添削7本目【ゾンビウィルスのコント】

今回はコントですね。それでは、さっそく【BEFORE】から観ていただきましょう。


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A:クソ〜、腹減ったなあ〜。

B:ああ、ゾンビウイルスが蔓延して1ヶ月。食料も底を突いた。
ここに潜伏しているのも限界だ。

A:畜生!このまま飢えて死ぬしかないのかよ。

B:馬鹿野郎!希望を捨てるんじゃねえ。

A: B・・・。

B:俺、外に出て食糧を探しに行くよ。

A:待て!奴等に噛まれたら、お前も感染してゾンビになってしまうんだぞ!

B:このままここに潜んでいたっていずれ死ぬんだ・・・俺は行く。

A:絶対死ぬなよー!

B:(ドアを閉める)
うわあーっ!

A:おいB!どうした!大丈夫かー!

B:ウオオオオー!
(顔が白塗りのゾンビになって戻ってくる)

A:そんな・・・

B:ウオオオオー

A:お前感染しちまったのかよ!

B:ウオオオオー
(首をかしげる)

A:お前までいなくなったら俺は一体どうすればいいんだよ!

B:ウオオオオー・・・なあ。

A:え?

B:なんか、そこそこ自我がある。

A:そこそこって、お前ゾンビに噛まれたんじゃ?

B:噛まれて、ゾンビになったんだけど、なんかそこそこ自我がある。

A:何!?どういうこと?

B:噛まれてすぐ人間食べたくなって、お前の所に戻ってきたんだけど、
そこそこ自制できるんだ。察するに禰豆子的な状況だ。

A:例えが俗っぽいよ!壮絶な状況だぞソレ!

B:ああ、酷い状況だな。
もうギリギリだ、今にもお前に噛み付いてしまいそうだよ。

A:そんな・・・!

B:頼む俺のことを撃ち殺してくれ!

A:出来るわけないだろそんなこと!

B:罪悪感を感じる必要はない。俺はもうゾンビ、人間じゃないんだ。

A:それでも、たった二人きりの仲間じゃないか!

B:罪悪感を乗り越えてくれ!
俺に比べたらよっぽどマシじゃないか!
想像してくれ、お前を食べてそのままゾンビとして生きていく俺の罪悪感を。

A:(涙を流す)

B:例えるなら、
夜中に目が覚めてつい冷蔵庫のプリンを食べてしまったような罪悪感だ。

A:そのレベル!?

B:ああ、確実に太る。

A:そのタイプの罪悪感!?
たった一人の仲間のことカロリーとして捉えてんの!?

B:ああ、食いたいのをぐっと我慢しているんだ。

A:いや、そのレベルのやつなら我慢できるだろ!

B:誰もがこの食欲に堪えきれるならこの世にデブはいねえんだよ!

A:つーか、人間だった時は餓死寸前だったのに、今はなんでそんな余裕なんだよ!

B:外で牛食って帰ってきたんだよ。

A:別に人食わなくてもいいんじゃねえかよ!

B:いや、飲み会でたらふく飯食ったのにシメにラーメン食いたくなるときあるだろ?
あの感じだよ!

A:その感じかよ!ふざけんなよ!

B:匂いに釣られちゃって。

A:自制心弱すぎるだろ!

B:うわ〜食いてえ〜。
(Aに近づく)

A:おい!やめろ!

B:いや、糖質やばそ〜。

A:俺のこと糖質と捉えるなよ!

B:ウオオオオー

A:おい!我慢しろ!やめろ!

B:(噛み付く)
うわ〜、食っちまったよ。これ絶対太るって。
あーあ、明日は軽めにしとこ。

A:(起き上がる)
おいふざけんなよ!俺までゾンビになっちゃったじゃん!

B:え?お前もしかしてそこそこ自我ある?

A:バリバリあるよ!
・・・つーか超人間食いてえ〜。

B:それな。
・・・もう食いにいっちゃわない?

A:いや、でも罪悪感が・・・。

B:大丈夫、野菜マシにすれば罪悪感も帳消しだよ。

A:いやいやいや、えー?
・・・まあそれもそうか。

B:行こうぜ?

A:ああ。

(はける)


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【ポイント解説】

コロナウィルスから、着想を得たのかもしれませんね。
ゾンビウィルス。

主眼になっている“そこそこ自我がある”というボケも面白いですね。

さて、この台本ですね。
漫才とかコントとか何にも書かれてないので、多分コントなんでしょう。

ただ、漫才っぽいボケ方してるな、と思いました。

というのは、少しセリフ回しに、リアリティがない部分があるんですね。

僕がこの台本を読んでる時に感じた「面白い脚本のはずなのに、なんか違和感あるな」と感じた正体をツッコミとして言うと、下記のようになります。

【いや、ゾンビが流暢に喋るな!!さめるねん!】です。

プリンのくだりとか、牛を食べてきたとか、説明してるのが、本人が普通に喋ってるというのがなんだか冷めるんですね。


そうなってくると、コントより漫才のほうが、仕切り直しができる分だけ、やりとりを楽しみやすいんですね。

ただ、コントで送ってこられたものを漫才にしてしまえというのも、ちょっと暴れすぎな気がするんで、あくまでもコントのまま、添削をやります。

あと、これは個人的な好みでもあります。
もちろん、【そこそこ自我がある】というボケだから、喋ってるんだ、という言い分もあるでしょう。

しかし、ゾンビになってからの状況はボケのゾンビのほうではなく、ツッコミのほうに言わせてほしいかな。

「いや、牛食えるんやったら、オレ食うなよ!」というセリフは、「さっき牛を食ってきた」というセリフのあとに言うと、重複してて、もっちゃりしたネタになるんです。

できれば、牛の死骸かなんかを見て、「いや、お前、牛を食ったあと、まだオレいこうとすな!」とツッコミだけに言わせてほしいんです。

ペンを逆に持つという古典的なボケを表現するとして。
①持つ方は黙って逆に持つ。

②「いや、逆や!」


でしょ。

いちいち、①「ペンを逆さに持つとするかあ」でペンを持つ
②「いや、逆や!」

にはならないでしょう。


説明と説明がボケとツッコミで重なると、なんかもったいない感じなんです。プリンとかのくだりも、ゾンビのほうが説明してるので、もっちゃりしてしまいます。

①“そういう感じ”をゾンビがなんとかして出す

②「いや、プリン食った程度の罪悪感かい!」と突っ込む。


が理想なんです。

プリン食った程度の罪悪感という言葉をゾンビのボケのほうがだしてから、ツッコミが「その程度かよ!」とツッコむのは、ちょっともっちゃりしてる気がするんですよね。


ただ、ここまで偉そうに指摘しておきながら、びっくりすること言います。


僕には、その方法が思いつきません笑。
ええ、現実的には難しい設定なのかなと思います。

このコントに関しては、【ゾンビが外に出てからのこと】や、【ゾンビになってしまってからの体の感覚】は、ゾンビ本人にしか分からないからです。
なので、説明するのはどうしてもゾンビ側になってしまいますね。

ここでは、【違和感は逆にボケにしてしまう】という手法を使っていきます。


先ほど言いました。
違和感の正体のツッコミを思い出してほしいです。

再掲します。

【いや、ゾンビが流暢に喋るな!!さめるねん!】

です。

なら、それをつっ込ませるように脚本作ればいいじゃないかと。

あと、もうひとつ気になる点としては、ツッコミがゾンビをそんなには怖がらないまま、プリンのくだりとかを突っ込んでるあたりも、リアリティがちょっと薄くなっています。

このあたりも、【コントのボケ方】よりも【漫才のボケ方】に近いかなあと感じる原因ですかね。

さて、最近、元の台本を変えすぎてるなと、我ながら反省もしてますので、できるだけボケを残して添削スタートです!

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【AFTER】


(明転したら二人がいる)

A どうした?お前まさか?(椅子に座ってる)


B …(立ち上がって外を見つめてる)


A 食糧はまだある。助けが来るまで待とう!!!外はゾンビウィルスが蔓延してる!お前までゾンビになってしまったら、どうする!!


B …食糧なんて…もう…少ない!!(たどたどしく喋る)

A ゾンビになって、人間を食ってまで生き延びたいのか!?お前は、オレを食えるのかよ!

B うぅ、…うぅ、うわああああ!!ここで、死にたくないーっ!!(ドアを開けて出ていく)

A あっ!出ていきやがった!!
ゾンビぐらい喋るの遅いな、あいつ。イライラするわ。昔から。


(暗転のち明転)

B (白ぬりをした状態で戻ってくる)

A うわああああ!!!なんや!!お前!!!
ま、、ま、ま、まさか、Bか!!そ、そうなのかーっ!?

B 喋るの遅いなお前!イライラする!「お前はBか?」「そうだよ」で終わる会話やねん。

A ええええ?!!いや、ちょ、ちょ、

B 何が「ちょちょ」やねん。喋るの遅いねん。ゾンビになる前のオレか!!!

A 怖いねんて!色々!

B わかるよ!怖いのは!聞きたいこともわかるから、結論から言います。
お前を食おうと思えば食えるけど!自我がそこそこ残ってます!

A ……じ、、自我が。。。

B オウム返しもイライラするねんな!食うたろかな、こいつ。いやいやウソウソ(笑)

A なんやこいつ!!

B どうやらゾンビウィルスで頭のキレがよくなって滑舌よくなるみたいや!!

A そんな奴やっけ!お前!いや、とりあえず食べへんみたいで、安心はしたけど、その、大丈夫なん?

B 滑舌?

A そこじゃないよ!まあ、滑舌もそうだけど、その異変とか、人間を食べたくなったりとか。


B 噛まれてすぐ人間食べたくなって、お前の所に戻ってきたんだけど、
そこそこ自制できるんだ。察するに禰豆子的な状況だ。

A 例えが俗っぽいよ!壮絶な状況だぞソレ!

B ああ、酷い状況だな。
もうギリギリだ、今にもお前に噛み付いてしまいそうだよ。

A そんな・・・!

B 頼む俺のことを撃ち殺してくれ!

A 出来るわけないだろそんなこと!

B 罪悪感を感じる必要はない。俺はもうゾンビ、人間じゃないんだ。

A それでも、たった二人きりの仲間じゃないか!

B 罪悪感を乗り越えてくれ!
俺に比べたらよっぽどマシじゃないか!
想像してくれ、お前を食べてそのままゾンビとして生きていく俺の罪悪感を。

A (涙を流す)

B 例えるなら、
夜中に目が覚めてつい冷蔵庫のプリンを食べてしまったような罪悪感だ。

A そのレベル!?

B ああ、確実に太る。

A そっち!?そのタイプの罪悪感!?
たった一人の仲間のことカロリーとして捉えてんの!?

B ああ、食いたいのをぐっと我慢しているんだ。

A いや、そのレベルのやつなら我慢できるだろ!

B 誰もがこの食欲に堪えきれるならこの世にデブはいねえんだよ!

A つーか、人間だった時は餓死寸前だったのに、今はなんでそんな余裕なんだよ!

B 外で牛を食って帰ってきたんだよ。

A 別に人食わなくてもいいんじゃねえかよ!

B いや、飲み会でたらふく飯食ったのにシメにラーメン食いたくなるときあるだろ?
あの感じだよ!

A その感じかよ!ふざけんなよ!

B 匂いに釣られちゃって。

A 自制心弱すぎるだろ!

B うわ〜食いてえ〜。
(Aに近づく)

A おい!やめろ!

B いや、糖質やばそ〜。

A 俺のこと糖質と捉えるなよ!

B ウオオオオー

A おい!我慢しろ!やめろ!

B(噛み付く)
うわ〜、食っちまったよ。これ絶対太るって。
あーあ、明日は軽めにしとこ。

A (起き上がる)
あうぅ、がるる、、、、、、ぐぅ、

B お、お前、大丈夫か?

A うぅ、うぅ

B …

A (めっちゃ早く喋る)まぁ、ゾンビやらせてもろて、一年目の若手なんですけど、頑張っていかなあかんなあと思ってるわけなんですけども〜

B 喋るの早いプラス若手芸人みたいになってる!!!

A さあ、本日は、ゾンビにまだなりきれてない人間のお肉をいただけるという西麻布のお店にきています

B 何を食レポみたいな感じでふざけてんだよ!

A それでは、さっそく、もうまずは、そのまま、何もつけずに、手でいただいてみたいと思います。

B ……(立ち上がって)さて!わたしがお邪魔しております、池袋のこちらの店では、グルメレポをしている一年目の若手ゾンビのお肉がいただけるそうでございます!
それでは、さっそく、いただいてみたいと思います!!

(AとBがにらみあい、お互いに飛びかかるところで暗転)

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さて、以上が添削になります。
ゾンビにしては、ふざけすぎてるなとAFTERの台本を見ても思いますが、元の台本を生かして、ベストを尽くしたつもりです。


【違和感を解消すると、また別の違和感が生まれる】

には、悩まされるものなんですね。

でも、この感じが分かってくると、ネタを書くことに対して、初段クラスになってると言えるでしょう。

なので、僕の書き直しのやつよりも、元々のほうが好きという人もいるかもしれません。

自分としては元のボケを出来るだけ残しながら頑張ったポイントがあるので、ここからテクニックの解説をしていきたいと思います。

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