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水滸噺番外「胡蝶の羽ばたき」第二部 〜大戦梁山泊〜

~あらすじ~
化物の宴に払うつけ 神医の問診十万貫 
月夜に響く鉄笛二本 音を求める浪子はどこへ
躍動したるは白日鼠 彼の友人一〇八人
続々来る一〇八星  ひたひた迫る普通の限界

水滸噺番外 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
柴進の庭という、好漢たちの持つ渾名の力を色々な形で発揮できる異世界からお届けします。
・番外編ですので、がっつりネタバレしています。ご了承ください。
・作者のtwitterにてただいま(8/24現在)連載中です。 
・ご意見ご感想等々、こちらまでお寄せいただけると、とても嬉しいです。いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

水滸噺番外 胡蝶の羽ばたき】
 第一部「小旋風救出」 

それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

第十三話 念仏

朱仝「屋敷の者の救出を!」
湯隆「俺たちが!」
雲裏金剛「!」
摸着天「!」

湯「…何があったってんだよ、ここで」
雲「…」
摸「…」
?「♪〜鉄笛〜♪」
湯「…笛の音が?」

石勇「…」
金眼彪「…」
武松「」
燕青「♪〜鉄笛〜♪」

湯「お前ら…」
燕「湯隆か」
湯「…なんだか、化け物が宴でもしてたみたいじゃないか」
燕「…化け物の宴?」
武「」
石「…」
彪「震」
湯「…」
燕「違いない…」
雲「」
摸「」
湯「…歩けるか、燕青、石勇?」
石「…」
蚤「!」
石「!」
湯「石勇?」
石「俺は、歩ける…」
湯「燕青は?」
燕「…私は、歩けない」
湯「…分かった」
燕「借りにしとくよ」
雲「!」
燕「」
摸「!」
武「」

朱「お手柄だ、湯隆」
湯「俺は、何もしてない」
朱「…化物の宴の後始末を志願する者が、何人いると思う?」
湯「…百八人は、くだらないかと」
朱「お前もその一人だよ」
湯「それより、二人の手当てを」
朱「白勝がいたのだが…」
石「あいつは屋敷で鼠になって、外に出した」
朱「ならば、いつか帰ってくるな」
鮑旭「朱仝殿、あれを」

花和尚「…」

鮑「経を、唱えているのでしょうか」
朱「そんな殊勝な坊主にゃ見えんぞ?」

花「…」

鮑「…こちらに歩いてきますが」
朱「…」
花「…」

武「」
燕「」

林冲「おい、朱仝!」
秦明「柴進は無事か?」
柴進「林冲、秦明!」
林「また迷惑かけやがって」
柴「お前に…」
林「柴進?」
柴「…迷惑をかけた」
林「分かれば良し」
秦「武松!燕青も?」
林「燕青がいたのか?」
花「…」
林「おう、懐かしい頭が」
花「…」
朱「付いて来い、か?」
林「行こう」 

第十四話 人の値 

神医「…」

林冲「どっかで見た面だ」
秦明「治療を依頼できるのか?」

医「十万貫」
林「馬鹿な!」
秦「盧俊義殿に言えば…」
柴進「あるぞ、林冲、秦明」
林「…なるほど」
秦「いいのか、柴進?」
柴「同志の命には変えられない」

柴「この扇子は、叔父上から貰ったお気に入りだ」
医「二万貫」
柴「この宝石は、叔父上から褒美で貰った、たった一つの宝物だ」
医「五万貫」
柴「あと三万か!」
医「三万貫」
柴「ならば…」

林「もういい、柴進」
秦「お前の想いは有難いが、想い出まで無くさなくていい」
柴「…」
医「三万貫」

柴「友の命のため、たったの十万貫が支払えないとは!」
楊林「!」
柴「!?」
林「楊林!?」
秦「すまんな、柴進」
柴「…なぜ秦明が」
秦「私が、一度だけ許可した」
柴「…」
楊「…やけになんじゃねえ、柴進」
柴「…楊林?」
楊「感情をぶちまけたいのは、てめえだけじゃねえんだ」
火眼狻猊「…」
孟康「…」
柴「…ありがとう、楊林」
楊「殴って礼を言われたのは初めてだよ」

柴「…神医」
医「…」
柴「必ず払うことを約束する」
医「…」
柴「払うのは、この地の宝でいいか?」
医「…」
林「それは?」
公孫勝「丹書鉄券か、柴進」
林「…遅いぞ、ウスノロ」
李逵「兄貴!」
武「」
劉唐「…」
楊雄「…」
孔亮「…」
王英「…いつもの面子か」
燕順「大所帯になったな」
扈三娘「まだ増えそうですね」

武「」
医「!」
武「…」
燕「」
医「!」
燕「…」
李「どうしちまったんだ、兄貴…」
花和尚「…」
金眼彪「…」

武「…李逵か?」
李「今戻ったぜ、兄貴」
武「…それは?」
李「二仙山の姐さんに貰った首飾りさ」
武「…」
李「兄貴に渡してくれと、頼まれたんだが」
武「!!」
李「…兄貴?」
武「どんな、姐さんだった、李逵?」
李「落ち着け、兄貴。呼吸が荒いぜ」
武「この首飾りを、どこで?」

李「二仙山だって」
武「そこに、いたのか?」
李「いたけど、すぐ帰っちまった」
武「ならば俺も、二仙山に…」

公「行けば会える山ではない」
武「どうすれば会える?」
公「師匠の気まぐれと、運かな」
武「公孫勝…」
公「…」
武「今の俺は、どんな面してる?」
公「…少なくとも、人の面はしていない」
武「…そうだよな」
李「今は休めな、兄貴」
武「兄者…」
花「…」
武「…」
李「兄貴?」
武「この首飾りは、まだ持っていてくれ」
李「…人に戻ってから、ってか」
武「…そんなところさ」 

第十五話 正念場 

燕青「…」
柴進「…なぜ一緒に逃げなかった、燕青?」
燕「…気まぐれです」
柴「気まぐれで、死を選ぶのか?」
燕「その時は、その時ですから…」
柴「盧俊義殿が悲しむぞ?」
燕「浪子如きの死に?」
柴「燕青?」
燕「…独りに、してください」
柴「…」

李逵「大所帯の飯作りは得意じゃねえんだが」
朱仝「兵糧は?」
秦明「宋清と蔣敬と連絡を取ったところだ」
朱「どうやって?」
秦「…耳を塞げ」
林「…またかよ」
秦「霹靂火!」
王定六「!」
朱「霹靂火の活閃婆か」

秦「首尾は?」
王「明日には間に合わせると」
秦「瞬時に連絡ができるとは助かる」
朱「周りは堪らんぞ」
李「椀はみんなで使えよ」
秦「…五臓六腑に染み渡る」
林「…生きていて、良かったな」
秦「…ただ、そう思うよ」

高廉「大損害だ」
殷天釈「ここまで恐ろしいのですか、梁山泊は」
周炳「あんた、恐ろしいのかい?」
殷「小僧…」
周「それは普通だよ」
殷「…」
周「普通ってのは良いことさ」
殷「黙れ」
周「でも普通の者じゃ、青蓮寺の者は務まらないよ?」
殷「黙れと言った」
周「俺より弱い奴の言うことは、聞かない事にしてるのさ」
殷「…」

高「俺の言う事は?」
周「ここなら聞いてもいい」
高「ならば、お前は自由に動くことを許可する」
周「体よく追っ払いたい、ってこと?」
高「お前もその方がやりやすいだろう?」
周「実はそうなんだ」
高「利害の一致だな」
周「じゃあ、そう言う事で」
高「手柄の報告は?」
周「どうでもいいよ」

殷「…高廉殿」
高「殷天釈」
殷「…」
高「一度しか言わん」
殷「…」
高「ここが俺たちの正念場だ」
殷「…分かってます」
高「これからの戦は、こいつらの力を使い、俺は妖術の禁忌に挑む事にする」
殷「それは」
高「こいつらの将はお前だ、殷天釈」
殷「…高廉殿はどれほどの時が?」
高「分からん。俺が死ぬことも考えられる」
殷「…」
高「出てきた時には、成功したと思ってくれ」
殷「…かしこまりました」 

第十六話 月夜 

燕青「月が綺麗だな」

燕「♪〜鉄笛〜♪」

?「♪〜鉄笛〜♪」

燕「…」

馬麟「…合わせないのか」
燕「今は、独りで吹きたい」
馬「聴くのは?」
燕「…好きにしろ」
馬「…」

燕「〜鉄笛〜♪」

馬「…」

燕「鉄笛〜」

馬「燕青」
燕「…」
馬「狂ったか?」
燕「…調子がな」
馬「…それだけなら良い」
燕「…」
馬「返礼だ、聴いてくれ」
燕「…」

馬「♪〜鉄笛〜♪」

燕「…」

馬「♪〜鉄笛〜♪」

燕(荒んだ心が、癒されていく)

馬「♪〜鉄笛〜♪」

燕(鉄笛仙か)

馬「…」
燕「礼を言う、馬麟」
馬「…ここだけの話だ、燕青」
燕「なんだ」
馬「この曲を吹くと…」

林冲「いつも済まんな、索超」
索超「いきなりどうしたんだ、林冲殿」
林「郁保四も辛い調練ばかり押し付けて、本当に済まない」
郁保四「…俺は別に」

馬「こうなる」
燕「w」
馬「笑え、燕青」
燕「…」
馬「笑えない日だってあるがな」
燕「…」
馬「ここに来て俺は、自分が笑うことを、少し、許せた」
燕「…」
馬「笛の音を取り戻せよ」
燕「…分かった」 

第十七話 白日鼠躍動 

白勝「お天道様が登ったってことは」
病大虫「!」
白「乗っけてくれ、病大虫」
病「…驚いた」
白「鼠になったら、お前の言葉が分かるぞ」
病「あんた人なのか、鼠なのか?」
白「今は合いの子さ」
病「面白いな」
白「他の虎はいないのかい?」
病「今はあいつらが」
青眼虎「今日は元気だな、病大虫」
笑面虎「その鼠は?」
白「俺は白日鼠ってんだ」
病「鼠人間さ」
青「なんだそれ?」
白「お天道様が沈んだら、人間になるんだ」
笑「面白えwww」

母大虫「おい、あんた達」
青「どうした、母ちゃん」
母「花項虎と中箭虎がいなくなっちまったよ」
笑「それは笑えねえな」
白「詳しく聞かせてくれよ、母ちゃん」
母「可愛い鼠だね」
白「あんたも綺麗な虎だよ」
母「気に入ったね、乗りな」
白「ここまでありがとよ、病大虫」

母「醜郡馬っていう、不細工だが知恵のある馬もいなくなっちまってね」
白「…他にも動物がいるのか?」
母「挨拶するかい?」
白「新入りの挨拶回りは大切だろう、母ちゃん?」
母「できた鼠だ!案内するよ!」
白「ありがとよ!」

通臂猿「気が合いそうな鼠だ」
摩雲金翅「お前といると、すげえものを見れそうだ」
九尾亀「俺たちに出来る事があったら」
独角竜「喜んで、力を貸すぜ」

白「ありがとよ!」

母「…ここからは用心しな」
白「…不気味なところだ」

虎「来たよ、母夜叉」
母夜叉「どうした、母大虫?」
虎「新入りの挨拶回りさ」
白「白日鼠っていう新入りだ。よろしくな」
夜「…あんた、鼠だけじゃないね?」
白「ご名答だ、姐さん」
夜「人の匂いもするよ」
白「お天道様が登ってる時だけ鼠なのさ」
夜「それで白日鼠かい?」

白「人の時に昼間っから胡散臭えことばっかやってたから、そう呼ばれたのよ」
夜「それで?」
白「それでこの庭に来てみろよ、姐さん。鼠人間の出来上がりと来たもんだ」
夜「面白い鼠だね」
白「あんだけ嫌だった白日鼠って渾名がこんなにありがてえとは思わなくてよ」
夜「気に入ったよ、白日鼠」

白「そいつは良かった」
夜「つまらん鼠なら、饅頭にしてたよ」
白「…冗談きついぜ」
操刀鬼「もしくは俺が、ソーセージにしていた」
夜「やめろ、操刀鬼」
鬼「…」
夜「お前がソーセージというと、なんか腹がたつんだ」
鬼「理不尽も甚だしい…」

曹正「俺のソーセージのパクリだと?」
蔣敬「操刀鬼のソーセージって品が滄州で」
曹「渾名までパクるとは許せん」
蔣「滄州に物資を届けに行きますけど、一緒に行きますか?」
曹「行かいでか!」

母「あんた、誰とでも仲良くできるんだね」
白「あいつと仲良くできたら、他のやつと仲良くなるなんて容易いもんさ」

安道全「ハクショウ!」

神医「ハクジツソ!」

母「あんたとは上手くやれそうだよ」
白「俺が話して」
母「私が闘う」
白「虎の威を借る鼠ってか?」
母「あんたにならいくらでも貸したげるよ!」
白「それは良いな」
母「よろしくね、白日鼠」
白「おう、母ちゃん」

母「…」
白「…あいつは?」
小尉遅「…」
母「小尉遅…」
小「!」
母「待って!」
白「…」
母「私は、あの人を守ってやりたくて…」
白「ちょっと俺が見てくるよ」
母「あんたなら、あの連中とも仲良くできそうだ」

白「ありゃ人か?」
母「みたいなもんさ」
白「なら、お天道様が沈んでから行くとするよ」
母「…ならちょっと、相談に乗っておくれよ、白日鼠」
白「いくらでも乗ってやるぜ、母ちゃん」 

第十八話 限界

戴宗「ここなら何とか走れるな」
秦明「援軍と物資の手配、感謝する」
李逵「馬鹿戴宗!」
戴「李逵?」
李「おめえ、俺の弟になれ」
戴「なんでだ」
李「酒に溺れるだめな爺にしたくねえからだ」
戴「…なるわけねえだろ」
李「お前が承知するまで、飯は作らんが?」
戴「…背に腹は変えられん」

王定六(ちょろい…)
秦(胃袋を掴まれた男は、概ねああなる)
王(あんたも?)
秦(まあな)

林冲「あの将は?」
秦明「派手な甲冑だ」

井木犴「…」
神火将「…」
聖水将「…」

殷天釈「我らの進退がかかった戦だ。撤退は許さん」

井「…」
火「…」
水「…」

醜郡馬「なあ、大将」
殷「話しかけるな、駄馬」
馬「…神火将と聖水将は、もっと上手い使い方があるぜ?」
殷「俺に話しかけるな、不細工な馬ごときが」
馬「…じゃあ逃がしてくれよ」
殷「俺に逆らうのか」
大刀「…」
双槍将「…」
殷「…お前らの出番はまだだ」

花項虎「…」
中箭虎「…」
殷「…お前らも将の首を獲らん限り、餌はやらんからな」
花「…」
中「…」
殷「俺はこの没羽箭を使って闘うことにする」

燕順「おいでなすったな」
王英「じゃあ、俺たちも」
扈三娘「…」
燕「一丈青ってのはいつ見せてくれるんだ、扈三娘?」
扈「ここ一番でお見せしますよ」
燕「少しはノリが良くなってきたか?」

林冲「やっと出番だな、百里」
百里風「…」
林「拗ねるな、張藍じゃあるまいし」
百「…」
索超「急先鋒!」
馬麟「騎馬隊の機動力は上がったな」
郁保四「険道神!」
林「見上げるほどでかいな」
郁「肩に乗りますか、林冲殿?」
林「この後でな」
百「…」
林「行くぞ」
索「」
馬「」

井木犴「!」
神火将「!」
聖水将「!」

秦(仲良くなれそうな顔だが)
朱(今は敵同士か)

秦「霹靂火!」

火「!?」

朱「地面から火が…」
秦「唱えておいて良かった」
朱「進路を変えろ!」

李逵「行くぜ野朗ども!」
鮑旭「喪門神のお出ましだ」
項充(無心で飛刀だけ投げよう)
飛天大聖(…)
没「なんか言えよ」

殷「またあいつらが…」
大「…」
双「…」
殷「お前ら、あの獣どもを皆殺しにしろ!」
醜「大将、そしたら…」
殷「屠殺するぞ、駄馬」
馬「…」

朱「おう、あの大刀は!」
大「!」
朱「美髭公が相手になろう」
大「!」
朱「さすがの強さだ!」

双「!!」
林「俺が相手だ」
双「!!」
林「!」

殷「しまった」
馬(そりゃそうだって)
殷「虎もさっさと行け!」
花「!」
中「!」

燕「虎の相手は俺たちが!」
王「ちょうど良さそうな相手だ」

殷「あとは、俺の没羽箭で…」

李「やっぱり殺すのも愉しいな!」
鮑「その血塗られた手で美味い料理を作るんだから、恐れ入る」
李「何言ってやがる、喪門神」
鮑「あ?」
李「料理だって殺しじゃねえか」
鮑「ほう」
李「野菜を殺し、麦や米を殺し、豚や羊や魚を殺して、俺たちは命を繋いでんだろ?」
鮑「それで?」
李「俺たちのために殺したからには、俺たちがキチンと生かしてやらないとならねえ」
鮑「色々考えてんな、黒旋風」
李「だから、いただきますとご馳走さまを欠かすなと、母者に教えられたのさ」
鮑「…もう一つ教えてくれ、黒旋風」
李「余裕あるな」

項「!!!!!!!!」
飛「!!!!!!!!」
没「どすこい!」

鮑「今殺してる命は?」
李「そりゃ関係ねえよ」
鮑「なんでまた?」
李「敵の命に遠慮するのが喪門神の仕事か?」
鮑「そりゃ違う」
李「そういう訳よ、喪門神」
鮑「お見それしました」
李「それじゃあ敵を料理しようか」
鮑「いくらなんでも不味そうだ」

項(マジで死域の五秒前…)
飛(MS5…)
没「マッスルバスター!」

殷「没羽箭!」

李「!」

殷「やったか?」
馬(フラグ乙)

李「痛えじゃねえか」
鮑「大将の仇をとれ!」
項「!」
飛「!」
殷「しまった、没羽箭を…」
没「…」
殷「のろまなデブが、なぜ後ろに…」
鮑「急先鋒は親切だ」
李「俺たちの速さ、見てなかったのか?」
殷「…高廉は、妖術の禁忌を破ろうとしている」
鮑「それで?」
殷「…俺たちの将はここの戦場の者と、禁軍から援軍が来る」
李「…覚えとけよ、項充」
項「分かったよ」
殷「…殺さないのか」
鮑「殺されてえのか?」
殷「…」
鮑「俺の髑髏が言っている」
殷「…」
鮑「殺す値打ちも、無くなった」
殷「」

李「じゃあ次は聖水将のところだ!」
鮑「大丈夫か、大将?」

殷「」
周炳「…」
殷「…笑えよ、小僧」
周「…」
殷「…俺を、笑ってくれよ、小僧」
周「…」
殷「…命惜しさに仲間を売った、惨めな俺を、笑えよ、小僧!」
周「…あんたは至って普通な男だ」
殷「ならば…」
周「同情はするけどね?」
殷「…」
周「でも、言ったじゃないか」
殷「…」
周「青蓮寺の者は、普通な男じゃ務まらないんだ」
殷「」
周「もう俺に、話さないでね」
殷「」

周「没羽箭は借りてく」
殷「」
周「醜郡馬、おいで」
馬「なんだい、坊や」
周「僕を乗せておくれよ」
馬「こんな不細工な駄馬でよろしいんで?」
周「何言ってんだよ。あんたの知恵と速さを借りたいんだ」
馬「それなら是非もねえ」
周「速いね」
馬「落ちるんじゃねえぞ」

殷「…申し訳ございません、高廉殿」 

第十九話 混江竜一座

聖水将「!」
李逵「陸に上がっちゃ世話ねえな」
水「!!」
李「!」
鮑「大将!」
項「川に流されちまった…」
飛「!」
没「やべえ」

李(泳げねえの忘れてた…)

?「おや、こんな所に」
李「」
?「俺がいて良かったな、李逵」

李俊「釣れたか、張順」
張順「浪裏白跳が獲れたての李逵を贈るぜ」
童猛「こいつは活きが良さそうだ」
逵「…」
阮小七「大丈夫か」
逵「…死ぬかと思った」
阮小二「こんな事が前にもあったか?」
張「二回目だぞ、李逵」
逵「…獲られちまったからには、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
李立「そりゃお前が一番得意だろ」
逵「違いねえ」

鮑「良かったです、李逵殿」
項(この変貌ぶりは、なんなんだ?)

水「!」
逵「聖水将の水軍だ!」
俊「後は俺たちに任せろ」
張「誰から行く?」
童猛「じゃあ俺から」
二「順番だぞ、小七」
七「しょうがねえ」
童「翻江蜃!」
俊「でけえ貝だな」
童(おう!兄者)
出洞蛟「!」
童(二人揃えば、本当の大蛇だ!)
蛟「!」

俊「…ここまでお膳立てされちゃ、俺が決めねえと」
七「噛むなよ、李俊殿」
俊「混江竜!」
立「久しぶりの面子だね、兄貴」
俊「聖水将の船をかき混ぜてやろう」
童「行くぞ、兄者」
蛟「!」

俊「お前も水軍に入れたかったぞ、出洞蛟」
蛟「!」
童「俺たちで船をかき乱すぜ、兄者!」

水「!」

逵「いたのか、張横」
張横「船火児になれば、酔わなくなった」
逵「陸は落ち着くぜ」
横「おや、あいつは?」
短命二郎「…」
横「乗ってくか?」
短「!」
横「気が短そうだ」

横「助っ人だ」
短「!」
二「おう、二郎!」
七「やっぱり阮家の男は水の上だな」
二「三人揃ったか」
短「…」
二「阮氏三雄で船を潰すぞ」
七「活閻羅!」
二「…立地太歳」
七「昔の兄貴のお出ましだ…」
二「二郎!小七!」
短「!」
七「!」
二「災いを、起こしに行くぞ」
七「行くぜ、二郎兄貴!」
短「!」

水「…」

二「追い詰めたぞ、聖水将」
七「命はとらねえ、降伏しな」

水「!」

二「水に逃げたか」
七「だが、水の中には…」

順「ようこそ、聖水将」
水「!」
順「水の中で浪裏白跳に敵うと思うか?」
水「…」
順「賢明だ」

立「聖水将は問題ねえ」
俊「本当か?」
立「催命判官の見る目を信じろ」
七「活閻羅もこいつの地獄送りは違うと思うな」
俊「ここはあの世か?それともこの世か?」
横「胡蝶の夢ってやつじゃないかな」
順「どっちでもいいってな」
二「ここで夢が叶うとは」
猛「兄者の、夢もな」

蛟「!」
短「!」 

第二十話 致死飛竜軍・騎馬隊・清風

神火将「!」

劉唐「暑いな、この将は」
楊雄「冷血漢ならちょうどいいのか?」
孔亮「あいにく病関索より健康体だ」
楊林「お前らも使ってみろよ」
火眼狻猊「!」
劉「よう」
雄「…何食ってんだ?」
林「禁則事項だ」
孔「独火星!」
林「…嫌な予感が」

林冲「豹子頭!」
双槍将「!!」

秦明「霹靂火!霹靂火!霹靂火!」
王定六(耳大丈夫かな)

朱仝「美髭公が伸び始めた!」
大刀「!!」

孔「火星は戦の星、ってことは?」
雄「全員暴走し始めたぞ」
?「!」
孔「抜け駆けした命知らずが!」
雄「…待て!拚命三郎!」
拚命三郎「!」
雄「病関索!」
劉「赤髪鬼!」
孔「俺も血に飢え始めてきた…」
林「ここはお前らに任せよう」

雄「…」
兵「死に損ないが、ほっつき歩くな」
雄「!」
兵「」
雄「!」
兵「」
孔「処刑するみたいに首だけ飛ばすね」

火「!」
三「!」
劉「命は大事にしろ、拚命三郎」
火「!」
劉「身体を消せるってのは便利だな」
火「…」
劉「降伏するか?」
火「」
雄「いつも以上に黄色くなっちまった」
三「…」
雄「ここでは俺たちと戦おうぜ、拚命三郎」
三「!」

井木犴「!」
索超「星が降ってくるな」
馬麟「厄介な」
郁保四「結構痛いんですけど」
索「盾になってくれ、険道神」
郁「俺に盾があればいいのに」
井「!」
索「中々の使い手だ」
馬「♪〜鉄笛仙〜♪」
索「おう、乗ってきた」
井「!」
索「逃すな!」
扈三娘「一丈青!」
井「!?」
馬「綺麗な青絹だ」
索「前は大蛇じゃなかったか?」
扈「解釈は諸説あるそうなので」
馬「絵巻見てきたな」
扈「さて?」
井「…」
郁「貸しですよ、三人とも」

花項虎「!」
燕順「山賊の年季が違え!」
花「!」
燕「修行しろ、花項虎」

王英「こいつ強え!」
中箭虎「!」
燕「冴えねえな、矮脚虎」
王「足短えんだよ」
燕「元からじゃねえか」
白面郎君「…」
中「?」
両頭蛇「…」
白花蛇「…」
中「!」
王「…伸びちまった」
燕「誰にでも怖いもんはある」
王「…俺は美人が兄より怖い」
扈「王英殿、首尾は?」
王「!」
燕「…死ぬより怖い目にあいそうだ」
白「是」
中「」
白花蛇「?」
両頭蛇「??」

林「今日はここまでだ、双槍将」
双「!」

朱「またどちらが本物の関羽か決着をつけるぞ、大刀!」
大「!」

大「…」
双「…」

殷「…」

大「…」
双「…」

殷「…もうお前らに、任せた」 

人物紹介

梁山泊
宋江(そうこう)及時雨(きゅうじう)が降った後の大騒ぎはまだまだ続く。
呉用(ごよう)智多星(ちたせい)が瞬き始めた。頭上注意。
公孫勝(こうそんしょう)入雲竜(にゅううんりゅう)に会う道中に波乱の予感。
林冲(りんちゅう)豹子頭(ひょうしとう)は、出番が少なくご機嫌斜め。
秦明(しんめい)霹靂火(へきれきか)は、さすがの安定感。活閃婆との連携も抜群だが、いかんせんうるさい。
柴進(さいしん)小旋風(しょうせんぷう)の丹書鉄券がこの庭の要。
朱仝(しゅどう)美髯公(びぜんこう)は、部下思い。大刀との関羽争いも熾烈を極める。
花和尚(かおしょう)…酒と肉が大好物。破戒僧でもお構いなし。
武松(ぶしょう)行者(ぎょうじゃ)の格好をした獣に堕ちた。人の心は取り戻せるか。
索超(さくちょう)急先鋒(きゅうせんぽう)は味方の機動力を上げる。騎馬隊の良心着到。
戴宗(たいそう)神行太保(しんこうたいほう)は、西域から梁山泊までひた走り、滄州まで来てまだ走るのか?
劉唐(りゅうとう)赤髪鬼(せきはつき)は身体を消せる。鬼は鬼でもこちらは幽鬼。
李逵(りき)黒旋風(こくせんぷう)の預かり物を渡せるときは来るのだろうか。
李俊(りしゅん)混江竜(こんこうりゅう)は江を荒らす竜。二童を従えいい気分。
阮小二(げんしょうじ)立地太歳(りっちたいさい)瞬く夜は、二人の弟泣きを見る。
張横(ちょうおう)船火児(せんかじ)の漕ぐ船は、三途の川に連れていく。
短命二郎(たんめいじろう)…軍師になるほど聡い男は、命知らずの次男坊。
張順(ちょうじゅん)浪裏白跳(ろうりはくちょう)は魚の異名。魚人間か、人間魚か。
阮小七(げんしょうしち)活閻羅(かつえんら)はこの世の閻魔。地獄の沙汰も彼次第。
楊雄(ようゆう)病関索(びょうかんさく)は処刑人。処刑の技は昔の杵柄。
拚命三郎(へんめいさんろう)…命知らずの三男坊。この世の借りは死んでも返す。
両頭蛇(りょうとうだ)…頭が二つの蛇。噛まれたら大変。
燕青(えんせい)浪子(ろうし)はいったいどこへ行く?
摩雲金翅(まうんきんし)…空を飛ぶ鳳。大好きなものはすげえもの。
火眼狻猊(かがんしゅんげい)…赤眼の獅子。食べ過ぎて胃もたれ気味。
燕順(えんじゅん)錦毛虎(きんもうこ)は、弟分に厳しく優しい。
楊林(ようりん)錦豹子(きんひょうし)の義憤は小旋風の目を覚ましたか。
蒋敬(しょうけい)神算子(しんさんし)の算術は万に一つの狂いもない。
神医(しんい)…神の腕を持つ医者は、吝嗇ドケチ。
王英(おうえい)矮脚虎(わいきゃっこ)は足の短さが弱点。爪を振るうても届かない。
扈三娘(こさんじょう)一丈青(いちじょうせい)は青い絹糸。元ネタは絵巻水滸伝。
鮑旭(ほうきょく)喪門神(そうもんしん)の戦の前は、舌なめずりが止まらない。
孔亮(こうりょう)独火星(どっかせい)の輝く戦は誰しも我を忘れるだろう。
項充(こうじゅう)八臂那吒(はっぴなた)の飛刀のおかげで黒旋風らは助かっている。
飛天大聖(ひてんたいせい)…お猿でも投げる槍は百発百中。
馬麟(ばりん)鉄笛仙(てってきせん)の吹く笛は、聴く者の心を癒すだろう。
出洞蛟(しゅつどうこう)…深い水に潜む蛟は、兄貴と弟を出迎えた。
童猛(どうもう)翻江蜃(はんこうしん)は蜃気楼を生む。兄との再会は幻ではない。
孟康(もうこう)玉旛竿(ぎょくはんかん)を掲げれば、火眼狻猊も言うことをきく。
通臂猿(つうひえん)…手長猿。敏捷性も抜群。
白花蛇(はっかだ)…白い毒蛇。噛まれたらヤバいが基本大人しい。
白面郎君(はくめんろうくん)…イケメン美男は長兄想いで次兄に厳しい。
九尾亀(きゅうびき)…尾が九本の亀は石を積むのが得意。崩すのも大得意。
曹正(そうせい)操刀鬼(そうとうき)の作るソーセージは絶品でも、製造過程に問題あり。
雲裏金剛(うんりこんごう)…巨漢の力士。根は優しくてて力持ち。
摸着天(もちゃくてん)…巨漢の力士。無口でもやるときはやる。
病大虫(びょうだいちゅう)…白日鼠のアドバイスを受けたら顔色が少し良くなった。
金眼彪(きんがんひょう)…かわいい猫は気配に敏感。気位も高い。
湯隆(とうりゅう)金銭豹子(きんせんひょうし)の鍛冶屋道具はそろそろ使える時が来る。
独角竜(どっかくりゅう)…額の瘤で砕けないものはない。
笑面虎(しょうめんこ)…笑い上戸の虎。笑いどころはきちんと選ぶ。
李立(りりつ)催命判官(さいめいはんがん)はあの世の裁判官。死者の行く先選ぶ役。
青眼虎(せいがんこ)…青い目の虎。なかなか強い。大工仕事はできないが。
没面目(ぼつめんもく)…無口で不愛想な割に突っ込みは的確。
石勇(せきゆう)石将軍(せきしょうぐん)が動かぬ限り気が付くものはいないだろう。
小尉遅(しょううつち)…小さい尉遅景徳。大きくなるのはいつの日か。
母大虫(ぼだいちゅう)…山の虎を統べる雌虎。母ちゃんと呼ばれる懐の広さ。
母夜叉(ぼやしゃ)…山の影を統べる夜叉。逆らった者は晩御飯。
王定六(おうていろく)活閃婆(かつせんば)は稲妻だから、霹靂火と一緒に降ってくる。
郁保四(いくほうし)険道神(けんどうしん)はデカい神様。もともとデカいがさらにデカい。
白勝(はくしょう)白日鼠(はくじつそ)は昼間は鼠。夜は人間の鼠人間。友達増やして活躍中。
鼓上蚤(こじょうそう)…石将軍の親方は、今日もひそかに人を刺す。

青蓮寺
高廉(こうれん)…妖術の禁忌を破る人でなしになる修行中。
・殷天錫(いんてんしゃく)…
普通の限界に直面中。

・大刀(だいとう)…青龍偃月刀を使いこなす将。関羽にそっくり。
・双槍将(そうそうしょう)…二本の槍を巧みに使う将。背中の旗飾りがやたら派手。
没羽箭(ぼつうせん)…石を飛ばす武器。誰が放っても百発百中。
醜郡馬(しゅうぐんば)…見た目は不細工でも、速さと知恵は頼りになる。
井木犴(せいぼくかん)…星を降らせる将軍も、一丈青に絡めとられた。
聖水将(せいすいしょう)…水攻め上手の将軍も、水中の浪裏白跳には適わなかった。
神火将(しんかしょう)…火攻めの上手い将軍は、大砲屋から逃げている。
花項虎(かこうこ)…派手な虎。強さはまだまだ発展途上。
中箭虎(ちゅうせんこ)…矢傷の目立つ虎。蛇だけは無理。マジで無理。

・周炳(しゅうへい)…久しぶりの独りでの外出にウキウキ。勝手気ままに放浪するが…

蛇足

お留守番だよ!遊撃隊!【綺麗な史進】

史進「酷い目にあった…」
杜興「全部お前の責任だ、九紋竜」
史「志願しただろう、お前たち」
杜「今からでも李応殿の元に行けないか…」
史「行けるものか、爺の分際で」
杜「李応殿。私の命と引き換えに、史進の尻を綺麗にしてください…」
史「…杜興?」
杜「…」
史「…」
杜「…間違えた」
史「ボケるにもほどがあるぞ、爺!」

杜「とにかくわしは、貴様の尻が気に食わん」
史「俺の尻の何が気に入らんのだ」
杜「汚い」
史「あばた面の爺の皮膚よりましだ」
杜「わしのあばたはえくぼだ、小僧」
史「くぼみすぎたその面が鬼瞼児の由来か、爺」
社「貴様、汚いという言葉が機能不全を起こすほど口汚いし、尻も汚い」
史「俺で鬱憤を晴らさんとしてるな、爺」
杜「綺麗な史進はどこにいるのだ、汚い史進」
史「梁山湖にでも落としてみろ」
陳達「よし来た」
鄒淵「獲物を運ぶぞ、爺」
史「!?」

史「何をしやがる、貴様ら」
陳「当然の報いだ」
鄒「祭りだ、祭りだ」
杜「ざまあみろ、小僧」

穆弘「また遊撃隊の連中が」
李応「杜興までノリノリだ」
呼延灼「若いな」

陳「身ぐるみ剥いじまえ」
史「賊の様な真似を、陳達!」
鄒「何を今更!」
杜「頼まれんでも脱ぐ裸族が!」
史「やめろ!恥ずかしい!」
陳「どの面して言いやがる」
杜「物心に羞恥心がやっと追いついたのか、史進」
鄒「放り込め!」
史「!?」

杜「…見ろ、陳達、鄒淵」
陳「湖の水が…」
鄒「みるみる濁っていく…」
杜「まさか史進がここまで穢れていたとは」
陳「きっと俺たちの穢れも一緒に拭ってくれたに違いない」
鄒「ありがとよ、史進」

女神「…」

杜「…綺麗に終わらせたつもりだったのだが」
鄒「まだやんのかよ」
陳「どうした、梁山湖の女神さん?」

女「…あなた達が落としたのは、触るのも穢らわしい史進ですか?それとも綺麗な史進ですか?」

杜「答える前に、こちらから質問させてくれ」

女「…質問に質問で返さないで欲しいのですが」

杜「綺麗な史進とは、どれくらい綺麗なのか具体的に教えてくれ」
陳「尻とかそんなんはどうでもいいからな」
鄒「俺たちに害を被らせないとか、そういう綺麗さなら望ましい」

女「…綺麗な史進はお行儀が良いです」

杜「それもどうでも良い」
陳「飯の食い方は綺麗でも、裸で食う様な男だからな」

女「…綺麗な史進は、棒術の技が綺麗です」

鄒「それもどうでも良い」
杜「自分の下の棒の制御もできん馬鹿なのには変わりないからな」

女「…あなた達も浄化が必要ですね」

杜「何を失礼な」
陳「史進と一緒にするな!」
鄒「俺たちは史進に穢されたのだ!」

女「…それで、あなた達が落とした史進は」

杜「どちらもいらん、持って帰れ」
陳「戦と調練の時だけは借りる契約でいいか?」
鄒「俺たちは初回だから安くしてくれんだろ?」

女「…正直者のご褒美に、触るのも穢らわしい史進をお返ししましょう」

杜「いらんと言ってるだろうに」
陳「わからん女神だ」
鄒「史進とよろしくやれ!」

女「…」

杜「なんだ、この禍々しい気は!」
陳「史進が解き放たれた!」
鄒「逃げるぞ!」

史「あいつら…」

女「今だけ触れるのも穢らわしいあなたに、九紋竜になれる力を与えましょう」

杜「遠駆けの調練がこんな時に役立つとは」
陳「史進は?」
鄒「あそこだ!」

九紋竜「!!!!!!!!!」

杜「九紋竜になりおった…」
陳「逆鱗に触れちまったか…」
鄒「お前ら!あれを見ろ!」

竜「禁」

杜「竜の…」
陳「世紀の大発見だ…」
鄒「くだらねぇ…」

竜「!!!!!!!!!」

杜「逃げる気力も萎びたわい…」
陳「…俺は、友達を見捨てて逃げるやつよりも馬鹿でいたい」
鄒「…潔く降伏しよう」

杜「すまなかった、女神殿」

女「分かればよろしい」
史「…」

陳「俺たちが落としたのは、触るのも穢らわしい史進だ」

女「あなた達が正直者なのは分かっています」
史「!?」
女「あなた達の正直度合いを図るため、史進に正直な気持ちを伝えてください」

杜「…」
陳「…」
鄒「…」

史「…分かっているな、お前ら」
女「…」

杜「全裸隊長!」
陳「尻切れ蜻蛉!」
鄒「親の顔より見た汚尻!」

女「正直者のご褒美に、綺麗な史進と交換しましょう!」
史「おい、女神!」
女「さようなら」
史「」

杜「お前が、綺麗な史進か…」
史「いかにも」
陳「尻を見せてくれ」
史「嫌です、恥ずかしい」
鄒「おう、これは綺麗な史進だ」
史「…」
杜「…」
陳「…」
鄒「…」
史「オチはないのですか?」
杜「落ちたのは、わしらの穢れだ、史進」
陳「先代の史進には世話になったが」
鄒「俺らの穢れを落として、行っちまった…」
杜「あばよ、史進」

史「這い上がってきたぜ。仄暗い水の底から…」

史「触るのも穢らわしい史進!」

史「史進は一人でいい、綺麗な史進」

杜「ややこしいな」
陳「綺麗と穢らわしいで分けよう」

綺「遊撃隊の皆さんを傷つけるわけにはいきません!」
穢「あのクズどもに、一度地獄を見せねばならん」
綺「許しません!触るのも穢らわしい史進!」
穢「叩きのめしてやる、綺麗な史進」

鄒「自分を触るのも穢らわしいと認識してたのか?」
杜「分かっていたのか、穢らわ史進」
陳「おいwww」

穢「貴様から殺すぞ、爺」
綺「杜興殿になんていうことを!」
穢「邪魔をするな!」
綺「!?」

杜「綺麗な史進!」
鄒「美く史進!」
陳「お前らwww」

綺「…」
陳「美しく史進!」
杜「穢らわしいぞ、穢らわ史進!」

穢「お前ら収拾がつかなくなってないか?」

鄒「…それは否めない、穢らわ史進」
陳「もうどっちでもいいな…」
杜「ならば、美く史進を湖に返すか…」
綺「そんな!」

杜「さらば、美しく史進」
陳「お前のことは、多分四、五日忘れない」
鄒「もしかしたら食後に忘れてる」

綺「酷い!」
女「…」

杜「全て終わったな…」
鄒「そうだな…」
陳「俺たちも帰ろう、史進」
史「…」
杜「服を着ろ、史進」
陳「風邪をひくぞ」
鄒「いくら馬鹿でも感染症にはかかるから、体温を下げるな」
史「…知ったような口を」

宋江「調練はどうしたのだ?」
史「それは」
呉用「判定は?」
宋「十日間一糸も纏うことを禁ずる」
史「」
杜「」
陳「」
鄒「」

・宋江(そうこう)…くだらんにもほどがある…
・呉用(ごよう)…副官杜興の意味がない…

・呼延灼(こえんしゃく)…遊撃隊との調練で、自分に笑うことを禁じた。
・李応(りおう)…罰が終わったら、杜興を食事に誘おう。
・穆弘(ぼくこう)…遊撃隊との調練で、いつも通りに接することを掟とした。

・史進(ししん)…もはや誰も笑わねえでやんの。
・杜興(とこう)…十日終わったのに、うっかり十一日目も一糸纏わず出てきそうになった。
・陳達(ちんたつ)…解放感はあるな…
・鄒淵(すうえん)…開き直ると結構いけるもんだな…

お読みいただきありがとうございました!

・ご意見ご感想等々、こちらまでお寄せいただけると、とても嬉しいです。

水滸噺番外 胡蝶の羽ばたき】
 第一部「小旋風救出」 

これからも、どうぞよろしくお願いします!

元ネタ!


参加される皆さんの好きを表現し、解き放つ、「プレゼンサークル」を主宰しています! https://note.com/hakkeyoi1600/circle ご興味のある方はお気軽にどうぞ!