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【続編:天王山裸玉への道】19.10.04. (x3_ヽ)_

1.双裸玉・裸玉探索の引き金はプロの難癖

詰将棋では、好手と好手順、趣向が作品の巧拙を判断する際の要素となっています。一つの作品について、この3要素の有無(〇✕)で分類するキャロル表を下記に示します。

図1

この表は上下段で好手の有無を、左右列で好手順の有無を、内外枠で趣向の有無を別々のエリアに分けたもので、合計8つのブロックに区切られています。例えば、【好手〇・好手順〇・趣向〇】の三拍子揃った作品であればエリア①に、【好手✕・好手順✕・趣向✕】の何がしたいのかさっぱり分からない作品はエリア⑧に分類されます。

基本的に、詰将棋には好手が含まれていないと手順全体に締まりがないため、なるべくある方が望ましいというのが創作する上では暗黙の了解のようになっています。そうすると、緑色で塗った好手〇ゾーン①②⑤⑥は「高評価対象ゾーン」となります。残ったうちの灰色に塗ったエリア③【好手✕・好手順〇・趣向〇】は「解図者の好み次第で高評価にも低評価にもなり得るグレーゾーン」であり、白色のゾーン(エリア④趣向のみ〇、エリア⑦好手順のみ〇、エリア⑧〇なし)は完成度が低いという理由から高評価されることは(裸玉のような例外を除いて)まずないでしょう。

画像3

エリア③【好手✕・好手順〇・趣向〇】に属する図というのは、例えば上図のような(以前発表した)連続生大駒王手による35手詰が挙げられます。エリア③には好手の有無という一般的な詰将棋の縛りから解放された図が眠っており、私はそこに通常とは異なる面白みと価値を感じているので、エリア③に特化した図をスマホ詰パラに投稿し続けていました。

しかしながら、Twitter上で私の拙作レベルに関係するツイートに対して窪田プロが下記のコメント付きリツイートをしたように、スマホ詰パラではエリア③作品はお呼びではないそうなので、これ以降の作品の投稿はNOTEを含む別の場所ですることにしました。

窪田義行(空気から整えていく 環境派)@YoshiyukiKubota ・ 11月5日
#スマホ詰パラ 同じLv.15であれば、No.8,985の方が遥かに難解だろう。ご連作のところ恐縮だが、入玉型と広範囲往復系の趣向作を見て、解図意欲が湧く利用者は限られている。9,383の様にひと桁にして取っ付かせる手もあるにせよ、詐術的印象を与えない為には10台が妥当だろう。

このリツイートの一件があったのと同じ頃、私は双裸玉・裸玉という趣向があることを知りました。そこで、これまで続けてきたエリア③作品の創作ペースを一旦スローダウンさせることにして、代わりにエリア④【好手✕・好手順✕・趣向〇】に相当する双裸玉・裸玉の探索を重点的に攻める方へと切り替えました。

もし、窪田プロによって私がスマホ詰パラにおける問題レベルを故意に設定していたと受け取られるような文言とともにエリア③作品を投稿することに対して難癖を付けたリツイートがなされ、且つ同時期に私が双裸玉・裸玉に出合っていなければ、この裸玉発見の報告はもう少し後で私以外の誰かがしていたでしょう。

2.まだ5七(道半ば)

前回のNOTEでは完全作裸玉の報告数をカウントするにとどまっており、「口だけなら誰でも言えるわ」と思われても仕方ないような内容でした。とりあえず、結果を出さなければ誰も見てくれやしないと思いますので、今回は私が一つ見つけた裸玉を報告します(発表日は2019年10月4日です)。

はる筆線屋 作 : 5九玉|角金4銀3桂2歩

29 59 角金4銀3桂2歩++

最初に見つけた図は4手目の子作図でした。そこから2手逆算を2度繰り返すことによって5九へと辿り着きました。史上2つ目の逆玉座裸玉の発見です。

【手順】
▲4八銀①  ▽同 玉   ▲5七銀   ▽同 玉
▲4九桂①  ▽5八玉   ▲5七金   ▽4九玉
▲5八銀   ▽5九玉   ▲4九金①  ▽6八玉
▲6七金   ▽7八玉   ▲7九歩   ▽8七玉
▲4三角②  ▽9六玉   ▲8六金   ▽同 玉
▲7六角成  ▽9七玉   ▲8九桂   ▽8八玉
▲7七馬③  ▽X九玉※

※▽8九玉以下、▲9九金▽7九玉▲8八馬 まで29手(変同)
※▽7九玉以下、▲7八金▽8九玉▲8八馬 まで29手(作意)
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①:左右対称形により、左右対称手でも可
②:以遠打(▲3二角、▲2一角)でも可
③:25手目の図は下掲の通り

26手目に▽8九玉/▽7九玉の変同があるのは少し残念ですが、分類上は完全作裸玉となるでしょう。

29 59 角金4銀3桂2歩++++

完全性の証明はこのNOTEには書いていませんが、テキストファイルにすると172KBの大きさになっています。特に、3手目の▲9三角の不詰と6手目の玉の他の逃げ場所が早詰となる検討量は膨大すぎて頭がおかしくなりそうでした。

さて、現在最も天王山に近い完全作裸玉は(子作ではあるものの)5七玉|角金4銀桂2歩という図であり、あと2つのところにまで迫りました。単純な2手逆算案として5六玉|角金4銀桂2香5六玉|角金4銀桂2歩2などが考えられるので、今後とも天王山まで登り詰めることができるように地道に探索を続けていこうと思っています。

3.スペシャルサンクス

詰将棋おもちゃ箱 様:裸玉完全作リストを拝見いたしました
パナソニック将棋部 御中:脊尾詰を使用させて頂きました
窪田義行(空気から整えていく 環境派)様:双裸玉・裸玉探索を本格的に始める契機となる心温まる難癖を頂きました

4.著作権について

この裸玉について、他の誰かに自作発言をされては困るので著作権を主張し、ネット上や書籍などで営利目的とする本裸玉の掲載を禁じます(利用する場合はあらかじめ許可をとってください)。5九玉|角金4銀3桂2歩の引用をされる際は、情報の出所がこのNOTEであることと作者名「はる筆線屋」を明記してください(要は、拙作だということが分かればOK)。

PS:今後の裸玉探索に対するサポートを頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。

「ためになるわ」と感じて頂ければサポートを頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。