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『きのう何食べた?』をまとめ読みして感じたこと

 よしながふみ先生の『きのう何食べた?』、すごーく人気がある漫画というのは知ってたんですが、友人宅で数巻ほどバラ読みしたことがあるぐらいで、しっかりと読んだことはなく。ドラマ化もされたし、ここらでじっくり読んでみようと週末かけて11巻分を読みました(中抜け4冊。今週買いそろえようと思ってます)。

うーん。
私も日々の料理を担当してるんですが、シロさんすごい。すごすぎですね。いちばん響いたのは経済面。食費、月2万5千円かあ(のちに3万に値上げ。この漫画は作品内の時間と発刊が同時進行です。つまりクリスマスの時期に発売なら作品内もクリスマス。キャラもみな年をとっていく)……いや、うちもぜいたくはしてないけど、どんぶり勘定もいいとこなので、なんか耳が痛くて。シロさんはしっかり稼いで、無駄遣いせず、親のケアも仕送りもして、たまの記念日にはパートナー孝行もする。しかも京都の俵屋を予約なんて回も…! 漫画のキャラクターに対抗心燃やしてもしょうがないけど、正直ちょっと読んでて萎縮しました。自分はダメだなあ、情けない。

さらにはシロさん、なんてマメなんだろう。仕事で面倒案件かたづけて(職業は弁護士!)帰宅してフードプロセッサー使うシーンがあるんですよ。読んでて「ええええええ」と声上げてしまいました。私なら絶対やらない。さらには揚げものハードル低い! 「おかず作り、慣れたら揚げものは本当にラクで便利だよー」とは料理上手さんからよく聞くのですが、私は苦手意識強いんです。天ぷら失敗したショックを結構長いことひきずっています。

そして多くの人が思われてるでしょうが、あの副菜づくり! 読んでて何度か「えっ、まだ作るの!?」と声をかけちゃいましたよ。実際、よしなが先生自体が彼を「筧がどうしてもあと一品の呪いにかかっているだけ」と以下のインタビューでお話されていました。

私も「本当はあと一品あるとバランスいいよなー」と思うこと、多々あるんです(でもやらない。いや、昔はまだやってた。だんだんと「まあ…いっか」率が上がってるんですね。反省……)。

作中で同僚や上司がシロさんの手づくりイズムを耳にして「細けー!!」「相手の人、窮屈じゃないのかな」と内心思うシーンがあったり、ストイックに副菜づくりを自分に課してるわけじゃなく、やりたくてやってる描写があったりするので救われるんですけどね。
あ、豚バラのモツ鍋風のときは「まさか鍋のときまで副菜作るんじゃ…」と軽くドキドキしましたが、さすがになかった。「ああ、副菜ない!」と声に出してしまいましたよ(笑)。でもシロさん、トマトの中華風サラダぐらいは本当は作りたかったような気もします。ちゃんと大葉千切りにして。

基本的には、すごーく引き込まれました。主人公ふたりを取り巻く人々も魅力的ですよねえ。佳代子さんが近所なの、うらやましくてしょうがない。
シロさんはカブやヒジキが好きなんだな。ナメコやかきたま汁、納豆、温泉卵をラクしたいときに出すのも共感。逆に彼が使わないセリとかスジコ、フノリにすき昆布なんかを「ちょっと使ってみてよ」とお裾分けしたくもなりましたねえ。はい、いずれも私の好物です。東北のお麩も教えたいなあ。

老いること、それにともなう身の回りの整理がサブテーマとしてよく描かれるのも非常に興味深く。そのうち、年を重ねて食べにくくなるもの、噛みにくくなるもの、飲み込みにくくなるもの、量、老いと栄養などもトピックとして差し挟まれていくのでは…と期待しているんです。

こういうことって、実の親子間でもなかなか言いにくく、吐露しにくいもの。ましてや、お店の人にはリクエストしにくい。若い料理人さんだと、察することすら難しいことも多々あります。人気漫画で多くの方が読んでいる作品ですから、そういう描写がもし今後あって、理解が広まったら嬉しいなあ、と思うんですね。食べることの楽しみがどんどんなくなってしまうと、衰弱も早まります。最期のときまで食はたのしいものであってほしい。

先のインタビューでよしなが先生が「いつか老人ものを描きたいと思ってたんですけど、このまま連載が続けばこの作品で描けるなって」とおっしゃられていて、嬉しくなりました。最新刊がすごく待ち遠しいです。

シロさんの料理に触発されて、厚揚げとセロリ、鶏ひき肉を中華風あんかけにしましたよ。ニンニクを油ひいて軽く熱して、鶏モモのひき肉を炒めて全体に白っぽくなったら、斜め切りしたセロリ、厚揚げを加えてさらに軽く炒め、ひたるぐらいの水、酒、白だし、ほんのちょっとのオイスターソースで味つけ、しばし煮て味見。塩コショウで整えて、水溶き片栗粉でとろみをつけ、最後にゴマ油。セロリ好きなら葉っぱを細く刻んで最後に加えても。

これとセリたっぷりのみそ汁で本日の昼ごはん。『きのう何食べた?』ではいろいろ作ってみたい料理に出合えました、しばらくシロさん飯を真似してみます。


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