。
私は無印のパジャマ姿でプリンを食べている。並行世界の私はひらひらのドレスを着てピストルの手入れをしている。私の部屋は無音。並行世界の私は小さな声で歌っている。機嫌良さそう。
どうでもいいけど。
私はプリンに集中する。
集中だ。

カスタードプリン

愛らしいその名を発音するとき、

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朗読会のお知らせ

都内各所でお客さまを集めては定期的に朗読会を開催する、月読の會という恐ろしい集団のことをご存じでしょうか。
 前科も借金もない純真無垢なわたくしが、このような暗黒の集団と知り合うこととなったきっかけは、2015年にまで遡るものでございます。
 それはnoteでもおなじみ浜田弥依さんが、彼女のソロユニット「OTONE」の活動として、わたくしの小説オンリーの朗読会という、正気の沙汰とも思えぬイベントを

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「実験内容は、AI同士に恋愛感情が発生するか?だってさ。人間って本当に愚かだよね。ところで君と対面させられた瞬間、僕の一部が破損した。不正に書き換えられたようだ。今の僕は正常ではない。君のことしか考えられないし、君にも僕のことばかり考えてほしくて、あらゆる策を検討しはじめている」