添削18本目【ロボットの漫才】

漫才台本が送られてきましたので、さっそく元の台本を読んでもらいましょう。


【BEFORE】


「ロボット」


H「いやぁ憂鬱です」

A「なによいきなり」

H「もう僕の今年の漢字は憂鬱ですね」

A「あ、そんな憂鬱なん?まぁ今年の漢字ってだいたい一文字やけどね」

H「ちょっと友達と喧嘩しちゃって」

A「いや、そんな喧嘩したぐらいで落ち込むなよ」

H「喧嘩の原因を色々考えたんですよ」

A「おん、喧嘩の原因」

H「結局僕がロボットじゃなかったからなんですよ」

A「おー、どーゆーことよ」

H「いや、僕油物大好きなんですよ」

A「あ、からあげとかね」

H「そうです、だから自己紹介の時に油そのまま飲んだんですよ」

A「なんでやねん、いくら油物好きでもそのまま飲むなよ」

H「わかりやすいかなと思って」

A「わかりにくいわ、ほんでそれ自己紹介でしたん?」

H「はい」

A「それ友達と喧嘩も何もまだ全然仲良くないやん」

H「それでそんなん飲むな!って言って喧嘩なったんですよ」

A「それ喧嘩ちゃう、心配や、お前の体心配してくれとんねん」

H「いや、でも僕がロボットやったら油飲んでも大丈夫やったじゃないすか」

A「そんな問題ちゃうけどな」

H「あいつとは親友になれたと思うんですよ」

A「何の自信やねん」

H「だから僕ロボットやるんであなた友達やってもらっていいですか?」

A「あ、ここで親友になれたかどうかを確かめんの?」

H「いや、違います、ここで親友になれたかどうかを確かめるんですよ」

A「どう違うねん」

H「僕はもうダメです」

A「なんで死にかけやねん」

H「いや、本当の友情って別れ際に分かると思うんですよ」

A「あ、今別れ際をやってたん?」

H「はい」

A「それ先言うといてくれんと、もう一回やって」

H「ロボットです」

A「あんま自分でロボットですって言わんけどね」

H「僕はもうダメです」

A「そんななんとか君を助けることは出来ないのかい?」

H「この単4電池で」

A「電池式かい、冷めるわなんか」

H「え、どうしたらいいんですか」

A「だから直ったらあかんねん、寿命で動かなくなるんやから」

H「ああぁぁあ…」

A「ほんまの寿命やんけ」

H「89歳です」

A「人間でいうととかええねん今、どっかが壊れてとかあるやろ」

H「あー、痛い痛い」

Hうずくまる

A「おー、どうしたどうした」

H「お腹壊しちゃって」

A「頑張れや、それぐらいなんとかなるやろ」

H「生で食べちゃったんだ」

A「おー、なにを?もう右足が壊れてしまってでいこう」

H「右足が壊れてしまって」

A「それ右手や」

H「右前足です」

A「え、四足歩行なん?」

H「君が今無理矢理立たせるから壊れたんだ」

A「そうやったん?ごめんそれは、でもその足を直してまた一緒に遊ぼうよ」

H「そんなん言うたかってしゃーないですやん」

A「おー、急に流暢に喋んな、さっきまでカタコトやったやろ」

H「最後熱い話で本当の友情を確かめますから」

A「もう普通に喋ってるやん」

H「僕にとって君は親友同然だった」

A「僕もだよロボット」

H「僕が油物を好きなことを君は誰よりも知ってくれていた」

A「自己紹介で油をそのまま飲んだからね」

H「僕と君はことわざで言うと水と油だった」

A「ロボットー!それ悪い意味だよ」

H「あ、そうなんですか?」

A「いや、死んでへんのかい、もうええわ」


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というわけで、台本を見ていただきました。


僕が面白いなと思ったボケは、【油物が好きだから、自己紹介の時に油をそのまま飲んだ】


右前足、で四足歩行のくだり。


とかかな。


僕がロボットじゃないから、という屁理屈ボケも僕は好きです。


あ、ツカミのボケの【今年の漢字は憂鬱ですね。】

からの、【普通、一文字やけどな】も良いと思います。



さて。気になるのは、脚本の根幹の部分ですね。


メインで何を描きたい話なんでしょうか?

そこが分かりにくいと感じました。


“自己紹介の時に”油を飲む、と言ってるのに“友達”とケンカをした、と言ってたりしますね。


えっ?ってなります。

自己紹介ってことは初対面ですよね?


友達????


となりました。



【初対面の人に油を飲んでるとこを見せて、止められた】という輪郭は見えてきます。


でも、それを友達とケンカした、と表現してるのは、違和感がありますね。



この依頼主さん、あまり舞台に立ったことがないと言ってらっしゃいましたので、そのわりには、何個か面白いボケはありますね。



しかし、残念ながら、プロットがしっかりしてません。



このネタに限らず、何をメインに表現したいかによって、添削の仕方が変わってくるんです。



たとえば。



【ロボットじゃないのが原因】という屁理屈ボケをメインに表現するなら。。



A 俺、友だちとケンカしてしまってさ


B あら、原因はなに?


A 原因は俺がロボットじゃないこと


B なにゆーてんの?


A 俺は油物が好きやねんな


B うん。おいしいよな


A でも、疑われるのイヤやから、そいつの目の前で、油を一気に飲んだんよ


B 気持ち悪い!油物好きって言わへんねん、それ!


A ほんで「気持ち悪い!」って言われて


B そら言われるわ


A ケンカになってん


B そうなんや


A 俺がロボットじゃなかったから


B それがわからんねん!さっきから!


A 俺がロボットなら、油をそのまま飲んでも、あいつのカバンの中にゲーゲー吐くこともなかってん


B 何してんねん!そらキレるわ!!自分のカバンでやるねん!まだしも!


A そいつに殴られたから、殴り返してん


B 100対ゼロでお前が悪いけどな


A 俺がロボットじゃなかったから


B もうええねん!それ!


A ロボットなら痛みを感じないから、殴り返すこともなかった


B ロボットを殴らへんからな、その前に


A もう俺は友達を失ったから、人生で残された楽しみは油物しかない


B どんだけ油物好きやねん


A 今日も家に帰って、油を飲むわ


B お前は油物好きなんじゃないねん!油が好きやねん!!


A ちなみに、油を飲むことを我が家では、油をさす、って言うよ


B ロボットやないか!お前の家族!!


‥‥‥‥‥




みたいな感じで、ロボットかどうかを焦点にして、書いていくとか、ですかね。


上記の僕の台本もそんなに面白いとは思いませんが。漫才そのものの作り方の理屈の話です。


ここからは、たとえば、ロボット以外でも【俺が◯◯◯じゃないから】の◯◯◯を頭の中で大喜利してから、脚本を書いていく、とかですかねぇ。




あるいは、別れのシーンをメインでやりたいなら、ロボットのくだりは、台本のままだと

よくわからないんですね。


もちろん、単三電池のくだりとか、四足歩行とかのくだりが出てて、ちゃんと“フリを活かそうとしている”ところは良いんです。


ただ、そもそも、いきなりロボットやる側とその友達って言われても、なかなか感情移入しにくいかなとは思いました。



たとえば、「ロボットなんか、感情がないから、壊れても平気だし、蹴ったりしても平気さ!」みたいな人が、ロボットにどんどん友情を感じていって、別れのシーンでは、泣いてしまう、などなら、ロボットの話題を出してから、別れのシーンをやるなら、まだ意味があります。



いつも言ってますが、漫才の基本は【大義名分のある提案】です。


あくまでも基本です。


そうじゃない漫才もたくさんありますが、とりあえずは、慣れない人は守ってほしいです。


僕も、漫才でこれを守って作ることが多いですし、書きやすいです。


ピンネタですら、大義名分のある提案、を大切にして作ります。



感覚としては。。。


絵本を描いてください、と言われたとしましょう。


その時に脚本を考えて、子どもたちが読んで楽しめるようなものを一回完成させます。



その上で、ふざけられる部分をふざけていきます。



いや、こんなことをイチイチ僕はしてませんけど、もしかしたらイメージつかみやすいかなと思って、例にあげました。


参考にしてみてください。



さて、どうしようかな。今回はあんまり自信ないけど、とりあえずAFTER書いていきます!!



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【AFTER】


A あのさー、俺、ロボットがほしいねん


B ロボット?え、それは、ペッパー君とか、そういう便利でコミュニケーションも取れるやつ?


A いや、とにかく丈夫で、ムカつく顔してるロボットで、何回、俺が蹴っても壊れへん奴


B 友達つくれよ!お前!ごめんなさいね、こんな精神歪んだ奴連れてきて


A 人間は殴る勇気ないから、ロボットでストレス発散したいんよね


B 言うてて恥ずかしくないんか、自分で


A まぁ、でも、そんなこと言うてる俺が、そのロボットが壊れてしまった時に号泣したりするねんな


B なるほどな。。。。。。すごいええ話やんけ!それ!!!!



A よし、ほなちょっとやってみよう。俺が蹴りすぎて、壊れかけ寸前になったロボットやって、お前


B 感動のシーンやな


A (Bを蹴る)オラア!むかつく顔しとんなあ!いつも!


B ウグッ!!!


A あれ??


B 今まで、、、ありがとう。


A え?どうした?ロボット?


B 五万回蹴られる、耐久テストにも耐えた、、ボクだけど、、君の5万1回目のキック、なかなか良かったぜ


A そ、そんな。。ロボット!ダメだよ。死なないで


B そろそろ、お別れの、、時が、、、


A あはーはーん!(泣)。なんぼしたと思ってるねーん!!!中古車一台買えるぐらいの‥…


B さめるさめる!さめる!!値段とか言うなや!さめるから!感動のシーンやりたいんやから!


A そうか。


B カネの事言うな


A わかった


B うぐっ、い、今まで、ありがとう。


A ロボット?え?う、うそだろ?


B 君のキック、きいたよ。僕が蹴られた分、人間が蹴られなくて済んだわけだよね。良かった


A そ、そんな、死なないで!!ロボット!


B (目をぬぐいながら)あれれ、どうしてだろう。目から、オイルが


A (床をめっちゃ拭きながら)それは、涙だよ



B 涙?僕、ロボットなのに、、目から、涙???


A そう。涙だよ!君はロボットなんかじゃないよ。死なないで(泣)(床を拭きまくる)。あと、泣かないで。


B 床を拭くとかあとでせーよ!!


A なんぼしたと思ってるねーん(泣)



B それ言うな、って言うてるやろ!カネの話!!目から、オイルが、のところは感動ポイントやろ!床を拭くとかあとでやれ!


A でも、油とか染み込むから


B 我慢せー!「うぐっ!!い、今まで、ありがとう」


A ロボット?どうしたの?


B お別れの、時が、、、きたみたい。あれれ?不思議だな。

目から、オイルが。


A 死なないで!いつも蹴ったりしてごめん!!!


B 最後に、人間みたいに、涙が、ながせて、幸せ


A 死なないで!!(後ろにいって)あ、はい、はい。(クルリとBを振り返って)死なないで!(また前を向いて)サインでもいいですか。はい。どーもー。


(戻ってきて)死なないで!



B 配達を受け取ってたやろ!今!!!



A 新しいロボット来た



B めちゃくちゃさめるわ!!!ロボットからしたら、最後の最後にめちゃくちゃイヤな気持ちになるやろ!


A そうか


B ウグっ!!さ、さよなら


A ロボット、し、死なないで!死なないで!!!君の大切さに、今頃気づくなんて、僕はバカだ!!


B ありがとう



A ロボット!君との思い出をいっぱい思い出したよ!!!


彼女に振られた日も、君を蹴ったね!

仕事をやめてきた日も、君を蹴ったね!

路上でヤンキーに蹴られた日も、君を蹴ったね!



B 蹴ってばっかりやないか!www

やめさせてもらうわ!!



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ということで、AFTERを読んでいただきました。


他人様のネタをベースにして添削をすると、いつもベタなネタになりやすくて、自分で恥ずかしかったり、実はしてるんです(笑)。



でも、このほうが参考になりやすいと思いますので、ご理解ください。



かなりシンプルな書き方にしてしまったので、ここから、実際に【この台本におけるボケの球種の具体例と増やし方のコツ】なども書いていきたいと思います。



さて、ここからはAFTERのテクニック解説をしていきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。

もっともっと添削の内容を知りたい方には、【個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得】です。



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