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【エッセイ】『星の王子さま』のヘビ🐍の謎

自分を感動させてくれる人が、すごい人だ。 を書いてからだいぶ経ちました。今回は未だに私を悩ませている『星の王子さま』のある謎 について自分なりに割とガチで考えてみる考察エッセイNOTEです。作品の内容をご存知ない方には「何のことかさっぱり分かんねぇ」となると思いますのでご注意くださいませ。

さて、『星の王子さま』には様々な翻訳家の方が翻訳したバージョンがあります。私が最初に手にしたのは内藤 濯 訳のものでした。しかしながら、何十年も前の本で文体が難しかったことに加えて、ずっと国語(本を読むの)が苦手だったので後に下掲の倉橋 由美子 訳を2冊目に買って読んでみました。

このNOTEでとり上げる謎は、作品の最後の方で登場するヘビが呟いたたった一言の言葉についてです。作者は作品を洗練するために文量を極力削っているので、読解力が足らない私には未だにその真意を汲み取れずにいるのです。その肝心の一言とは、

「謎は全部おれが解く」
『新訳 星の王子さま』より

という極めて短い言葉です。ちなみに、ヘビの謎について触れられている書籍があることをこのNOTEを書き始めてから知りました。先に読んだ方が良かったのかもしれませんが、自分なりの答えを出した上で答え合わせをすればいいやと思ったので、早速考察に入ります。

この「謎は全部おれが解く」という言葉は、王子さまがヘビに対して「どうして謎みたいなことばかり言うの?」と質問してヘビが返した言葉です。私にはヘビが質問にまともに答えずに、見当違いな返事をしたようにしか思えませんでした。

文脈から考えて、それぞれが言う謎について私は次のように解釈しました。

・王子さま:ヘビの言っていることが分からないと言う意味で謎
・ヘビ:解決しようとしている何かが謎

両者の謎には違いがあるように感じます。また、ヘビが「全部」と言っていることから、複数の謎を抱えていることは確かなようです。

現時点で、私のヘビの謎に対する解釈の仕方は2つあります。

1つ目は、ヘビを心理カウンセラー兼便利屋として見た場合で、いま王子さまの心に渦巻く蟠(わだかま)りや悩みを全部ひっくるめて謎だ、と捉える素直な見方です。ヘビは短期間の会話内容から、王子さまの心の中にある過去の過ちに対する葛藤やこれから起きることに対する不安があることを察します。
そして、この問題の根っこには王子さまに馴染みの深い ”ある場所” が関係していて、そこに帰らない限りは永遠に解決しないことに思い至ります。
つまり、ヘビは王子さまの抱えている問題の総称を謎と呼んでいて、直接の解決はできないけれど、物理的(間接的)に手助けしようとしたと考えることができます。
しかしながら、これを正しいものと仮定した場合、王子さまは数々の星を自分で渡り歩いてきたにも関わらず、地球からの星間移動だけができないという矛盾が生じます。それを考慮すると、王子さまが「帰る」というのは建前で、本音は命を代償とする贖罪と考える方が自然ではないかと思います。

本文に書いてある内容と照らし合わせてみると、こういう思考になるのですが、いかんせん私は性格がひねくれていますので、別の角度からこの謎を眺めてみることにしました。

2つ目は、ヘビを死を司る者(死神?)として見た場合で、王子さまの中にある子供心を謎だ、と捉える少しひねった見方です。様々な大人たちや動物、花との出会いを経験して、王子さまは自分なりの世界の見方や人間関係の構築の仕方について理解していきます。
とりわけ、第二の主人公である飛行士との濃密なやりとりを通じて、大人の考えに触れることによって、そこで精神的に成長します。その成長の代価として、王子さまは自分の中にある貴重な子供心を少しだけ失うことになります。個人的なイメージで言うと、物事がある程度上達すると初心者だった頃の自分がどんな感じだったのか思い出せないことに似ていると思います。
ヘビは王子さまの子供としての死を迎えさせる、つまり精神的に大人へと成長させることで(上記の1つ目で述べたような)王子さまが抱える問題を内面から解放しようとしたと考えることもできるでしょう。そういう意味合いであれば、ヘビのセリフは「謎は全部おれが解(ほど)く」と読んだ方がよりしっくりくる気がしています。

このように、間接的解決と内面的解放という2つの解釈案を出してみましたが、合っているのかどちらとも間違っているのか、正確なところは分かりません(別の考え方があると言う方は教えていただければ幸いです)。でも、答えが分かる(一つに定まってしまう)と納得して興味を失うので、私としては謎は謎のままの方が楽しみがあっていいのです。読者に解釈を任せるようなボカした表現が作りだす余白の美は、想像力によってより神秘さを増し、無限の可能性を内包させることができるので、とても良い手法だと思いますね。

PS:このヘビの謎とは別に「悲しい時に夕日を見まくった理由は?」とか「王子さまは最後にどうなったのか?」という謎もありますので、それらはまた別の機会に考えてみたいですね。あと、個人的に隠れ名言だなというセリフも今後NOTEに書きたいと思ってます。↓続編


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