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自分の「趣味」「好み」に縛られない創作が、自分を本当に生かす

coconalaというサイト(アプリ)があります。一応説明しておきますが、「スキルのフリーマケット」というキャッチコピー通り、デザインやイラストから占いまで、実に様々なスキル(それを持っている人達)が登録されています。例えば僕が名刺のデザインをしてくれる人を探しているとすると、デザインのスキルを持っている人を検索し、サイト上でお仕事をお願いすることができます。そこに僕も2つのスキルを登録しています。その1つである脚本執筆に、先日依頼がありました。岐阜県で活動されているアマチュアの劇団さんから、来春の公演で上演する脚本を書いて下さいというものです。ただし、劇団さんの方で、他の候補(既製のものも含む)と併せて選考するそうなので、上演されないこともありうるとのことでした。せっかくの書き下ろしなので、何とか採用されるように頑張りたいです。
先方のオーダーは、「お客様が笑顔でお帰りいただける」「誰が見てもわかりやすい」「上演時間は70〜90分」というもの。「ハッピーエンドにはこだわらない」「人数調整は可能」とも言われています。題材の指定はないものの、完全なフリーハンドではありません。与えられた条件の中で書くことになります。

僕の芝居を見たことがある人は分かると思いますが、僕の芝居はそんなに分かりやすくはありません。時間軸が前後したり、二つの世界が同時進行したり、扱っている題材が少しお堅かったりと、ちょっと難しいかな、と思わせる独特の作りになっています。(勿論、極力お客様を置いてきぼりにしないような仕掛けはします。)今度の作品では、そのやり方を封印し、できるだけシンプルに、ストレートに作るつもりです。といっても、そこに僕らしさを少しでも入れ込むようにしないと、面白さは出せません。このあたりの案配が難しいとことです。
これは、音楽における「シングルの曲」と「アルバムの曲」の違いに似ていると思っています。(音楽配信が主流になりつつある今、この例えが分かりにくい人も、もしかするといるのかも知れません。)シングルの曲は多くの人に聞いてもらう必要があります。CM曲だったり、映画やドラマの主題歌だったりすれば、とにかく耳に残り、口ずさんでもらわないと役目が果たせたとはいえません。クライエントからの絶対条件があったりもします。化粧品メーカーのタイアップ曲として工藤静香の「MU・GO・ん…色っぽい」を作詞した中島みゆきさんは、タイトルと歌詞にキャッチコピーの「ん…色っぽい」を入れてくれというクライエントからの要請を受け、苦心の末にこのタイトルと歌詞を作ったのです。「こんな言葉、入るわけないでしょ!」とは決して言わなかったわけです。お仕事ですから。そして、曲はちゃんとヒットしたのです。これは文字通りシングルの曲の話です。対してアルバムの曲は、主にファン向けに作りますので、むしろアーティストの世界観全開のものになります。勿論、この場合も、自分の趣味だけに走りすぎるとファンすら置いていかれる危険性がありますので、ちゃんと「誰かに伝える」ことを意識しなければなりませんが、必ずしも万人に向けて作る必要がないのは、シングルと違うところです。(アルバムの曲が、後にタイアップで使われるケースもあります。そういう曲は、特に力があったということでしょう)

シングルの曲やタイアップの曲は、自分のやりたいことと、クライエントの求めていることのせめぎ合いをどう形にできるか(それも、クライエントの目的が達成されるように)が勝負です。今度の僕の脚本も同じです。自分を前に出し過ぎず、ちゃんと注文通りのものを書く。これは職業作家の領域です。でも、僕が書くのですから、どこかしらに僕の色が出るはずです。
自分のやりたいこと、表現したいことだけにこだわって創作活動を続けていても、広がりがないと思うのです。他人からの注文の中に、普段自分がやらないようなことが入っていれば、それをこなすことで自分の表現の幅も広がります。それを、自分の公演の脚本を書く時に生かせばいいわけです。
大体、好きなものだけを作っていて、やれ食えない、金がないと嘆く暇があるなら、どうすれば創作で食えるか、金が入ってくるかを考えた方がいいのです。自分の好みのものを作って食えないのは、多くの人と自分の好みがずれているということですから、本当にそれを貫きたいなら、むしろそれに拘泥せず、多くの人に伝わりやすくするためにどう変形すべきかを本気で、真剣に考察し、取り組むべきなのです。でないと、本当に「趣味」になってしまいます。食えなくてもいいというのは「趣味」ですからね。

こうして外から注文をいただけるというのは、その意味でも大変有り難いことです。この道で本当に食えるようになるために、どんなチャンスも無駄にしないようにしたいです。この作品をちゃんと求められている形にして、劇団さん(クライエント)とお客様(エンドユーザー)にお届けするべく、全力を傾けます。
そう、使ってもらってこその脚本(プロダクツ=商品)ですから。

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