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#本棚をさらし合おう 〜大水滸伝シリーズの棚〜

#本棚をさらし合おう

と言う企画を拝見し、ノリでやってみようと思っていた、が。

このような企画をするならば、私が選ぶ本棚の場所は、必然的に「あの場所」になるわけであって、その場所を紹介するならば、"ノリでさらす"などということは許されないのだ。

なので、ここは一つ、キチンとご紹介させていただきます。

こちらの本棚です。

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自分の生涯の人生の師匠。

北方謙三先生大水滸伝コーナーです。

左右に稼働するスペースに、

・水滸伝 全19巻+読本(替天行道) 【第一部】
・楊令伝 全15巻+読本(吹毛剣)    【第二部】
・岳飛伝 全17巻+読本(尽忠報国) 【第三部】

が綺麗に入った。

この度、これをきちんと紹介させていただくわけですが、何から話したらいいのか。

まずは自分と大水滸伝シリーズのことを少し綴らせていだたきたい。

大水滸伝シリーズとのご縁

もう出会って10年以上経つ作品である。

中3か、高校生の頃、両親から誕生日プレゼントで、ハードカバーの水滸伝を貰って以来の付き合いになる。

第2部の楊令伝の連載開始時は、毎月連載誌の小説すばるを購読し、感想のお手紙をお送りし続けていた。

それほど自分がのめり込んだ作品は、まず間違いなく水滸伝をおいて他にあり得ないだろう。

あの頃はただただ夢中で、物語の面白さにのめり込んでいた。

今は、水滸伝の1巻からもう一度、少しづつ少しづつ味わうように、一文一文を噛みしめるように読み返している。

その度に、新しい気づきがある。
心に刺さる言葉が、また変わる。

すいこばなし、という小噺と言う名の二次創作をTwitterに連載し始めて、気がついたら半年以上経っていた。

今はまず1年休まず続けてみて、ネタの数1000本を目標にしている。

きっと、そのうち辿り着いていることだろう。

その創作活動を始めて、大きな変化があった。

作品を読んで泣けるようになったのだ。

とにかく魅力的な登場人物と、名場面、名セリフのオンパレードの作品なので、血がたぎるし、笑えるし、泣ける場面が多数あるのだ。

しかし、今までの自分は、感動に身を震わせたことは数え切れないほどあったが、泣いたことだけは無かった。

それが、創作活動を始めてから、本気で泣けるようになったのだ。

その場面を一つだけ挙げる。

水滸伝8巻に、鄭天寿(ていてんじゅ)という男が出てくる。

彼は白面郎君(はくめんろうくん)というあだ名を持っており、色白のイケメンで女のような声をしているが、それに付随する悲惨な過去を持ち、また、弟を飢饉で死なせた過去がある。

それを乗り越えて、彼は二竜山という拠点で軍の大隊長になっていた。

彼の上官は、作中人物で上司にしたいやつランキングNo.1であろう将軍だが、鄭天寿はある事がきっかけで、自身の過去をカミングアウトする。

その際に上官は、「おまえはいま、二竜山の立派な大隊長だ」と鄭天寿の過去を真正面から受け止めつつ、きちんと彼のことを大隊長として評価する言葉を伝える。

そこから鄭天寿は、なぜ自分の過去をカミングアウトしたのかを振り返るのだが、次の文で涙が止まらなくなった。

思い起こせば、遠く長い道のりだった。死んだ弟の、悲しいほどに軽い躰を抱き、涙も出ないまま原野を駈け回った時から、どれほどの旅をしてきたのだろうか。

今、入力しながら、涙ぐんでしまった。

きっとそれに似た体験を自分もしたからかもしれないが、創作を始めることで、インプットし続けてきた想いを、毎日のように溢れんばかりアウトプットしていたことが泣けるようになったきっかけだろう。

溢れんばかりのアウトプットをしたことによって生まれた心のゆとりに、今まで入れられることのなかった、新しい何かを、作品を愛する心の中に入れることができたからではないか、と思っている。

皆さんに勧めたいけれど、どうしても躊躇ってしまった理由

それでは皆さんにこの大水滸伝シリーズを是非ともお勧めしたいのだが、ここまで作品への愛を綴っておきながら、正直今までの私は、この作品をお勧めする事が出来ないでいた。

その理由は、この2点に凝縮される。

・19巻はさすがに多いし、2部、3部合わせたら51巻の大長編。 
・大水滸伝シリーズは、すごく美味いけど効きすぎるお酒みたいなもの。大量に摂取すると悪酔いするし、心に効きすぎる事もあるから。

1つ目の理由はシンプル。
めっちゃ巻数がある。

しかし、もしもこの作品にどハマりしたとしたら、こんなにも長い大長編小説を書き上げてくださり、北方謙三先生、本当にありがとうございました、と心から御礼を申し上げたくなる事請け合いだから、もう気にしない。

なので、もしも手にとっていただき、気に入ったらまずは「水滸伝の5巻」まで読んでほしい。

ここが分水嶺である。

読めば分かる。

必ず。

ここまで読めたとしたら、きっと一気に19巻に行く事請け合いだろう。

その代わり、躊躇う理由2つ目の、美味しすぎるけど効きすぎるお酒みたいな作品なので、過剰摂取するとマジで日常生活に支障をきたすレベルで、ズシンとくる場面も多々ある。

が、日常生活に支障をきたすレベルの読書体験をする事って、そうそうないのではないだろうか?

なのでここからは、是非とも北方先生の大水滸シリーズを心からご堪能いただきたいので、自分の心に嘘をつかず、正直にお勧めしたい理由を書かせていただく。

こんなにも面白すぎる、大水滸伝シリーズ

お勧めしたい点は、下記の3つである。

・どこかで自分の分身と出会える。
・名場面、名台詞のオンパレード。
・これからは水滸伝の時代だと思うから。

登場人物の数は、はっきり言って、めっちゃ多い

が、はじめは何もどこかの誰かのように、梁山泊の108人の頭領の名前とあだ名と星の名前を序列順に覚えるなんてことはしなくても良い。

が、この108人の誰かか、もしくは、梁山泊と相対する側の人物かは分からないが、必ず「これは私だな」と思える人物に出会えることだろう。

それほど、大水滸伝は、「人間を書いている」小説なのだ。

強すぎるほど強い軍人の弱すぎるほど弱いところも。

卑怯でセコいけど、やる時はやる気概は持っている者も。

冷酷非情な奴が、女に惚れて骨抜きにされるところも。

強いところはもちろん、弱いところをこれでもかと書かれている作品なのだ。

何もいきなりあなたに、たった1人で20人を相手に大立ち回りしろ、などとは言わない。

もっとも、それが出来るほど強い軍人は確かにいるが、そいつは彼の友達が満場一致で認める「極めつけのバカ」だ。

でも、そんな極めつけのバカの大ピンチの時は、友達総出で助けに行ったり、またその極めつけのバカが、戦場の大ピンチを救ったり、と、まぁとにかく。

強さも弱さも持ち合わせた等身大の人間が、これでもかと書かれているのだ。

強さにもいろいろあることを教えてくれるし、弱さも生かしようによっては強さになるし、弱さを弱さのままにして良いところと悪いところがある事も教えてくれるし…と、まさに人が生きる事の教科書と言えるのだ。

名場面、名台詞は、はっきり言って、全巻に必ず一つ以上出てくるから問題ない。

読めば必然的に出くわす!

で、私は常々、これからは水滸伝の、梁山泊の時代だと思っている。

梁山泊とは、108人の愉快な仲間たちが集まった山のねぐらのことである。

よく歴史を学ぶにあたって、「戦国大名幕末の英傑から学ぼう!」というのが主流だと思っているのだが、本人的にそれは少し違う気がしているのだ。

なぜなら、彼らは武士階級のある意味やんごとなき方々だから、下々の私たちのことなど、眼中になくて当たり前な人たちなのだ。

そのような人たちの破天荒な振る舞いや思想を、時代も違うのに、いきなり真似できるだろうか?

どうも私には素直に入ってこない。

ならば、水滸伝は何が違うというのか。

水滸伝は市井の連中がごろごろ混ざっているのだ。

もちろん、軍人や商人、土地の名主とかもいるが、食堂の夫婦もいるし、仕立て屋や鍛冶屋もいれば、医者に獣医、挙げ句の果てには泥棒まで同じテーブルで飯を食うのが梁山泊流だ。

そして彼らは、自分の得意なことだけをフル活用して、梁山泊という組織に貢献する。

今はもうその生き方でいいんじゃないかな?

例えば水滸伝に出てくる医者、安道全(あんどうぜん)は、医術の腕は神がかっているが、根っからのコミュ障で人と話して、仲良くなることすら上手にできない。しかし、安道全はそれでいいのだ。なぜなら彼の医者の腕だけは超一流なのだから、医者だけやらせておけばいい。

もしも、薬を作る者が足りなければそいつをスカウトし、コミュニケーション能力に秀でた彼の数少ない友達を事務局に配置すれば、立派な医療機関が出来上がるだろう?

そんな環境が、梁山泊には用意されているのだ。

得意なことだけをただひたすらやればいい。

そんな組織のあり方こそ、これからどんどん求められていくのではないかと、個人的に思ってやまないし、願ってもやまないのだが、いかがだろうか?

そんな素敵な組織のあり方もあるけれども、何より作品の根底。

人はどのように生きて、どのように死ぬのか

を、これでもかこれでもか、と北方先生は繰り返し問うてくる。

その上で、読み進めていけば、ある日あなたの心の中に、梁山泊の誰かが生きているはずだ。

心に生きている彼らの声に耳を傾ければ、きっと作品を読む前よりも少しだけ、胸張って前向いて歩けるようになっていることだろう。

そんな素敵な読書体験を、ぜひあなたにもしていただきたい。


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