見出し画像

モテる「しゃべり」を研究する

突然ですが、あなたは自分の声をテープに録音したものを聞いて、悶絶したことがありますか?

わたしはあります。

マイ・ファースト・悶絶は小学校3年生のとき。わたしが友人の誕生会の余興で「帰ってきたウルトラマン」の主題歌を唄ったのを、たまたま友人の親が録音していました。それを再生した時、この変な声の人誰?とハッキリ言ったそうです。わたしが、です。

それ以来、自分の声が大嫌い。
ついでに落ち着きのないしゃべり方も嫌いです。

にもかかわらずナチュラル・ボーン・お調子者なのでよくしゃべる。若手の頃から「しゃべるぐらい手が動かせればまだマシなのに」とか「しゃべりだけは一丁前だけど仕事は半人前以下だな」などと罵倒されていました。

しゃべっているときはわからないんです。声も、しゃべりかたも。だけどテープにとって再生するとそのおかしさがあらわになるんですね。

最初はテープがおかしいんじゃないか、と思ってカセットからひっぱりだしたこともありました。あるいはマイクの性能が、と疑ったことも。しかしそのいずれも異常はなく、おかしいのはわたしの頭のほうでした。

だから、できるだけ自分の声を録音することを避けよう、あまつさえ再生することなど禁じよう、と思って生きてきたんです。そうすれば悶絶することはないだろう、と。

しかし。

神様はいたずらがお好きなようで

気づけばわたし、インタビュー記事を作成することが生業のひとつになっていました。企業から依頼されて代表や役員、あるいはエース級の社員さんたちのヒストリーを文章にする仕事です。

この仕事はいろんな人の仕事の話を聞くのが大好きなわたしにとって天職みたいなもの、といいたいのですが、ひとつだけ避けられない関所がありまして。

それは「取材テープを起こす」という作業です。

取材、つまりインタビューはだいたい40分から60分ぐらい。この、お話をうかがう際に絶対必要なのがレコーダーによる録音です。昔はカセットテープでした。いまはICレコーダー、またはスマホの録音アプリでしょうね。

これは話の細部を聞き漏らさないことや数字など間違ってはいけないデータを正確に押さえることが目的、なんですが、もうひとつ、インタビューの場を一方的なヒアリングではなく、対象者とコミュニケーションを取るための機会にするという重要な役割もあります。

このあたりは書籍『「書く力」の教室 1冊でゼロから達人になる』にも詳しいですので、興味のある方はぜひ!

ライター必読の名著です。いずれ感想文も書こうと思っています。

そして、いざ執筆、の前に避けて通れないのがこの録音データを文字に起こす作業。それがテープ起こしなのです。

『書く力の教室』で講師の田中泰延さんもおっしゃっていますが、テープ起こしはそれを専門にやってくれる業者さんもいるにはいますが、あるいはクラウドソーシングで安く依頼できたりもしますが、執筆者本人が行なうほうがいいんですね。

その辺の詳細などは割愛しますが…

とにかくこの「テープ起こし」で聞こえてくる自分の声、そして落ち着きのないしゃべりのおぞましいことといったら!

起こすたびに悶絶!ですよ。悶絶の連続。おまけにそれが3日間で15人、とかいうケースもあります。もう悶絶死です。

お前がしゃべるのっておかしくない?

インタビューは相手がしゃべるんでしょ?と思う方もいますよね。でもこれが実は、ちょくちょくしゃべるんです。

企業案件の場合、よほど露出している経営者を除けば相手はしゃべくりのプロではありません。ふつうの社員さんで、インタビュー受けるのなんて人生はじめてです!という方もザラです。

そういう方にしゃべっていただくためのしゃべり、というものがありまして。しゃべるんだけどその目的は相手にしゃべらせることなので、しゃべりすぎない。ここの匙加減が本当に難しいんですけどね。

なのでテープを起こすと冒頭や合間でちょいちょいしゃべる俺、というのが登場します。濁って高い声でまくしたてる。落ち着きのない早口。聞き苦しいことこの上ない。

なんど「もうお前しゃべるな!」と音声データ再生アプリ『Okoshiyasu2』に向かって怒鳴りつけたか。

今年はもう、そういう思いはしたくない。なので具体的にどこがどうだめで、どう改善すればいいかを分析。その上で印象のいい話し方、具体的にはモテるしゃべりを身につけようと決意した次第であります。

モテ声の条件

これはもう、音程は低め一択ですね。たまにハイトーンでも味のある声の方がいらっしゃいますが大滝秀治先生とか平泉成先生といった大家に限られます。ここを狙いに行くのは困難極まりない。

イメージとしては、そうですねえ、細川俊之さん。あるいはジェットストリームでおなじみの城達也さん。ああ、思い出すだけで美声です。

工藤俊作、つまり松田優作さんも味のある低音でしたよね。一方、ショーケンや水谷豊はちょっと違うかな。悪くはないけど。

と、いうことで今日からできるだけ低音でしゃべることをこころがけます。今日ちょうど5人ぐらい取材があるので、そこで。

モテしゃべりの条件

さきほどの細川俊之さん、城達也さんは声だけでなくしゃべり方にも艶がありましたよね。共通しているのが、落ち着いていること。ゆっくりと、一言一言を噛みしめるように話します。

工藤俊作、つまり松田優作さんはそこまでゆっくりではないにせよ、でもコミカルなしゃべり以外はどちらかというと、ボソ、ボソとお話になる。

声のトーンはちょっとアレですが、原田芳雄さんのしゃべり方も味がありましたね。大きな放物線を描くようなしゃべりが魅力でした。

と、いうことで今日からできるだけゆっくりと、落ち着いたしゃべり方を心がけようと思います。ちょうど5人ほど取材があるので。

やってみたよ!

と、いうことで、本日、13時から18時までインタビューのお仕事がありました。5名の方にインタビューをしたのですが、その際に前述の「低め」「ゆっくり」を意識してみました。

するとどうだったか。

ひとり45分という取材時間のお約束がぜんぜん守れなかったよ!!!

やたら時間がかかっちゃいました。ご迷惑はおかけしていないと思いますが、大事な社員さんの営業時間を私利私欲(モテたい)で奪ってしまって、プロ失格です、わたし。

そしてたったいま、音声データを聞き直したら…たいして変わってない!おっちょこちょいがスローモーってだけでした。ショック!

わたしはどこからやり直したらいいのでしょうか。何が間違っておるのか。どうしたら細川さんばりの美声と原田さんのような大きなしゃべり方を手にいれることができるのでしょうか。

そしてわたしがモテるのはいつの日になるのか(それほどモテたいわけではないんですけど)。

おしまい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?