ボードゲームルールライティング(各章構成解説:その1)
MarkDownで書いている為に、章立て番号とかがまだありません。
2014.05.11 - Draft版を公開
2014.05.12 - 細部の表現と誤字脱字を修正
各章に書いておくべき内容と気をつけておくべき項目について説明します。
##概要
ゲームの概要を説明する章です。以下のような項目を記述します。
*プレイ人数
*プレイ時間
*対象年齢
*ゲームシステム
*注意事項又は補足
###プレイ人数
ゲームをプレイ可能な人数について書きます。同じゲームを複数個仕様した場合や、拡張セットを利用することでより多くの人数でプレイ出来る場合は、あらかじめプレイ人数に書いておくのも良いでしょう。
例)
2〜4人(拡張セットを利用することで最大6人までプレイ可能)
###プレイ時間
プレイ時間は様々な書き方があります。
*5分
*30分〜60分
*プレイヤー1人あたり15分
短いゲームの場合は、直ぐ終わるのだという印象を与える事も考慮して断定的な時間を記入するもの良いでしょう。
またプレイ人数によってプレイ時間が比例的に長くなっていくようなゲームだと、3番目の"1人あたりXX分"という書き方も理解しやすく、しばしば見かける表現です。
###対象年齢
対象年齢については、子どもを対象にするのかどうかといった点を考慮しておく程度で良いでしょう。
例)
*15才以上
*6才から99才
###ゲームシステム
トリックテイキングやドラフト、デッキビルディングといった比較的メジャーなシステムを採用している場合は、そうしたシステム名を書いておくと以後のルール理解が早くお勧めです。
独自のシステム名称をここで書く事もできますが、それの内容については、「言葉・用語」の整理に記録しておくべきでしょう。
例)
ファンタジックバトルゲーム
- 雰囲気作りとして良さそうなタイトルですが、これでは中身は全くわかりませんね(笑)。
###注意事項又は補足
大声を出したり、広い場所が必要だったりするゲームの場合は、注意事項にそうした項目を書いておくのが親切でしょう。また前提知識が必要な場合も注意事項に入れておくのが良いでしょう。
##ゲーム説明
ここでは、ゲームの世界観や背景などの説明をするのが一般的です。ただし、この部分にルールの説明を混ぜるのは禁物です。
また、あまり長い説明だと読み飛ばされる事が多いでしょうから、200文字前後程度にしておくのが良いでしょう。200文字は、A4の紙1枚を4段に分けた場合で10行程度です(4段のフォーマットは、メビウスさんやバネストさん等の和訳のフォーマットがおおよそ該当します)。
##勝利条件
ここでの勝利条件は、まだルールを全く説明していませんので、一般的な用語で説明する方が良いでしょう。
例)
*最も勝利ポイントを稼いだプレイヤーが勝利します
*ゲーム終了時点で生き残っていたプレイヤーが勝利します
*いち早くマスターの設定した謎を解き明かしたプレイヤーが勝利します
1つ目の例の場合は、「勝利ポイント」とだけ書いています。
実際は、「1金=1勝利ポイント、最長道路所有者=7勝利ポイント、最大騎士所有者=3勝利ポイント」といったように様々な計算が入る事が多いでしょう。ただし、そうした勝利点の算出方法については、勝利条件ではあえて触れずに、あとでまとめて説明したほうがよいでしょう。
もちろん、勝利ポイント式の場合は、勝利ポイントに関わる主立った要素を並べることで勝利条件を説明することもできますが、勝利条件の表現が長くなりやすいことと、まだ読者にはコンポーネントの説明すらしていない点には注意です(コンポーネントの章を先に回すのも手です)。
例)
*お金や長い道路、より多くの騎士を集めること等で勝利ポイントを得て、ゲーム終了時に最も多くの勝利ポイントを得ていたプレイヤーが勝利します。
3つ目の例の場合は、ルール自体には全く振れていませんが、読者に対して
*「マスターはあらかじめ何か謎を設定している」
*「プレイヤーはそれを推測してゆく」
というルール読解上の指針を与える書き方になっています。
一般的な用語しか使っていませんが、勝利条件というゲームの最終目標を提示することで、読者にルールを読んでいく際に実際のプレイをイメージしやすくする効果を期待できます。
希に、末尾にのみ勝利条件が書かれているルールの書き方もありますが、読者は「最終的にどうなればいいの?」という疑問を抱きながらルールを読み進める事になりますので、特別な理由が無い限りあらかじめ勝利条件を提示しておく方が良いでしょう。
##コンポーネット説明
ゲームに附属する各コンポーネントの説明を行います。コンポーネントでは以下のような項目を書いてきます。
*コンポーネント名称
*コンポーネントの説明
*コンポーネントの形状
*コンポーネントの数
それぞれについて解説します。
###コンポーネント名称
コンポーネントの名前です。ここでは、そのゲーム固有の名前をつけることで、コンポーネントに対する読者の理解を助けるでしょう。特にここで書かれた名前を頼りにセットアップではコンポーネントを探しますので、抜け・漏れが内容に注意してください。
例)
人の駒を「騎士駒」「学生駒」「漁師駒」「ゾンビ駒」等と呼称する。
どのような名前でもかまいませんが、ここで記述した名前で最後まで変更しないでください。
###コンポーネントの形状と数
名称が終わると次は、形状と数の説明が必要となります。特に数は読者がコンポーネントが欠品しているかどうかを確認するための手がかりになりますので、必ず記述してください。
例)
*白キューブ 120個
*人形駒(赤・青・黄) 30個(色別に各10個)
*大きいカード 24枚
*小さいカード 12枚
名称と併せて記述する場合は、以下の形でも書けます。
*学生駒 4個(赤・青・黄・緑が各1個)
*戦闘カード 24枚(裏に剣の模様)
こうした形で書くかどうかはゲームのコンポーネントのわかりやすさ、雰囲気をどの程度重視するのかによって決定してください。単純なコンポーネントの場合には、名称を省いて形状と数だけでも十分でしょう。
似たようなコンポーネントがある場合は、「キューブ大」や「駒小」といった大きさの情報や「白の駒」といった色の情報等を追加して区別がつくようにしてください。
デザイナーとして当たり前過ぎて簡単に記述しがちな所ですが、読者がセットアップでコンポーネントを探せるかどうかはこの部分の記述にかかっていますので、しっかり書きましょう。
また、複数のコンポーネントを1行で書く場合には、その内訳も書いた方が良いでしょう。
例)
戦闘カード 24枚(背面に、Battle)
- 剣術 12枚
- 抜刀 8枚
- 格闘 4枚
プレイヤー駒 40個 (キューブ小)
- 赤 10個
- 白 10個
- 青 15個
- 緑 15個
後者の例にある「プレイヤー駒」と纏められているものの、内訳数が違う場合などは、読者は欠品を非常に心配になるものです。コンポーネント解説でしっかり内訳を書く事でそうした心配を払拭することが出来ます。
内訳を書いた場合には、必ず検算してください。
デザイナー方々の都合でゲームのバランス修正などを行い、コンポーネントの数や構成がデベロップ中に変わる場合はしばしば発生するはずです。
そうした時に、こうした内訳数がルール標記と実際の梱包物が異なってしまう事態を招きやすくなっています(ルールを書きながらデベロップする場合は特に注意が必要です)。
ルールを書いた際には、実際のコンポーネントを見て、数の確認と内数の検算を行ってください。
実際に、合計数が合わないルールや和訳は多く存在し、読者が次のセットアップで混乱する原因となります。
###コンポーネントの説明
コンポーネントの中に要素が複数ある場合には、その内容の説明を記述します。
例)
*プレイボードの各要素の説明 - 勝利ポイントトラックやプレイヤーアクションポイントマーカー等の要素
*ルーレットのようなコンポーネントの場合、指し示す値の説明等
*カードの場合は、「名称」「勝利ポイント」「特殊効果」「購入条件」など様々な要素の説明
特にカードゲームの場合は、1枚のカードにいくつかの要素が書かれているでしょうから、それぞれの要素について、「名称」等をしっかり記述しましょう。
-サンプルの図を後で追加-
ここでは、あくまでコンポーネントの各要素についての説明にとどめ、ルールそのものは書かない方が無難です。
例えば、カードの説明である部分の数字を「カード取得オークションの結果支払う金額です」と書くより「購入金額」と単に書いておいた方が良いでしょう。
この例の場合では、「そのオークションがどうやって行われるか?」といった内容はプレイの詳細で初めて登場しますので、そうした内容については下手に振れない方が無難です。
※商業ゲームを含めこのコンポーネントにルールを書きたがるタイプのものは非常に多く存在します。最も困るのは、コンポーネントの説明部分に中途半端なルール説明が書かれて、肝心のプレイ内容説明の部分にその記載が無いタイプです。そうしたタイプは読者がプレイ説明とコンポーネント説明を往復して読まないと理解できなくなってしまいますので、十分注意してください。
###コンポーネントの順序
各コンポーネントは自由な順番で書くのでは無く、なにがしらの意味を持った集合体で書いた方が後々、読者が読み返す時にわかり安いでしょう。
例えば、「全員共通のコンポーネント」と「プレイヤーが持つコンポーネント」でグループ化することは良くある手法です。
そうしたグループ分けを行った後に、「50音順」「重要度順」「次のセットアップに現れる順」などの何れかのソートを選択して、コンポーネントを記述する順番を考えて書くと良いでしょう。
著者的には、「次のセットアップに現れる順」に書くと、最終的なルール見直し時に「コンポーネント説明はあるが、セットアップに登場していないコンポーネントは無いか?」というチェックが容易になりお勧めです。
読者目線でも、セットアップの項目を読みながら、このコンポーネントは何だろう?と見直す時に、コンポーネントの説明とセットアップの説明順序がシンクロしていると探しやすくなります。
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