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4cミッドレンジ デッキガイド(2) 構築理論編

この記事は4cミッドレンジ デッキガイド(1) 採用カード解説編の続きである。具体的な採用カードについては前の記事を参照してほしい。この記事では、どのようなことを考えてデッキの構成を決めるに至ったかについて書く。

はじめに

オリジナルのデッキを作るにあたって、必要なものは何か。一つ挙げろと言われれば私は「コンセプト」だと思う。
「コンセプト」、言い換えれば「なぜそのデッキが勝てると思っているのか」である。ここに答えられないデッキはただのファンデッキと謗られても仕方がない。
私が今回のデッキで「コンセプト」とした点は以下の2点である。
・パイオニアはフェッチこそないがトライオーム、ショックランド、スローランドと優秀な多色土地が揃っている。大胆な多色化で何らかのメリットを得られないか?
・ラクドスミッドレンジが環境で幅を利かせているが、それより少しだけ遅いミッドレンジデッキならラクドス相手に有利になるのではないか?
これらからもっと具体的に、「各色のパワーカードを詰め込んだミッドレンジデッキ。中〜長期戦にもつれこませ、トップから引いたカードの質で勝つ」という形で「コンセプト」が定まった。

ではそのコンセプトを体現するカードはなにか?私はまず《闇の暗示》に着目した。最大で1:4交換をするこのカードは、正しく撃てればラクドスミッドレンジ相手に極めて強い。
また、もう1枚着目したカードとして《長老ガーガロス》がある。前の記事で述べたように、除去耐性こそないがマナ総量と高タフネスで除去されづらく、ラクドスはこれを乗り越えられない。
この2枚をうまく使える、白抜き4色のミッドレンジデッキとしてデッキを考えることとなった。

5マナ域で差をつけろ

環境について

パイオニアには、環境を定義するカードやアーキタイプがいくつか存在する。
まずは最大手「ラクドスミッドレンジ」。これに有利とは言わずとも、五分で渡り合えるデッキを作ることが第一の目標である。
続いて「青白コントロール」。ラクドスと並んでフェアデッキの2巨塔だ。除去を多く積みすぎると青白コントロール相手に死に札が増えるので除去コンは作りづらい。
そしてアンフェアからは特に「アブザンパルヘリオン」が対策なくしては勝てないデッキとして存在している。
これらをもとに、デッキの主軸を考えることとした。

環境を定義するカードたち

まずラクドスミッドレンジから《致命的な一押し》。1マナで2マナまで、紛争達成で4マナまでを除去する、「除去はテンポを取るカード」の体現と言っていいだろう。
逆に言えば、2マナ以下のクリーチャーはわずかにテンポを失いやすく、3〜4マナの強力なクリーチャーも出してただ強ではなく除去されて大きくテンポ損のリスクがあるということだ。
これを受けて、2マナ以下のクリーチャーを極力減らし、3マナ域をやや重く取った構築にすることにした。

1マナで《黙示録、シェオルドレッド》を除去できるすごいヤツ

続いてもラクドスミッドレンジから《鏡割りの寓話》。1枚が2枚になるカードなので、なんとしても許すわけには行かない。
あまりに強いカードなので自分が使うのは当然として、相手に有効に使わせないような対策を考えた。青が濃いデッキであれば《かき消し》などの2マナカウンターが最も効率が良いが、能動的に動きたいデッキとしては望ましくない。また、青マナ源を多く確保するほどミッドレンジよりコントロールに寄らざるをえなくなってしまう。
そこで、先手/後手2通りで考えることにした。まず先手の場合、3Tで先に《鏡割りの寓話》をキャストしてもよいが、《グリッサ・サンスレイヤー》が3dropの能動的なアクションとして最高である。相手の後手《鏡割りの寓話》に対して次のターンに攻撃することで、誘発型能力で《鏡割りの寓話》本体を割られるか、ゴブリン・シャーマン・トークンを差し出すかの2択を迫れる。
後手の場合、立てた2マナアクションでアドバンテージを失わずゴブリン・シャーマン・トークンを処理できればいいのだが……そんな都合いいカードは《砕骨の巨人》(《踏みつけ》)である!2マナでトークンを処理すれば後手3Tにこちらが《鏡割りの寓話》をプレイし、あたかも先後逆になったかのような有利盤面を作ることができる。

このカードの対策が構築・プレイングの腕の見せ所

続いて青白コントロールから《至高の評決》。
打ち消されないカウンターなので、単なるクリーチャーのビートダウンではこれが回答になってしまう。
そこで、2通りの回答を用意した。1つは《鏡割りの寓話》である。英雄譚であるため第2面になるのに時間差があり、最速《至高の評決》だとまだ裏返っていない《キキジキの鏡像》を一緒に流せない。かといって、放置すればゴブリン・シャーマン・トークンががら空きの盤面を殴り続けて宝物を生成し、多大なテンポ・アドバンテージを得ることとなる。
もう1つは《龍神、ニコル・ボーラス》である。《至高の評決》を早くに撃てば、当然フルタップかそれに準じる状況になる。そこで除去手段の少ないプレインズウォーカーを安全に通していくというゲームプランになる。

パイオニアの全体除去と言えばこれ

青白コントロールからもう一枚、《放浪皇》。
現環境のプレインズウォーカーで1,2を争う高性能なカードであり、これを対策しないわけにはいかないだろう。
[-2]の性質上「警戒」が擬似的な除去耐性になるので《長老ガーガロス》をフィニッシャーに据えることとした。また、[-2]で除去→[-1]でトークン生成のようなアドバンテージを取る動きを否定するために、[-2]か[-1]から入った《放浪皇》をアド損なく落とせてこちらもアドバンテージを失わない《砕骨の巨人》(《踏みつけ》)が有用であるということを覚えておきたい。

令和のカードパワーのPW

続いてアブザンパルヘリオン。メインから強い墓地対策を入れるのはあまり現実的ではないので、除去は「2マナで、インスタントで脂牙が取れること」を主軸に据えて考えることにした。
《致命的な一押し》は紛争を達成しなければならないため不適当。《突然の衰微》《喉首狙い》を中心にして、コントロール相手にサイドアウトしなくても良い《暗殺者の戦利品》《シェオルドレッドの勅令》をミックスした戦略にすることとした。《戦慄掘り》を採用しなかった大きな理由の一つがこれである。

先3の脂牙に対処できるかがひとつのライン

マナカーブについて

2マナと5マナに重点を置くデッキ構築、2-5理論という記事がある。もう10年近く前の記事だが、ミッドレンジデッキの構成についてひとつの指針になると感じている。
要約すると、
・3マナのカードは3ターン目以外にテンポよく使うチャンスが少ないので、最小限にする。
・4マナのカードはテンポロスのリスクが高かったり、カード1枚で盛り返すことが難しいので、4マナのカードを使う代わりに2マナのカード2枚で2アクションする。
・テンポよく動いたときに、5マナのカードは手札の最後の1枚になる。これがフィニッシャーになるのでたくさん入れる。
・以上のことから、2マナのカードと5マナのカードを中心にデッキを構築する。
というような事が書いてある。

だがこの記事が書かれたときから9年もの時間が経ち、2マナのカードパワーと3マナのカードパワーには大きな隔たりができた。2マナのカードでアドバンテージを取ることはほぼ不可能だが、3マナのカードは当然のように1:2交換をしてくる。

3マナのカードには、出来れば2マナのカード2枚分ぐらいの潜在能力を秘めてほしい。

2マナと5マナに重点を置くデッキ構築、2-5理論

《鏡割りの寓話》、《墓地の侵入者》、《グリッサ・サンスレイヤー》などはまさにその例と言えるだろう。1枚で2枚分の働きをし、2マナ域を埋めてくれるという意味では《砕骨の巨人》もここに入るだろうか。
他のデッキに目を向けてみても、現環境はどのデッキでも強力な3マナのカードがあるのがわかるはずだ。マナカーブこそ違えど緑系からは《無謀な嵐探し》や《老樹林のトロール》、《大牙勢団の総長、脂牙》や《波乱の悪魔》は当然デッキの中核だ。他にも、《輝かしい聖戦士、エーデリン》など、パイオニアにおいてこの3マナというマナ域は勝負を決するマナ域なのだ。

以上を踏まえて、2-3-5に重点を置いたマナカーブを描くこととした。
具体的には、1マナ:4枚、2マナ:14枚(《踏みつけ》4枚含む)、3マナ:7枚(《砕骨の巨人》を計上していない)、4マナ:4枚、5マナ:6枚となった。
また、この配分についての細かいマナ域の枚数調整に関しては、正しい土地の数を数学的に検証!もうマリガンもマナフラッドも怖くない。を参考にさせてもらった。

除去とクロック、2マナ域の選択

マナカーブについては説明した。では、その内訳が「なぜそれらのカードなのか?」について説明していこう。具体的には、「なぜ採用した2マナのカードはほとんどが除去なのか?」という話となる。

カードの賞味期限

【約5万字】0から始めるパイオニアで7割勝てる青白コントロールの教科書という記事がある。ここで、レンジとバリューという考え方が紹介されている。
ゲームのレンジは序盤・中盤・終盤といったゲームの時間帯のことを、カードのバリューはそのレンジに対していつどれくらいの価値が発揮されるかということになる。

例えば《ドビンの拒否権》《吸収》といったカウンター類は「1-1交換を行うもの」である。
 これらのレンジとしては使用できる2ターン目、あるいは3ターン目からになり、そして有効なレンジ、つまり賞味期限としては「無限」と言ってもいい。
 なぜなら5ターン目でも、10ターン目でも「確定カウンター」として確実に相手の呪文と1-1交換を行う事ができるからだ。

【約5万字】0から始めるパイオニアで7割勝てる青白コントロールの教科書

逆に、青白コントロールにおける《検閲》のようなソフトカウンターは序盤でしかほぼ役に立たず、レンジは短めですぐにバリューが下がっていく。《思考囲い》は序盤に強いが後引きすると弱いのと同じだ、と言えばこの考え方がわかっていただけるだろうか?

2マナクロックは弱い

ある程度ロングレンジのゲームを想定したミッドレンジデッキにとって、2マナのクロックは弱い。なぜならこの環境には《致命的な一押し》があるからだ。
順を追って説明しよう。先程のレンジとバリューの話において、2マナのクロックはどういう立ち位置にあるかと言うと、「レンジは序盤に偏っており」「バリューはあまり長くない」というポジションになる。理想の動きは先手2Tに置くことでアタッカーとなり、クロックとして相手のライフを削っていくことになる。
だが、この強い動きには裏目がある。そう、《致命的な一押し》で先後をひっくり返されるのだ。先手2Tのエンドに《致命的な一押し》で2マナクロックを除去されれば、後手2Tに悠々と後手がクロックを配置できる。ラクドスミラーで先手の《税血の収穫者》が《致命的な一押し》で除去され、返しに《税血の収穫者》を逆に置かれてしまう動きだ。
先手2Tという最高のタイミングで唱えても、このような大きな裏目がある。かといって後引きした時のバリューがあるかと言うと……当然ない。2マナのクリーチャーはゲーム中盤以降では《黙示録、シェオルドレッド》など中堅クリーチャーに立ちはだかられて無力である。クリーチャーは除去でなくより強いクリーチャーで止めるのが最も強い。弱いクリーチャーは強いクリーチャーのいる時間帯ではもはや価値がないのだ。

カードそのものは決して弱いカードではないが……

除去の賞味期限

先程の記事で、「必ず1:1交換をできる確定カウンターの賞味期限は、無限」と書いてあった。これと同じことが除去にも言える。
もっとも、除去の場合は《創造の座、オムナス》のようにCIPでアドバンテージを取るカードに対して完全に封殺することができなかったり、盤面以外でアドバンテージを取るカードに対して触れないという欠点があるが、概ね賞味期限は無限と言っていい。
またカウンターと除去が大きく異なる、除去の利点として「後引きで強い」という点が挙げられる。カウンターは相手が呪文を唱えたタイミングで自分がカウンターを持っておりマナも浮いていなければならないが、除去は極論どれだけ遅く引いても役に立つ。
加えて、自分から展開したいミッドレンジデッキにとって、浮きマナを用意しカウンターを構えるのはテンポ・アドバンテージを失い本末転倒であるが、除去なら自分の展開を優先しても裏目が少ない。

以上から、相手にテンポ・アドバンテージを許さず、自分の得意なロングレンジのゲームでトップ勝負に持ち込むために、2マナのクリーチャーを採用するより2マナの除去を優先して多く採用する構成になった。

4cを実現するマナベース

土地配分に関しては、確率から考える土地枚数とマナカーブとマナベースという記事を参考にさせてもらった。これをもとに、どのように調整したかを説明する。

まず、土地の総枚数を正しい土地の数を数学的に検証!もうマリガンもマナフラッドも怖くない。に従い決定した。5マナまで伸ばしたいので、土地25というのは妥当だろう。
そして次に、マナ源の要求数と色マナの枚数を求めた。これで土地の総枚数に対し、3色土地が何枚、2色土地が何枚、単色土地が何枚あればよいかを考えることとする。
ショックランドを代表とする2色土地が最も使い勝手が良く、確定タップインのトライオームや、単色しか出ない基本土地・魂力土地などはできるだけ数を減らしたい。こうなればあとは鶴亀算の要領で計算していけばいい。
具体的に説明しよう。土地25枚なら、もしすべて2色土地で構成した場合25×2で50個のマナ源が得られる。ところが全部2色土地だと《廃墟の地》で酷いことになってしまうので、2枚程度は基本土地をやむなく入れることになる。これで、23×2+2×1で48マナ源となった。
続いてマナ源の要求数の合計に対して48マナ源が足りているか確かめる。足りなければ2色土地を3色土地にすることで1枚あたり1マナ源ずつ増えていくことになる。同様に、2色土地を削って魂力土地やAFRのファストミシュラランドなどを採用したら、その分3色土地を増やしてやればいい。

こうして必要な色マナに対し、何色土地を何枚入れればよいかが定まったら、次はいよいよ色配分だ。
このデッキでは《思考囲い》を最速1T、《踏みつけ》《突然の衰微》などが2Tのアクションとしてある。これらを考えると黒マナ・赤マナ・緑マナはショックランドなどの早期にアンタップインする土地を中心に考えることになる。また逆に、青マナは3T以降で良いことを考えるとスローランドを中心に採用して構わない。

トライオームとチェックランドは相性がいいが、タッチカラーをチェックランドで採用するのは避けるべきだ。なぜならチェックランドは「すでに存在する色」をより濃くするのに適した土地なので、マナ源の量そのものが少ないタッチカラーをチェックランドで賄おうとすると、どうしてもタップインのリスクが高まってしまう。

土地の種類についてもできるだけバラしておきたい。同じ色の組み合わせの土地は重ね引きしたときにカラースクリューを起こすからだ。また色以外でも、異なったアンタップイン条件の土地をバラバラに引くほうが、同じアンタップイン条件の土地を何枚も抱えるより良い。ショックランドばかり引いてはライフがいくらあっても足りないし、スローランドばかりでは序盤の展開が遅れてしまう。逆に、ショックランド・チェックランド・スローランドと揃った初手ならとても嬉しいことは想像がつくだろう?

いろいろと書いてきたが、結局最後は一人回しや実戦で調整するより無い。デッキによってタップインを許容する頻度や色マナの要求タイミングは全く異なる。上記を指針にして自分なりのマナベースを作り上げていってほしい。

おわりに

今回、引用や参考が多いところからお気づきかもしれないが、このデッキを組み上げるにあたって、改めて多くのMtGの記事を読んだ。いろいろな先人の考え方を吸収し、自分で実践していくのはとてもおもしろい体験だった。この記事がまた誰かにとっての参考文献になればとても嬉しい。ぜひ、オリジナルデッキを組み上げる楽しさを味わってほしいと思う。

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