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遺跡へ、 そしてこちら側へ

『多くの人が遺跡へ向かう時が本当の縄文ブームだ』と誰かが言っていた。
でもたぶん、そんな日は当分来ないだろう。
だって遺跡には何にもないから。
 
 
全ての遺跡が何にもない訳じゃないけど、実際に何にもないところは多い。
それに交通の便が悪い所も多いし、あまりにも人がいるのを見かけない。
そんな場所に大勢がこぞって押し掛けるようになるのは ”リアルへの回帰” みたいなカルチャーが熟成し尽した後じゃないかと思うし、そう考えるとそもそも縄文ブームじゃない気もするし、とにかくVRが盛り上がりつつある現在はまだその時ではなさそうだ。
 

などと個人的な弱音を透かして見ても、遺跡はいいものだ。 
私は今年に入ってから何度か遺跡を巡る機会に恵まれてしまい、とうとう何もないタイプの遺跡の魅力を理解し始めている。
それと同時に、何となく戻れない所まで来てしまったような予感もしていて、ひと月くらい前のブログにふざけて書いた ”ひと夏の縄文” とはこのことだったのかもと、もう戻れないあの頃の自分を夏の終わりと共に偲んでいる。
 

では遺跡の何がいいのか。
それは場所によっても違うし、魅せられた人それぞれにも違うだろうが、 ”縄文人と同じ目を持てること” が挙げられるのではないか。
江戸時代くらいならともかく、3千年も前に終わってしまった時代のことを博物館や資料館以外で感じられる場所というのは少ない。
当たり前のことだが遺跡とは過去の人々の活動の跡のある場所のことで、そこに立てば縄文人と同じ目線で世界と対峙することができるのだ。
 

私の住んでいる東京都にはたくさんの遺跡があり、縄文時代のものだけでも相当な数になる。
その中にはきちんと整備されている所もあれば、かろうじて看板が立てられていたり、何もない空き地だったりと様々だ。
更地となって上に何かの店が建っている場合もあるのでその店を贔屓にするのも楽しいし、街中にある遺跡なら買い物のついでに立ち寄れるし登山のように専用の道具を揃えることも遭難することもない。
反対に山の中にある遺跡は移動時間もかかるし、行ったところで何かがあるわけでもない。
しかしそういった場所は風光明媚と言い換えることもでき、旅の果てに思いがけない美しい景色に出会うことがあるかもしれない。
でも大抵の場合そこに土偶は落ちていないし、縄文人も出迎えてくれない。
誰もいないし何もないからこそ遺跡での過ごし方は自由なのだが、いきなり空き地で「自由にしていいよ」と言われても戸惑ってしまう。
なので何もない分を自分で補うといいと思う。
遺跡はゴーグルのいらないVRゲームみたいなものだ。
この場所がどういう場所だったのか、どういう遺物が出土しているのかといった少しの知識と、たくさんの想像力(と、もしあれば地形図)で、どんな素晴らしいオープンワールド型のゲームも顔負けのクオリティで縄文世界が楽しめる。
遺跡めぐりは自分の身一つあれば完結する、安全でプライスレスな娯楽なのだ。

 
私はこれまでにまだ数えられる程しか行っていないが、勝手におすすめの遺跡を紹介する。
遺跡に目覚めてしまったことで、なにかの境界線を越えてしまった気がして不安なので、これを読んだ人は気が向いたら遺跡へ行ってみて、そしてこちら側にも来てほしい。


1.  井の頭公園(東京都三鷹市)

井の頭公園は吉祥寺にある有名な公園だが、ここに遺跡があることはあまり知られていない。
時代は縄文早期~後期で、遺物や住居跡や落とし穴など他にも多くのものが見つかっている(弥生から近世までの遺跡もあります)。
駅から近い賑やかな公園なので、春にはお花見と縄文、夏はスワンボートを漕ぎながら縄文、秋は紅葉と縄文、冬も何かと縄文、と一年中縄文が楽しめるだろう。
また公園内にある井の頭池から流れる神田川沿いにも遺跡が多数あるので、川に沿って遺跡散歩をするのも楽しそうだ。 
(ここから出土した遺物はみたか遺跡展示室で見ることができますが、予約制なのでご注意ください)


2.  下野谷遺跡(東京都西東京市)

下野谷遺跡は縄文時代中期の大集落跡で、遺跡公園では縄文に関連した行事も行われている。
この公園ではスマホやタブレットで専用のアプリを落とすと、VRで縄文時代の下野谷ムラを追体験できる(画像は狩猟の様子)。
アプリには他に縄文ミニクイズもあったりするので "遺跡で何をしたらいいかわからない" という悩みも解消してくれるだろう。
公園の隣には縄文人の好きそうな緩やかな川が流れていて、そういうところを見るのも楽しい。
また近くには早稲田大学の馬場があるので馬が見えたりして、新宿から20分くらいの場所なのに遠出した感じが味わえるのもいいし、ただピクニックするだけでも楽しいハイブリットな遺跡公園だ。
出土品は、西東京市郷土資料室で見ることができる(開館は水曜日から日曜日と祝日のみ)。
 

3.  大木囲貝塚(宮城県宮城郡七ヶ浜町)

大木囲貝塚は大木式土器の標識遺跡で、広さは東京ドーム約4個分もある。
現在はその一部が公園として整備されている。
足もとには貝がらがたくさん落ちていてワクワクするし、写真は冬の終わりのものだが春には200本以上の野生種の桜が咲く。
ベンチがちょうどいいところに配置してあって、ここに座って塩釜湾を見ているとあっという間に2時間くらい経ってしまいそうだ。
隣には歴史資料館があり、大木式土器の変遷や貝塚に住む縄文人の営みなどじっくり学んでから見られる点もいい。
 

4.  菩提横手遺跡(神奈川県秦野市)

今年、縄文時代後期の中空土偶が見つかったことで話題となった秦野市の菩提横手遺跡。
現場は高速道路の工事中で、写真の通り遺跡とわかる情報は何にもない。
着いた時も「たぶんこの辺だよね」みたいな感じでちょっと迷った。
行った日が真夏日だったので暑さで全く頭が働かず、ただ工事現場を覗いて帰って来ただけになってしまったことがちょっと悔やまれる。
しかしここのように標記も趣もなくしかも工事中で、ただただ現実を突き付けてくるタイプの遺跡は暑くなくても楽しめるかまだわからない。
レベルの高い遺跡だ。
縄文時代の遺跡は日本中に無数にあり、きちんと整備されいているものからこういった場所までその姿は様々なので、自分のレベルに合わせて選べるのも遺跡のいいところだ。
もし皆さんが遺跡のこちら側に来て、そしていつの日かレベルが上がったら、菩提横手遺跡にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

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いただいたお金で遺跡に行きます。ありがとうございます。

どんぐり食べたことある?
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鹿沢みる

縄文と短歌のことなど 遺跡アパレルhttps://suzuri.jp/isekiikitai 縄文ソング https://soundcloud.com/historicalnotions

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コメント1件

縄文遺跡の空気が好きです☆(●´ω`●) 青森県民です。東京の遺跡、こんなにあるんですね!
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