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玉ねぎの「あめ色」ってどんな色?

料理用語にはいろんなものがありますよね。
中でも具材の焼き色をあらわす表現のひとつに「あめ色」というのがあります。カレーに入れる玉ねぎを炒めるときによく使われるんですが、ふとこの表現が気になりました。

これまで私は「こんがりとした茶色」だとずっと思ってきたのです。とある原稿で「あめ色」書くにあたって一応確認しておこうと辞書を引いたら「水飴のような色。透明な黄褐色」(デジタル大辞泉)とあるではありませんか。

実際に玉ねぎを炒めてみました。このぐらいの色が、先の大辞泉にあったような色でしょうかね。

対して私のイメージしていた「あめ色」はこのぐらいのダークな茶色です。UHA味覚糖の濃いほうのあめの色(あれは紅茶の色のようですけどね)。オニオングラタンスープの玉ねぎの色というか。

料理用語辞典を引いてみた

各種、料理用語集を調べてみました。しかし。
『料理用語事典』(真珠書院)記載なし
『改訂 調理用語辞典』(全国調理師養成施設協会)記載なし
『コツと科学の調理事典 第3版』(医歯薬出版)記載なし
うーむ。特別な調理用語ではなく、色の名前のひとつとしてとらえればいいということですかね。となるとやはり先の「透明な黄褐色」が「あめ色」になるのだろうか……?

ツイッターでアンケートをとってみた

5918人のかたが投票してくださいました。こちらも黄褐色が約60%と優勢。黄褐色では分かりにくいかと思い、「黄色味がかったうす茶色」と表現しました。また、あるかたからリプライで「こげ茶だとこげてしまって料理の味に響く」という指摘もいただきました。これはもっともですね。「ダークな濃い茶色」と表現すればよかったなと反省しております。

ハインツ、ネスレの見解

ケチャップやソース類でおなじみ、食品メーカーのハインツは自社サイトで玉ねぎのあめ色炒めを動画で紹介しています。リンク先に飛んでみると、かなり濃い茶色で、どろっとしたテクスチャーの玉ねぎが見られます。

https://nestle.jp/recipe/from1/cook/word/a/ameironi.php

うまくリンク貼れませんでしたが、上記アドレス。世界でも最大規模の食品メーカー、ネスレは自社サイトであめ色のことを

玉ねぎなどを根気よく炒めていくと、しんなりして薄い茶色から濃い茶色に変わりますが、この濃い茶色をあめ色と呼び、あめ色になるまで炒めることを「あめ色に炒める」と言います

と定義していました。食品業界的に「あめ色=濃い、ダークな茶色」で、一般的なイメージおよび日本の語義的には「あめ色=透明な黄褐色、うすい黄色」ということになるのでしょうかね。

「その中間色だよ」というご意見も

私の交友関係から、料理関係者にも取材してみました。
〇料理研究家 Hさん
「黄色っぽいうす茶色。気になったので料理関係の編集さんやスタイリストさんにも聞いてみた。うす茶色に賛同が2人。けれど1人は『陶芸のあめ釉がこげ茶色でしょう、だからダークな茶色があめ色だと思う』とのこと」

〇料理誌編集者 Kさん
「こげ茶色。料理で『あめ色』といえばだいだい濃いめの茶色」

〇料理誌編集者 Hさん
「薄い茶色とダークな茶色の中間ぐらい」

〇料理学校講師 Kさん
「べっこう飴のあめ色に近い、濃い色をさす傾向があるが、場合によっては、べージュから茶色に変化していく過程がある程度、進んだくらいから、あめ色という場合もある。厳密な色の定義はないようだ。個人的にはツヤのあるこげ茶色のイメージ」

〇料理誌編集者 Oさん
「カンロ飴ぐらいの色」

この「カンロ飴の色」というのは先のツイッターアンケートのリプライでも数名のかたからいただいたんです。「うす茶と濃い茶色の間ぐらい」というご意見。カンロ飴は主原料が砂糖、水あめ、醤油なのですね。原料の水あめがどういったタイプを使用しているのかは分かりませんが、主に醤油が色の決め手でしょうか。

しかし、料理業界でこうも意見が分かれるとは意外でした。各々今回は名前を出せませんが、みな一線で働かれている方々です。特に料理学校の指導者から「厳密な色の定義はない」という声が聞けたのは一種の収穫です。

結論

この程度の調査で「結論」と書くのも軽率ですが、「あめ色」とはとてもアバウトな表現になっていると思われます。

ツイッターのアンケートを通じて、あるかたは「あめ色とは、麦芽水あめの色を指す」というご意見をくださいました。関西のかただと麦芽水あめ、「冷やしあめ」の原材料としておなじみかもしれません。

富山県富山市にある『島川製飴』は1663年から続く老舗ですが、こちらの麦芽水あめを参考にしてみると、おだやかなうす茶色です。琥珀色ともいえるでしょうかね(琥珀もまた色の濃淡に個体差がありむずかしいところですが)。

あめ色自体はやはり「うす茶色」が語義的には基本となり、調理界ではそれがより濃いものに変質している……と私は考えます。ともかくも「あめ色とは、人によってかなりイメージが違う」ということが、今回よく分かりました。料理にたずさわる人でもそうなのですから、今後料理記事で使用するさいには注意したいと思います。

みなさんはどれが「あめ色」と思いますか?


9/6追記

ツイッターから、あめ色に関して村上湛先生がご意見をくださいました。とても興味深い内容でしたので、こちらにも掲載いたします。

あめ釉といっても幅広いものなのですね。掲載をお許し下さった村上先生、ありがとうございました。


#調理 #料理 #食  

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