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【第13回配信】編集部対談「駅前広場、集合!」

『八画文化会館vol.5 特集:駅前文化遺産』
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先行配信の第13弾をお届けします。

さっそく、いってみましょう!

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【目次】

1. 駅の数だけ個性がある。どんな駅前を観察すべき?
2. 旅情を感じる理想の駅前とは?
3. 駅前広場と壁の関係
4. やっぱり主役は壁だ

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1.駅の数だけ個性がある。どんな駅前を観察すべき?

酒井 意外と語られてこなかったよね、駅前は。

石川 そうですね。駅舎や鉄道は趣味として人気のジャンルだけど、駅前は注目されづらいですね。売れるのか、非常に不安ですよね……。

酒井 世の中いろんなマニアがいるけど、鉄道マニアって趣味の王道じゃん。

石川 マニアの総本山っていうか、すごく細分化してるしファンの裾野も広いですよね。

酒井 それなのに、駅前って鉄道マニアからフル無視状態だよね。じゃあ誰が注目してるかというと、散歩好きの人たち。

石川 でも街歩きクラスタは、商店街とか街道とか、通りが好きですよ。駅前って広場がメインだからあんまり歩けないんですよね。

酒井 だからこそ我々の出番でしょう。実用的な場所で、すぐ再開発されるから、早く行かないとなくなるしね。

石川 駅ナカや駅チカが発展して駅前の風景を駅自体が壊してるっていう憂うべき現状もありますし。

酒井 都会は特にそうだよね。駅が欲張りすぎだよ。だけど駅前って町の玄関口で、時代やブームを反映した風俗が地層みたいに残ってることもあるから。昔栄えたけど今はジリ貧みたいな地方の都市は観察してて面白かった。

石川 駅の本を読んでたら、学者がサジを投げるほど千差万別な駅があって、何をどう楽しむか以前の問題として、どういう駅を対象にするかから始めましょうか。

酒井 ほう。

石川 結構重要なんです。駅前を楽しむという基準で独自に分類、選定すると、大きく4つに分かれます。①町と駅の規模 ②種類と用途 ③終末度 ④駅自体の個性

酒井 町と駅の規模は、ほぼ比例するよね。

石川 拠点駅の場合はそうでしょうね。まずその駅のある都市の規模が大きすぎる所は外します。東京、名古屋、大阪の3大都市は地方感よりも都市感の方が強い。

酒井 だから今号では思いきって3大都市の駅は外しちゃったね。

石川 札仙広福や政令指定都市も、駅前が現在進行形で使われていて、古くからのいいものがあったとしても、旧市街地になってないので外します。現市街地ですからね。

酒井 郊外のロードサイドに負けずに、求心力を失ってないもんね、大都市の駅は。だから古い建物や商店街も巻き込んで、どんどん新しく生まれ変わっちゃう。

石川 鉄道の交通網が充実しているエリアだとそうなりますね。

酒井 ひとつの目安として、地下鉄が発達している大都市エリアは対象外だね。あと県庁所在地と県内2番手の都市もちょっとデカいと思わん? 長野県で言えば長野駅と松本駅とか。3番手以降の、たとえば小諸駅なんかはよかった。

▲JR松本駅 現役の市街地だが、駅前ビルはいい感じ。

石川 その辺になってくると、県自体の規模や知名度にもよりますよね。松本はギリセーフのような気がしますけど。まずはその他のマイナー都市を、要観察の地方都市として見ていきましょうか。

酒井 マイナー都市で、かつて産業があって栄えた駅は魅力的。でも逆に山の中の秘境駅みたいな小さい駅は、駅前にあるのは文化じゃなくて自然だから対象外だね。

石川 地味な駅なのに、文化があるっていうのが必須です。

酒井 じゃあ駅の規模は?

石川 複数路線が乗り入れてるターミナル駅や、新幹線が止まる駅は大きすぎますね。

酒井 通勤通学用の駅で準急が止まるぐらいの規模がいいよね。地方で各駅停車しか止まらない駅だと、もう駅舎がない所もあるから。

石川 そうですね。聞いたことない駅名なのに、切符売り場の運賃表に大きい文字で書いてある駅、とかだと気になりますね。

酒井 じゃ次の種類と用途っていうのは?

石川 大きく分けると外向きか内向きかの2種類あって。地元民が利用する「生活駅」か、外のお客さんを招くための「観光駅」かで大きく違う。

酒井 ああ、観光駅ね。温泉駅とかいいね。今じゃ温泉に車で出かけちゃうから、駅前広場も終末化してるし。

石川 タクシープールで運ちゃんが暇そうに談笑してる風景とか、温泉駅前の無形文化財にしたい。

酒井 デッドストックいっぱい抱えた土産物屋があって、漬物や酒とかのローカル看板や歓迎アーチまであったりして駅前文化遺産が豊富だね、温泉駅には。

石川 生活駅にしかない魅力もありますよ。

酒井 ステーションデパートがあった本郷駅とかね。

▲本郷ステーションデパート

石川 そうそう。あと終末度。忘れてはならない視点ですよね。規模に反比例して人がいないことが最大のポイントなので、最初から乗降客が少ない駅は終末化しない。駅前の構造物は巨大なのに、人がいない状態がいいんですよね。

酒井 バイパスが栄えてて、駅前は寂れてる。別の場所が栄えることによってかつてはメインだった場所が旧市街地に変わってる。そういう雰囲気がオツだね。

石川 ええ。あと駅の個性。私鉄とJRで大きく違うのと、路線ごとにも色が違う。いい感じの路線ってあるんですよね。たとえば富山地方電鉄は古い駅舎をずっと使ってて、電鉄魚津駅みたいに幽霊ビルって言われてもステーションデパートの残骸を残しておいたり、さすがだなって思いますよね。

▲電鉄魚津ステーションデパート

▲電鉄黒部駅

▲南富山駅

酒井 電鉄黒部駅とか南富山駅とかも富山地鉄だっけ? 

石川 そうです、いい感じですよね。ところで駅前ってどこからどこまでなんでしょうね?

酒井 住宅街の始まりが、駅前の終わりだよね。

石川 なるほど。住宅街が出てきてたら、引き返しますもんね。

酒井 小さな駅だと、目の前がいきなり住宅だったりするから、そもそも駅前がないケースもある。

石川 ま、駅を降りて見渡せる範囲を駅前としますかね。

酒井 斬新っす。

石川 駅舎を中心にして、駅から見える範囲の駅の壁を構成しているエリアを1層目とすると、2層目はデパートとか商店街とか、お買い物文化圏があって、家族や女性がターゲットの昼の町がありますよね。で、3層目には歓楽街とか風俗街とか男性がターゲットの夜の町が続いて、住宅街が出てきたら駅前が終わる。3層目まで全部入れると、広すぎる気がしたので、基本的には1層目を駅前としましたよ。豆辞典の駅前地区に、番外編的に2層目まで入れましたけど。


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