函館 棒ニ森屋問題でバトル勃発! イオン vs. 反イオン連合

函館の棒ニ森屋が閉店することになってから、SNSなどのネット上にさまざまな意見がとび交うようになってきました。ネット上のコメントは、この件に関して函館の人がどのように感じているかを知るために非常に貴重なものです。函館に強い関心を抱きながら遠くに暮らす人にとっても函館の現状を知る貴重な手がかりとなるでしょう。

しかしながら、単なる思いつきで発言した情報があたかも正しい情報であるかのように拡散されてしまっているのも事実です。正しい裏付けがあるかどうかを確認せずにリツイートすれば函館発展を妨げることにもなりかねません。

そこで今回は「棒ニ森屋問題」を一度整理し、改めて何が問題であるのかをはっきりさせていきたいと思います。函館に住んでいる人も、函館に住んでいない人も共に函館で起こっている問題を考えていけるようになれば幸いです。

事の始まりはイオンの再開発案

函館 棒ニ森屋問題を考える上で最も重要なのは、イオンが函館側に提示した再開発案です。その内容をもう一度、確認してみましょう。

<以下は、本館とアネックス館は完全に取り壊すことを前提とする。>

跡地に「マンション棟、ホテル棟、低層階の商業・公益ゾーン」でつくる複合施設を建設する(函館新聞7月1日より抜粋)

複合施設というと、何かいっぱいお店が出来るように思われがちですが、イオンが示したのはマンション(住居)やホテル(宿泊)をメインにしたものであって、お店(商業ゾーン)はその付け足しのようなものです。すでに大型ホテルや複合施設が建てられている現状を知っている函館市民からすると、「またか」と落胆してしまうプランだったのです。

函館市の対応に函館市民が大激怒?!

イオンが示した再開発案に函館市は一定の理解を示します。函館市からすると、経済力のある大手企業が撤退せずに再び函館で営業してくれることに安堵したのでしょう。この時点で自らの要望を強く主張することはしませんでした。

しかし、これを見ていた函館市民は大激怒します。自分たちが希望する大規模な商業施設が建てられないことに気づいた彼らは「なんでもっとイオンに強く主張しないんだ!」と函館市側に不満を持つようになったのです。この時点で、函館市民(の一部)はイオンだけでなく、函館市側とも敵対関係になっています。

函館市はなぜイオンの再開発案に理解を示したのか?

函館市民の側からすると、函館市がなぜイオンの再開発案に一定の理解を示したのか疑問に感じてしまいます。最初から反対の姿勢を示していれば、イオンも考えを改める必要性を強く感じたのではないかと疑念を抱かざるを得ません。

しかしながら、観光産業を柱に財源をまかなっている函館市としては、函館駅前にホテルという宿泊施設ができても別に困ることはありません。また、函館市側は「一企業であるイオンの決定を拒否する合法的な権限」は何一つ持っていません。あくまで地域の代表として意見を述べるだけに留めるのが妥当です。

こうしたことを考えると、「函館市は市民のことを何も考えてくれない」、「函館市はイオンとグルの関係になって、大門(駅前)のことは何一つ考えていない」という意見は根も葉もない憶測に過ぎないことが分かります。

イオンはなぜ大規模な商業施設を作らないのか?

函館市民からすると、なぜイオンは棒ニ森屋に代わる商業施設を作ろうとしないのか疑問に感じてしまいます。観光産業ではまだ十分に集客力のあること、そして駅前にホテルが集中し過ぎていることを考慮すれば、商業施設で一定の収益を得ることは十分に可能であるように感じてしまいます。

しかし、これはあくまで函館に住む人からの見方で函館の現状を知らない人にはそのようには考えられないでしょう。外から見ると、函館は「観光(宿泊業)以外に儲かりそうもない地方」であり、現在は「人口減少のために経済が悪化している」と認識されているのです。

たしかに、函館の駅前は再開発が進んでおり、これから函館経済が調子を取り戻すことも考えられなくはありません。このnoteでも函館駅前で行われている現状を記事にしてきました。

函館駅前に超巨大な複合商業施設ができる?!
https://note.mu/hakodatelife/n/nc1068c8f08b0

函館駅前に温泉付き超巨大ホテルが登場する?!
https://note.mu/hakodatelife/n/n41e3432b64d9

函館 駅前に大型クルーズ船?! 新ホテル建設ラッシュも
https://note.mu/hakodatelife/n/nfa3fffe27637

実際に行われている開発の現場を目にすると、これから函館駅前が大きく変化し、今よりも人の往来が活発になりそうな感じがひしひしと伝わってきます。もしも自分に大型商業施設を建設する権利を与えられたら、迷わず勝負に出たことでしょう。

しかし、イオン(中合)側には函館駅前にどのような開発が行われているのか、「生の情報」が全くありません。おそらく北海道新聞(※ネット有料の函館新聞は除く)を読んだり、函館を訪れたスタッフからざっと話を聞く程度のことしか知らないはずです。これではいくら函館の代表団体が「街の将来のためにはどうしても商業施設が必要だ!」と訴えたところで、馬耳東風に終わるのが関の山。相手は自社に不利益になる「ビジネス」は絶対に避けようとするに違いありません。

以上のことから、イオンが函館駅前に大規模な商業施設を作ろうとしない理由はあくまで「モノを売るだけで十分な利益は上げられないだろう」という極めて現実的なビジネス上の判断によるものです。「イオンは過去に函館市から出店を断られた経緯があり、そのことで恨んでいる!」という意見は根も葉もない憶測に過ぎません。

それぞれの問題点

この記事を書きながら、函館市(函館の主要団体を含む)、イオン(中合)側、函館市民にそれぞれ問題があることに気づきました。以下にその説明を書いておきます。

函館市(主要団体を含む)側の問題点

まず、なぜ自分たちの主張があっさりと否定され、受け入れられないのか理解していないのが問題です。相手はあくまでビジネス上の判断を下しているだけなので、「相手が納得できる情報」を伝えて上げる必要があるでしょう。「地元の意見を無視することは許さん!」みたいな縄張り意識はやめましょう。その古い考えと姿勢が函館経済を悪化させている源なのです。

イオン(中合)側の問題点

物販だけでは十分な収益が得られないというビジネス上の判断を下している点は問題がないでしょう。それが一企業の判断であるのなら仕方がないように思います。しかし、「棒ニ森屋がなぜ十分な収益が得られなかったか」という問題に対して十分に考えていないようです。「函館の人口が減ったせいで売上が伸びなかった」とか、「大門(駅前)よりも美原や五稜郭の方が人が多くなっているから」とか、「高齢化が異常なほど進んでいる」とか、いかにも棒ニ森屋の経営に非がなかったかのように考えていませんか?

はっきり言って棒ニ森屋の売上がどんどん減っていったのは、あなた方の経営が函館市民の喜ぶものではなかったからです。自分は棒ニ森屋が大好きであり、誰よりも強い愛着を持っていましたが、それでも何か必要にせまられなければ棒ニ森屋まで出かけようなんて全く思いませんでした。それは無印と本屋を除いて「行ってみたい! 見てみたい!」と思えるお店がなかったからにほかなりません。ダメなお店をいつまでも居座らせておいたのが失敗のもと。冷徹な判断を下せない者にビジネス(経営)をする資格はありません。

函館市民の問題点

Twitter上で「イオンは地元の言うことをきかないととんでもないことになるぞ」というコメントが掲載されているのを見て非常にがっかりしてしまいました。自分が今回の騒動で最も大きい問題点と感じているのは、こうした「イオン依存症」にかかってしまっている人が函館に少なからず存在していることです。

「イオンがなければ何もできない」というのは本当でしょうか?  なぜ自分たちで街を盛り上げ、賑やかなにしていくことを第一に考えないのか不思議でなりません。

そもそもイオンは函館にある一企業でしかありません。その一企業が「あんまり儲けないからもう出ていきたいだよね〜」と言い出したところで、何の罪もないはずです。

あなたがもし小さなお店の店主で、売上が上がらないためにお店をたたもうと思ったとき、突然 函館市とその主要団体が現れ、「ちょっと待って!おたくのお店がなくなったら、地域のシンボルがなくなっちゃって困るんだよ!」と言われたらどうしますか? たしかに地元のためにがんばりたいと思う気持ちも生じるでしょうが、生活できなければお店を営むどころではないでしょう。

イオンは日本でも有名な企業ではありませんが、それと同時に多くの社員を抱える企業でもあるのです。観光以外にぱっとするものがない地方の街にどでかい商業施設を作って多くの負債を抱え込むことになったら、社員の給与をカットしたり、ボーナスをなしにしたりすることにつながりかねません。だからこそ、経営に携わるものは現状を見極めてシビアな判断を下すことを厭わないのです。函館のことが嫌いだとか、恨みを抱いているとか、そんなちっぽけな個人な感情で動いているわけでは全くないのです。

棒ニ森屋がなくなってしまうことに対して、つらく感じない函館市民はいません。誰だって淋しく思っています。しかし、「淋しい〜」だの、「なんかつらいよね〜」といったコメントを発するだけで本当にいいのでしょうか?

「今、函館のために自分たちでできることは何なのか?」それを考え、一人一人が行動するべきときなのではないでしょうか? 

Twitterで自らの心情を吐露することは否定しませんが、それだけでは何も現状は変わりません。私たちが「いいね」を押すべき瞬間は、現状を打破しようとあくなき挑戦を続けるものを見つけたときなのです。



参考資料(関連ニュース)

棒二森屋跡地 独立した商業棟検討 イオン:どうしん電子版(北海道新聞) https://www.hokkaido-np.co.jp/article/238246?rct=n_economy

函館市民「特別さみしい」 棒二森屋、来年1月閉店:どうしん電子版(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/204594

函館新聞 7/1    7/24

<補足資料>

7月24日 函館新聞のニュース 概要

7月24日の函館新聞のニュースによると、「棒ニ森屋」の問題をめぐって函館市や市議会、函館商工会議所など市内5団体が運営会社の中合と話し合いをしたそうです。函館の主要団体が要望したことは、①アネックス館の閉店期限の延長、②立体駐車場の営業継続の2点。

6月29日に、函館の組合(函館都心商店街振興組合)が中合の黒崎社長にアネックス館の営業継続を申し出たときには、「電気系統の修理に多額の費用がかかる」として断れたことがあり、要望は受け入れられそうにありません。

函館の主要団体として登場している「函館商工会議所」とは?

函館経済界発展を目的として設立された法人組織。函館地域の経済振興発展のため、総合経済団体として幅広い活動を行っている。2018年3月末現在の総会員数2,469人。国内515余の商工会議所や、経済団体・海外の商工会議所とも連携している。

具体的な活動は商工業に関する調査研究、資料収集の他に商工業に関わる品質・事業の証明の他に、商工会議所としての意見をを国会、行政庁などに伝えることなどもしている。

その他の詳しい事業内容はこちらのページに掲載されている。

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