見出し画像

浪曲界の推し

錦糸町でやってた河内音頭のラストで、やけに目につくお囃子の人がいた。
アドリブ入れたり佇まいもかっこよくて、気になって調べてみたら東家浦太郎師匠の弟子だった。

浦太郎師匠は私の憧れの浪曲師だった。
国本武春師匠が亡くなってからも、たまに浪曲を聴きに寄席へ行っていたのは、浦太郎師匠がいたからだ。

浪曲のことをいいなと最初に思ったのは武春師匠を観たときで、この人はNHKでうなりやべべんとかやってたから知ってる人も多いと思う。

武春師匠の浪曲は華やかだった。
この人が見たいと集まった客で超満員の会場に、大トリの存在感や貫禄を纏わせてのっしり入ってくる。
そうして一声。熱く大きく唸って歌って啖呵(セリフ)でどかどかうけて。
絶対にそんなはずはないのに、最後に見た武春師匠の舞台では、ラストに紙吹雪がどかんと降ってきたように記憶している。
普段通りの浪曲ではそんな演出はしないので、絶対にそんなはずないのに。
記憶が書き換えられるくらい会場いっぱいに盛り上がったんだと思う。
武春師匠は浪曲界の大スターだった。

浦太郎師匠は武春師匠とはちょっと違う。
その辺にいるふつうのおじさんみたいに、特別なオーラを出さずに入ってきて、一声出せば会場の空気が変わる。
瞬間でみんな夢中。
私は浦太郎師匠の節が好きだった。
Wikipediaを見ると浦太郎師匠には「節のデパート」という別名があったらしい。
みんな浦太郎師匠の節が好きだった。

推しの師匠以外の、寄席で聴く他の方の浪曲は私にとって難しかった。
「え?素人なのでは?」みたいな老齢の浪曲師がいたり、反対に若い方のが上手に見えたりして、混乱することもあった。
浦太郎師匠が亡くなる前、寄席に出られなくなってから寄席へは一度も行っていない。
結局、浪曲の妙味や巧拙みたいなものを理解できないままになってしまった。
また師匠の芸を観たいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?