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4cミッドレンジ デッキガイド(1) 採用カード解説編

先日のプレイヤーズコンベンションでは独自の「4cミッドレンジ」を持ち込んだ。構築理論や調整などいろいろあるのだが、まず今回は各カードの解説から始める。

メインボード

《思考囲い》 ×4

黒が濃いデッキの基本。環境にバーンがほぼ存在しないのも大きい。
最初は1ターン目をタップイン処理のターンとして考えていたので不採用だったが、逆に「相手のテンポを破壊してタップイン処理のターンを作るカード」であると理解して採用してから明確に勝率が上がった。
長期戦に弱いため後手なら抜いたり、ライフロスのためにアグロとのマッチアップで抜くという宗派の方もいるが、私は全くサイドアウトしない。なぜなら、パイオニアはアグロでも《スレイベンの守護者、サリア》のように出てすぐ仕事をしてしまう致命的なカードや、ヒロイック系デッキのように「ハンドの情報アドバンテージ」が極めて大きなデッキが多いからである。1マナアクションが他にない以上こちらのデッキのテンポロスはなく、相手が2点以上のダメージを叩き出すカードを確実に落とせるのであれば、どんなマッチアップでも価値があるといえるだろう。

環境を定義するカードの一つ

《突然の衰微》 ×2

《墓地の侵入者》を許さないカード。ついでにスピリットに強く出られたり、プラスから入った《ヴェールのリリアナ》を処分するのに使う。また、《致命的な一押し》と違って《大牙勢団の総長、脂牙》を除去できるカードなのも重要。
その他《骨化》や《光盾の陣列》(《ゴバカーンへの侵攻》の裏面)、《不屈の独創力》の対象になった宝物・トークン、《婚礼の発表》、《勢団の銀行破り》に《漆月魁渡》など、土地でないパーマネントという広い対象のおかげで処理できるカードは枚挙にいとまが無い。ラクドスにはできない仕事である。

《取り除き》とは全く使い心地が異なる

《暗殺者の戦利品》 ×1

もともと《突然の衰微》×3だったものを散らした枠。サイドのI/Oの枚数の関係と、特にエニグマ系の《力線の束縛》やロータスの《演劇の舞台》を破壊する保険。土地も割れるのが大きく、ミシュランやエルドレインの城などの強力な土地に対応できる。また、コントロール相手にOUTする《突然の衰微》と異なり残すので《サメ台風》や《ドミナリアの、テフェリー》などを割ることもある。

「基本土地」を「アンタップイン」です

《喉首狙い》 ×2

2マナクリーチャー除去その1。対クリーチャーデッキのキモ。
《パワー・ワード・キル》はセレズニア天使に無力なことなどから不採用。逆に、ファクトクリーチャーで取らなければならないものは多くない。機体は乗り手のほうを除去しよう(スタックで搭乗はされるが……)。対アーティファクトに関してはサイドに《コラガンの命令》もあるので補完している。

再録されて感動した

《シェオルドレッドの勅令》 ×2

2マナクリーチャー除去その2。たまにプレインズウォーカーに当てることもあるが、稀。布告なので早めに切って良いが、《墓地の侵入者》を擁するラクドスや《ストーム・ジャイアントの聖堂》がフィニッシャーになりうる青白コントロールなど、一部マッチアップは当てどころが重要なので気をつけたい。
《戦慄掘り》と競合するカードなのだが、「インスタント」で「布告」なのが極めて強いためこちらを採用。
また、布告の性質上他の除去や戦闘などで積極的に交換をすると盤面に選択肢がなくなり強く使えるカードになっていく。ミッドレンジ戦略を支える1枚。

カードプレビュー時点で強いことを確信し、実際そうだった

《嘘の神、ヴァルキー》 ×3

基本的に伝説のカードは2投の中、「自力で名前の違うカードになれる」「《致命的な一押し》などに当たってすぐ死ぬ」「裏面もある」などの理由で3投。唯一の2マナでの能動的なアクション。
ハンドを見られるアドバンテージが極めて大きく、《ドビンの拒否権》に当たらないのでコントロールには嫌がられる。また後引きしても7マナのプレインズウォーカーとしてフィニッシャーになれるのが強い。
対アグロでも、アグロは除去がほとんど無いため1ハンデス+強いクリーチャーになり壁となるという大きな仕事をする。具体的にはスピリットで《呪文捕らえ》を抜き、タフネス3でブロックをしつづけたり、緑単で《茨の騎兵》を抜きプレインズウォーカーに殴りかかるなどだ。
インスタントタイミングで変身できるのも大きく、除去やカウンターを構えて相手にターンを渡し終了ステップに変身したり、ヴァルキーのまま殴って(変身されると負けるので)ブロックをためらわせて攻撃を通してから違うアクションを取ったりと、柔軟なプレイングができる。

《白日の下に》に頼る必要もなく強い

《砕骨の巨人》 ×4

《致命的な一押し》を採用しない代わりに採用している対アグロ除去。《税血の収穫者》、ゴブリン・シャーマン・トークン、《キキジキの鏡像》、基本的にマイナスから入る《放浪皇》など環境に《踏みつけ》の当てどころが大量にあるのはプラスのポイント。マイナス始動の《ヴェールのリリアナ》に当てれば失ったアドバンテージを取り戻せるのも大きい。
優秀な本体のボディもしばしば相討ち要員になったり、コントロールやコンボに対して重たいクロックとして活躍。《キキジキの鏡像》でとりあえずコピーする先としても便利。

手軽にアドバンテージが取れる

《鏡割りの寓話》 ×4

令和の最強カード。1枚が2枚になるカードな上、2体以上並ぶと宇宙。5マナを重く取っているデッキなので3マナ→5マナのジャンプを可能にする点もポイントが高い。
ありとあらゆるデッキに対応するために多色化している/有効なカードを少しづつ積んでいるというこのデッキを支える1枚。1章の宝物・トークンでマナ基盤の安定、2章のルーティングでマナフラ/マナスクの解消と対策カードの引き込み、3章は無視できないコピーエンジン。何枚でも引き込みたいので当然4投する。

ぱっと見ではわからない強さ

《グリッサ・サンスレイヤー》 ×3

その《鏡割りの寓話》を否定するカード。さらに先制攻撃+接死で地上のビートダウンを全員止める。しばしば除去の的になる上、「除去されなければだいたいアドを稼いでいるはずであり、ダブった損失は相殺」なのでこれも伝説ながら3投。紛争未達成の《致命的な一押し》でも、《踏みつけ》でも死なないマナ総量3・タフネス3はテンポを失いづらく嬉しい。
また取り除けるカウンターで様々なズルができるのは覚えておきたい。例えば、《鏡割りの寓話》を1章から読み直す、プレインズウォーカーの忠誠カウンターを取り除く、《世界を揺るがす者、ニッサ》のクリーチャー化させた土地を0/0にしてランデスする、《勢団の銀行破り》を銀行強盗完了状態にするなど、不法行為は大量にある。
小テクとして後述するカリタスとのシナジーもある。

攻めて良し、守って良し

《ゲトの裏切り者、カリタス》 ×2

アグロに対する回答としてのカード。後述する《長老ガーガロス》とやっていることは同じ。また、除去自体が多い(火力・除去合わせて13枚)デッキなので、除去がアドバンテージに変換できるのは強み。
《グリッサ・サンスレイヤー》はゾンビなので能力で生贄に捧げて《ゲトの裏切り者、カリタス》にカウンターを乗せられる。《グリッサ・サンスレイヤー》と《ゲトの裏切り者、カリタス》が一緒に殴った際に、先制攻撃ダメージステップに3点を《グリッサ・サンスレイヤー》が通した後、能力でそれをサクると、第2戦闘ダメージステップで《ゲトの裏切り者、カリタス》がダメージを与える時点では+1/+1カウンターが2個乗って5/6になっており、2点ダメージを伸ばせる。(情報提供:ぷりんげる)
また《キキジキの鏡像》でゾンビを増やしてはサクりを繰り返して毎ターン+2/+2ずつ大きくすることもできる。絆魂クリーチャーがどんどんサイズアップするのはアグロにとっては悪夢。

ラクドスは《致命的な一押し》で元々アグロに強いから採用していないだけで、普通に強い

《黙示録、シェオルドレッド》 ×2

言わずもがなフィニッシャー。定着している時間が長ければ長いほど強く、早急に試合を終わらせる力があるので、《ゲトの裏切り者、カリタス》など他のカードで消耗戦を強いてから出すのが良い場面も少なくない。
ただ、カリタスと同じくマナ総量4は紛争達成した《致命的な一押し》で除去されて大きなテンポ損を強いられる。チャンプアタックは素通しするなど、丁寧なプレイを心がけたい。

盤面には一切触らないのに、強い

《長老ガーガロス》 ×2

飛んでいようがなんだろうが全てのビートダウンを否定する解答。これ単体で強いのはもちろんのこと、伝説でないので《キキジキの鏡像》でコピーすると無法が発生する。
さらに除去耐性こそないがタフネス6・マナ総量5は対処できるカードが極めて少なく、意外と生き残る。
攻撃・ブロック誘発は基本的に「カードを1枚引く」を選ぶが、対アグロはテンポを優先して「3/3のビースト・トークン」を出したり、火力などをケアして「3点のライフを得る」を選ぶことも。
また《大牙勢団の総長、脂牙》でリアニメイトしてきた《パルヘリオンⅡ》をキャッチできるのは覚えておきたい。ただし機体本体ではなく脇の天使・トークンを止めるのがミソで、ブロック誘発で3点ゲイン、《パルヘリオンⅡ》と止められなかった方の天使・トークンで差し引き6点受けるが、《パルヘリオンⅡ》は終了ステップに手札に戻るので返しに天使1体ならまた殴っていくことができる。
他にも、《輝かしい聖戦士、エーデリン》は攻撃した状態でトークンを作ってくれるので、ブロック誘発の種として助かる。

5/6/6、メリット能力4つ!

《闇の暗示》 ×2

テキスト確認をされるカードランキングNo.1。
「クリーチャーかPWを1体サクらせる」「手札を1枚捨てさせる」「墓地からクリーチャーかPWを回収」「カードを1枚引く」ので驚異の1:4交換。しかしながら、大きく有利になるものの勝つカードではないので、切りどころや有効に使えるようにゲームをコントロールしていく必要がある。特に布告が唯一テンポ・アドバンテージも取れる部分なので、ここを中心に切りどころを考えるのが良い。
ただ、5マナで1:3交換でも十分に仕事はしているので、墓地に回収可能なカードがなかったり相手にハンドがなかったりしてもどんどん切っていい。
ラクドスより遅い「アドバンテージで勝とう」と思っているデッキを否定する強カード。
また、下のインクのシミのような、「ボーラス・プレインズウォーカーに忠誠度を+1する能力」もバカにならない。後述する《龍神、ニコル・ボーラス》が[+1]から入れば忠誠度6で《丸焼き》ですら落ちず、またマイナスから入った場合でも[-3]→[+1]→[-3]とプラスを1回挟むだけで無理やり盤面を制圧する動きができるようになるのが大きい。

使えるデッキがないだけで、使えばめちゃくちゃ強いです

《龍神、ニコル・ボーラス》 ×2

3GGの《長老ガーガロス》とUBBBRのこの《龍神、ニコル・ボーラス》を同居させる狂気の沙汰。だが、だからこそ意表がつける!
[+1]は着地していきなり2枚分のアドバンテージを稼ぐ化け物。原則これを連打してゲームを破壊することになる。
[-3]は控えめなものの、何かの返しに無理やり置くという選択肢が発生するのでなくてはならない能力。
[-8]の奥義の頃には概ね[+1]連打でリソース差がついていて大勢が決していることが多いが、《闇の暗示》の誘発型能力で忠誠度を盛った場合などは2,3回の起動で奥義に辿り着く。《ドミナリアの英雄、テフェリー》などと違ってきちんと「相手は負ける」と書いてあるので、「奥義かプラス能力かで迷って負けた」というパターンがほぼない。
PWというものが取られにくい環境である上に、《戦慄掘り》や《運命的不在》といった何らかの除去を受けても[+1]から入っていれば1:3交換、後者に至っては1:4交換と大きなカード・アドバンテージが得られる。緑単が不正に出す以外で使われることはほとんど無いが、やはりこれも出してしまえばゲームが決まるカードである。

このカードのおかげで何戦も勝ってきた。出すだけで相手が驚く

《目玉の暴君の住処》 ×1

土地は特殊な能力を持っている2枚のみ解説する。
PWを落としたりライフを詰め切るために何かしらミシュラランドの採用は必要だったのだが、確定タップインの2色ミシュラランドはおよそ枠に余裕がなかった。一方、スローランドと相互に補完し合うAFRのミシュラランドはスローランドを多数採用しているこのデッキと相性がよく、軽量除去や思考囲いを撃ちたい黒マナの捻出・威迫という1枚ブロッカーまでなら抜ける能力を持った《目玉の暴君の住処》は必要とするものが全て揃った1枚だった。

見た目以上に強い

《耐え抜くもの、母聖樹》 ×1

唯一グリクシスカラーが出ず、《龍神、ニコル・ボーラス》に寄与しない土地。しかしそれを補って余りあるアンタップイン、そして打ち消されないディッチャ+ランデスの能力。アド損するとはいえあまりに強力であり、特に土地破壊や置物破壊に枠を取るほどの余裕がないデッキなので最後まで置かないこともしばしば。
《鏡割りの寓話》/《キキジキの鏡像》、《離反ダニ、スクレルヴ》、《勢団の銀行破り》、各種ミシュラランド、《骨化》、《婚礼の発表》、《演劇の舞台》、《全知》、《奇怪な具現》、独創力の宝物・トークン、各種機体、《アクロス戦争》……ちょっと挙げただけでもさまざまなアーキタイプにこれだけ当て先がある。
また、伝説のクリーチャーを多数採用しているので1マナで使えることが多いのもこのデッキに合っている。中でも特に《ゲトの裏切り者、カリタス》下で相手のクリーチャー化した機体を割る動きは強力で、クリーチャーを破壊するので代わりに追放してゾンビが出る。

神河がたくさん剥かれて本当に良かった

サイドボード

《軽蔑的な一撃》 ×3

青を絡めるならやはりカウンターは必須。メインには1枚もカウンターがないので、コントロール・コンボ対策として採用。

これはKHMだが個人的に好きな絵柄はSNCかGRN

《強迫》 ×3

最初はカウンターに頼りきりだったが、能動的に動くデッキとしてはハンデスのほうが動きやすいので3枚採用。やはりコントロールとコンボ対策。

これも絵柄の好みが分かれる1枚。私はONEのものを使っている

《絶滅の契機》 ×2

緑単とアグロ対策その1。並べあっていてもアドバンテージが取れる全体除去なので、ラクドスなどにも採用する。これを使うことを見越して、ヴァルキーをマナコストの異なる変身先に変身させない/変身させるの判断をすることもある。

プレイの選択肢が無数に生まれる、極めて良いデザインのカード

《影の評決》 ×2

アグロ対策その2。PWも飛ぶので《漆月魁渡》擁する青黒ローグや、墓地も追放するので《悲哀の徘徊者》《大釜の使い魔》《死の飢えのタイタン、クロクサ》のラクドスサクリファイスにもしっかり刺さる。
追放なので《光盾の陣列》(《ゴバカーンへの侵攻》の裏面)で防がれないのも重要。

《滅び》があればと思ったこともあったが、これにはこれの強みがある

《風化したルーン石》 ×2

隠れた名サイド。《大牙勢団の総長、脂牙》のリアニメイトを阻止するのはもちろん、《奇怪な具現》や《異形化》も機能不全に陥る。
《老樹林のトロール》の誘発型能力も止まるし、《収穫祭の襲撃》も土地しか出せなくなるので緑単に対してもキラ―カード。
特にこれ1枚で《集合した中隊》《カイラの再建》の8枚が止まる天使には極めて強い。
アンフェア系だと《不屈の独創力》や《出現の根本原理》といった追放してから出す・唱えるカードには無力なのだが、実は前者は《奔流の機械巨人》型ならCIPが機能せず、後者も《溺神の信奉者、リーア》の墓地からフラッシュバックする能力を止めることができるので、多少有効。

《墓掘りの檻》とは全然勝手が違う

《コラガンの命令》 ×2

アドバンテージを取るカード。タフネス2を焼けると強いので《鏡割りの寓話》を採用するデッキにはサイドイン。意外と痒いところに手が届かないパターンもあるので難しいが……。

必ず1アド取るという意志のあらわれ

《霊気の疾風》 ×1

最後まで迷っていた枠。《方程式の改変》を試していたのだが、いざ使っているとこのデッキにとってはあまりに弱くボツに。I/Oを整理して何に対して入れたいか考えたときに、独創力やロータスコンボのような空中のコンボデッキと、グルールとエニグマを共通して見られる枠が欲しかったのでバウンスにもなるこれに至った。弱くはないがいまだ検討中の枠ではある。

打ち消されない呪文にも対処できる上、後引きしても使えるのは偉いポイント

一旦デッキの全カードを解説させてもらった。ここから下はおまけの不採用カードとその理由の紹介である。読まなくてもほぼ問題ないと思うが、もし興味を持っていただけたら投げ銭程度の気分で購入してくれるととても嬉しい。
今回はただ単に「どのカードが強い!」という話しかしていないが、次回以降はより抽象的な構築理論とメタゲームの読み解き、サイドボード等について話していこうと思う。お楽しみいただければ幸いだ。

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