「70歳以上まで働きたい」をどう受け止めるか?

高齢になっても勤労意欲が落ちないのは、日本人特有の傾向だといわれる。しかし一方で、日本人の仕事に対するエンゲージメント(熱意)は世界最低レベルだし、職場に対する帰属意識もきわめて受け身だ。そして時間あたりの生産性もアメリカやドイツ、フランスのほぼ3分の2に過ぎない。

このことは、職場を「仕事の場」と割り切るのではなく、一種のコミュニティと位置づけている日本人が多いことをうかがわせる。逆にいえば、日本人にとって職場以外に本物のコミュニティが存在しないことを意味する。だからこそ、たとえ経済的に困らなくても高齢まで働き続けたいのだろう。ちなみにそれは「勤労を美徳とする」といった定番の日本人論とは異なる一断面である。

いずれにしろ、職場のコミュニティ化は「居場所づくり」にはよいかもしれないが、仕事の効率化や生産性向上の視点からは問題である。日本で働いた経験のある欧米人の口からはしばしば、「日本人は会社にいることが仕事だと思っている」という痛烈な皮肉が聞かれる。
効率的に働きたい人と居場所を求めている人。両者をいかに共存させるかを真剣に考えるべきときがきている。


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40135950X10C19A1SHA000/

「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。