添削8本目【タブーを犯す漫才】

さて、ここの添削、正直好評で売れてます。

すさまじい労力がかかってるので、報われたような気分ですね。

それでは、8本目です。まずはBEFOREから。


【BEFORE】

A 漫才やるからにはやっぱりタブーに切り込んでいきたいですよね

B いいですね、タブーに切り込んでこそお笑いですからね

A 最近、子供の頃懐かしいなーと思って

B ほう

A 特に絵本とか懐かしいですよね

B 絵本?

A ぼく桃太郎が大好きで、ちょっとやってみていいですか。 ぼく桃太郎やるんで、犬やってください

B いや確かに令和に桃太郎のネタはタブーよ!?やり尽くしてるから!
ここに来てるお笑いマニアは「桃」の時点で耳閉じるからね
でもそういうことじゃないのよ 違うタブー切り込んで

A 違うタブーね、任せてください。
もうぼくすでにタブー犯してます。

B え?

A 今日ここに、知り合い50人呼んでます(客席を指す)

B タブーすぎるだろ!知り合い呼んで笑い声足すな!

A タブー犯して行きましょうよ

B 漫才師として矜持を持て

A アマチュアなんで

B クソだな

A いやお笑いって難しいんですよ全然わかんなくて
この台本も、全部作家さんに書いてもらってます

B いや自分で書けよ!M-1だぞ

A 7000円でした

B 生々しいな

A 安いですよね

B いや知らないよ 相場

A もっとタブーに切り込みましょうよ

B ちょっと意味違うのよ

A 僕なんてこないだウーバーイーツ頼んじゃいましたよ

B いやそれは全然タブーじゃないでしょ

A めちゃくちゃタブーじゃないですか。あの配達員全員売れない芸人でしょ?

B そんなことないよ!

A 先輩パシらせてるようなもんですから

B いやな発想だな!

A あとね一個やりたいことあるんですけど タブー過ぎるかなって迷ってるんですよ

B 何よ

A ユーチューバーになろうかなって

B それこそ全然タブーじゃないじゃん

A そうなんですか? ユーチューバーになった人たちもうテレビで見ないから、すごいタブーなのかなって

B すごいタブー犯したからユーチューバーになってんだよ!アマチュアがプロいじるな!やめちまえ!

A ありがとうございました

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【ポイント解説】

これは、添削を悩ませる台本ですねぇ。

脚本の中に出てくるので、M-1にかけるための台本で、長さから、とりあえず一回戦をこのネタで挑戦するつもりかなということは判断できます。

まあ、それは誰でも分かるので、シャーロックホームズぶったわけではありません。

さて、中身について話す前に、ちょっと外側の話をさせてほしいのですが、M-1にかけるという意味で、この台本のままだと、ちょっと不利な気がします。

いわゆるメタ漫才なんですよ。

メタがわからない方は数学用語なのでご自身でも、調べてほしいですが、簡単に説明すると、「漫才自体をイジってる漫才」なんです。

これをメタ漫才と言います。

メタ漫才をやるなと言うわけではないんですが、審査員の印象が少し良くないかなという感じは個人的にはします。
ウケるウケない以前の問題で。

僕、個人的には、メタなネタをやる時もありましたし、ダメとは言いません。
ただ、賞レースに持っていかないかなとは思います。

冒頭で悩ませる、と申し上げたのは、「他にもっと面白いネタで、メタ漫才じゃないのがあるのなら、そっちをやったほうが良い」と申し上げたいんです。

内容に関しては、目立って悪いところが見当たらないとは思います。シンプルな構成ですね。

すごく高得点とまでは言いませんが、演者がうまければ、ウケそうなネタだなと思いますからね。普通に。
演者がうまければ、というのは逃げではなく、台本の良さだけでは、【ウケる】がゴールであるすごろくがあるとして、三割地点にも行けてないんですね。


ウソだと思ったら、サンドイッチマンさんのネタをおじいさんおばあさんの前でやってみてください。

あんなに良くできているネタでも、演者のうまさがなければ、スベります。

内容に関してもダメ出しはありますが、それはまたあとの【テクニック解説】の中で。

さて、今回ひとつ趣向を凝らしましょう。
この漫才自体がメタ漫才なので、ここはひとつ僕もメタな観点から、添削を考えてみたいと思います。

メタにはメタを!
ですね。

ようするに!!

メタ漫才は可愛げがないんです!!!!

ええ!ウケりゃいい、じゃなくね。居直り感もある脚本なのですよ。これ。

全体的にかわいこぶれ、ってわけじゃないけど、最後一番自分たちがダサいとか、そういう要素は必要かと思うんです。いや、ツッコミがちゃんと「アマがプロをいじるな」とかつっこんでて、そこらへん、ウケそうやなって感じもしますが。

まだ可愛げが足らない。

これは、居直りっぽく取れるからです。マジの恥部をさらしてるわけではないんですね。

可愛げには、見た目も大切ですが、そもそも、僕は脚本だけ送ってこられたので、二人のフォルムが分からない。

Aの顔がすでに出てきただけで、なんか腹立つような顔をしてる場合、ウケる確率は上がりますね。
Aの顔がシュッとしててイケメンだと、このネタはスベる可能性が上がります。

そういうもんなんです。

それを踏まえて、AFTERを観てもらいましょう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【AFTER】

【見た目】
A 誰が観てもモテなさそうな男。違う場合は一回戦までにブサイクに整形して挑む。飛石連休というお笑いコンビの岩見さん(ブサイクなほう)の顔にしてもらうこと。
喋り方も腹立つ喋り方をすること。


B アルマーニのスーツを着こなしているハンサム男。ハンサムではない場合はM-1の一回戦までに整形すること。ハンサムだけど、背が低いとか、ほしいので、高い場合は、背も低くする手術を受けておくこと。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

B どーもー、◯◯◯(コンビ名)と言います。僕がツッコミのBで、

A 貴重な持ち時間を自己紹介で削るバカにはなりたくない男です

B 名前言うたほうが早いよ!ごめんなさいね。Aくんは、※(実家に住んでて)とがってるアマチュアなんです。

※の部分は何かウケそうなフレーズが必要。

他候補)
☆特にいじめられたことないのに世の中に復讐しようとしてる、とがってるアマチュア
☆遺書の影響を令和なのに色濃く受けてるとがってるアマチュア
etc


A 近道しましょや!!

B なんの?お笑いの?ってことやろ?オレはお前がイタイの知ってるからすぐわかるけど、お客さんわからへんからね!

A おかしていきましょや!

B なにを?お笑いのタブーを、やろ?オレはお前がイタイの知ってるからすぐわかるけど、お客さんわからへんからね!

A オレ桃太郎が好きで将来読み聞かせしてあげたいから、お前子供やって

B ゲー吐きそうなベタな話題やめて!どこがタブーやねん!

A ひと昔まえは多かったけど、今少ないから、逆にタブーかなと思って(ポケットに手をいれる)

B 自信ないけど強がる時にポケットに手を入れるんですよ、この子(お客さんに)。ほんまはええ子なんですよ。
あかんよ、そんな滅びかけのベタなやつ!なんかもっと違うタブーないんかいな!

A もう違うタブー犯してることに気づいてないんかよ

B なにやねんな?

A 作家さんにお金払ってこのネタ書いてもろてます

B タブーやな!やってもええけど言うのはタブーや!恥ずかしくないんか!人のセリフでイキってるの!

A オレのイタイ性格を知ってもらった上で、7000円と交換や!

B 生々しいから金額言うな!!「エントリーフィーと合わせたら一万円近くだして、一回戦で落ちはるんやろうな」ってお客さんに思われるやろ!

A こないだなんか、三日連続でウーバーイーツたのんだったわ!

B それのどこがタブーやねん!

A ウーバーイーツなんて、全員売れてない芸人がやってるから、アマチュアがプロをパシってるわけや!

B なんちゅうこと言うねん!!タブーと無礼は違うねん!

A あと、YouTuberになりたいと思ってね

B それのどこがタブーやねん

A ユーチューバーになった人たちもうテレビで見ないから、すごいタブーなのかなって

B すごいタブー犯したからユーチューバーになってんだよ!順番逆なんだよ!アマチュアがプロいじるな!やめさせてもらうわ!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


というわけで、ネタの添削を終わりました。
今回は添削という名に恥じぬよう、できるだけボケを残しました。
僕が本気で笑いを取ろうとした場合は、また違うネタになりますが、今回は台本がわりと理にかなっていたので、そんなにたくさんは修正していないですね。


そうは言ってもメタ漫才は賞レースではやめといたほうが無難だと再度言ってはおきます。


さて、僕がどのような感覚で“ネタの中の可愛げ”を足していったのか、整形は冗談としても、テクニック解説をしていきたいと思います。

今回はツッコミがわりと達者であることが求められる脚本にしたかなと思います。


ここからは、有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。

もっともっと添削の内容を知りたい方には、個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得です。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここから先は

2,533字
この記事のみ ¥ 900

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?