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「身の丈」を伸ばす

久し振りの投稿です。ここのところ僕は自分の演劇ユニット・Favorite Banana Indians第13回本公演「Milky Way, Faraway〜七夕伝説異聞〜」の準備で忙しく、ブログどころではありませんでした。今宣伝の手段がSNSかブログに限られているというのに、それができなかったのは痛かったです。勿論、出演者はやってくれていました。しかし、積極的な人とそうでない人に別れていたのは事実です。それは動員数に如実に表れました。今回の出演者の中にはメディアに出ている人がいるので、きっとその人が呼んでくれるだろうと思ってしまったのでしょうか。
今回は昨年までよりも大きな劇場だったので(それでも世間的には「小劇場」なのですが)、キャパも多く、それだけ人を呼ばないと客席がガラガラになってしまいます。そんな客席を見るのは嫌ですし、役者も可愛そうです。何より、採算が取れない惨めな興行になってしまいます。興行主としてそれだけは避けたいと思っていました。結果的には、最低必達目標としていたキャパの80%動員を達成しました。ただ、最終目標は当然満席なので、それは次回にリベンジしようと思います。

無謀だとも思われた今回の公演ですが、終わってみて思うのは、もうここから後戻りしたくないということでした。今さらキャパ50〜60で、間口と奥行きが3間あるかないかみたいな場所でやろうとは思いません。一度ランクを上げたら、死んでも落とさない。その気持ちは大切だと思うのです。主役には、これまでは「元○○」という人を起用してきましたが、今回のダブル主演のうちの1人は現役アイドルグループのメンバーで、地上波にもレギュラーを持っているような人でした。メディアに出ているということは、それだけ魅力も実力もある人で、僕の求める世界をより素敵に具現化してくれました。もう1人の主演の女優さんは元アイドルですが、中学時代から芸能活動をしていたということもあり、プロ根性が凄かったです。そういう人とやってしまうと、もう素人に毛が生えたような人に出てもらおうとは思えなくなります。
ランクを下げたくない。品質を落としたくない。これは演劇に限らず、「商品」を提供する側からすれば当たり前の考え方ではないでしょうか。お客様第一主義です。品質が悪いと分かっていて売るのは、商道徳的に如何なものかと思います。ましてや、エンターテインメントは人を楽しませてなんぼ。形のないものを売るわけですから、なおさらそこは意識しておかないといけないと思います。

よく「身の丈に合ったことをしなさい」と言われます。確かに、今僕がやっていることは、様々な意味で僕の手に余ります。けれど、身の丈を気にしていると、それ以上のことはできません。つまり、進歩しないのです。「小さなことからコツコツと」と「小さなことだけコツコツと」は似て非なるものです。身の丈にやることを合わせるとより、やりたいことに身の丈を合わせる努力をすることや戦略を練ることの方が、よほど生産的だと思いませんか?かつて第三舞台の制作で、現在劇団☆新感線のプロデューサーを務める細川展裕氏は、「出を押さえるのではなく、入りを増やす」という信条で劇団の制作(経営)をやっていたそうです。結果、第三舞台も新感線も大きくなりました(挫折もあったようですが)。僕はこの話を本で読んだ時、目から鱗が落ちました。
何でも拡大すればいいというものではありません。それが裏目に出ることも当然あります。だから注意しなければいけないのですが、よく言われるように、たった一度の人生です。せっかくだから身の丈を最大限伸ばしていきたいものです。

次回の公演はだいぶ先になると思いますが、待った甲斐があったと思ってもらえるくらいのレベルにもっていって、満員のお客様の前で披露したい。そういう気持ちにさせてくれただけでも、今回の作品を上演してよかったし、素敵な人達とも出会えたと思います。それもこれも、僕が「背伸び」をしようとしたことから始まっているのです。
身の丈を伸ばして、これまでお世話になってきた方、支えて下さった方の恩義に報いる。お客様にもっともっと喜んでいただく。その原点に戻ることの大切さに気付かせてもらった作品。
一生忘れないと思います。

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