水滸噺セレクション(致死軍&飛竜軍編)【頭倒立は身体に良いぞ】

掲載中のnoteから、「北方水滸伝人気ランキングNo1豹子頭林冲率いる騎馬隊」、にやたら突っかかる仲良し入雲竜公孫勝率いる致死軍と心なし薄幸な赤髪鬼劉唐率いる飛竜軍のすいこばなしセレクションをお届けします。

これからも、気が向いたらセレクションをお届けしていく所存ですので、リクエスト等ございましたらこちらまでお寄せくださいね!

今後も逐一更新していく予定です。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…あだ名は入雲竜(にゅううんりゅう)。頭だけで倒立したり、笑い声を笑い声と認識されなかったりするけど、本人的に一般常識はまずまずあるつもり。
劉唐(りゅうとう)…あだ名は赤髪鬼(せきはつき)。公孫勝との腐れ縁。放浪時代から、賊徒時代からずっと一緒。牢から開放された公孫勝と再会した夜は、一晩中泣いてた。
楊雄(ようゆう)…あだ名は病関索(びょうかんさく)。顔色の悪さが日常化しすぎて、本当に体調がやばかった時に仮病を疑われフル調練やってのけたのは語り草。
石秀(せきしゅう)…あだ名は拚命三郎(へんめいさぶろう)。致死軍良識派の命知らず。公孫勝の地雷を的確に踏んでのけた末、二竜山に出向。曹正という相方と出会ったが…
孔亮(こうりょう)…あだ名は独火星(どっかせい)。石秀と交代で致死軍入りがドンピシャ。ただ、公孫勝信者の盲信ぶりに飽き飽き。
樊瑞(はんずい)…あだ名は混世魔王(こんせいまおう)。公孫勝にスカウトされて暗殺者に。闇に紛れて仕事をこなす姿は魔王といって過言ではない。
鄧飛(とうひ)…あだ名は火眼狻猊(かがんしゅんげい)。肉を咀嚼する姿は赤目のライオンのあだ名の通り。鎖鎌の達人。
王英(おうえい)…あだ名は矮脚虎(わいきゃっこ)。梁山泊最小。子供よりも小さい。小さいから潜入ミッションとか斥候とかにしょっちゅう使われる。
楊林(ようりん)…あだ名は錦豹子(きんぴょうし)。酒が入るとやたら饒舌になるらしい。普段は地味。

1.
楊雄「…劉唐殿」
劉唐「なんだ」
楊「俺たちは何の調練をさせられているのですか?」
劉「一秒間に十の呼吸をする調練だ」
楊「公孫勝殿にジョジョを貸したのは孔亮ですね?」
劉「そうだ」
楊「あの馬鹿!」

楊雄「大変なことになった」
劉唐「樊瑞だから出来たようなものだ」
楊「でも劉唐殿」
劉「…」
楊「崖登りの調練に油を流すのはインスパイアされすぎなのでは」
劉「しかも油を流すのは孔亮だ」
楊「吐き気を催す邪悪とはッ!なにも知らぬ無知なる者を利用することだ!」
劉「お前も好きだな」

楊雄「まさか樊瑞が波紋の呼吸を出来るようになるとは」
劉唐「人間じゃないな」
楊「妖術が使えるようになったそうです」
劉「ビリっときたな」
楊「公孫勝殿は出来るようになったのですか?」
劉「公孫勝殿は」
楊「…」
劉「花栄に弓を十矢射てもらい、時を止める調練を」
楊「辞めさせて!」

楊雄「劉唐殿。今日は何の調練ですか?」
劉唐「体内の鉄を駆使する刺客を撃退する調練だ」
楊「…それで公孫勝殿はどこへ?」
劉「…湯隆の所へ行ったらしい」
楊「あんまし分かってないんですね」

劉唐(りゅうとう)…波紋ってなんなんだろうな?
楊雄(ようゆう)…公孫勝殿が一番上手に使えそうなんですけどね。

2.
楊林「やい、王英」
王英「なんだ」
楊「お前、扈三娘からチョコもらったのか?」
王「そんなの」
楊「そんなの?」
王「もらえんよ」
楊「嘘をつけ」
王「逆に聞くが」
楊「うむ」
王「あいつにそれだけの気立てがあると思うか?」
楊「それは」

王「飯は当番制。饅頭も蒸したんだか蒸してないんだか分からん代物が出てくる」
楊「でも食うんだろ?」
王「家事のほとんどは俺がやっていると言ってもいい」
楊「でも構わないんだろ?」
王「閨は」
楊「おう」
王「痛い」
楊「それは」
王「だがそれが良い」
楊「死ね」

王英(おうえい)…ほとんど上下運動のルーチンワークなんだよ。
楊林(ようりん)…ならお前が旦那じゃなくていいだろうが。

3.
公孫勝「恐ろしい奴に出会ったぞ、劉唐」
劉唐「公孫勝殿がですか?」
公「あれほどの才を眠らせ続けるしかないとは、惜しいものだよ」
劉「一体どんな奴なんですか?」
公「お前も知っている」
劉「はい」
公「薛永だ」
劉「薛永?」

公「行軍をもろともしない脚力」
劉「薬探しの賜物ですな」
公「闇夜をものともしない視力」
劉「はい」
公「崖を容易く降る指の力」
劉(薬探し凄えな)
公「燕青を打ち倒すほどの気の活用」
劉「…」
公「毒の効きづらい体質」
劉「あ、強い」

公「薬を作る時の一挙一動にも微塵の隙も無かった」
劉「私もスカウトしたくなりました」
公「だが駄目だ」
劉「それは?」
公「人を殺すのが苦手だそうだ」
劉「…」
公「言わんとすることはよく分かるぞ、劉唐」

公孫勝(こうそんしょう)…あんなに毒気のない顔で言われてしまったら、何も言えんよ。
劉唐(りゅうとう)…なんとも思わなくなって何年経ったかな…

4.
扈三娘「王英殿」
王英「なんだ」
扈「ホワイトデーを知っていますか?」
王英「白寿のことか?」
扈「白寿?」
王 (しまった)
扈「それは人の名ですか?」
王「まずは剣をしまえ、扈三娘」

扈「ホワイトデーと白寿という人と何の関係が?」
王「それは」
扈「それは?」
王「公孫勝殿の」
扈「公孫勝殿?」
王「お祖母様がいらしてな」
扈「はい」
王「まだご存命で、白寿を迎えるそうだ」
扈「はあ」
王「その日を飛竜軍ではホワイトデーと呼んでいるのだ」
扈「…」
王「剣をしまえ」

扈「林冲殿が」
王「林冲?」
扈「バレンタインデーを公孫勝殿から聞いた、とおっしゃっていたのですが」
王「本当か?」
扈「はい」
王「これは俺の推測だが」
扈「はい」
王「きっと林冲と公孫勝の記念日の符牒なんじゃないか?」
扈「なるほど!」
王 (納得しやがった)

王「という事があったのだが、楊林はどう思う?」
楊「死ねばいいと思う」

扈三娘(こさんじょう)…公孫勝殿に会ったら聞いてみよう。
王英(おうえい)…白寿という名で助かった…
楊林(ようりん)…お前絶対死ぬ目にあうぞ。

5.林冲・公孫勝炎の七日間 
プロローグ
宋江「林冲、公孫勝」
林冲「…」
公孫勝「…」
宋「いい加減に仲良くせよ」
林「…」
公「…」
宋「二人の優秀な指揮官が不仲なのは心が痛むのだ」
晁蓋(何を言っている、宋江)
呉用(これほど仲良しな二人組いないですよ)
宋「致死軍が危機な時は、たまたま騎馬隊が出動していたから助かったと聞くし」
晁(林冲の言葉通りに聞くな、宋江)
宋「林冲の危機の時にも、たまたま致死軍が近辺で任務があったからと聞いた」
呉(そんな訳ないでしょう、宋江殿)
宋「だから私は決めた」
林「…」
公「…」
宋「二人のどちらが人気者なのかを皆に決めてもらうのだ」
晁「ほう」
宋「勝った方が兄。負けた方が弟として仲良くするのだ」
林「︎」
公「︎」
宋「皆の者、よろしく頼むぞ」
呉「投票よろしくお願いします」

・晁蓋(ちょうがい)…梁山泊頭領イケイケ派。その元気ハツラツさは、陰キャの抱える闇すらも浄化してしまうという。
・宋江(そうこう)…梁山泊頭領じっくり派。中年にして赤子の如くピュアピュア。幼児用アニメでガチ泣きした時は晁蓋も引いた。
・呉用(ごよう)…しまった軍師。普通の軍師はしまったと言わない。人間離れした事務処理能力。

・林冲(りんちゅう)&公孫勝(こうそんしょう)…ダブルボケの二人が突っ込みに回るほど、宋江の天然ボケに振り回された。

6.公孫勝の場合(1)
劉唐「どんな話でした?」
公孫勝「…」
楊雄「公孫勝殿?」
公「…」
孔亮「おうい、公孫勝殿」
公「…」
孔「林冲殿が」
公「︎」
劉(?)
楊(?)
孔「じゃなかった、王英から伝言が」
公「孔亮、お前が死んでこい」
孔「!」
劉(少し分かったぞ、孔亮)
楊(ありがとよ、孔亮。そして死ね)

公孫勝(こうそんしょう)…なぜ王英と林冲を間違えるのだ。
劉唐(りゅうとう)…ヒントは林冲殿か…
楊雄(ようゆう)…孔亮なら大丈夫だろう。
孔亮(こうりょう)…この拠点、寡兵にもほどがありませんか?

7.公孫勝の場合(2)
樊瑞「公孫勝殿」
公孫勝「…」
樊「そこ、俺の岩…」
公「…」
樊「何を考えておいでで?」
公「…」
樊「騎馬隊の」
公「︎」
樊「調練が激烈ですね」
公「樊瑞」
樊「なにか?」
公「この崖を降れ」
樊「︎」

公孫勝(こうそんしょう)…忌々しい騎馬隊め。
樊瑞(はんずい)…降るも何も、どこに足掛けたら良いかも分からないんですけど…

8.公孫勝の場合(3)
石勇「公孫勝殿?」
公孫勝「…」
石「この屋根裏は万が一の時の代物ですので、あまり使わないでくださいね」
公「…」
石「戸締りはよろしくお願いしますよ」
公「…」
石「おい」
部下「はい」
石「朱富の饅頭と顧大嫂の焼饅頭どっちがいいと思う?」
下「引きこもりのヒモ養ってるみたいですね」

公孫勝(こうそんしょう)…今日は珍しく、顧大嫂の気分だった。
石勇(せきゆう)…迷った挙げ句選んだ安牌の朱富の饅頭は、お気に召されなかった。

9.公孫勝の場合(4)
呼延灼「公孫勝」
公孫勝「…」
呼「樊瑞が登れなくて難儀している」
公「…」
呼「林冲とお前の話をした」
公「…」
呼「林冲騎馬隊ってどんなだ?」
公「馬よりも馬鹿な奴が率いる珍走団さ」
呼「林冲が馬よりも馬鹿だというのは分かるぞ」
公「いつも迷惑している」
樊瑞(崖っぷちってこういう事か)

・公孫勝(こうそんしょう)…作者の脳内では某Y先生の影響でスキンヘッドだが、きっとマイノリティだろうな。
・呼延灼(こえんしゃく)…ドラムスティックの扱いはお手の物だが、リズム感を加味せずメンバー入りさせた事を後悔したと韓滔は言う。
・樊瑞(はんずい)…公孫勝と命がけロッククライミングで親交を深めるも、今は一刻も早くどいてほしい。

10.公孫勝の場合(5)
孔亮「今回は死ぬかと思いました」
公孫勝「…」
孔「報告ですが」
公「…」
孔「林冲殿が」
楊雄(!)
公「…」
孔「我らを敵とみなす調練を強いています」
公「…」
楊(なぜだ、林冲殿)
公「孔亮」
孔「はい」
公「報告は後でいい」
孔「…」
公「もう一度死ね」
孔「」
楊(さすがに気の毒だが、死ね)

・公孫勝(こうそんしょう)…人気投票若干負けている。みんな!公孫勝殿にパワーを!(劉唐)
・楊雄(ようゆう)…親友の石秀の代わりに孔亮が来たので目の敵にしているが、て痛すぎるしっぺ返しをくらいそう。
・孔亮(こうりょう)…兄に孔明がいる。兄弟で諸葛亮孔明リスペクトか!と笑われるが、両親がそうだったとしか言いようがない。

11.公孫勝の場合(6)
馬麟「林冲殿が変だ」
楊雄「公孫勝殿もだ」
馬「公孫勝殿を強く意識している」
楊「林冲殿と何かあったのだ」
孔亮「こんな事があったそうだ、まぬけども」
楊「孔亮」
馬「人気投票?」
孔「勝った方が兄、負けた方が弟だとよ」
楊「…それで?」
孔「…」
馬「実質変わらんだろ?」
孔「…確かに」

・楊雄(ようゆう)…公孫勝殿が変?何を言っている。我らを試しているに決まっているだろ?そうに違いない。
・孔亮(こうりょう)…公孫勝殿が変?いつもの事ではないか。
・馬麟(ばりん)…林冲殿が変?今頃気付いたのか。

12.公孫勝の場合(7)
劉唐「人気投票か」
楊雄「はい」
孔亮「劉唐殿」
劉「なんだ」
孔「公孫勝殿が勝ったら、林冲殿が弟になるんだろ」
劉「…」
孔「それはあんたの弟にもなるって事じゃないか?」
劉「!」
楊「それは」
劉「林冲殿が俺の弟に」
孔「…」
劉「林冲殿が」
楊「劉唐殿」
孔「口元が緩みまくってやがる」

・劉唐(りゅうとう)…結果によっては林冲の弟になる訳だが、公孫勝殿が負ける訳ない。
・楊雄(ようゆう)…絵巻水滸伝で石秀に「弟になってもいいぜ」と初対面で告白される役回りに驚愕。
・孔亮(こうりょう)…久しぶりに兄貴に会って、この茶番を罵り尽くしたいと思った。

13.エピローグ
宋江「というわけで、この度の人気投票は」
林冲「…」
公孫勝「…」

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宋「林冲に軍配が上がった」
林「…」
公「…」
宋「双方の勢いは五分といって良く、最後は一票差であったという」
呉用(ご投票ありがとうございました)
林「…」
公「…」
宋「…」
呉(宋江殿?)
晁蓋(泣いている…)

宋「…すまぬ」
林・公「?」
宋「互角だった」
公「…」
宋「互角だったのだ」
林「…」
宋「私が、悪いのだ」
林「宋江殿?」
宋「優秀な指揮官を争わせてしまった。私は頭領失格だ」
晁(また極端な)
宋「勝敗をつけるのは、容易い。しかし、私はもう争って欲しくないのだ」
呉(じゃれてるだけです)

宋「だから私は決めた」
林「…」
公「…」
宋「私が公孫勝に一票を投じる」
林「︎」
公「…」
晁「待て、宋江」
宋「待たぬ」
呉「それでは人気投票の意味が」
宋「人気投票をさせたのが間違いであった。ならばその間違いは私が正さねばならぬ」
晁(余計拗らせておる)
呉(林冲の気持ちが…)

林(白い世界も悪くないかも知れん)
公「…宋江殿」
宋「…」
公「その一票は辞退させていただきたい」
宋「なぜだ、公孫勝」
公「私はいつも林冲にあと一歩及ばないからですよ」
林「公孫勝…」
宋「…ならば」
晁「ならば?」
宋「もう、諍いは起こさぬな」
公「林冲次第ですな」
林「!」

宋「林冲」
林「…」
宋「林冲」
林「…起こしません」
宋「よし」
公「…」
晁(これは公孫勝の勝ちではないか?)

晁蓋(ちょうがい)…こうなった時の宋江には閉口するな…
宋江(そうこう)…良かった。本当に、良かった。
呉用(ごよう)…たまにですけど、なんでこの人頭領やってんのかなぁって正直思います。

林冲(りんちゅう)…俺が、勝ったのではないのか?
公孫勝(こうそんしょう)…私の負けだが、ただ負けるわけにはいかないだろう、林冲?

14.
公孫勝「石秀、楊雄」
石秀「はい」
公「私は地下牢で一点倒立ができるようになったが」
石「はい」
公「なぜ頭で倒立しようとしたのだと思う?」
楊「…」
石「…」
楊(何が始まるんだ?)
石(分からん)

公「地下牢でも体を鍛えようと思った」
楊(発想が脳筋だよなぁ)
公「石畳の上で転げ回ることもやった」
石(裸ゴロゴロのことだな)
公「やがてそれにも飽きた」
楊(でしょうね)
公「それからなのだ、倒立を始めたのは」
石(引き込んで来るな)

公「始めは倒立も出来なかった」
石(だから公孫勝殿の房がうるさかったんだな)
公「それが少しづつ出来るようになってきた」
楊(いつまで続くんだ?)
石(検討もつかん)
公「ついに頭でやる時が来た」
石「…公孫勝殿」
公「…」
石「…オチはあるのですか?」
公「質問は許可していない、石秀」

公孫勝(こうそんしょう)…石秀とはどうも呼吸を合わせづらい。
楊雄(ようゆう)…公孫勝殿の話にそんなものあるわけないだろう。
石秀(せきしゅう)…しかし、誰かが確認しておく必要があることではないか。

15.
公孫勝「呉用殿が反乱の首謀者側近として潜入したとする」
呉用「具体的だな」
公「緊急離脱の合図を耳に覚えさせるぞ」
呉「何を言っている」
公「笛の音が聞こえたら手を上げろ」
呉「待て、説明しろ」
公「呉用殿のためだ」

楊雄「公孫勝殿は?」
劉唐「相国寺で摑まされた笛持ってどっか行った」

公孫勝「質問は一つだ」
呉「前提が分からん」
公「童貫軍の力を削ぐために、呉用殿が江南の反乱組織の側近として潜入したという前提だ」
呉「なるほど」
公「では笛を吹くぞ」
呉「待て、まだ質問は山ほど」
公「質問は一つと言った」
呉「しまった」
公「観念しろ、呉用殿」

呉「何も聞こえないぞ、公孫勝」
公「呉用殿の耳が悪いのだ」
呉「お前は聞こえているのか?」
公「」
呉「そのおもちゃはどこで摑まされたのだ?」
公「」
呉「経費ではおろさんからな」
公「」
呉「公孫勝」
公「」
呉「笛、逆さだぞ」
公「」

・呉用(ごよう)…そんな事態に直面するわけないだろう。
・公孫勝(こうそんしょう)…仮に逆さでも、音は聞こえるはずだ、呉用殿。
・劉唐(りゅうとう)
…あれは何のための笛だ?
・楊雄(ようゆう)…犬のしつけ用です。

16.
公孫勝「私の大切なものがなくなった」
劉唐「…」
楊雄「…」
孔亮「…」
樊瑞「…」
孔(?)
劉(何のことだ)
公「容疑者はここにいる」
楊「公孫勝殿」
公「…」
楊「…何を盗まれたので?」
公「大切なものと言った」
楊「…」
孔(分かんないって)
公(…?)
(裾のポッケにあった)
公「…」

劉(いつになく公孫勝殿の顔が厳しい)
樊「それは、ポケットに入るくらいの大きさですな」
公「!」
劉「樊瑞?」
樊「いつも身一つで動き回る公孫勝殿の大切なものと言ったら、それくらいの大きさに違いない。違いますか?公孫勝殿」
公「…違う」
樊(あれ?)
孔(ダサっw)

公「もっと大きいもの、とだけ言っておこう」
劉(そんなものをどうやって公孫勝殿にバレずに盗めるというのだ)
公「…」
伝令「公孫勝殿!」
劉「どうした!」
伝「東に二里の丘で高廉の奇襲。味方が被害を受けています」
公「分かった」
伝「これで死ねます」
公「眠れ」
伝「…」

劉「急行しましょう、公孫勝殿」
公「そうか、犯人は高廉だったのか」
楊「?」
公「私の大切なものをいつも盗んでいく…」
孔(くさっ)
樊(嫌いじゃないだろ?)
孔(まあね)
公「今日は弔合戦と行こうか」
劉「おう!」
楊(…犯人は俺たちの中に、って言わなかったっけ?)

劉「今日の公孫勝殿は凄まじかったな」
楊「ええ」
孔(間違って殺されかけた)
樊(俺も)
公「我らの危機を知らせた伝令に敬礼」
一同「…」
公「健気な奴め」
劉「公孫勝殿?」
公「私の持たせた笛を懐にまだ持っていたよ」
劉「…」
楊「…」
孔「!」
樊「!」
公「孔亮と樊瑞は梁山泊に伝令」

対公孫勝
・劉唐(りゅうとう)…一番付き合いが長いから盲信気味。公孫勝のうっかりミスを深読みしてドツボにはまる。
・楊雄(ようゆう)…そこそこ長い。劉唐ほどではないがリスペクトしすぎ。公孫勝の凡ミスを見ると冷静さを一気に欠く。
・孔亮(こうりょう)…ほどほどの付き合いだから、公孫勝ガチ勢ほどのリスペクトはない。公孫勝のミスをさりげなくフォローすることが一番多いのは彼。大事にしろよ。
・樊瑞(はんずい)…一番付き合いが短いから意外と間抜けな所があるんだとすんなり受け入れられた。

17.
李逵「宋江様に致死軍を体験してこいと言われた」
公孫勝「…」
李「公孫勝、だよな?」
公「…」
李「飯食ってるか?顔色悪いぞ」
公「…」
李「致死軍の連中の服も穴だらけじゃねぇか」
公「…」
李「調練はどうでもいいが、この生活習慣の乱れは許せねえ。正させてもらうぜ」
公「…」
楊雄(お袋だ)

楊(李逵が来ただけで、兵の顔に生気が)
公「李逵」
李「なんだ」
公「誰が兵の服にアップリケを付けていいと言った」
李「穴がデカすぎたんだ。しょうがねえじゃねえか」
公「こんな服は着れん」
李「カッコいいやつならいいのか?」
公「そういうことではない」
楊雄 (お袋との会話を思い出すな)

李「じゃあ俺は行くぜ」
兵「…」
李「お前は俺の香料が大好きだったな。餞別だ」
兵「!」
李「お前の服の穴はいつでも俺が埋めてやる。安心して闘え」
兵「…」
李「お前は…」
楊「お袋…」
公「整列」
兵「!」
李「なんだってんだ」
公「あとで分かる」

兵「またきてね」
李「あいつら」

・公孫勝(こうそんしょう)…周囲があっと驚く少ない食事量。突風で少し飛ばされかけた。
・楊雄(ようゆう)…別の世界では嫁がいる設定に不満。もしかしたら顔が黄色い所よりも直すべきところがあるのかもしれない。
・李逵(りき)…李逵がお袋になる水滸伝ワールドがあってもいいではないか。文字が読めなくても気持ちは伝わった。

18.
劉唐「この策は公孫勝殿の影武者が必要だ」
孔亮「…」
楊雄「…」
樊瑞「…」
王英「…」
楊林「…」
劉「この面子なら一択だな」
孔「待ってくれ、劉唐殿」
劉「まだお前とは言ってないが」
孔「俺以外ろくな面子じゃねえじゃねえか」
雄「生意気な」

孔「赤毛!」
劉「赤髪鬼だ」
孔「黄色!」
雄「病関索」
孔「マッチョ!」
樊「混世魔王だ」
孔「チビ!」
王「矮脚虎!」
孔「えっと、地味!」
林「罵るならスムーズに罵れ。錦豹子だ」
孔「身体の特徴じゃねえか」
劉「本当だ」
樊「親近感が湧くな」
雄「お前は?」
孔「…独火星」
林「星!」

公孫勝「騒がしいな」
劉「公孫勝殿」
公「影武者などいらんと言った」
劉「孔亮が嫌がるので」
孔(チクるな)
公「孔亮が?」
孔「やらないとは言っていません」
公「なら、楊林だろう」
林「え⁉︎」
雄(なんで?)
王(地味すぎる)
孔「楊林がやるくらいなら、俺がやります」
公「決まりだ」
孔「」

・公孫勝(こうそんしょう)入雲竜(にゅううんりゅう)。妖術師っぽいあだ名だけど、ここだと適正イマイチ。
・劉唐(りゅうとう)赤髪鬼(せきはつき)。まんま赤毛、と思いきや元ネタはうなじに赤毛がちょろっとあるよ!って意味。
・楊雄(ようゆう)病関索(びょうかんさく)。関羽の三男が病気っぽいから。所によって、病は〇〇勝りって意味もあるよ。
・樊瑞(はんずい)混世魔王(こんせいまおう)。彼も妖術師だけど、フィジカル寄り。
王英(おうえい)矮脚虎(わいきゃっこ)。短足。
・楊林(ようりん)錦豹子(きんぴょうし)。立派な見た目の事。地味だけど。
・孔亮(こうりょう)独火星(どっかせい)。火星は戦の星。

19.
孔亮「いつから嵌められたんだ」
楊雄「よく似合ってるぜ、公孫勝殿」
孔「お前じゃ無理な役だな」
楊「似合ってるな…」
孔「やめろ」
楊「いや、これは…」
孔「…」
楊「孔亮」
孔「なんだ」
楊「よく似合っている」
孔「一度死ぬか?」

孔(調子が狂ってきた)
兵「伝令!」
孔「なんだ」
兵「高廉が公孫勝殿を探索中」
孔「見つかるまい」
兵「それが…」
孔「どうした?」
兵「公孫勝殿が妙に端正になったので気をつけるよう触れが出ているそうで」
孔(そんなに?)

高廉「公孫勝が端正になった」
殷天錫「影武者では?」
高「馬鹿者」
殷「!」
高「公孫勝はもともと端正だ」
殷「?」
高「私の攻撃でお顔をやつれさせてしまい、日々心を痛めていたのだ」
殷「高廉殿?」
高「これで心置きなく攻撃できる」
殷「公孫勝好きなんですか?」
高「大嫌いだが?」

・孔亮(こうりょう)…ここまで褒められると満更でもなくなってきた。
・楊雄(ようゆう)…実は全身白塗りすれば公孫勝に見えなくもない。

・高廉(こうれん)…公孫勝のライバル。公孫勝を憎みながら愛でつつ、苦しませながら育みたい。
・殷天錫(いんてんしゃく)…高廉の副官。モブだと思うやろ?原典だと違うんよ。端役だけど。 

20.
林冲は極め付けの大馬鹿だ。とにかく一目散に死に向かって突っ走っていく。何故そこまで死に魅せられているのか、私には理解できない。あいつが死ぬのは大いに構わんのだが、とどめを刺すのは絶対に私だ。その役だけは、誰にも譲るつもりはない。せいぜい首を洗って私が殺すまでの余生を楽しんでいろ。 

21.
公孫勝「今日は劉唐はいないのか?」
鄧飛「他で任務ですね」
公「…」
鄧「…」
公「…」
鄧「俺は鎖鎌の稽古してますんで、用があったら声かけてください」
公「…」
鄧「…」
公「鄧飛」
鄧「何か?」
公「まさか室内でやるのか?」
鄧「そうですが?」

公「私に当たるだろう」
鄧「大丈夫です。鎖で遠くのものを持ってくる稽古です」
公「ほう」
鄧「机の杯を取りにいきます」
公「…」
鄧「!」
公「…」
鄧「…割れましたね」
公「…」
鄧「戸棚の引き出しを開けます」
公「…」
鄧「!」
公「…」
鄧「…戸棚ごと倒れましたね」
公「今すぐやめろ」

鄧「稽古を通じて上手くならないと」
公「その前に部屋の備品が壊滅する」
鄧「公孫勝殿が取って欲しいものは何ですか?」
公「話を聞かん奴だ」
鄧「硬くて、分銅で壊れないものだったら何とかなると思います」
公「劉唐は何を躾けているんだ」
鄧「劉唐ですか?」
公「あいつは壊れやすいからいい」

・公孫勝(こうそんしょう)…劉唐はなぜこいつをスカウトしてきたのだ。
・鄧飛(とうひ)…鎖鎌の使い手。弟分の楊林を試しにして鎖鎌の可能性を模索しているが、楊林は堪ったものではない。 

22.
林冲「今度は貴様らが騎馬隊の調練に参加する番だ」
公孫勝「くだらん…」
林「根暗な部下どもが色めき立ってるぞ」
楊雄(夢みたいだ)
楊林(一度参加したかったんだ)
林「早く馬に乗れ」
孔亮(久しぶりだな)
劉唐(たまには良いだろう)
王英「林冲殿、俺は?」
林「身長制限に引っかかった」
王「」

林(落馬しても楽しそうにしてやがる)
雄(楽しすぎる)
錦(疲労が心地よい)

王「…」
扈三娘「王英殿?」
王「!」
扈「この間致死軍の調練に参加したんですが」
王「どうだった?」
扈「意外と向いてました」
王「そうか」
扈「王英殿、それでは」
王「…」

孔「浮かれやがって」
劉「お前もな」

林「なかなかやるではないか、楊雄」
雄「!」
林「お前は…」
錦「錦豹子の楊林です!」
林「豹子頭に似ているな」
錦「!」
公「ナンパはその辺にしろ、林冲」
林「お前の陰気な調練が部下を暗くしているのがよく分かったぞ」
公「余計だ」
林「公孫勝」
公「…」
林「悪くないな」
公「そうだな」

・公孫勝(こうそんしょう)…騎馬隊の調練が楽しいなど、奇特な部下だ。
・楊雄(ようゆう)…顔色がとても良くなった。
・楊林(ようりん)…林冲と楊雄がいたら、楊も林も使えないではないか!
・劉唐(りゅうとう)…調練に騎馬隊のエッセンスを取り入れようと思った。
・孔亮(こうりょう)…青州軍時代を思い出した。
・王英(おうえい)…見学。扈三娘ばっか見てた。

・林冲(りんちゅう)…もっと日向で遊べば良いものの。
・扈三娘(こさんじょう)…次があったら王英の乗れる馬は用意してあげよう。 

23.
劉唐「公孫勝殿は?」
楊雄「見つかりません」
劉「致死軍、飛竜軍合同かくれんぼ大会は昨日で終わりだが」
楊「騙すのありにしたのが裏目に出ましたね」
劉「終了時刻は伝達したのか?」
楊「それすら自分を騙す情報だと思ったのでは?」

樊瑞「もういいのではないですか?」
公孫勝「まだだ、樊瑞」

孔亮「もうほっといていいんじゃないか?」
楊「なんて事を、孔亮」
劉「合図の指笛を吹いてみよう」

劉(もう終わりですよ、公孫勝殿〜♪)

公(騙されんぞ、劉唐〜♪)

劉(昨日まででおしまいです〜♪)

公(いいからさっさと私を探せ〜♪)

劉「だめだ。まだ完全にその気だ」
孔「もういいよ」

劉「こうなったら、全員で公孫勝殿を探すぞ」
楊「そうですね」
孔「〜♪」
楊「孔亮?」
孔「まあ見てろ」

公「姑息な真似を」
樊「公孫勝殿、ここは危険です」
公「なに?」
樊「山に移りましょう」

公「!」
劉「!」
楊「公孫勝殿、見つけた!」
公「はめたな、樊瑞」
孔(お手柄だ)
樊(なんの)

・公孫勝(こうそんしょう)…日頃ストイックすぎる分、たまに遊ぶ時の力の入れ具合が尋常ではない。
・劉唐(りゅうとう)…必然的に鬼。赤髪鬼(せきはつき)なもんで。
・楊雄(ようゆう)…孔亮に騙されて見つかった。
・孔亮(こうりょう)…騙すのありにした張本人。
・樊瑞(はんずい)…こんな事もあろうかと、あらかじめ孔亮と符丁を決めておいて良かった。 

24.
王英「…」
扈三娘「…」
王(会話のない食事が日常化している)
扈「…」
王(せめてもっと賑やかな会話ができる家庭であれば)

張藍「その時私は言ってやったのです」
林冲「…」
張「なんだっけ?」
林(オチのない会話が続く食事が日常化している)
張「それで…」
林(せめてもっと静かな家庭であれば)

林(王)「妙に見える視界が高いな」
張「おはようございます。林冲様」
林(王)「林冲!?」
張「お名前を忘れたのですか?」
林(王)(林冲になってしまった)

王(林)「妙に見える視界が低いな」
扈「…」
王(林)「何故いる、扈三娘」
扈「ここは私の家ですが?」
王(林)(誰だこの不細工なチビは)

張「今日はよく食べますね」
林(王)「当たり前だ。こんなに美味い朝飯は初めてだ」
張「毎日食べているではないですか」
林(王)(なんて羨ましい日常だ、林冲)

扈「…」
王(林)「…」
扈「調練に」
王(林)「後でな」
扈(後で?)
王(林)(俺はこの体躯で百里に乗れるのか?)

林(王)「今日も任務に」
楊林「!?」
林(王)「よう」
楊「何しに来たので?」
林(王)「任務だが?」
楊「…何の?」
林(王)(俺は林冲だった)

王(林)「百里!」
百里風(…)
王(林)「待て!」
扈「王英殿?」
王(林)「配置につけ、扈三娘」
扈「それはあなたでしょう?」
王(林)(王英ってあの?)

林(王)「俺は騎馬隊の調練に行かんといかんのか」

王(林)「飛竜軍って公孫勝の出来損ないの軍か?」

林(王)「…」
王(林)「…」

王(林)(今俺に似た男が走っていたが、見事な体躯だったな)

林(王)(今俺が走り抜けていたが、しばらく無視しよう)

林(王)「待たせた」
索超「珍しいですな、林冲殿」
郁保四「今日の調練は何をするのですか?」
林(王)(何も分からねえ)

王(林)「一体どこへ向かえばいいのだ」
兵「隊長!」
王(林)「話しかけるな」
兵「王英隊長!報告です!」
王(林)「こいつ隊長だったのか」

索「今日の林冲殿は変だ」
扈(あの雰囲気、どこかで…)
林(王)(身体のスペックが高すぎて対応できん)
扈「今日は日差しがきついですね」
林(王)「」
索「林冲殿!?」
扈(あのすけべ顔も、どこかで…)

楊「強すぎんだろ王英」
劉唐「人が変わったようだ」
王(林)(身体が小さすぎて勝手が分からん)

索「林冲殿。今日はどうなされた」
馬麟「いつも以上に支離滅裂ですよ」
林(王)「すまん」
索(らしくない、品のない動きだ)
扈「王英殿」
林(王)「!?」
索(なぜ林冲殿が)
扈「今日の林冲殿は王英殿です」
索「すまん。もう一度」

劉「いつからあんなに強くなったんだ?」
楊「強きゃいいじゃねえか」

林(王)「朝目を覚ましたら、林冲になっていたのだ」
索「はあ」
馬「お前が林冲殿ではないってのはよく分かった」
郁「すると林冲殿は?」
扈「飛竜軍でしょう」
索「王英になってるのか!」

楊「王英、目立ちすぎだ」
劉「隠密行動が公孫勝殿の命令だ」
王(林)「あんな野郎の言う事を聞けるか」

公孫勝「処断するぞ、王英」
王(林)「やってみろ」
劉「!?」
公「いつからお前は林冲のような口の利き方をするようになった?」
王(林)「俺は林冲だ」
劉「ふざけるな、王英」
楊「いや、劉唐。いつもの王英はあそこまで強くはない」
劉「たしかに…」
王(林)「だから言っているではないか」
公「…」

索「というわけで」
劉「交換しよう」

林(王)「…」
王(林)「…」

索「さすが林冲殿の指揮は違う」
馬「王英だけどな」
郁「叱られるとなんか腹立ちますね」
馬「王英だからな」

王(林)(郁保四の腹しか見えん)
百「…」
王(林)「すまんな、百里。足が届かんのだ」

公「林冲」
林(王)「王英です。すみません」
公「…」
楊(俺の中の林冲殿の株が投げ売りされている…)
劉(とんだ風評被害だ)

林(王)「白寿」
白寿「どちら様ですか!?」
林(王)(流石に林冲の身体で行くのはまずかった)

呂牛「…」

宋江「ほう。林冲が王英に。王英が林冲になったか」
呉用「騎馬隊と飛竜軍は大混乱です」
宋「この前の朝、枕元に見覚えのない三巻の天書があってな」
呉「はい?」
宋「書いてある呪文を音読したのがまずかったのかな?」
呉「絶対それです」

王「戻れた」
林「一発殴らせろ、王英」
王「俺だって被害者だ」
宋「すまなかったな、二人とも」

王「帰ったぞ」
扈「戻りましたか」
王「ああ」
扈「良かった」
王「扈三娘?」

林「帰ったぞ」
張「林冲」
林「何事だ、張藍」
張「この文書をご覧なさい」
林「!?」
張「言い残すことは?」
林「やはり殴っておくべきだった」

・林冲(りんちゅう)…張藍による一月の罰を受け終わった直後、血眼になって王英を探し始めた。
・王英(おうえい)…何かを察知し、遼のあたりの工作に従事している。

・張藍(ちょうらん)…それにしても、あの文書をポストに入れたお爺さんは何者だったのかしら?
・扈三娘(こさんじょう)…正直、中身林冲の王英はまんざらでもなかった。

・索超(さくちょう)…中身が林冲殿とはいえ、王英に叱責されるのは…
・馬麟(ばりん)…叱責されて、笑いそうになったぞ。
・郁保四(いくほうし)…威厳が一ミリもありませんでしたよね。

・公孫勝(こうそんしょう)…私に卑屈な林冲なんて反吐が出そうだった。
・劉唐(りゅうとう)…戻った林冲に命令しそうになった。
・楊林(ようりん)…戻った林冲騎馬隊の調練を見て安堵の涙を流した。

・百里風(ひゃくりふう)…戻るまで索超に乗ってもらってた。

・白寿(はくじゅ)…王英の密会相手。なぜか自分の名を知っていた男にもう一度会いたい。

・呂牛(りょぎゅう)…真実を伝えるのがジャーナリズムの本懐ではあるが、すげえものを見たな…

・宋江(そうこう)…イオナズン!
・呉用(ごよう)…MPが足りないみたいですな。

25.
劉唐「ある朝俺が目を覚ましたら、公孫勝殿が猫になっていた」
ね公孫勝「…」
楊雄「警戒されてますね」
孔亮「なだめろ、楊雄」
楊「猫アレルギーなんだ」
孔「使えねえな」
公「!」
劉「逃げた!」
楊「追いましょう」

劉「もともと獣のようだった公孫勝殿が獣になったら追いつけるわけもないか」
楊「良くも悪くも人間ですね、俺たち」
孔「すると致死軍隊長は劉唐殿だな」
劉「公孫勝殿がいるではないか」
孔「猫に致死軍の隊長が務まるので?」
劉「それは」
孔「!?」
劉「猫が孔亮の喉笛に」
楊「公孫勝殿だ!」

公「…」
劉「ご無事で何よりです、公孫勝殿」
孔(無事なのか?)
公「…」
孔(まさか猫に本気で跪く日が来るとは)
劉「公孫勝殿」
公「…」
劉「撫でてもよろしいでしょうか」
公「…」
劉「…」
公「!」
劉「逃げた!」
楊「追いましょう」
孔「何回やるんだよ、この茶番」

・ね公孫勝…猫。勝手気ままさに拍車がかかった。
・劉唐(りゅうとう)…肉球を愛でたくて愛でたくて仕方がない。
・楊雄(ようゆう)…くしゃみと痒みが止まらなくなった。
・孔亮(こうりょう)…ね公孫勝が襲いかかるときは、本気で殺しにかかっている事に気づいた。

26.
公孫勝「劉唐」
劉唐「はい」
公「妙に銭が増えているが何をしていたのだ?」
劉「博打です、公孫勝殿」
公「お前も博打をするのか」
劉「綺麗なのから汚いのまで、技も色々持ってますよ」
公「…」
劉「…」
公「…」
劉「次行くときは誘いますから」
公「そうは言ってない」

公「…」
劉(無表情なのに。ウキウキしている気を感じる…)
公「稼いだ額を競うぞ、劉唐」
劉「その前に、僭越ながらご忠告を」
公「…」
劉「博打は熱くなったら負けです」
公「…」
劉「周りを見渡してカモがいなかったら、あなたがカモになっています、公孫勝殿」
公「…」
劉「ではお楽しみに」

劉(あいつは厳しい博打を打つな)
男「!」
劉(イカサマしたら、目を抉り出すほどの覚悟がある)
公「…」
劉(公孫勝殿は平気かな?)

公「劉唐」
劉「何事ですか?」
公「尋ねたいんだが」
劉「はい」
公「賭ける銭が無くなったら、次は何を賭ければいいんだ?」
劉「今すぐずらかりますよ、公孫勝殿」

・公孫勝(こうそんしょう)…張った目がことごとく裏目に出る様は、さながら妖術。
・劉唐(りゅうとう)…博打技のデパート。ライバルは石勇。

27.
公孫勝「劉唐」
劉唐「はい」
公「なぜお前は博打に勝てるのだ?」
劉「そうですね」
公「…」
劉「まず、勝とう勝とうと思いすぎないこと」
公「…」
劉「あとは退き際の見極め、でしょうか」
公「…」
劉「…」
公「…」
劉「…負けたんですか?」
公「…負けたのではない。退いたのだ」

劉(もう少し早く退いていれば、ここまでの犠牲は…)
公「お前は妙にサイコロの出る目を当てたりするではないか」
劉「勘ですよ、公孫勝殿」
公「どの様に鍛えるのだ?」
劉「この銭を弾きますので、表と裏を当ててください」
公「…」
劉「!」
公「…」
劉「どちらでしょうか?」
公「裏」
劉「残念」

公「表」
劉「…残念」
公「もう一度だ」
劉(何連敗目だ?)
公「全く当たらん」
劉(逆にすごいんじゃないか)
公「私をコケにしているのか?」
劉「普通に弾いてます」
公「貸せ」
劉「はい」
公「…」
劉「…」
公「!」
劉「痛っ!」
公「やはり細工していたな」
劉「飛ばすのが下手くそなだけです」

・公孫勝(こうそんしょう)…裏表のないやつだと思っていたが、まさかこんな特技があるとは。
・劉唐(りゅうとう)…バレなきゃイカサマじゃないんですよ。

28.
公孫勝「劉唐」
劉唐「はい」
公「しばらくこの地を離れられなくなった」
劉「…何があったのです?」
公「…」
劉「正直に言ってください」
公「…博打のツケが溜まって、下働きして返すことになってしまったのだ」
劉「なぜ俺の力を使わんのですか!」
公「…驚かせたくて」
劉「もう驚いてます!」

劉(俺の技を使っても一度で返すのは大勝負だ…)
公「いらっしゃいませ」
劉(とりあえず、賭場の客と店員で別個に返済する策を立てたが…)
公「二名様ご来店です」
主「声がでけえ!」
劉(こんな公孫勝殿見たことない…)
客「くそっ!」
客「この赤毛やりやがる」
劉「まだやるか?」
客「畜生…」

客「イカサマだ!」
客「言いがかりだ!」

劉「…」

公「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので…」
客「うるせえ!気色悪い顔しやがって!」
公「…お客様、表にお連れ様がお待ちです」
劉(これは…)

公「」
客「!?」

公「お客様お帰りです」
主「…なにやった、お前?」
劉「知らん方がいい」

公孫勝(こうそんしょう)…イカサマ師だったからしこたま銀を持っていたよ。
劉唐(りゅうとう)…二度と内緒で行かないでくださいね。 

29.
公孫勝「…」
劉唐「公孫勝殿、こいつは…」
孔亮「猫ですか?」
楊雄「俺はパス」
猫「…」
劉「…拾われたんで?」
公「付いてきたのだ」
楊「随分懐かれてますね」
孔「どれ、俺が可愛がって」
猫「!」
孔「!」
劉「ほう、こいつは」
楊「人を見る目がある猫だ」
公「…」
猫「…」

孔「青蓮寺の軍との戦いでもここまでの傷は負わなかったぞ」
楊「ガッツリやられたな、孔亮」
猫「…」
公「どうしよう、劉唐」
劉「飼いますか?」
楊「飼うといっても、俺たちは拠点を転々としてるし」
孔「面倒を見る暇な奴なんて致死軍にはいないぞ」
公「暇な奴、か…」
劉「心当たりが?」

戴宗「届け物です」
羅真人「天速星?」
戴「着払いです」
羅「待て、印鑑が」
戴「偽装したのでよければ」
羅「地巧星か」
戴「じゃあ私を梁山泊まで」
羅「…目をつぶれ」
戴「まいど!」
羅「なんだこいつは」
猫「…」
羅「手紙が」
公「飼えんから面倒を見ろ、時々こっちに送れ」
羅「一清…」

・公孫勝(こうそうしょう)…猫の名前は一清にしよう。
・劉唐(りゅうとう)…飼い方マニュアルを注文済み。
・楊雄(ようゆう)…猫アレルギーゆえ遠くから見守るのみ。
・孔亮(こうりょう)…しばらく任務に支障をきたす傷を負う。

・戴宗(たいそう)…意外と行けるもんだな、二仙山。 客がいないときの再配達防止用の印鑑を金大堅に作ってもらってる。

・羅真人(らしんじん)…公孫勝の師匠。日頃の険しい態度から想像できない溺愛ぶりをしていた所を童子に見られた。

30.
劉唐「この季節の山中は虫が多いな」
楊雄「毎年うんざりしますよ」
劉「楊雄は刺されんな」
孔亮「一番不味そうだからじゃないか?」
楊「お前の血はさぞかし冷たかろうな」
樊瑞「致死軍一の冷血漢だもんな」

公孫勝「…」
劉(!)
楊(刺されまくっている…)
孔(俺などより血も涙もないはずだが…)
樊(一体なぜ…)
公「蚊が多いな」
劉「蚊帳に入ってしまったのですか?」
公「奴らも生きるのに必死だからな」
孔「…殺さないんで?」
公「一寸の虫にも五分の魂と言うではないか」
樊(暗殺してきた俺への皮肉か?)

・公孫勝(こうそんしょう)…師匠の教えで虫は殺さないが、青蓮寺の兵は虫けらのように殺す。
・劉唐(りゅうとう)…血の凍るような作戦を命令される公孫勝殿が…
・楊雄(ようゆう)…蚊の目線で見ても、やっぱり不味そう。
・孔亮(こうりょう)…冷血漢の血は暑い夏には蚊にとってむしろありがたい。
・樊瑞(はんずい)…蚊を箸で捕らえる特技は夏場にウケる。

31.
公孫勝「樊瑞」
樊瑞「はい」
公「お前の顔は随分と四角いな」
樊「…」
公「だからなんだ、というわけではないんだが」
樊「これを言われたのは108人目です、公孫勝殿」
公「記念品でもくれるのか?」
樊「気にしてるんですよ」
公「だから刺客にスカウトしたんだ」
樊「嘘ですよね?」
公「…」

公「四角い刺客か」
樊「良い加減にしてください」
公「先日の仕事は?」
樊「完璧です」
公「四角い刺客に死角なし、か」
樊「…」
公「四角い刺客は死角がないのが刺客の資格さ」
樊(どうすりゃ良いんだ、俺は)
公「風が」
樊「砂が目に…」
公「…」

公「四角い刺客の視覚を奪う風とは見事だ」
樊「からっ風です」
公「…寒いな」
樊(あんたのギャグがな)
公「たまにはいいな」
樊「公孫勝殿」
公「…」
樊「残念ながら、失格です」
公「刺客失格?」
樊「ですので公孫勝殿」
公「…」
樊「刺客試験に参画してください」
公「この辺で丸く収めよう」

・公孫勝(こうそんしょう)…真顔でボケ倒すことがあるから周りはたまったもんじゃない。
・樊瑞(はんずい)…顔の縦と横の長さの比が黄金比になっているらしい。

32.
劉唐「行きますよ、公孫勝殿」
公孫勝「…」
劉「!」
公「」
孔亮「いただき!」
楊雄「孔亮!」
劉「公孫勝殿が食べてないのに先に食うな」
孔「そんなこと言ったって、劉唐殿」
劉「…」
孔「そしたら全員でそうめんを見逃すことになってしまうではないですか」
公「…」
樊瑞「配置を変えよう」

劉「前衛に公孫勝殿と樊瑞」
公「…」
樊「…」
劉「間を楊雄と楊林が受け」
雄「…」
林「…」
劉「殿に孔亮と王英だ」
孔「…」
王英「背が届かねえんだが」
劉「最後に滞留した麺を食え」
王「…」
劉「では行くぞ」
公「…」
劉「!」
公「」
樊「!」
劉「!」
公「」
樊「…」
雄「…」
林「!」

劉「前衛では厳しいですか、公孫勝殿?」
公「…」
樊(箸使いが思ったより下手くそだな、公孫勝殿)
劉「役割を交代しましょう、公孫勝殿」
公「…」
劉「…」
公「…」
劉「公孫勝殿?」
公「!」
劉「公孫勝殿!」
雄「俺たちに流してください!」
孔(腹ペコだったのか)
王(俺たちは食えるのかな)

・公孫勝(こうそんしょう)…普通に食えばいいではないか。
・劉唐(りゅうとう)…致死軍飛竜軍合同調練のレクリエーションです。
・楊雄(ようゆう)…薬味は生姜とネギ。
・孔亮(こうりょう)…薬味に李逵の香料を隠し持っていたが、匂いでバレて取り上げられた。
・樊瑞(はんずい)…タンパク質がほしい。
・楊林(ようりん)…甘辛いキノコが好き。
・王英(おうえい)…伸びきったそうめんしか食えなかった。

33.
薛永「本音を吐露してしまう薬が出来てしまった…」
馬雲「( ゚д゚)」
薛「試したいところだが、治験してくれそうな者はいないかな、馬雲?」
馬「(~_~;)」
白勝「おい、薛永。安道全のところで、また林冲と公孫勝がコント始めやがったから、聞きにこいよ」
薛「…」
馬「( ͡° ͜ʖ ͡°)」
薛「今行く」

公孫勝「そんなに注射が怖いか、林冲」
林冲「お前こそ、歯の治療が怖いのか」
安道全(なぜこの二人は惹かれ合うのだ」
白(またいちゃつきやがって…)
薛「…」
馬「(^_^)ノ且且」
公「余分すぎる筋肉が針を太くしたな」
馬「(^_^)ノ且」
林「ろくに飯も食わんお前は歯もいらんだろ」
馬「(^_^)ノ且」

‎薛(…飲んだ)
‎馬「d( ̄  ̄)」
‎公「林冲」
‎林「…」
‎公「注射は痛いが、安道全もお前の健康を思って提案しているのだぞ」
‎林「!?」
‎安「!?」
‎公「!?」
‎林「公孫勝!」
‎公「…」
‎林「お前があまりに飯を食わんから、俺は心配しているのだぞ!」
‎公「!?」
‎安「!?」
‎林「!?」
‎薛(決まった)
‎馬「٩(^‿^)۶」

安(周囲が騒然としてきた…)
白(何をした、薛永?)
薛「さて?」
馬「ʕ•ᴥ•ʔ」
林「公孫勝、お前という奴は…」
公「…」
林「いつも過酷な任務を強いているのが、心配でならん!」
安「…」
公「何を言っている、林冲」
林「…」
公「お前の騎馬隊の速さを信頼しているから、作戦が組めるのだ」

林「死にたがるな、公孫勝。生きるのも捨てたものではない」
公「お前も周囲の心配を省みず、無茶な突撃ばかりするんじゃない」
林「過酷な戦ばかりして、兵を労っているのか」
公「日々感謝と自分の不甲斐なさを噛み締めている」
林「俺も周囲の者への感謝を欠かさぬようにする」
白(大サービスだな)

安「治療は済んだから戻っていいぞ」
林「いつも助かっている、安道全」
公「兵たちの治療に取り組む姿勢には頭が下がる」
安「!?」
薛(なるほど…)
白(不意打ちでこれは効く…)
安「とっとと隊に戻れ、バカップルが!」
林「…」
公「…」

安「医者をやっててよかった…」
白「泣くなよ…」
薛「…」

公「…」
劉唐「公孫勝殿!」
公「…大したものだ、劉唐」
劉「何がですか?」
公「飛竜軍の発想だよ」
劉「?」
公「私の思いも及ばなかった、新たな致死軍を、お前は一から自分で作り上げた」
劉「…公孫勝殿?」
公「お前は私の自慢だ、劉唐」
劉「…なにを、言っているのですか、公孫勝殿」

楊雄「公孫勝殿」
孔亮「任務の件でご報告を」
公「聞くまでもない」
楊「!」
孔「!」
公「万事うまくいっているのだろう?」
楊「?」
孔「公孫勝殿?」
公「こんな過酷な仕事を苦もなくこなしているお前らなら、なにを任せても安心だからな」
楊「…」
孔「…」
公「良い部下に恵まれた、私は」

林「薛永」
薛「ひい」
公「何を盛った」
薛「…それは」
馬「(=゚ω゚)ノ且」
林「これは」
公「…」
薛「…」
馬「(-.-)y-., o O」
林「…」
公「…」
薛「一日で切れます」
林「…一日で切れなくなっちまったよ」
薛「薬がですか!?」
公「…他のものだ、薛永」
薛「腐れ…」
林・公「皆まで言うな」

薛永(せつえい)…効能と副作用について真剣に研究し始めた。
馬雲(ばうん)…( ͡° ͜ʖ ͡°)

安道全(あんどうぜん)…死んでも死なさんからな、林冲め。
白勝(はくしょう)…だから一生の友達なんだよ。

劉唐(りゅうとう)…俺を試そうとしているのかと思ったが、涙腺にきたのは本当だ。
楊雄(ようゆう)…ちゃんと俺たちのことを見ていてくれるのだな。
孔亮(こうりょう)…全く。もっと褒めやがれってんだ。

公孫勝(こうそんしょう)…兵の一人一人に労いと感謝の言葉をかけ続け、感動の輪に包まれた。 

やっぱ公孫勝もたいがいだなぁ。

今後も更新していくつもりですので、お楽しみに!

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元ネタ


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