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#BaPA 第二期生 卒業制作展「LIVE BAPA インタラクティブ・ライブ with 虹のコンキスタドール」に行ってみての総評


タイトルのとおり、クリエイタースクールBaPAの卒業制作展に参加してきた。

BaPAとは「Both art and Programming Academy」の略なのだが、要はクリエイティブエージェンシーのBasculeとPARTYが合弁で立ち上げた20代の若手クリエイター養成スクールで、両社から2文字ずつとってBaPAといえばよいだろうか。

参加者の若手クリエイターたちもまさに未来のカンヌ受賞者はここから生まれるといった才能の集まりだ。

有名どころでは東宝芸能所属の女優池澤あやかさんもエンジニアとしてBaPA二期生として参加している。

BaPA第2期生の卒業制作のテーマは「インタラクティブ・ライブ」

「アート」と「プログラミング」に「アイドル」という触媒を投下することによりどんなインタラクションが生まれるのか、それが卒業制作において投げかけられた課題であり、演者であるアーティストだけでなく観客も巻き込み、共同でライブを作り上げていく試みだった。

コラボするのはpixivから生まれたアイドルグループ「虹のコンキスタドール」。

虹のコンキスタドールの製作陣も超一流ならBaPAの講師陣も超一流。下手な演出はできないというプレッシャーの中で生まれる「2020年の渋谷系」のライブ演出とはどんなものなのか、参加する前から楽しみだった。

ふたを開けてみると、ライブ演出を手がけたBaPA二期生とそれを評価した虹のコンキスタドールのファンたちの間で、意図が噛み合ったものとそうでないものが二極化してしまったように思う。一つはファン心理を読みきれなかったチームと、2020年の未来を意識した演出ということで、デバイスに頼りすぎてライブの本質を見失ってしまったチームがあるように思えた。

一方で、日本のアイドル運営に関わるマネージャーさんやライブ担当の方にもどんな演出が行われていたかを知ってほしいとも思う。

感想をアンケートに書いておきたかったが、書ききれないだけの情報量を浴びたので、noteに書き残しておきたい。

進行はペナルティ ヒデさんと、元バスキュールプロデューサーでBaPAの立ち上げにも関わられた西村さん。


エントリーNo.1 チームF
「煌めけ!虹のコンキスタドール」
楽曲:ブランニューハッピーデイズ

概要:BaPAのライブ専用特設サイトにアクセスし、虹コンの推しメンを一人選び、ライブ中にスマホを振ると背景のスクリーンにその振った結果(星マーク)が反映され、その応援するメンバーの衣装に取り付けられたLED製の「羽」が光るという演出。

感想:トップバッターということで、ファンサイドもまだ温まっていなかったということもあるかもしれないが、イマイチ盛り上がりに欠ける結果となってしまった印象。おそらくスマホを振ったとしてもスクリーンに自分のものがどう反映されているのかわかりづらかった=自分で振らなくてもそういうビジュアルエフェクトをかけた映像を用意しても代用可能だったことと、それで推しメンの羽を光らせなくても、勝手に光らせることが可能だったことが起因するように思えた。

しかし、メンバーのtwitterを見てみると、会場から推しの色に分かれてスマホが振られてうれしかったという声が多数上がっていたことを考えると、票には結びつかなかったが、メンバー側の満足度は非常に高い演出だったのかもしれない。

会場の盛り上がり度 ★★☆☆☆
インタラクティブ性 ★★☆☆☆
会場参加度・没入感 ★★☆☆☆
ファン心理マッチ度 ★☆☆☆☆


エントリーNo.2 チームI「コトバズーカ」
楽曲:トライアングル・ドリーマー

参加者投票2位の演出!

概要:観客サイドに設けられた装置「コトバズーカ」のマイクに向かってメッセージを叫ぶと、その言葉がリアルタイムに演者サイドのスクリーンに反映されるという演出。

感想:私も持ち票3つのうち1票を投じた演出。間違いなく3位以上に入ることを確信した演出の1つで、実際に62票/300票を獲得して参加者投票2位の結果となった。最大の勝因はアイドルとファンのコールアンドレスポンス文化に対して新しい技術とそのインタラクティブ性を提示できたことだと思う。

最近のライブでは、ファンが考えた口上をライブのスクリーンで投影しながらファンとアイドルが一体となって一曲を歌う演出が出てきている。ただ、それはあくまで運営側が用意したものであって、今回の演出では生のメッセージをコトバズーカを通して投げかけることができた。全てのファンが参加できるわけではないことが1位ではなく2位に甘んじてしまった理由だろうが、ファンとアイドルのライブの掛け合いの新しい形を提示した素晴らしい演出だったように思う。

会場の盛り上がり度 ★★★★☆
インタラクティブ性 ★★★☆☆
会場参加度・没入感 ★★★☆☆
ファン心理マッチ度 ★★★★★


エントリーNo.3 チームG
「WE ARE 虹コン BAND!〜会場全員でバンド組もうぜ!〜」楽曲:やるっきゃない!2015

概要:来場者がそれぞれ持っているスマホを使い、BaPAのサイト上でギターやピアノなどの楽器を選択し、タップすることで実際に音が鳴る仕組みをチームGは考案した。楽曲中に全員でギターやピアノを演奏し、タイトルどおり全員でバンドを組むかのように会場のファンとアイドル全員で作り上げる演出。ギターやピアノに見立てられた「型」も配られ、スマホをそれにはめることで、さながら楽器のように演奏でき会場全体が文化祭のようになった。

感想:おそらく虹コンのコンセプトが「毎日が文化祭」であることにヒントを得た演出であるように思う。会場全員がスマホを持っていることが前提になるが、全員が楽器を演奏するかのように全員でその場を盛り上げる演出の着眼点はよかったように思う。

私も個人的に3票のうち1票を投じたが、3位入賞を果たせなかった理由も後から思えば得心がいく。まず、スマホからの音量ではどんなに最大にしてもライブを盛り上げるだけの音にならず、スピーカーから流れる元の音源との区別がつかなくなってしまった。さらに、通信環境の影響かわからないが、途中で音が出なくなってしまった。こういったところが微妙に投票に影響したのではないかと思う。しかし楽器を演奏している参加者はみな楽しそうであり、一体感は生まれていた。おそらく4位か5位には入っているのではないかと思う。

会場の盛り上がり度 ★★★★☆
インタラクティブ性 ★★★☆☆
会場参加度・没入感 ★★★☆☆
ファン心理マッチ度 ★★★☆☆


エントリーNo.4 チームE
「LIVE SCORE〜虹コン 真夏のぬきうちテスト〜」
楽曲:にじいろフィロソフィー

概要:さながらカラオケの採点のように虹コンメンバーの歌を採点し、それを後ろのスクリーンで数字を可視化する。それをさらに順位付けするという仕組み。

感想:仕組み自体は非常に高度だったように思う。採点の仕組み自体は既存のものだったかもしれないが、それをビジュアライズし、リアルタイムで計算するという仕組みはデザイナーとエンジニアがうまく機能した結果のアウトプットであり、素直に拍手したい内容だった。

しかし、メンバーの歌うま度を知れたり、競ったりという要素は面白いが、他にも来場者とのインタラクションが多い中で、若干一方通行になってしまったところが票が伸びなかった要因だろうか。ただ普通のライブの演出方法としては普通にありだと思うので、ぜひ近い将来一般化されてほしいとは思う。

会場の盛り上がり度 ★★★★☆
インタラクティブ性 ★★★☆☆
会場参加度・没入感 ★★☆☆☆
ファン心理マッチ度 ★★☆☆☆


エントリーNo.5 チームH
「Sync Ring-シンクロしまくリング-」
楽曲:ぴくしぶおんど

参加者投票ダントツ1位の演出!

概要:LED製のミニ電球?のついたリングを指にはめ、スクリーンに「太鼓の達人」のように現れるマークに合わせて手を振ったり手を叩いたりするとセンサーを使ってそのシンクロ度を集計するというもの。

感想:終わった瞬間1位を確信した非の打ち所のない完璧な演出だった。実際、115票/300票を獲得し、2位の62票に大差をつけての1位だった。

まず、ビジュアルとコンセプトの勝利だと思う。そして楽曲が「ぴくしぶおんど」という夏の盆踊りのように、一般のファンでもリズム感が取りやすいものだったことも大きい。そしてスクリーンに打ち出されるビジュアルと、それに合わせて手を振り、拍手する動きがまさに太鼓の達人で、非常に親しみのあるスタイルだった。

指につけたミニLED電球も普段ファンが持っているサイリウムの代替版のようで、それも手を振っているだけで綺麗で会場を盛り上げていた。

なかなか初めてのファンは会場で手を振りづらいが、太鼓の達人風の演出が一つの口実なり、みんなが手を振る手助けをしていたように思う。

ただ、あえて言わせてもらうと、みんなスクリーンの上すぎる表示に顔を上げなくてはならず、一体感は生まれていながらメンバーを観れていないという本末転倒感があった。それが残りの票が得られなかった理由だろうか。

会場の盛り上がり度 ★★★★★
インタラクティブ性 ★★★★★
会場参加度・没入感 ★★★★★
ファン心理マッチ度 ★★★★☆


エントリーNo.6 チームA「NIJICON LIVE GYM」
楽曲:ブランニューハッピーデイズ

概要:BAPAの特設サイト上で自分の体重を入力し、スマホをライブ中に振り続けることで消費カロリーを表示し、会場全体の体重(16トン!!)と会場全体の消費カロリーも表示するというインタラクション。

感想:元々ファンはこれだけライブで動いていたら痩せるのでは?と薄々思っていて、それを今回見事に可視化した演出といえる。リアルタイム集計の技術や、観客のライブへの参加具合もより一層高まった。ただ、一番消費したカロリーを競うかたちになってしまったので、楽曲のノリ以上に参加者の手の振りが激しくなってしまったのは課題点といえるだろうか。ただそれ以上に盛り上がったことは高評価ポイントであることは間違いない。

会場の盛り上がり度 ★★★★☆
インタラクティブ性 ★★★★☆
会場参加度・没入感 ★★★★★
ファン心理マッチ度 ★★★☆☆


エントリーNo.7 チームD「きみをどくせん砲」
楽曲:トライアングル・ドリーマー

概要:画像のような大砲に向けられた人にのみアイドルの声が届く、超指向性スピーカーを用いた大掛かりな装置。ファンにとっての「自分だけの特別感」を煽ることが目的。大勢の中の一人ではなく、アイドルとファンの1対1の密の濃いインタラクションを目指した演出。

感想:女優でもある池澤あやかさん(画像左)がエンジニアとして参加しているだけあって、登場のときから「Rubyの女神!」と大盛り上がりだった本作。画像を見てもどっちがメインなのかわからない。。

本題の感想に戻ると、「自分だけの特別感」というコンセプトはプランニングベースではよかったのかもしれない。しかし、ライブに参加している一個人としては、その大砲が自分へ向けられていないときは本当に音が聞こえないので、ほとんどの時間はメインステージで歌っているメンバーの歌声しか聞こえない。そうなると「特別感」より「置いてけぼり感」の方がまさってしまう。ここが「コトバズーカ」と同じような大掛かりの装置を使っていながら差が出てしまった要因ではないだろうか。

しかし、この仕組み自体は何かしらのかたちで将来のライブに活用されてほしいとも思う、可能性の感じる演出だった。これが向きが自由に変えられて、もうちょっと広い範囲で使えたら、もっと効果的に演出ができたのではないかと思うが、それを今回の卒業展に求めるのは酷な話か。

会場の盛り上がり度 ★★☆☆☆
インタラクティブ性 ★★☆☆☆
会場参加度・没入感 ★★☆☆☆
ファン心理マッチ度 ★★★☆☆


エントリーNo.8 チームC「CHEER PEOPLE」
楽曲:やるっきゃない!2015

概要:事前にBAPA特設サイトへアクセスし、メッセージを投稿するとスクリーンにそれが投稿されるという仕組み。来場者がスマートフォンから送ったメッセージがスクリーン上でドット絵のCHEER PEOPLEがプラカードを1文字ずつ持って行進していく。

感想:コンセプトや仕組み自体はライブ演出と親和性は高かったかもしれないが、その視認性がポイントを大きく下げてしまった要因だろうか。事前にどれくらいメッセージが来るか想定をすることは難しく、想定できたとしても、それをなかなかデモで再現することも難しい。最終的に読めないほど高速でメッセージが流れてしまい、読もうと思うとメンバーを見れない、メンバーを見ようとするとメッセージは読めないというかたちになってしまった。

もう一つ課題としては、皆スマホでメッセージを打つのに一生懸命になってしまってこの企画を活用しようと思えば思うほどメンバーを見ない仕組みになってしまったこと。曲中ではなく、ライブのトーク時に活用できると面白い仕組みかもしれない。

会場の盛り上がり度 ★★★☆☆
インタラクティブ性 ★★★☆☆
会場参加度・没入感 ★★★★☆
ファン心理マッチ度 ★★☆☆☆


エントリーNo.9 チームB「EXCITOSS!」
楽曲:THE☆有頂天サマー!!

参加者投票3位の演出!

概要:来場者が手を振り、曲を盛り上げるというシンプルな行為をセンサーでキャッチし、それをスクリーン上と観客エリアで組み分けし、体育祭の玉入れの要領でどっちが盛り上がったか競う演出。

感想:多くのチームが装置やスマホに走る中、必要なのは手の振りだけというシンプルさ、そして手を振るという盛り上がりも無理なくでき、玉入れというゲーム性も取り入れられ、客も自然に楽しめていた。スマホを使った演出ありきではなく、ライブ本来の楽しさを殺さなかったことが素直に票につながったのだと思う。

全体的に非の打ち所のないプランニングだったように思えるが、コトバズーカに20票ほど及ばなかったのは、やはり投票するのはファンであり、コールアンドレスポンスの文化に忠実に答えていたコトバズーカがわずかに上回ったというところだろうか。しかし見事にEXITOSSも3位入賞し、虹コンメンバーからの評価も高かった。

会場の盛り上がり度 ★★★★★
インタラクティブ性 ★★★★☆
会場参加度・没入感 ★★★★☆
ファン心理マッチ度 ★★★★☆


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全体として、虹コンメンバーが楽しそうだったのが何よりだったと思う。

その嬉しさはこちらのブログからよく伝わってくる。

BAPA卒業制作展LIVE!/しげちー

全体を通しての課題は「スマホやモニターを見てばかりで肝心のパフォーマンスを見る方がおろそかになっている」という指摘が多数上がっていたことだろうか。そこに対してどう真摯に向き合っていくか、BaPAの卒業展は終わるが、今回の演出方法をさらに発展させる未来のクリエイターの宿題かもしれない。

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映像業界やWEB業界サイドから今回の卒業制作展を見たり、関わっていた人たちには、デバイスありきのプランニングをせず、ファンサイドの心理をおろそかにして欲しくないなと思う一方で、アイドル業界の人たちには最新のライブ演出技術やアイデアはこんなのがあるんだぞっていうのを知ってほしいなという思いでこのエントリーを書いてみました。

以上、元テレビ番組ADで、元アイドルグループプロデューサーで、現在WEBディレクターの身として、BaPAの卒業制作展を見ての感想でした。

やっぱり技術サイドもコンテンツサイドも両方の感覚を忘れてもいけないことを痛感した1日。

修正:7/22
1位は150票ではなく、115票の間違いでした。訂正いたします。



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