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わたし/あなたの魂はどこにある?

森美術館で開催中の「塩田千春展 魂がふるえる」に行ってまいりました。

わたしはもともと美術館に行くのが好きなのですが、特段美術に詳しいわけではありません。それでも美術館に足を運ぶのは、「単純に綺麗なものが好き」なのと「美術館が持つ静謐な空気が好き」という部分に因るものが大きいです。あと夏は暑さが凌げて冬は寒さが凌げる(重要)(でも冬は館内も結構寒いですけど)

なので、ポスターをパッと見て「なんとなくこの人の描く絵が好きだな〜」「この建物良さげだな〜」「コラボメニューが美味しそう」くらいのライトな気持ちでいつも足を運んでいます。ニワカオブニワカです。もう殆ど絵は関係ないやんって感じですね。多分ガチのガチで挑んだのは、国立新美術館の「新海誠展」くらいだと思います。

今回もたまたま見かけたポスターのビジュアルが好みだったというのが理由で行ったのですが、本当に現代アートに関しては「現代アートっていうと草間彌生美術館は良かったな……なんか……凄くて(語彙力皆無)」という知識の浅さ+塩田千春さんを存じ上げなかったため、「本当に楽しめるのかな……」と不安に思っていたのが正直なところです。1800円するし。(いくらピクサーの展示も一緒に見られるとはいえ)

でも結果としては、行くことを選んでめちゃくちゃ良かったと思ってます。

今回の展示は、平たく言うと「生とは何か」「死とは何か」を問うているものが多い(はず)です。

これ自体はそれこそ、やれ印象派だ〜なんだ〜宮廷のサロンでパトロンが云々(本気で絵画の知識が皆無であることが露呈する発言)みたいな頃から描かれているテーマではあると思うんですが、ぶっちゃけ「落とし込むモチーフ」が、現代に馴染まないものが殆どなんですよね。だって馬とか乗らないし、剣持って戦わないし、農業に従事する人は減る一方だし、煌びやかな宮廷でダンスパーティーとかしないし。更に宗教画とかに寄っちゃうと、それこそ日本人なんて馴染みがないじゃないですか。基本的に無信仰の人が多いと思いますし。もしかしたら立川在住のイエスキリストやブッダには親しみを持ってる人も多いかもしれませんが、大体の日本人にとってクリスマスはパリピウェーイ☆☆☆なイベントの日だと思いますし、仏陀の誕生日は最早知らない人の方が多いのでは…?偉そうに論じてるわたしもオッケーグーグルしないと出てこないですもん、仏陀の誕生日。

わたしは通っていた学校がキリスト教系だったこともあって、「キリスト教とは」みたいな部分に関しては多少知識がある方だと思うのですが、それでも宗教画見て解説読んでも「なるほどわからん!」なんですよね。書かれた意図もわかって知識もあって、それでもそうなってしまうのは、リアリティがなさすぎるからだと思います。当時のその国の人にとって宗教というものがめちゃくちゃ刺さるモチーフだったとしても、出涸らしの方がまだ味があるくらいうっっっっすい信仰心しか持ち合わせてない人の方が多い現代だと、解説を読んだとしても「そんな背景があったんだ〜へ〜綺麗だな〜」で終わってしまうこともあるのではないかと(っていうかわたしがそうなんですけど)。精々突き詰めたとしても、タッチがリアルで凄いとかそのくらいじゃないでしょうか(これもわたしがそうなんですけど)。あ、別にそれが悪いと言うつもりは全くないです。鑑賞なんて基本は「綺麗」「好き」「普通」「あんまり好きじゃない」くらいの気持ちでいいと思ってますので。ただ、それによって何かを得たいとなると、もう少し「刺さる」要素が必要になってくるんだろうな、と。

その点現代アートって、一見「ハテ?」となっても、モチーフが現代にあるものが大体なので(「現代」ってついてるから当たり前なんですけど)、解説を読むと意図が理解しやすいし、リアリティがあるから「刺さりやすい」ような気がするんですよね。「わかる(わかる)」とまではならなくても、「なるほどわかr……いや0.001mmくらいはわかるかもしれん……?」となる可能性が高いと思います。そうそう、こんな禍々しい気持ちになるときってあるよね……社畜してるときとか心がこういう色になったりするわ…ところで昨日の上司の発言マジムカついたな〜仕事辞めてえな〜〜!!!!みたいな。

と、わたしの心情はさておき、圧倒的に「寄り添う力」みたいなのが上がる気がします。そして塩田千春さんの作品は、その「モチーフが寄り添う力」というものが圧倒的に強いように感じます。服やピアノ、トランクや写真など、モチーフ自体が現代にあるわかりやすいものが多いところもあるかもしれませんが。そういう意味では先程の「古典絵画は現代だとモチーフにリアリティがない」みたいな話も、例えば馬が車になったり、剣がPCやスマホになったり、畑を高層ビルにしたり、社交場を自社や営業先の会社に置き換えたら寄り添いやすくなるかもしれませんね(笑)。でも、即座に置き換えるのって結構難しいところじゃないですか。だから結局、ありのまま受け止めて終わってしまうパターンが多い。

でも、この展示会で展示されている作品は、本当に「誰の日常にもあるもの」が圧倒的に多いんです(ベルリンの壁とかになるとまた意味合いが変わってくるんですが)。例えば、服を絶対着ない人っていないじゃないですか。わたしの中で裸族といえばキンキキッズの堂本光一さんなんですけど(笑)(凄く昔の知識なので今は違ったらすみません。ファンの方、光一さんを貶す意図はありませんよ!個人的には佇まいもお顔もとんでもなく素敵な方だと思ってます!)、光一さんだってテレビでは服着てますよね。24時間365日を裸で生活してる人はいない。それくらい服って生活に欠かせない。そういった「誰もが知っているもの」がモチーフとして存在しているというのは、メッセージ性がとても強いなと思います。

また、そういうモチーフによって「日常の中で自分が抱えている非日常」により気づかされるんですよね。ドン!と響くと言うよりは、ざわざわと心を撫でられていく感覚。改めて、「自分は今生きていること」「そしてやがていつか死ぬこと」「それを常にどこかにとどめているのに、気づかないふりをしていること」「でも、本当はそれは奇跡のような出来事であること」を、作品を通して教えられたような気がします。

印象的だった作品は非常にたくさんあるのですが、特にわたしが刺さったのは「Bathroom」という映像作品でした。風呂場で泥をひたすら被っているのが延々と続く映像で、「洗っても洗っても汚れが落ちない」という作品なのですが、「誰しも汚れた部分を持ちながらもがいて生きてるんだなあ」と感じて、どこか物事に対して潔癖な部分がある自分を見つめ直して、「自分や他人の汚れすら愛せるような人間になれたらいいな」と思える作品でした。

あとこれはめちゃくちゃ余談なんですけど、「ゼーレ」という単語が出てきた瞬間に「エヴァやん……」と思ってしまいました。よく考えたら新劇場版のゼーレのモチーフも創世記(イヴを唆した蛇と林檎=「自我(魂)を持つきっかけ」)に由来してるんですよね。深いですね。新作楽しみにしてます庵野監督!(圧)

10月末まで展示会は続くようですので、興味がある方は是非足を運んでみてください。個人的にはこの夏一番のおすすめイベントです。涼しいし!!!!!!(重要)(ただし六本木駅から森美術館まではそれなりに暑いので対策してください!熱中症イクナイ)

そして更に余談なんですが、隣でやってた「進撃の巨人展」のポスターもあらゆるところにトリックが隠されてて「おお……!」となりました。進撃自体はアニメ一期しか観れてないんですけれども(続きを観るタイミングを失った)、それでもついていける内容なら観てみたいですね。でもポスターだけでもめちゃくちゃ感動する作りだったので(トリック的な意味で)、気になる方は是非ポスターを観てみてください。わたしは凄いと思ったのでどこかで時間作って進撃を観ようかなと思いました。いや、でもまだわたしは「ダンベル何キロ持てる?」の最新話を観ていないので、まずそこから消化しないと…。マッチョアネーム…。

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