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【珈琲記念月】思い出のムンドノーボ

人生初めてのコーヒー豆専門店の体験エッセイを書いてから一週間ほどが過ぎた。2月は私がコーヒー豆専門店に人生で初めて入店したコーヒー記念月である。その時は予想外の美味性に「コーヒーとは、こんなに美味しいものなのか」と感動したことを今でも覚えている。そして、昨日2月2日、大阪にあるその店に向かった。当時から3年近く経過したものの、店員が少し変わった以外にはこれといった変化はない。思い出のムンドノーボを注文して、おなじみのトルマリン水を口に含みながら、私はあることを思い出していた。

それは、コーヒーの専門店巡りに東京へ遠征した時のことだ。地元・大阪梅田やその周辺と同等、あるいはそれ以上に店の内観・外観がヨーロッパ風に整えられている印象が強い。さすが首都・東京というべきなのか、オシャレへの力の入れ方は半端ではない。そうは言っても、ここまで決まりきったかのようにヨーロッパ風に揃っているのには、何か理由でもあるのだろうか?と疑問に思っていたのだ。

すぐに思いつく理由としては、非日常感を味わいたいという憧れに近い願望があるからだろう。私はヨーロッパに行ったことはないけれど、語学力や渡航費・滞在費などを考慮すると、背伸びして現場に行くよりも身近に疑似体験できる店に行く方がまだ現実味がある。でも、それだけではどの国の作りでもいいことになってしまう。

もう一つ考えられる理由としては、ヨーロッパは世界的にみると、天文学や自然科学といったサイエンス、音楽や美術などの芸術、イタリア料理やフランス料理といった美食など色々な文化が早くに花開いた地域としての良いイメージが定着しているからだろう。それに付随した形で、紅茶の本場であるイギリス、エスプレッソの本場であるイタリアが脳裏に浮かんでくる。

エスプレッソと言えば、アメリカもエスプレッソのような濃いコーヒーを好んで飲むらしく、店内をアメリカ風に設えたコーヒー店も少なからず存在している。身近にあるアメリカのコーヒーと言えば、最近全国制覇したスターバックスが有名だろう。以前は頻繁に利用していたものの、ここ3年は個人的な好みが変わって、コーヒー豆専門店の方へと自然に足が向いてしまっている。

ちなみに、いつも通っている店の内外はヨーロッパ風を感じさせるような作りは一切していない。おそらく、店のマスターがコーヒーの質の方に対して並々ならぬ情熱と自信を持っているからなのだろう。コーヒー豆が新しく収穫されたと聞けば、直接それを買い付けに中南米やアジア各地(インドネシア・イエメン)の契約農家に出向いて、その時に買える分だけ仕入れているそうだ。それを聞けば、美味しいのも納得がいく。

そのついでに、お土産として買ってくる現地の工芸品やコーヒー豆を詰める麻袋、ブルーマウンテンを詰める専用樽などが決して広いとは言えない店内に配置されている。これをオシャレと形容していいのかは分からないのだが、店はコーヒー豆にまつわるリアリティを伴った異国情緒をかもし出しているのだ。思い出補正も働いているのか、私はコーヒーベルトから外れているヨーロッパ風な作りよりも、こういったコーヒーの産地の雰囲気をまとっている店の方が好きなのである。

さて、話を少し戻そう。Googleで東京都内におけるコーヒー専門店を検索すると上位にランクインする有名なコーヒー店に入った時のことだ。開店直後なのか、客はほとんどいない。近くに英字新聞を読んでいる海外の人がビジネススーツに身を包んで朝食を摂っているだけだ。ここだけを切り取れば、まるで海外ドラマのワンシーンかと錯覚してしまうだろう。

そんなイイ雰囲気を演出しているのを加味してなのか、コーヒーは白目を向きそうなほど高価だった。いつも通っている店ではブルーマウンテンNo.1が一杯400円なのだが、その店のエチオピア モカ一杯は確か2倍の800円に近かったと記憶している。

コーヒー豆100gあたりの相場は、私の感覚で言うとブルーマウンテンNo.1(¥2400前後)に対してエチオピア モカ(¥400前後)だろうか。コーヒー豆の値段は6分の1程度のはずなのに、喫茶の値段は2倍ということで、私がびっくりしたのもこれで納得してもらえるだろう。

結局、この店では私は3つの意味で落胆させられることになる。液が泥水のように濁っていて飲みにくかったこと、高価な割にはどこがどう美味しいのかさっぱり分からなかったこと、そしてカウンター式ではなかったのでそれらの疑問について何も聞けなかったことだ。「何のために東京まで来たのだろうか?」と内心打ちのめされた気分だった。将来的に、自分の舌はこれを理解できるようになるのか、今から不安でならない。コーヒーの世界とは、つくづく奥深いものである。

この実体験を通して、コーヒーについてこだわりがない人には、初めて行った店の味によってコーヒーに対する偏見的な見方がついてしまうのではないだろうか?と思った。というのも、そのような人にとってみれば、評価基準になるものは何もなく、美味かどうかの判断がその人の好みとフィーリングに任せられているからだ。ある程度のコーヒー好きになれば「そういうのもあるのか」とか「そう来たか」と、多少の理解はできるけれども、初めての人にとってはそうはいかない。私が初めての店をそこに選んでいたら、現在のように旅行先でコーヒー豆専門店を巡るほどコーヒーにはハマっていなかっただろう。

一杯¥290のムンドノーボから始まった私のコーヒー物語の続きには、そういったエピソードがある。去年には、神戸にあるコーヒー博物館を訪ねたのだが・・・語りだすと止まらなくなりそうなので、その話はまた今度にしたいと思う。

ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。

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