個人的に、「どこか遠くに想いを馳せる」というのは、結構危険信号なのではないかと思う。

というのも、わたしは以前東京駅の近くで働いていたとき、疲れていると決まって新幹線の行き先を見ながら「このままこの新幹線に乗って逃げちゃいたいなあ」なんて思っていたのである。現金が手元になくてもクレジットカードを切れば、名古屋だろうが京都だろうが大阪だろうが福岡だろうが、今からどこでも行けるんだな、と思うだけで、なんだか救われる気持ちになったのだ。

しかし、今思うと「逃げる」ということに救いを感じている時点で結構やばいな、と思う。心から充実していれば、そもそも「逃げる」という選択肢など思い浮かばないはずなのだ。同じ場所に赴くにしても、「行きたい」はポジティブだけれど、「逃げる」はネガティブな発想である。「逃げる」という選択肢が浮かんだ時点で、自分が今人生のどの地点に立っているかを自覚するべきだった。それか、一度くらい「体調が悪いので」とでも言って当日欠勤をキメて、熱海か静岡辺りで温泉にでも入ってくれば良かったと思う。体調が悪い、なんて嘘をつくみたいだが、心身が絶不調なのは本当だったので、そういった意味では強ち間違いでもないだろうし。こじつけだけれど。

でもそうすればもしかしたら倒れることもなかっただろうし、精神的にも肉体的にもどん底になって、時間やお金を湯水のように使わなくて済んだんじゃないだろうか。心身の不健康というのは、本当に色々な意味で取り返しがつかない。

やはり生きている以上、どこかで「ガス抜き」のようなことはしなければならないのかな、と思う。ひたすら走り続けていると、遅かれ早かれ息切れしてしまって、倒れ込んでしまうから。休憩はこまめにとりましょう、なんてよく言われるけれど、それを実行に移せている人は、きっと思っている以上に少ないのだ。

これからは意識して、「ガス抜き」をしていこう。少しでも長く、「楽しい人生」を走れるように。