ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」書評

尾原さんからPDF版を献本いただいたので、一気に読みました!!!

この本では、世界最先端の技術を、社会に根ざした深い課題解決に適用するディープテックの世界について解説されています。

丸さんのビジョンと、尾原さんの未来を見通す目が重なると、こんな素敵な補助線が社会に引かれるのかと、ワクワクしました。

尾原さんの前回の本、「アフターデジタル」も、デジタル時代のビジネスにおける本質的なパラダイムシフトについて書かれていてとても良かったですが、今回は、社会課題解決にビジネスとしてチャレンジしている私としても、とても共感できる内容でした。技術者として、「テクノロジーは、正しく適用すれば社会をよくするものだ」という信念でシビックテックなどの活動をしてきたので、勇気をもらえました。

出てくる事例も知らない会社や技術が多く大変勉強になりました。


ハイテクとローテクを知によって新結合する

確かに、テクノロジーそのものの進化を追求することも重要だ。しかし、地球規模での課題が山積しているこの時代に必要なのは、「何のためにテクノロジーを使うのか」という視点にほかならない。そこで浮かび上がってきたのが、ハイテクとローテクを「知」によって新結合し、その集合体をテクノロジーと捉えるという概念。そして、それこそがディープテックなのである

自治体のDXを推進するCode for Japanの活動でも常々感じているのが、課題を持った現場への適用の重要さです。日本ではテクノロジー自体のレベルは高いものがたくさんあるのに、福祉や自治体の窓口、一次産業、インフラ管理などの現場では全く活用できていません。このような現場に入っていき、テクノロジーを正しく適用することがとても重要だと感じています。海外ではリープフロッグ的に進化が起きていますが、日本でもディープテックのポテンシャルは大きいと思います。

帯にもコメントされていますが、ヤフー安宅さんの、「風の谷」プロジェクトも思い出しました。

アクセラレータが、斬新なアイデアをExitしやすい方向へピボットしてしまう

アクセラレーターによる環境整備のため、かえって成長パターンが均質化されてしまった背景がある。つまり、企業の成長を加速させる仕組みによって、VCからの追加投資をあつめたり、大企業から買収されたりするEXIT(出口戦略)も設定されてしまう。ゴールから逆算する、「逆算型のスタートアップ」ができてしまうのだ。そのため、アクセラレーターによって当初のスタートアップの斬新なアイデアが、EXITしやすい事業へとピボット(方向転換)されてしまうケースが多発している。

確かにアクセラレータの存在によってスタートアップが爆発的に成長するエコシステムはとても強力です。さまざまなノウハウがテンプレ化され、高速道路のような最短経路(といってもそんな簡単な話でもないですが)ができています。

しかし、社会課題解決の場合は、急激な成長が悪影響を及ぼす場合もありますし、そもそもわかりやすい市場が存在しない分野もあります。(孫泰三さんは、「市場の失敗」分野と表現していました)そもそも投資回収までに長い時間がかかるものも多いです。

本書では、スタートアップの定義をVC的な目線からではなく、当事者が解決したい課題を持ち、それを解決することが社会への貢献になることを信じるところに根ざすものだと考え、ニーズを追い求め、持続的なビジネスにし、それを急成長させていく人としています。

そして、そんなスタートアップを支援するアクセラレーターについても触れており、それこそが新たな「ディープテック」の潮流を生み出しているのです。

課題の現場に足を運び、共に課題を解決しよう

コード・フォー・ジャパンでは、NPO の現場にテクノロジー人材をマッチングする、Social Technology Officer プロジェクトを推進しています。

本書では、東南アジアなどの海外の事例がメインとなっていますが、日本にも課題はたくさん転がっています。社会課題に対峙するNPOがテクノロジーをうまく活用することが、日本版ディープテックにつながるのではないか。そんな予感がしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?