かえる王国

かえるが死んでいました。

ある日のことでした。
下を向いて歩いていると、アスファルトの上に
かえるがひっくり返って死んでいました。

悲しくなって、手を合わせると、
女子高生が通りかかって「やば」と笑いました。

自撮りが盛れないのは悲しいけれど、
かえるが死ぬのは悲しくないですか。
ああ、そうですか。

原宿で話しかけてくる人は無視するのがベターらしいです。
渋谷ハロウィンでは13人の逮捕者がでました。
肩がぶつかってもいちいち謝りません。
線路によく人が立ち入って電車が遅れます。
死んだら負けなんですって。
新宿ではあんなに人が通るのに、
ホームレスのおじさんのカンカンは空っぽのままでした。
かく言うわたしも200円しかなかったので、おじさんにお金は分けてあげられませんでした。
なぜなら昨日、3000円もするクソしょうもない芝居を観たからです。

なあ、3000円も持ってくならせめてセリフくらい覚えておいてくれよ、
ツイッターで面白いです!って言い切ってたじゃないか演出家。

空が狭いです。
どこまで行ってもコンクリートです。
世界のだれかが世界のどこかでお腹を空かして泣いているのに、わたしは何をしてるんだろうなあ。

わたしもお腹空いたなあ。

3000円、返して欲しいなあ。

ツイッターを覗くと、昨日見たお芝居の出演者が、盛り上がった打ち上げの様子を動画でアップしていました。

舞台の上ではあんなにたどたどしく喋ってたのに、なんだか饒舌ですね。あ、もしかして本番ってその打ち上げのことですか?あ、そうなんですねえ、すごいすごーい。わたしにはできなーい!

(うつむく)

もう、なにかの悪口言って生きてくのやめようよ、自分。

こんなんだから私は私でさえも救えないんじゃないんですか。

じゃあ、私の本番っていつですか。

何もできてないんじゃないんですか。

場所とか人とか、関係ないんじゃないですか。

(顔をぱっと上げ)

私の王国をつくります。
みんなの見えないところに、わたしはわたしの世界を作ろうと思います。

じゃーん、インフィニティストーン

わたしが指を鳴らすと生類憐みの令が発令されます。

犬猫をさっ処分する代わりに虐待する親どもをさっ処分しまーす。ばんばんばーん

付き合いで飲むお酒は全て捨てます。

嫌なことがあった日はおいしいものをお腹いっぱいにただで食べられる施設をつくります。

いじめや戦争なんて全部なくしてやります。

誰もお腹の空かない世界にします。

誰も苦しまない世界にします。

悪口を言うかわりに、YouTubeでタップダンスのステップをひとつ覚えてみんなで踊ります。

悪口がなきゃ面白くないって言うのは
悪口より面白いことできない言い訳でしょう。

お母さん、山口県にお城を建てましたので住んでください。

爆弾の作り方は全人類わすれました。

ロボットもみんな友達です。
hey siri ok google 野球しようぜ。

みーんなの嫌なこと全部
わたしが魔法で消し去ります。
わたしの世界限定だけど。
わたしのつくる世界でだけだけど。
わたしの世界では、みんなの嫌なこと全部、わたしが消し去ります。

あ、カエルさん。

長生きしてね。

(かえるが死んでいる)

カエルが死んでいました。

わたしは生きていこうと思いました。

わたしはなにもできないけれど、
わたしはなにもできないからこそ、
わたしはわたしのせかいを、作っていこうと思いました。
誰にも媚びず、
なるべくおごらず、
みんなに気づかれないように、
そしていずれは、東京をじわじわと、わたしの世界でもって、征服してやるのです。

東京で、演劇を、やろうと思いました。

できるだけ、がんばっていこうと思いますので、どうぞこれからも、よろしくお願い致します。

愛里でした。ありがとうございました。

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