添削17本目【苗字の画数バトルの漫才】

さて、まずは、依頼主さんから送られてきた台本を読んでもらいましょう。


【BEFORE】


A 「1番悔しかった思い出ってなに?

B「1番悔しかった思い出

A「運動会やんな!

B「そうか?

A「俺運動会で一位取れへんかったから、担任の先生にボッコボコにされてさ

B「なんで⁉︎

A「お前に一頭流し3連単で賭けてたのにって

B「子供で賭け事してる!そのうえ一頭流し3連単とかいうガチの買い方してる。

A「有馬記念小学校では結構当たり前のことやねん

B「公営ギャンブル記念小学校やんけ

A「それから、なんでも良いから1番になりたい。1番になりたいって思うようになってん。そんでこの前、やっとある大会で1位になれてん。その時の様子を再現するからちょっとみといてほしい。

B「なんか大会に出たらしいですね。

A「苗字画数バトル。開幕!説明しよう苗字画数バトルとは苗字の画数の多い方が勝ちといういたってシンプルな大会である!

B「大会おもんな」

A「この大会はトーナメントで行われる」

B「エントリー表見ろや!エントリー表見て画数数えたらそれで終いやろ。

A「俺の名前は◯◯!画数は6画!

B「すくな!お前絶対勝てへんって

A(Bにむかって)「いっぱい練習したから」

B「練習とかじゃないのよ、画数のバトルなんやろ⁉︎

A「1回戦!対戦相手は誰だ!?ふっふっふ私に勝てますかね?乙です!

B「1画!すごい髪の毛乙みたいに流してる

A「僕は日本漢字能力検定1級を持っているので負けませんよ

B「大会の趣旨を理解してない!

A「総画数は1画」

B「何故エントリーをした。

A「俺は6画。ええっ??

B「なーにを驚くことがあんねん

A「画数で勝てないなら叩きのめすまで‼︎」(乙の髪の毛ぐーん。A引きちぎる)ふぉぉぉ

B「乙ー‼︎

A「乙です

B「めちゃくちゃ煽ってる。なんなんこの大会⁉︎」


A「決勝!

B「4人しかエントリーしてない!

A「対戦相手は誰だ?お前に俺を倒すことができるかな?(SSRみたいな演出で登場)乙です!

B「また乙!どうやって1回戦勝ったんや!

A「1回戦はシードです。

B「この大会3人しかエントリーしてない

A「そう画数は1画。僕は6画です。ええっ⁉︎

B「だから何をびっくりすることがあんねん

A「下の名前も合わせて良いですか?

B「ずる

A「僕の名前は乙凸です。

B「乙凸⁉︎凸ってあのテトリスみたいな

A「総画数は2画

B「あぁっこいつ、一筆で凸って書いてる!5画もあるのに!

A「画数で勝てないのならたたきのめすまで。(髪の毛伸びる)ドゥーン。(引きちぎる)。ぶぉぉぉん」

B「なんで髪の毛引きちぎっただけでそんなに血が出てくんねん」

A「おつです」

B「おつですじゃないねん」

A「B君も参加しいひん?」

B「絶対でないです」

ありがとうございました。




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【ポイント解説】


というわけで、元の台本を読んでいただきました。


苗字の画数バトル、バカバカしくて面白いですけどね。結構いいネタだと思います。


えーとね。普段から僕はリアリティを大切にしてるのです。この台本の少し気になるところも、やっぱりそこはあります。


α【苗字画数バトルで勝とうしてる選手がいない】


ただ、この台本は、ひとつの特徴を持っていまして、αのマイナスを軽減しています。


多分、依頼主さんも分かってて、そうしてるのかなと思います。


その特徴とは【コントインをしてるのがボケ1人だけで、ツッコミは外からまわしている】です。


これが結構大事で、外からまわしている分、【相方が、リアリティのない暴走をしていても、結構楽しく観れる】んですね。



なので、そんなに悪いネタとも思えません。


なぜ添削を依頼してきたのでしょうか。



まあ、若干気になるのは、漫才のツカミと本編が、これとこれで相性が一番なのだろうか?とは思います。


運動会って入り口で始まってるのに、本編の画数バトルは、別に運動会でやるわけではなさそうなんですね。



フリとボケが連動していない気がします。


ツカミ自体は面白いんです。

本命から3連単で流すというガチの賭け方を教員がしとるやないか、のくだりは良いです。


この流れだと、たとえば【絶対に教師に賭け事させないような運動会の競技】を考えた、、、などのほうが、必然性はありますね。


僕がこのマガジンで何度も言ってることですが、漫才の基本は“提案”です。


苗字画数バトルはひとつの提案であり、一見そこをクリアしてますが、“なぜそれをやるのか?”という大義名分に欠けるような気がしますね。


あと、中身で言うと、やはりボケ方が【ふざけたいがためだけのボケ】にかなり偏ってる気がしますね。


先ほど、外側からボケの暴走を回してるだけなので、ふざけまくってるだけのネタでも成立しやすいとは言いました。



しかし、やっぱりふざけたボケをよりよく見せるためにも、他の球種も混ぜてほしいです。


ストレートを速く見せるための遅いカーブや、何かがほしいところです。


頭の中で、なんとなくでいいので、これ系のボケあるよな、と考えてみてから書くのもいいかと思います。


やるかどうかはさておき、です。


そういう意味では、元の台本の“下の名前もあわせていいですか?”は姑息で面白いですね笑




さて、ボケの球種をサクッと羅列してみましょう。


たとえば。。




☆画数が異常に多い、シード選手的存在の名前




☆「この大会のために、お父さんとお母さんが離婚して、お母さんのほうの苗字になってきました!」みたいな直前で苗字変わってる、この大会に賭けてる奴


備考)こうなってくると、【なんでそこまでする?】という疑問が生じてくるので、賞金を高くするとか、ボケとして、“商品”を設定するとかも、考えてみたい。


家族三人でいけるハワイ旅行が景品とか。


「苗字変わってるし、気まずい関係なんだよ!」とつっこめる。



☆たなか、など耳で聴くとザコっぽい名前だけれど、漢字を聞いたらやたらイカツイなどのボケ


(思いつくかどうかは別にして、こんなボケも球種としてあるよな、という感覚が大切なのです)



☆大会主催者が一番の画数の多い苗字をしてて「いや、こいつが出ろよ!」みたいなツッコミをさせる




☆同じ画数の場合のサドンデスで、ボケられる。


「同じ画数の場合は?」

「その時はエロいほうが勝ち」

「どうやって判断するねん!」など。




☆同じ画数の場合は、空手できめる。

空手ばっかりやってる。。

【同じ画数のやつの空手大会やないか!ただの!】とつっこませる。



☆遠方から、時間ギリギリで「ちょっと待ったあ!」って言ってやってきた奴の苗字が“乙”などの画数の少ないザコ。




さて、などなど、いくらでも球種があります。




どう組み立てるかは、結局、好みではあるんですが、僕なりの【AFTER】を観てもらいましょう。




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【AFTER】


A こないだ、TV観て感動したよ


B どうしたん?


A ある村の村おこしで、村長が考えたイベントが盛り上がっててさ


B あー、そういうのいいね。村おこしで人がたくさん外部からやってくる、みたいなね。どんなイベントなの?


A 苗字の画数が多いものが勝っていくトーナメントや


B クソイベントやんけ!!わざわざ行くか!田舎までそんなイベントのために!



A 鬱猪木(うついのき)村では、村人の九割が鬱猪木やねん


B どんな漢字書くねん!一体!どこにあるねん!そもそも!


A 栃木県、鬱猪木村は、鬱は、憂鬱の鬱で、猪木はアントニオのやつや


B 聞いたことない村やな。

鬱猪木、圧勝やろ!ウツだけで、画数取りすぎとんねん!!村人の九割がナチュラルボーンで強すぎるねん


A 「えー、みなさん、いよいよ、はじまります。MCをさせていただきます、村長の鬱薔薇(うつばら)です」


B 村長が一番イカつい!!鬱に、薔薇、で鬱薔薇??


A 「まずは一回戦第一試合、“東京都代表”たくやVS“鬱猪木村(うついのきむら)代表”よしお!」


B 紹介は下の名前で言うんやな。なるほど。


A 『どーも、東京代表、木村です』


B 画数少ない!なんで出たんや!


ほんで木村拓哉やんけ!!同姓同名か!


A 『どーも、鬱猪木です』


「……勝者、、、、、鬱猪木よしお!」


B 何がおもろいねん、この大会!!!!


A 『ちょ待てよ』(キムタクのモノマネする)


B 「ホンモノやったああああ!!!キムタクしょーもない大会に出てたあ!」


A「俺は解散しちゃったけど、SMAP代表できてんだよ」


B SMAP代表やったら、草彅剛やろ。なぎ、ややこしいやろ!!


A 「えー、東京都の木村さんには、参加賞としてどんぐりのブレスレットを差し上げます」


B なめてんのか!キムタクを!


A「続きまして、第9回戦第3試合」


B 結構な規模やのお!!第9回戦って!!!その村、人口おらんくせに、なんでそんな人数おんねん。


ほとんど外部やろ!選手たち」



A「鬱猪木村(うついのきむら)代表!VS京都府代表!


「鬱猪木(うついのき)です」


「乙(おつ)です」



B おつ!??(おおげさに、お客さんに伝わるように、乙を空中に書く)。なんで、出たんや!」


A 「勝者!!!


鬱猪木!」


B なんで、京都から来たんや!おつ!


まさに、おつや!!どんぐりのブレスレットもらって帰れ!」



A 「鬱猪木です」

「鬱猪木です」


ドロー!!!

サドンデスです!!


エロいほうが勝ち!!



B どんなルールやねん!サドンデス!



A 「鬱猪木です」

「鬱猪木です」


ドロー!サドンデスです!!

親が金持ちのほうが勝ち!



B ルール統一せえよ!!!さっきエロいほう勝ってたやないか!!!!おい!鬱薔薇(うつばら)!

ていうか、お前出ろ!

優勝やから!何を司会進行しとんねん!



A 「鬱猪木です」


「田中ですけど、ぼくだけ、名前の画数も足していいですよね?」



B 末っ子おるぞ!!!ええわけないやろ!!ちなみに、下の名前なんやねん


A 「よこ一本線で、はじめです」


B 帰れや!!一画しか増えてへんやんけ!www


A いよいよ決勝戦です!!


「この大会のために、お父さんとお母さんに離婚してもらい、お母さんのほうの苗字になってやってきました」


B すごい覚悟の奴おる!!


A 「斎藤です」


B しょーもな!!

よく残ったな!何があったら残るねん!鬱猪木(うついのき)たちが相殺しあったんか!??


ほんで、なんのための離婚やねん!!




A 「僕のお父さんはこの村の村長ですけど、コネとか関係なく、実力で勝ちたいと思います」


B 息子出てきた!!!鬱薔薇(うつばら)やんけ!!実力で勝つわ!お前なら!


A 「昨日、僕もお父さんとお母さんが離婚して、苗字が変っちゃいました」


B なんだと?お前に関しては、マジでなんだと?


A 「僕は、ハツハツハツハツハツハツハツハツハツハツです。

漢字は、毛髪の“はつ”を100個並べただけの苗字です」




B おかんのほうの苗字、気ぃ狂ってんのか!


A 「ハツハツハツハツハツハツくん、優勝おめでとう」


B お前とこの息子やろ。


A 「景品は三人でいけるハワイ旅行の旅行券ですよ」


B 離婚して気まずい家族に旅行券あげんな!!

いい加減にしろ!!



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というわけで、AFTERを読んでもらいました。


まあ、元の台本も良いと思うので、今回は、そんなに自信があるわけではありません。



ただ、まあ自分なりに思う部分があるので、ここからテクニック解説に入りたいと思います。


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