添削1本目【乳首の呪い】

さて、それでは、さっそく送られてきた脚本を読んでいただきましょう。


【BEFORE】


漫才

どうも〇〇ですお願いします

A「…月ってさ、乳首に見せたら、おいっ!
どうなっちゃうのかな?」

B「あ?いきなり何言ってるの?怖いよ。乳首に月を見せる?は?」

A「あのさ、動揺してるようだけどもしかしてお前月に乳首見せたことある側の人間?」

B「いや動揺してねぇよ。別に。なんでそう思ったんだよ」

A「いや、それはだって月ってよく見るとさ、見るたび形変わってるからだよね」

B「は?そりゃそうだろうよ。だから何だよ」

A「人に似てると思うんだよね」

B「いやはっきり言うよ。違うだろ。それはこじつけも甚だしいよ。いや、実際は、あれは地球が動いて影が移動してるんでしょ?」

A「…ああ駄目だ。うんこするかも今」

B「え!うんこ!?うんこしたい??!なんで?いや、急に何言ってんだよ」

A「焦ると体温が下がって体が絞られていく感覚がある。うんこするかも」

B「いやいやいや、すんな、我慢しろ。あとうんこしたいって言う時恥じらいを持て?関係ねぇけど」

A「月ってさ」

B「いやおかしいだろ!何で始めれるんだよ『月ってさ』じゃねぇよ。うんこ大丈夫なのか?」

A「乳首に見せたら」

B「続くのかよ、うんこ引っ込んだ?何が起きてんの今」

A「どうなっちゃうのかな?」

B「…いや!俺は科学者だから説明するけど、太陽との直線を結んだ時に地球の真ん中を貫いて完全な月食が起こるかの如く、地上から乳首出して線を結んだ時に空を貫いて地球の表面を通過した点で空から何も見えなくなるんじゃないか?知らねぇけど…」

A「お前何言ってんだよ…」

B「いや…」

A「俺『乳首に見せたら』って話してるんだけど…」

B「うるせぇよ!!!」

A「ああああああああああ」

B「ああああああああああ」

A「いやこいつもう話にならねぇや!もういいよ」

ありがとうございました

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【ポイント解説】


いやはや、もう、この人はずっと何を言ってるんでしょうか。
探偵ナイトスクープの林シェフの気持ちが分かります。どう調理すればいいのか途方に暮れます。

さて、脚本について。
バカバカしくて好きな入り方ではあります。
「お?」と思いますね。ありきたりなネタでうんざりさせられるより、よっぽどいい。

ただ、そこからが、もう漫才以前に、会話として崩壊してます。

衝動でボケを思いついて、衝動で書いてるから、途中で急にウンコしたいと言い出したり「ああああああ!」と叫び出したりするのでしょう。

困ったもんです。

そもそも、乳首に月を見せるのか、月に乳首を見せるのか、表現入れ替わってるところもあり、このあたりも非常に雑です。

ボケ方は実は嫌いじゃありません。
ただ、【こんな頭おかしいことを言う奴に、ツッコミが話を聞いてあげすぎてる】んです。

これもめちゃくちゃよくあるミスです。こんなクレイジーな奴に、正面からツッコミを入れるべきではないんですが、【自分の台本かわいい】とか【自分のボケかわいい】でツッコミがめちゃくちゃ自分たち側に甘い脚本をよくみます。


さて、このような、衝動的なネタに関しては、お客さんも衝動的に笑う可能性もなくはないです。
僕のセンスがついていけてないだけかもしれません。
しかし、もはや、それを言い出したら、添削の世界ではなくなってきます。

正直に忖度なく申し上げると、ウケないだろうなと思います。

この人はひょっとしたら大喜利でぶっとんだ答えを出すタイプかもしれませんが、あくまでも、脚本だけを見ると、構成力を上げる必要があります。


前も言いましたが、漫才の基本は【提案】です。

何を言ってるのか支離滅裂なまま終わる話にツッコミが付き合いすぎてるのも気になります。

さて、面白いと思う部分だけ残して、添削というよりは、そこの一部を膨らませて作ってみたいと思います。

方針としては、いつも言ってることなんですが、【大義名分や提案がウソでも必要】という考え方で直していきます。
乳首に月を見せてやりたいと、真剣に思う人、真剣に思う人を想定していきます。

そして、ツッコミについて。
変な宗教に現実に巻き込まれる人っているじゃないですか?現実に。

それと同じようにツッコミも最初否定してて、理にかなってる部分で洗脳されていく、みたいになれば最高です。

まあ、そこまでのいいネタは僕には書けませんが、せめて、ボケの大義名分は考えながら、書いていきたいと思います。


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【AFTER】

A 昔から、オレ、男のくせにぬいぐるみが好きでさー

B へー、ええやん。

A わあ、ええやんって思ってくれる?めっちゃ嬉しい

B え、なんで?
男がぬいぐるみ好きでもええやん

A そ、そうやんなーー!俺さー、カバのぬいぐるみ持ってて、カバディって名前つけて、めっちゃ可愛がっててん

B ええやん。別に。


A うわ、全然バカにしてこーへん!めっちゃ優しい相方持った!お客さん、僕、とっても当たり前のことやけど、男女差別をしないステキな相方を持ちましたよ!

B よ、よせやい!照れるやい!

A わあ、自信ついてきたから、もう言うわ!!実は可愛がってたって過去形にしてたけど、今もカバディのこと、自分の弟やと思って、毎晩いっしょに寝てるねん

B (ちょっと間をあけて)ええやんけ!可愛いやんけ!それで熟睡できるなら、なんにも問題ないやん!わかるよ!そういう気持ち!
もはやお前にとっては、ぬいぐるみじゃないんやろ?

A そうやねん!カバディは俺の弟やねん!カバディの目にほこりついただけで、マジで心配するし、自分の目がかゆくなったりするねん

B もう感情移入しまくりやん。でも、優しさも、はぐくめるからいいよな

A あと、俺、自分の乳首も可愛がっててさ

B ん?ん?ん?

A 優しい相方でよかった

B それはありがとう。乳首?

A 優しいのはお父さんお母さんも優しいからやろな。きっと

B それはありがとう。乳首?

A 優しさが顔に出てるもん。

B ありがとう。乳首?

A 時々、乳首に月を見せてあげようと思って、満月の日は、ベランダに出て、Tシャツめくって、月を見せてあげてるねん

B えーと、ちょい待って。ちくび、ってのはカバディのお友達のぬいぐるみ?

A そう!カバディのお友達の乳首!!
それって、変なことかなあ?

B いや、もうちょっと聞いてみなわからんトコあるねん

A そう?乳首に満月見せてあげるの、ずっと続けててん。そしたら、たまたま一回だけ、満月の日やのに、乳首に満月見せるの忘れててん

B 可愛がってるぬいぐるみやのにな

A ぬいぐるみって言い方、やめてもらっていい?


B あ、ごめんごめん。。お前にとっては、ぬいぐるみちゃうもんな

A (自分の胸に向かって喋りかける)ぬいぐるみちゃうやんなぁ!!ピンキー!

B 乳首だあああああ!!!恐れてたことが現実になったああああ!!!カバのぬいぐるみの時、対応間違えたあああああ!!!


A 一回だけ、乳首に満月見せてあげてない日あってさ、その次の日の乳首がさ!!完全にスネてて、かんっっっぜんに!
いつもより、シワシワ!

B 知らん!気持ち悪い!!!なにゆーてんねん!ずっと!!!!

A 満月を見せることを楽しみにしてたんやな、俺の乳首はって思ってさ。

B なんでめげへんねん!おい!気持ち悪いって言うてるねん!お前の乳首の話!!一回だけ呼んだピンキーって名前なんやってん、ほんで!!

A え、、、お前、ジェンダーの問題、すごく理解あると思ってたけど

B いや、理解したいけどさ

A ああ、そうですか!そうですか💢!!
男がベランダに出て、Tシャツめくりあげて、乳首出して、満月にご挨拶させてもーてたら、やっぱり変ですか!!
そうですか!そうですか!!

やっぱり、ベランダ出て、満月に乳首のご挨拶させてもらうのは、女性ですか!!

B もっと大問題や!女やったら!!!!

A お前のこと、ジェンダーの問題に詳しいと、思ってた俺がアホやった!!

B ジェンダーの問題ちゃうねん!満月の日に乳首出すの!!なんやねん、それは!性癖なんか!!?

A 性癖やおまへん。
この辺で、商売しようと思ったら、満月さんには、絶対乳首にご挨拶はさせとかなうまいこといきまへん。
せやから、満月さんに、乳首見せないと、やっていけまへんのや。

B なんでみかじめ料はらってるねん!満月に!!
どういう存在やねん!変な関西弁やめろ!突然の!


A 実はお前に言ってなかったけど、いいネタ書いて持ってきた前の日は、挨拶を満月にさせてもらった日でんねん。

B 解散じゃあああ!!

A なんで?カバディに嫉妬してるんか!

B そっちちゃう!カバのきしょいぬいぐるみはどうでもええ!もっと気持ち悪い、お前の乳首の話や!!
満月に見せるだの、なんだの言いやがって!!!


A トップアスリートはみんなやってる

B やってない!聞いたことない!

A 練習姿、見せへんタイプのアスリートは練習と乳首見せへんだけや

B なんでめげへんねん、こいつ!気持ち悪い!!やってへんねん!普通に考えたらわかるねん!!

A (深呼吸しまくる)

B なんや、急に息を整えて!!


A 実は、俺、男のくせに、ショートケーキが好きやねん

B 乳首より薄いやつ言うな!いまさら!やめさせてもらうわ!!

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というわけで、自分が持っているテクニックを駆使して、添削しました。“ほとんど変わってるじゃないか”と言われるかもしれませんが、ほとんど変えざるを得なかったのです。

さて、ここからはAFTERのテクニック解説をしていきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。

もっともっと添削の内容を知りたい方には、個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得です。

それでは、テクニック解説をしていきます。


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